サイト小説の記事一覧

2020/05/09

【第六章 縁由】第一話 権力

 晴海は、能見からの資料の扱いを考えていた。  寝ている夕花を見てから情報端末の資料を見る。 (能見の奴、こんな爆弾を用意していたのか?夕花を寝かせておいて正解だな。夕花の前で見ていたら・・・)  資料には、夕花の実家にまつわる調査結果(第一弾)が書かれていた。  夕花の父親が友人と立ち上げた会社は裏で密輸に手を染めていた。  州国間の貿易は認められている。州国によって取り扱いが違う商品は基本的には存在しない。大麻を合法化しようとした州国も存在したが、内外からの反対で廃案になった。  夕花の父親たちは、表向…

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2020/05/08

【第五章 移動】第六話 資料

 晴海と夕花が、ベンチで固まっていると、礼登からのコールが入り、排除の完了が知らせられた。  二人は、トレーラーまで戻って小屋に入った。 「晴海さん。圏央道に入るのですよね?」 「そう聞いているよ?」 「いえ、谷田部パーキングエリアから、圏央道に入るジャンクションでは検問が有ったと思うのですが?」 「あるよ。でも大丈夫だよ。トレーラーの中までは調べないし、調べられても困らないからね」 「え?」 「だって、別にトレーラーで車や小屋を運んではダメだという法律は無いし、僕たちが荷物だとしても合法だよ」 「あ・・・…

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2020/05/08

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察4

 儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。絶賛、後悔中だ。  ドワーフ族だと名乗ったのに、実はエルダードワーフだったイワン殿。家名持ちと教えられた時点で気がつけばよかった。  目の前にあるものは見なかったことにして、自分の屋敷に帰ろうと本気で考えた。娘が、帰さないと徹底抗戦だ。たしかに、王家からの頼みをヤス殿に伝えないとならない。娘を睨むが、娘は、もういろいろと諦めている表情をしている。  目の前に置かれている、魔道具と酒精。見なかったことにしたい。 「イワンさん。それで、…

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2020/05/07

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察3

 儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。絶賛、後悔中だ。好奇心に負けた過去の自分を殴りたい。 「クラウス殿。ここが貯蔵庫だ」 「貯蔵庫?」 「そうだ、ここで蒸留酒を寝かせている」 「しかし・・・」「そうだ、単純に寝かせているわけではない。ヤスが作った部屋で、端から1年。2年。4年。8年。16年。32年。と、なっている」 「??」 「嬢ちゃんに聞いていないのか?」 「えぇ何も?」 「そうか、それじゃしょうがないな。この部屋は、広さは20メートル四方くらいの部屋で、1日で言っ…

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2020/05/07

【第五章 移動】第五話 休憩

 晴海と夕花は、小屋から出て、改造されたトレーラーから外に出た。周りに誰もいない状況なのは、礼登から報告が上がっている。 「うーん!」  疲れてはいないが、小屋の中でさっきまで寝ていた晴海は身体を伸ばした。筋が伸びるのが気持ちよくて、声が出てしまった。  夕花は、そんな晴海を見て嬉しそうにしている。 「夕花?」 「はい」 「何か食べよう」  晴海が差し出した手を夕花が握った。  指を絡めるようにして握った状態で、パーキングエリアにあるフードコートの中に入っていく。 「パーキングエリアとか、サービスエリアとか…

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2020/05/06

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察2

 儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。だが、現在の状況が理解出来ない。  ドワーフの工房は、凄まじかった。一級品の武器や防具が作られていた、日用品と思われる物もドワーフたちが作っていた。一部魔道具も見られた。ドワーフが魔道具を作る?と思ったが、エルフ族が居て、ドワーフ族と連携しているのなら可能なのだろう。こんな事が貪欲な貴族に知られたら、また胃に痛みが走る。  娘の言葉にも耳を疑った。 「サンドラ。二級品とは、見てきた工房で作られている物か?購入できるのか?」 「えぇ。…

