異世界の物流は俺に任せろの記事一覧

2023/05/16

【第九章 ユーラット】第十七話 慣れない事をする

カイルとイチカとドッペルたちが揃ってオペレーションルームに入ってきた。 「旦那様」 「ありがとう。セバス」 ドアを開けて、カイルとイチカが中に入ったのを確認した。セバスは、全員が部屋に入ったのを確認してから深々と頭を下げた。 ドッペルは、ドッペルだと解る姿に戻って、オリビアの横に移動する。オリビアが、自分のドッペルから”痛み”の情報以外を貰い受ける。ドッペルから見ていた情報をオリビアが必要だと判断した。 ヒルダの蛮行を誰かに聞かれた時にしっかりと自分の言葉で説明を行うためだ。 そして、カイルとイチカにしっか…

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2023/05/03

【第九章 ユーラット】第十六話 観劇

姫様が、攫われた。 私が助けて・・・。 違う。姫様をお救いする為に、本国に救援を求める。 あれは、間違いなく姫様の作戦だ。 その証拠に、私の手元に情報が揃っている。 あとは、私が姫様から託された作戦を・・・。しっかりと、愚かな者たちにも解るように書いた書類を添えて、本国に送れば、”姫様の救出”という名目で・・・。帝国が神殿や王国に攻め入ることができる。 姫様の日記に隠された私に向けた指示にもしっかりと書かれている。 まずは、馬車を確保しなければ、馬車に隠されている帝国に伝わるアーティファクトを利用して、情報…

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2023/04/14

【第九章 ユーラット】第十五話 誤算

姫様が見つからない! 馬車の中を探しても、姫様の姿が見えない! 隠れている?違う。私が助けに来たのだ、隠れている意味はない。 そうか、私が助けに来たことを察知して、馬車から降りたのだな? 「オリビア姉ちゃん!」 誰だ! 二つの車輪が付いたアーティファクトに乗った子供が二人、馬車に近づいてきた。 「カイル!イチカ!」 姫様が、馬車の中から出てきた? 探しても姿が見えなかったのに? どこに居たの? アーティファクトに乗ってきた二人の一人が、私に突っ込んできた。 とっさに避けた。 私くらいになれば避けると同時に攻…

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2023/03/29

【第九章 ユーラット】第十四話 襲撃

姫様が、ユーラットの宿屋の女将に頭を下げに来る。 帝国の姫様が、宿屋の・・・。それも、寂れた村にある宿屋の女将なぞに謝罪などありえない。 アイシャがルカリダを連れてきた。そして、姫様が持っていた、連絡用の魔道具を動かすための鍵を・・・。 姫様を騙したわけではない。姫様が正しい道に戻られるための試練なのだ。 ルカリダからは、姫様の行程を事前に調べさせた。 普段の行動でも、姫様が私にメッセージを送っているのが解る。 姫様は、神殿が使っているアーティファクトを使わずに、帝国の馬車でこちらに来るようだ。 やはり、姫…

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2023/03/21

【第九章 ユーラット】第十三話 挨拶

各陣営の思惑が入り混じった混沌とした作戦の実行が明日に迫っていた。 踊らされている陣営(ヒルダ)が上手く誘導されているのか最終確認に向かった者が先ほど、神殿に帰ってきた。 「首尾は?」 「渡してきました。姫様。本当に、よろしいのですか?」 最後のピースを、ヒルダに渡す役目はルカリダに委ねられた。 オリビアが持っていて、盗ませる方法も考えたのだが、どう考えても不自然な上に、ヒルダが、最後のピースに気が付かないと、作戦が破綻してしまう。作戦の鍵になりえる物を先に渡してしまおうと考えたのだ。 作戦の鍵(・)を託さ…

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2023/03/08

【第九章 ユーラット】第十二話 騎士

私は、アデヴィト帝国-近衛兵団-オリビア・ド・ラ・ミナルディ・ラインラント・アデヴィット付きの騎士だ。 姫様が、何をお考えになっているのか解らなかった。 しかし、姫様からの私に対する指示だと思える話を聞いた。 「いいか、明日。姫様がこちらに来られる」 「ヒルダ。いい加減に」「うるさい!姫様が、帝国の皇女である姫様が、帝国を裏切ることはない。絶対にない!今までの姫様は、擬態だ。神殿を攻撃して、帝国の物にするための策略に違いない。そうだ。そうでなければならない。姫様は皇女だ。私たちの主なのだ。私と、私たちと、帝…

