【第六章 縁由】第三話 記者
– とある記者 —
ひとまず、尾行には気が付かれていないようだ。
私は、房総州国でフリーのルポライターをやっている浅見だ。私の名前など忘れてくれて構いません。だが、私が正義の体現者である事は覚えておいて欲しい。私は、今、尾行を行っている。東京都の犯罪や越権行為を辞めさせるために確たる証拠が欲しいのだ。確かな情報を掴んだ。
奴隷市場が開催された場所に張り付いて居る。彼らが、ここで奴隷市場を開催して違法奴隷を売っているのだ。
奴隷市場では、違法奴隷を扱っていないと言われていますが、東京都の奴らなら、違法な奴隷でも合法だと言って出品しても不思議ではない。
そして、私は証拠を掴んだ。今、尾行しているトレーラーには東京都の不正が詰め込まれている詰め込まれている。間違いない。違法奴隷を大量に購入して、どこかに運んでいる。
私は優秀なルポライターだ
皆が諦めて帰っていくなか、辛抱強く待っていた。ホテルの地下に不釣り合いな大型のトラックが入っていった。普通の一般人なら、ホテルの備品でも搬入しているのだろうと考えるだろう。だが、私は違う。まずは、。ホテルに探りを入れたがホテルで大規模な改装が行われている様子はない。
私は、大型トラックの全面からカメラで撮影した。
本当は許される使い方ではないが”正義”のためなら許されるはずだ。大型トラックは、東京都の悪事を暴くためには絶対に追尾しなければならない。私は使命感に燃えていた。
失敗した!失敗した!失敗した!
悪事を働いている大型トラックは、夜中に移動を開始するはずだ。悪い奴らは、闇夜に紛れるのは決まりごとだ。聡明な私は、大型トラックが動き出したら、見失わないように、何かの本で読んだ通りに、間に1台の車を挟んで追尾すると決めた。私が正義のために、悪い奴らを追尾しているのだ、周りも協力してくれるに違いない。
そう思って、昼間に寝て夜中は監視するためになるべく起きていようと思った。
アイツらは、私の裏をかいた。夜ではなく、昼間に移動を開始した。
それも、私が寝ている時間帯だ。正義のフリールポライター浅見の裏をかくとは、悪事に手を染めた連中もやるではないか。
それに、あいつらは確実に悪いことをしている。具体的には、奴隷市場を使った奴隷のロンダリングだ。それと、東京都への入金を誤魔化すための手法なのだろう。私は騙されない。そして、私の勘があたっていた。地下に入って車の台数を確認した。大型トラックが動き始めたと思われる朝には、地下駐車場には79台の車が停まっていた。しかし、大型トラックが動き出すまで、外に出た車はいなかった。それなのに、私が数えたら77台の車しか残っていなかった。何か、からくりがあるはずだ。
逃げられたわけではない。聡明な私は、悪事を働く大型トラックを・・・。そう!泳がせた!他に仲間が居るはずだ。私の様に美しい者が尾行したらすぐに気がついてしまう。そのために、少し距離を開ける必要があった。そう。私は間違えていない。正義なのだ。
それに、マーキングしているから、たやすく見つける事は出来る。
東京都からでて大型トラックは、どこに向かった。
旧23区内ではないだろう。それなら、地下鉄を使ったほうが悪事は隠しやすい。地下鉄は、東京都が所有権を有していたはずだ。
武蔵州国が人手不足で悩んでいると、どこかの記事で読んだ。
そうだ!武蔵州国に違法奴隷を販売したのだ。大量に運ぶために、大型トラックが準備されたのだ!
さすが私だ。冴えている。すぐに、武蔵州国に向けて出発しよう。
聞き込みは苦手だ。
そんな事は、優秀ではない者が行う事だ。優秀な私は自分の勘を信じて車を走らせる。
ナビに反応があった、
谷田部パーキングエリアに停まっている!そうか、奥州州国に行くのだな。昔から、ロシア大国との繋がりある蝦夷州国とも繋がっている。日本国民を、違法奴隷にして蝦夷州国からロシア大国に売るつもりだな。
そのような悪事を、正義の心をもつフリールポライターの浅見が許すわけがない!絶対に、突き止めて成敗してやる。
谷田部パーキングなら、このまま圏央道に乗ればジャンクションで近くに行ける。
出来る!私なら間違いなく出来る!私が正義なのだから、間違いない。
やっぱり、私が正義なのだ。東京都が悪なのは間違っていない。
大型トラックは、私の予想した通り、圏央道を八王子方面に向けて走っている。
私の正義が勝ったのだ。大型トラックは、私の前をゆっくりとした速度で走っている。
やはり、私は間違っていない。
違法奴隷が大量に乗っている。だから、速度が出せない!間違いない!