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2020/05/06

【第五章 移動】第四話 戯事

「夕花?」 「はい?」 「いや、なんか不思議そうな顔をしていたからな」 「あっ・・・。先程、移動ルートを教えていただきましたが、かなりの距離ですし遠回りになっていると思います。時間も、相当ゆっくりとした速度で走られるのですね?」  礼登が示したルートを一般的な車の速度よりも遅い速度で走っても6-7時間で到着できる。オート運転だと、礼登の示したルートでは行けない。効率が悪すぎるのだ。夕花の指摘は当然なのだ。 「速度は、礼登に任せたからな。多分、僕たちを気にしていると思う」 「え?」 「通常速度で移動されて、急…

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2020/05/05

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿を視察1

 儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。  貴族位としては、伯爵だが通常の伯爵より上の辺境伯だ。儂の上は、侯爵家と公爵家があるだけだ。  儂は、娘のサンドラが世話になっている神殿の都(テンプルシュテット)の敷地内に足を踏み入れた。軽い気持ちで着いてきたが、後悔し始めている。  神殿の都(テンプルシュテット)は娘たちが名前を付けたと言っているが、信じていない。名前は、主が付けるのが当然で、主の権利なのだ。娘たちも気にして、仮称だとは言っていたが、実際に神殿の主であるヤス殿が…

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2020/05/05

【第五章 移動】第三話 礼登

 晴海と夕花は、ホテルに戻って、チェックインをしたフリをして、荷物だけを受け取ってエレベータに乗る。  一度、最上階まで登ってから、地下駐車場に移動する。トラクターにトレーラーを連結した状態で待機させてあると言われている。 「晴海さん。トレーラーは解ると思いますが、私たちが乗る車は、どれなのでしょうか?」 「能見さんが用意したから・・・。あった。あった。相変わらずだな」 「え?これが、そうなのですか?」 「そうだ。ナンバーが、863だろ?」 「晴海さん。愛されていますね」 「・・・。夕花・・・。可愛い顔して…

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2020/05/04

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 クラウス辺境伯。神殿に行く

 儂は、クラウス・フォン・デリウス=レッチュ。バッケスホーフ王国の辺境伯だ。  貴族位としては、伯爵だが通常の伯爵より上の辺境伯だ。儂の上は、侯爵家と公爵家があるだけだ。  儂は、娘のサンドラが世話になっている神殿の都(テンプルシュテット)に向かっている。  関所の村アシュリでは、簡単な食事だけをして、神殿を目指す。関所の村アシュリの代表は、ルーサという男だ。ディトリッヒ殿の知り合いと言っていたが、どっかで見たことがある気がする。思い出せない。王都で行われた、陛下の即位式で見た気がしたのだが・・・。  代表…

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2020/05/04

【第五章 移動】第二話 変装

「晴海さん。準備が終わりました」  話をしてから、1時間後には夕花の準備が終わってしまった。もともと、奴隷市場で売られていて、晴海が入札したので当然と言えば当然だ。晴海も、情報端末と身分証明が行える物だけを持って奴隷市場に来たのだ。  お互い、このホテルで用立てた物か、晴海が能見に依頼して用意した物しか荷物はない。  夕花の提案から、姿を消す方法で伊豆に向かうと決めたので、コンシェルジュに頼んでいた方法で脱出すると決めた。  晴海と夕花は、明日以降のスケジュールを大まかに決める。 「夕花。それじゃ、エステに…

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2020/05/03

【第五章 移動】第一話 方法

 晴海は悩んでいた。昼間に移動するか?夜に移動するか?  一人で悩むよりも、相談したほうが良いと判断した。 「夕花」 「はひ!」  夕花がおかしな返事をしてしまったのには理由がある。今日も二人でホテルの部屋で過ごしていた。能見に頼んだ、試験に必要な書類が届いたので、二人で勉強していたのだ。共通の勉強は、大学への入学申請に必要になるテストの対策テキストだ。試験は、形だけなのは晴海も夕花も認識している。せっかくだからと二人で勉強をしていたのだ。そして、夕花は復活した資格の上位資格を目指す勉強を始めた。能見からは…

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2020/05/03

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十八話 ヤスへの説明?お願い?