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2023/02/21

【第九章 ユーラット】第十一話 裏話

俺は、オリビアとアーデルベルトから、ユーラットを囮にした作戦の詳細を聞いている。作戦が決まったので、会議室で説明をしたいと呼び出された。 危険はあるが、二人だけではなく、皆が作戦の実行を支持しているようだ。 サンドラも途中から加わって、3人から説明を始めた。ドーリスが書類を持ってきて、補足を説明する為に残って、俺の説得に加わった。 作戦には、マルスとセバスも立案に携わっている。 ユーラットのギルドと神殿のギルドも協力を表明している。 この段階で、俺がストップしても止まらないだろう。 それに、いい加減に帝国か…

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2023/02/15

【第九章 ユーラット】第十話 呼び出し

報告会が行われてから、皆が動き始めた。 アデレードとオリビアとサンドラは、神殿の主であるヤスに許可を求めた。 最悪の状況をしっかりと説明をした。 正直な話として、神殿が受けるメリットは少ない。”ほぼない”と言ってもいいだろう。それでも、ヤスは作戦の実行を許可した。 リーゼの安全が確保されていることや、マルスからも作戦の実行中に神殿部分に被害はないだろうと推測している。 危険なのは、トーアヴェルデとウェッジヴァイクだろう。二つ目には、戦力を配備している。帝国に面している森にも戦力を配置している。 会議が終了し…

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2023/02/07

【第九章 ユーラット】第九話 最終確認

カイルは緊張した面持ちで、立ち上がった。 イチカも、カイルと一緒に立ち上がったが、カイルよりは余裕が見える。 二人は、報告書で大丈夫というサンドラからの提案を、皆の前でしっかりと発表をしたいと言い切った。質問にも答えると言っている。 まだ早いという意見もあったのだが、二人は神殿に住む子供たちのリーダーの役割を持っている。実際に、子供の数は、成人している者から神殿にアタックしている者と西側に住む者たちを除けば、最大の人数になっている。大人たちがなんとなく、種族でまとまっているのに対して、子供たちは種族でまとま…

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2023/01/24

【第九章 ユーラット】第八話

「サンドラ。それでは、オリビア殿下は、問題になりそうな行動はしていないのだな」 資料の読み込みの時間を経て、私がオリビア殿下と従者になっている二人の行動を説明する。 神殿への攻撃的な態度や外部への情報流出を含めて、問題がなかった事を報告する。 特に、アフネス様が心配して、ユーラットに居る人たちが心配していたのが、ユーラットに残る問題児たちを処罰した時に、オリビア殿下がどう動くか?リーゼやヤス様に危害を加えようとするのか?そもそも、問題児たちへの対応を考えているのか? 「はい。アフネス様」 結論は出ている。 …

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2023/01/19

【第九章 ユーラット】第七話 第一回 報告会

今日は、私が議長を務める会議が神殿の一室で行われます。ギルドが入っている場所です。ふぅ・・・。少しだけ、本当に少しだけ心配です。 もう、何度も行っているので、会議には不安はありません。初めての議題で、皆の感心が高いです。感心が高いために、参加者の数も多いのが少しだけ心配です。予定の調整を行って、準備された会議室の広さからも、注目度がわかります。 自分が提案した会議です。資料もしっかりと作り込みました。 新しく加わる議題が少々・・・。では、なく・・・。面倒です。 前半は、報告がメインです。ミスがなければ、問題…

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2023/01/06

【第九章 ユーラット】第六話 オリビアの日常

オリビアは、すぐに神殿に馴染んだわけではない。 ヤスが用意した家は、屋敷と呼べるような大きさだ。従者と一緒に住むことが考慮されている。可能性は低いが、騎士の3人が神殿に住む場合には、オリビアたちに責任を取らせる意味も含めて、一緒に住める大きさの家をヤスは用意した。 家の手配は、セカンドたちが行い。家具などの準備も行った。 オリビアは、ヤスから屋敷を与えられてから、メルリダとルカリダにも対等に接するように伝えるが、二人は固辞した。 神殿に居る者たちに相談をしたが、”別にいいのでは?”という緩い返事が来た事で、…

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2022/12/01

【第九章 ユーラット】第五話 オリビア

私は、オリビア・ド・ラ・ミナルディ・ラインラント・アデヴィット。 アデヴィット。この名を持つ者は、私を入れて6名だけだ。 皇帝であるお父様。第一皇子。第二皇子のお兄様。第二皇女のお姉様。第三皇子の弟。そして私だ。 母たちには、アデヴィットを名乗る権利を与えられていない。 私の母は、身分が低かった。 そのために、つけられた従者はメルリダとルカリダの二人だけだ。従者兼メイド兼護衛だ。私も、護衛術は嗜み程度には習得しているが、命が守れるレベルではない。 父である陛下が、御病気になってから、周りが騒がしくなった。 …