圏央道では、大型トラックは制限速度にならないギリギリの遅さで走っている。
私もその速度で走ろうとすると、車から警告音がなってしまう。最低速度は、大型トラックの方が遅いのだ。
悪辣な方法で、正義の使者であるフリールポライターの浅見から逃げようとしているな。
そんな方法では、私の正義は崩せない。速度を落とすのが駄目なら停めてしまえばいい。
私は、数年前に出た漫画で読んだ、高速道路でうまく尾行をする方法として書かれていた内容を思い出した。
路肩で車を停めたりすると、警察や軍が出動してくるが、路線バスなら大樹オブだという記述だ。だから、私は大型トラックを追い越して距離が離れてしまったら、路線バスの通路に入って車を停める。大型バスが通り過ぎたら、尾行を開始する。
まさか、私がこんな高等テクニックを使って尾行している事実を、悪人は気が付かないはずだ。私が正義なのだから、私の邪魔はしないはずだ。
何度か、追い越しては、路面バスの停留所付近でやり過ごしてから尾行を再開する。
賢い私は、インターチェンジで大型トラックが降りてしまう危険性に気がついて、インターチェンジの近くの時には、警告音が出ても大型トラックの後ろに居るようにする。大型トラックは私の尾行には気がついていないはずだ。だから、多少近づいてもわからない。だから、インターチェンジが近づいた。だが、やはり、正義は私にある。
私が前に出て、路面バスのバス停を探していると、大型トラックが速度を上げてきた様子がナビに表示された。
私が予想した通りだ、大型トラックは焦っているのだ。間違いない。焦って、速度をあげている。違法奴隷に、何か問題があったに違いない。
私を追い越しても速度を緩めない。
大型トラックは私に気がついていない。それも当然だろう。車は正義のフリールポライターが乗る正義の色のグリーンなのだ。グルーンは、私のクリーンな心に合わせた色だ。青色と迷ったが、白ではない。グリーンが私の色なのだ。白では、悪の黒に対抗出来ない。グリーンなら黒に対抗できるのだ。
大型トラックを追い越して、狭山パーキングエリアで通過するのを待っている。最高速度でも、大型トラックよりも、30キロは早く走れるから、すぐに追い越してしまう。あまり後ろを走っていても駄目だ。なんとか言う車・・・F1の映画で、後ろを走っていると、乱気流でタイヤを痛めてしまうと教えられた。だから、天才な私は大型トラックの前に出て、大型トラックのタイヤにダメージを与えていたのだ!こんな高等テクニックを使えるのは、私が正義のフリールポライター浅見だからなのだ。
狭山パーキングエリアで通過を待っていると、大型トラックは狭山パーキングエリアに入ってきた。
そうか!私がタイヤにダメージを与えていたから休ませるのだな。やはり、私は間違っていない。そうか、タイヤにダメージがあると(たしかフラットスポットとか・・・)車が安定しないと言われていた。違法奴隷を大量に乗せているから、タイヤへのダメージは申告なのだろう。
大型トラックは、私から離れた位置に停まった。
運転手だろうか降りてきた。しっかりと見つめて何も見逃さない。大量の違法奴隷に水や食料を買いに行ったに違いない。私は、男性を尾行する事に決めた。男性は、20代半ばくらいだろう。オーダシートを貰って、サインして返す。手慣れた感じから、東京都の人間だとすぐに解ってしまう。私の目は誤魔化せない。
インフォメーションセンターに寄っている。真面目に入州税を払うようだ。
高速のパーキングエリアでは、まとめて入州税の支払いが可能だ。私も男性の後に続けて入州税を払う。
「佐藤様?」
「あっはい」
佐藤は、私正義のフリールポライターが世間で呼ばれている名字だ。私は、浅見だ。フリールポライターで事件を解決するのは、昔から、浅見と決まっている。だから、私は、浅見なのだ。
「佐藤様は、すでに入州税をお支払いです。手続きが完了しています。ご旅行でしたら、代理店が支払いを済ませていますので、代理店にご確認ください」
「え?」
誰か、私の正義を応援してくれているのだ!間違いない!
正義のフリールポライター浅見を影から支えてくれる1万の読者の正義が、処理を終わらせてくれた!
「ありがとうございます。確認してみます」
「はい」
確認など必要ない。
正義の使者であり、正義の体現者である。フリーのルポライター浅見を支えてくれている人だろう。ありがたい。
正直、入州税を払ってしまうと、明日から・・・。違う。正義を執行しているのだ、大丈夫だな。正義は我にあり!
大型トラックを運転していた男性は、1時間動かない。
そうか、違法奴隷の疲れを心配しているのだろう!
無意味な事だ。
ここに、正義の使者である。フリーのルポライター浅見が居る限り、悪は栄えないのだ!
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