 セバスが、サンドラとクラウスを連れて会議室に入ってきた。クラウスが疲れた表情をしているのを見て、ディトリッヒは可愛そうな人を見る目でクラウス辺境伯を見ている。実際に自分たちが通ってきた道である。  クラウスに衝撃を与えた、ヤスはセバスから飲み物を受け取って喉を潤していた。 「お!サンドラ。ありがとう。クラウス殿。お手間をとらせてもうしわけありません」 「ヤス殿。感想は、娘に伝えてあります。本題に入りますが問題はありませんか?」 「わかりました。お願いします」  クラウスは、ヤスに交渉の内容を伝える。  ま…

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2020/05/02

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十七話 サンドラとデイトリッヒが帰ってきた。おまけ付き

 関所の村アシュリからユーラットに向かい始めた。サンドラ。ディトリッヒ。クラウス(辺境伯)を乗せた、ダブルキャブはユーラットに寄らずに神殿を目指す。 「セバス殿。ヤス殿は、”村を作る”と言ったのですよね?」  クラウスが、セバスに質問をする。問い詰めている感じではなく、呆れた感じに聞こえる。 「はい。そうお聞きしました」  セバスも淡々と答えるのだった。  関所の村(・)アシュリは、村ではない。城壁を備えた街なのだ。人数は、確かに街ではなく村なのだろう。設備だけを見れば、領都と同等か領都以上なのだ。クラウス…

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2020/05/02

【第四章 襲撃】第五話 移動

 昼食に近い朝ごはんを晴海と夕花は並んで食べた。夕花は、食事の度に場所を変えて食事を摂ってみるが、正面で食べれば晴海の視線が気になってしまうし、横で食べれば晴海の仕草が気になってしまう。そして、晴海の匂いを感じて、自分の匂いを晴海が感じているのかと思うと赤面してしまうのだ。  食事を終えて、夕花が食器を片付ける。最初は、晴海がやろうとしたが、自分の仕事だと言って夕花が行うようになった。 「晴海さん。何か飲みますか?」 「そうだね。コーヒーを頼むよ」 「はい。ミルクをたっぷりと砂糖は少なめですか?」 「うん。…

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2020/05/01

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十六話 神紋

 ヤスは、リーゼの家で昨晩の結果を含めて聞こうとしていた。  先触れに出た、テンが戻ってきて、リーゼが家に居ると告げられた。マルスに確認すれば済むのだが、ヤスはメイドに仕事を与えたのだ。  リーゼは、家で待っていると言われたので、手土産になるお菓子を持って、リーゼの家に向かう。 「旦那様。ファーストです。リーゼ様がお待ちです」 「ありがとう」  ファーストが、ヤスを案内して、リーゼの家に入る。リビングで、リーゼが緊張した面持ちで待っていた。 「ヤス。昨日の話だよね?」 「そうだ。何があった?」  リーゼがヤ…

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2020/05/01

【第四章 襲撃】第四話 観察

 夕花は、朝の6時に目が覚めた。二日目の夜も何もなかった・・・はずだ。今までとは違う柔らかいベッドで寝ていた。白く綺麗な天井。カーテンから差し込む優しい光。すべてが、しばらく感じられなかった物だ。そして、自分が”奴隷”として六条(文月)晴海に買われたのを思い出した。 (昨日も、何もされなかった)  2日連続だと自分に魅力がないのかと思えてしまう。  夕花は、ベッドからゆっくり起き出した。夕花は、控室にあるベッドに入る時に、晴海から呼び出された時の為に、下着を脱いで寝ていた。寝る時に脱いだ下着を見つめてから、…

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2020/04/30

【第四章 襲撃】第三話 考察

 晴海は、夕花が寝ているのを確認してから、部屋のリビングに戻った。  情報端末には、次々と能見に頼んだ仕事が完了した情報が表示されていく。 (流石だな。仕事が早い)  晴海はローテーブルに、キャビネットから取り出したウィスキーを取り出す。キャビネットを探すが、欲しいもう一つの酒が見つからない。  ホテルのルームサービスで、氷とアマレットを注文する。普段は、飲まないが今日くらいはいいだろうと思ったのだ。  すぐに、先程対応したコンシェルジュが氷とアマレットを持ってきた、ロックグラスと短めのバースプーンも持って…