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2022/11/09

【第九章 ユーラット】第四話 審査と予想

結局、神殿にはアイシャがオリビアの護衛として付いてくることになった。 最初は、オリビアが護衛は必要ないと言ったが、全員から却下された。 馬車を守るのは、ヒルダとルルカだ。 神殿には、オリビアとメルリダとルカリダ。そして、護衛としてアイシャが行くことになった。荷物は、オリビアの物を中心に、少なくしてもらった。必要になったら、取りにくればいいと説き伏せた。 俺はFITで向う。オリビアがFITに乗りたいようなことを言ったが、メルリダとルカリダが反対した。オリビアの話を聞いたリーゼが、最初はモンキーで帰ると言ってい…

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2022/11/04

【第九章 ユーラット】第三話 想定できない

ユーラットの裏側に辿り着いた。 トラックから馬車を降ろして、必要な荷物が無いか最終確認をしてもらうことになった。 「ヤス様」 「どうした?」 オリビアが荷物の整理・・・。を、するわけがなく、俺に話しかけてきた。 そりゃぁそうだな。荷物の整理は、従者が行えばいい。 「ありがとうございます」 「ん?ここは、まだ神殿ではない。神殿の近くにあるユーラットだ」 「はい。解っています」 馬車の中の荷物は散らばってしまったり、護衛に雇った者たちが持ち逃げしてしまったり、かなりの物が紛失してしまっているようだ。 オリビアの…

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2022/10/29

【第九章 ユーラット】第二話 移動中

休憩の度に、リーゼが俺の側に来る。 「ヤス?」 「なんでもない」 リーゼの頭を撫でてやると嬉しそうな表情を浮かべる。 「ねぇヤス」 「ん?」 「モンキーは、後ろに人を乗せられる?」 「ん?」 「ほら、ヤスが使っていたCBR?あれは後ろに乗れるよね?」 前に、リーゼがコーナを上手く曲がれないというので、CBR250Rの後ろに乗せて走った。 「うーん。リーゼのモンキーなら大丈夫だ」 「わかった!」 「誰を乗せたい?ヘルメットは?」 「オリビアが乗ってみたいって言っていて、騎士?は反対していたけど、いいよね?ヘル…

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2022/09/14

【第九章 ユーラット】第一話 移動?

野営を無事に乗り越えて、移動を開始した。 移動は順調だ。 先頭は、馬車と途中で見つけた馬を積んだトラックを走らせる。 これは、ルーサの提案だ。 王国内を移動しているとしても、バスやモンキーやFITは珍しい。トラックなら、神殿が行っている物流支援で、王国中を駈け廻っているので、見たことがある者が多い。警戒はされるが、周知されているので、襲われたり、停められたり、物騒な目に合う可能性が減らせる。 リーゼとカイルとイチカは、モンキーで行ったり来たりを繰り返している。 何が楽しいのか・・・。 でも・・・。まぁ解らな…

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2022/09/08

【第十章 エルフの里】第四十話 野営

このまま走り続ければ、夜半には到着できそうなタイミングで、大将から連絡が入った。 「ルーサのおっちゃん。どうしたの?」 小僧が、座っていた座席から立ち上がって、運転席に顔を出してきた。このタイプのアーティファクトでは、内部での移動は難しくない。 「大将から、休んでから来るようにと指示が出た」 「休んで?でも・・・」 「大丈夫だ。後ろのアーティファクトに、食料や水や野営の道具が積んである」 「へぇ・・・。おいらたちの、モンキーを積んだアーティファクト?」 「そうだ。俺はよくわからないが、馬を安全に運ぶための馬…

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2022/08/28

【第十章 エルフの里】第三十九話 会話

神殿からヘルプを呼んだ。 今日は、野営を行うことになったのだが、大きな問題が発生しなかったことが気持ち悪い。 姫騎士辺りが、文句を言い出すかと思ったが、おとなしく指示に従っている。 「ヤス様」 オリビア姫が一人で、俺に近づいてきた。 「姫さんか?どうした?」 深刻な表情ではない。 誰も連れていないのは、何か聞きたい事があるのか?それとも、従者や騎士には聞かせたくない話か? 「少しだけお時間を頂けないでしょうか?」 時間? 話がしたいということか? 「あぁ」 「神殿について、教えていただきたいことがあります」…

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2022/08/16

【第十章 エルフの里】第三十八話 はぁ?

俺はルーサ。 本名は、いいだろう。皆からルーサと呼ばれている。俺も、この名前を気に入っている。神殿の村(トーアフートドルフ)のアシュリを守っている。 我らの大将は、規格外だ。 他の神殿がどうやって運営しているのか知らないが、大将ほどのことはしていないと思う。 まず、アーティファクトの量が尋常ではない。アーティファクトの複製が可能なのか、ドワーフたちに聞いたが、”無理だ”と言っていた。似たような物を作ろうと頑張ってみたが、完全に同じサイズのネジなど作る技術はないと言っている。 しかし、大将は簡単に用意してくる…

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2022/08/09

【第十章 エルフの里】第三十七話 受諾

リーゼに状況を説明していると、向こうにも動きが有ったようだ。 姫様と、従者の一人が、馬車から出てきて、こちらに向かってきた。 姫騎士は、完全には納得していないようだが、姫様に従うと決めたようだ。神殿に居る間は、姫騎士ヒルダには注意が必要だな。姫様と従者は、住民との問題は大丈夫そうだが、ヒルダは軋轢を産みそうだ。姫様が抑えてくれるといいのだけど、あの手の忠誠心多寡で、思慮がない人間は、沸点が低いと相場が決まっている。自分の正義を信じて疑わない者ほど厄介な存在だ。多種多様な種族と考え方が融合している神殿には、一…

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2022/07/31

【第十章 エルフの里】第三十六話 説明

帝国の姫という最大級の厄介ごとを、抱え込むことを決めた。俺の判断が間違っている可能性もあるが・・・。 夢見が悪いとか、いろいろ理由を考えたが・・・。 リーゼを助けた俺が、身分が厄介だという理由で、オリビアを切り捨てるのは、何か違うと感じてしまった。 それに、話せば、聞いていた帝国の印象が変わってくる。 やはり、国家単位で人を考えない方がいい。 トップの人格が、国の総意ではない。そんな簡単な事を、俺は忘れていた。帝国だからと切り捨てるのは簡単だ。 しかし、帝国というフィルターを取り除いて考えれば、護衛を3人と…

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2022/07/24

【第十章 エルフの里】第三十五話 状況

私は、オリビア・ド・ラ・ミナルディ・ラインラント・アデヴィット。アデヴィット帝国の第三皇女です。いや、”だった”が正確です。 お兄様やお姉様が、玉座を争い始めた。 もともと、私は玉座には興味がない。 権力闘争が顕著になったのは、第二皇子のお兄様が王国に攻め込んで、大敗を喫したことが原因です。当初は、王国が守っていたと思われていたが、どうやら王国と帝国の間に存在した神殿が攻略されたことに起因しているようです。お兄様たちなら情報を掴んでいるでしょう。しかし、私には重要な情報は回ってきません。 お兄様は、愚かにも…

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2022/07/14

【第十章 エルフの里】第三十四話 条件

姫が取り出した魔道具を俺に見せて、説明した。 マルスが使う結界の範囲が狭い物だと判断した。 「大丈夫だ」 「ありがとうございます」 『マルス。結界の外側に結界を展開できるか?』 『是』 マルスの結界が展開した。 姫が持っていた魔道具も無事に起動をしたようだ。マルスの結界は、色は自在だが、姫の結界は少しだけ色が入っている。曇りガラスのように見える。張られているのが解ってしまうのだ。 強度もそれほど強そうには見えない。エルフ族の攻撃は防げそうにない。これで使い物になるのか? 『マルス。声は通過できるか?』 『是…

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2022/06/28

【第十章 エルフの里】第三十三話 亡命?

目の前に居るピンク頭は、”亡命”と言ったか? ”神殿への亡命”と言ったよな? リーゼを見ると、完全に聞かなかったことにしたようで、フェンリルを撫でている。話に加わろうとしない。実際に、リーゼに”何か”できるとは・・・。思わないが、話を聞くくらいはしてもいいだろう。 フェンリルを撫でながら、少しずつ距離を取っている。うまいやり方だ。 どこで、そんな姑息なテクニックを覚えたのか、じっくりと聞き出したい所だが、今は、目の前で発生している事柄を・・・。 「はぁ・・・。亡命ですか?理由を伺っても?」 「え?」 あっこ…

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