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2020/04/30

【終章】最終話 始まり

「ママ!行ってきます」 「気をつけるのよ」 「うん。大丈夫。スズとナツミと一緒だから!」  真帆は学校でいじめられている。家では、”いじめられている”とは言っていない。両親を心配させたくなかったのだ。  家から出る時には、無理にでも元気に出ようと思っているのだ。  両親は、真帆の気遣いを嬉しく思いながら、実際に”いじめられている”状態が解っているのだ。放置しているわけではない。学校に相談したが、担任の杉本が出てきて”いじめなんてない”と言うだけだ。校長に話をしたが何も変わらなかった。家族はそれでも諦めなかっ…

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2020/04/30

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十五話 ディアスとヤスとルーサ

 ディアスは姿勢を正して、ヤスを正面から見る。 「ヤスさん。イチカちゃんが言った”お願い事”は忘れてください」 「子供を助けてくれってやつか?」 「はい」 「なぜだ?」 「皇国と帝国を敵に回す可能性があります」 「そうだな」  ヤスの問題はないという態度にディアスは焦りを覚えて、きつい口調になってしまう。 「ヤスさん!解っているのですか?」 「ディアス。解っている」 「いいえ、解っておられません。帝国はどこまでも貪欲に神殿を狙ってきます。皇国も同じです。リップルとかいう子爵家とは違います」 「そうだろうな」…

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2020/04/29

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十四話 子供と名前とイチカ

「旦那様。テンです。おはようございます。朝からもうしわけございません。ディアス様とイチカ様が面会を求めてお越しです」 「うーん。わかった。工房の執務室に通しておいてくれ、着替えたらすぐに行く」 「かしこまりました」 (昨晩の話かな?まぁ子供関係だろう) — 昨晩  子供が寝ているのを確認して、ヤスとリーゼは寮に入った。  子供たちは一つの部屋でまとまって寝ていた。ベッドを使うわけでもなく、床で、部屋の奥で肩を寄せ合いながら寝ていた。  それを見たリーゼが急に怒り出した。 「(ヤス!なんなの!)」…

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2020/04/29

【第四章 復讐】第六話 最後の1人

 警察の取調室。一人の男が警察官と対峙していた。ドアは閉められている。取り調べの前に、警察官がしっかりと宣誓している。取り調べの様子が録画される事や、記憶として残される事、弁護士を呼ぶのなら先に呼んで欲しいという事だ。  男は、杉本という名前だ。  元小学校の教師だ。元というのは、10日前に依願退職しているからだ。依願退職となっているが、スポンサー(親戚の山崎)からの圧力があり、辞めるしかなかった。本人は辞めるつもりはなかった。来年には、校長が見えていたのだ。校長になってから、無難に6年過ごして、スポンサー…

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2020/04/28

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十三話 ディアスと子供とリーゼと神紋

 神殿のリビングに戻ったヤスは、気持ちを落ち着かせるために、アルコール度数が強い蒸留酒を煽った。  一杯だけで止めたのは、この後、ディアスが訪問してくると思ったからだ。  喉を焼くほどの強いアルコールを感じながら、ヤスは子供たちの怯えた目を思い出していた。 「旦那様。お水です」 「ありがとう」  ファイブから水を受け取り、喉の疼きを抑える。一気に、水を流し込んで目を閉じて考える。  自分は、ただの”トラック運転手”だ。それ以上でも、それ以下でもない。異世界に来て、分不相応の力を手に入れた。力に振り回されるな…

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2020/04/28

【第四章 復讐】第五話 須賀谷真帆

 須賀谷真帆の毛髪は、ナツミが保管していた。正確には、ナツミが子供の時に使っていたブラシに毛髪が残っていた。お泊り会をしたときに、ナツミがマホに貸した物だ。そのまま使わないでしまわれていたのだ。ブラシからナツミとスズ以外の髪の毛を探して、白骨死体から見つかった物と突合した。結果、かなりの確率で白骨死体が須賀谷真帆だと断定された。  翌日、白骨死体が須賀谷真帆だと確定した。  記憶を無くしていた、那由太が仏舎利塔に現れたのだ。  那由太のDNAと白骨死体のDNAが調べられた。兄妹関係が確認されて、行方不明にな…

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2020/04/27

【第四章 復讐】第四話 立花祐介

 西沢円花が、東京に向けて高級外車を走らせ、日野香菜が別荘で悪態を付いている頃。立花祐介もマスコミから身を隠すように父親から命令されていた。立花祐介は、他の二人と違って細かい指示はされなかった。  蝿のように集ってくるマスコミに見つからないようにすればいいと考えたのだ。  立花祐介は、インテリジェンスビル(高度情報化建築)にある自身が契約した最上階の部屋に居る。  同級生で、同窓会の時に犠牲となった山崎の実家が持っているビルの最上階をタダ同然で借りているのだ。  タダ同然というのにも理由がある。毎月の賃料は…

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2020/04/27

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十二話 子供たち

「旦那様。旦那様」  ヤスは、久しぶり・・・、でも無いけど、ゆっくりと寝た。 「リビングに、水を用意しておいてくれ」  外からの呼びかけに布団の中から答える。 「かしこまりました」  メイドが、扉の前から消えるのを気配で察してから布団から出た。  服を着替えてから、リビングに向かう。 「旦那様。おはようございます。ファイブです」 「おはよう。マルス。デイトリッヒやサンドラの帰還はまだだよな?」 『はい。まだ、神殿の領域内にはおりません』 「わかった。子供たちへの対応を先に行ってしまおう。その前に、食事と報告…

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2020/04/26

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十一話 リーゼに頼み事

「マルス。それで、リーザは?」 『地下を出て、自宅に戻りつつあります』 「誰か付いているのか?」 『個体名ファーストが付いています』 「今から行けば、家で捕まえられるな」 『はい』  ヤスは、地下の執務室を出て、リーゼの家に向かった。 「旦那様。ファーストです。リーゼ様は、お部屋でお待ちです」 「ファーストか、ありがとう。マルスから連絡が入ったのか?」  ヤスはドアの前で待つファーストから、リーゼが待っていると告げられる。  考えられるのは、マルスだけなのだが、ファーストに確認した。 「はい。情報端末に連絡…

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2020/04/26

【第四章 復讐】第三話 日野香菜

 西沢円花が、東京に高級外車を走らせている頃、日野香菜は父親が用意した別荘に居た。  日野香菜も、西沢円花と同じ様に地元では有名だ。祖父が長年に渡って町議会で委員長を勤めた。地盤を継いだ父親は、町議会から県議会に、そして国政に打って出た小選挙区では相手候補が強すぎて負けてしまったが、比例で復活当選を果たしている。  その娘なのだ。現在、同じ派閥の議員の息子と婚約をしたばかりなのだ。  そこに、スキャンダルと言える、同窓会での事件が発生した。日野香菜も他の参加者と同じで参加する予定ではなかったのだが、なぜか参…

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2020/04/25

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二十話 ディアスの報告

「ヤス様。子供たちは・・・」  ディアスが言葉を詰まらせる。カスパルが、慌ててディアスの表情を見るが、泣いているわけではない。どう説明していいのか、自分の考えが正しいのか、正しかった時に神殿に影響が出てしまうのではないかといろいろ考えてしまっただけなのだ。 「大丈夫だ。ディアス。教えてくれ」 「はい。子供たちは、帝国を通って来たようです」 「ん?ディアス。ちょっとおかしくないか?」 「今、”帝国を通ってきた”と言ったよな?間違いじゃないよね?」 「はい。彼らの言葉を信じるのなら間違いなく、彼らは、ラインラン…

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2020/04/24

【プレゼン10分前】気がついてしまった罠

「どうする?」 「どうするも、提案書は出したのだろう?」 「提出した」  俺は、システム屋のプログラマをしている。  社長にはしっかりと説明して、俺の肩書はプログラマになっている。人が少ない零細企業なので、プログラマでも仕様書も書けば、客先に提案を持っていく、それだけではなくメンテナンスからハードウェアの修理まで何でもこなす。  今日は、以前から話が社長の所に話が来ていた、大規模システムのプレゼンを行う日だ。 「行くしか無いか」 「すまん。無駄な時間だな」  俺のボヤキに社長は謝罪の言葉を口にする。 「いい…

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