異世界の物流は俺に任せろの記事一覧

2022/09/14

【第九章 ユーラット】第一話 移動?

野営を無事に乗り越えて、移動を開始した。 移動は順調だ。 先頭は、馬車と途中で見つけた馬を積んだトラックを走らせる。 これは、ルーサの提案だ。 王国内を移動しているとしても、バスやモンキーやFITは珍しい。トラックなら、神殿が行っている物流支援で、王国中を駈け廻っているので、見たことがある者が多い。警戒はされるが、周知されているので、襲われたり、停められたり、物騒な目に合う可能性が減らせる。 リーゼとカイルとイチカは、モンキーで行ったり来たりを繰り返している。 何が楽しいのか・・・。 でも・・・。まぁ解らな…

続きを読む

2022/09/08

【第十章 エルフの里】第四十話 野営

このまま走り続ければ、夜半には到着できそうなタイミングで、大将から連絡が入った。 「ルーサのおっちゃん。どうしたの?」 小僧が、座っていた座席から立ち上がって、運転席に顔を出してきた。このタイプのアーティファクトでは、内部での移動は難しくない。 「大将から、休んでから来るようにと指示が出た」 「休んで?でも・・・」 「大丈夫だ。後ろのアーティファクトに、食料や水や野営の道具が積んである」 「へぇ・・・。おいらたちの、モンキーを積んだアーティファクト?」 「そうだ。俺はよくわからないが、馬を安全に運ぶための馬…

続きを読む

2022/08/28

【第十章 エルフの里】第三十九話 会話

神殿からヘルプを呼んだ。 今日は、野営を行うことになったのだが、大きな問題が発生しなかったことが気持ち悪い。 姫騎士辺りが、文句を言い出すかと思ったが、おとなしく指示に従っている。 「ヤス様」 オリビア姫が一人で、俺に近づいてきた。 「姫さんか?どうした?」 深刻な表情ではない。 誰も連れていないのは、何か聞きたい事があるのか?それとも、従者や騎士には聞かせたくない話か? 「少しだけお時間を頂けないでしょうか?」 時間? 話がしたいということか? 「あぁ」 「神殿について、教えていただきたいことがあります」…

続きを読む
広告

2022/08/16

【第十章 エルフの里】第三十八話 はぁ?

俺はルーサ。 本名は、いいだろう。皆からルーサと呼ばれている。俺も、この名前を気に入っている。神殿の村(トーアフートドルフ)のアシュリを守っている。 我らの大将は、規格外だ。 他の神殿がどうやって運営しているのか知らないが、大将ほどのことはしていないと思う。 まず、アーティファクトの量が尋常ではない。アーティファクトの複製が可能なのか、ドワーフたちに聞いたが、”無理だ”と言っていた。似たような物を作ろうと頑張ってみたが、完全に同じサイズのネジなど作る技術はないと言っている。 しかし、大将は簡単に用意してくる…

続きを読む

2022/08/09

【第十章 エルフの里】第三十七話 受諾

リーゼに状況を説明していると、向こうにも動きが有ったようだ。 姫様と、従者の一人が、馬車から出てきて、こちらに向かってきた。 姫騎士は、完全には納得していないようだが、姫様に従うと決めたようだ。神殿に居る間は、姫騎士ヒルダには注意が必要だな。姫様と従者は、住民との問題は大丈夫そうだが、ヒルダは軋轢を産みそうだ。姫様が抑えてくれるといいのだけど、あの手の忠誠心多寡で、思慮がない人間は、沸点が低いと相場が決まっている。自分の正義を信じて疑わない者ほど厄介な存在だ。多種多様な種族と考え方が融合している神殿には、一…

続きを読む

2022/07/31

【第十章 エルフの里】第三十六話 説明

帝国の姫という最大級の厄介ごとを、抱え込むことを決めた。俺の判断が間違っている可能性もあるが・・・。 夢見が悪いとか、いろいろ理由を考えたが・・・。 リーゼを助けた俺が、身分が厄介だという理由で、オリビアを切り捨てるのは、何か違うと感じてしまった。 それに、話せば、聞いていた帝国の印象が変わってくる。 やはり、国家単位で人を考えない方がいい。 トップの人格が、国の総意ではない。そんな簡単な事を、俺は忘れていた。帝国だからと切り捨てるのは簡単だ。 しかし、帝国というフィルターを取り除いて考えれば、護衛を3人と…

続きを読む
広告

2022/07/24

【第十章 エルフの里】第三十五話 状況

私は、オリビア・ド・ラ・ミナルディ・ラインラント・アデヴィット。アデヴィット帝国の第三皇女です。いや、”だった”が正確です。 お兄様やお姉様が、玉座を争い始めた。 もともと、私は玉座には興味がない。 権力闘争が顕著になったのは、第二皇子のお兄様が王国に攻め込んで、大敗を喫したことが原因です。当初は、王国が守っていたと思われていたが、どうやら王国と帝国の間に存在した神殿が攻略されたことに起因しているようです。お兄様たちなら情報を掴んでいるでしょう。しかし、私には重要な情報は回ってきません。 お兄様は、愚かにも…

続きを読む

2022/07/14

【第十章 エルフの里】第三十四話 条件

姫が取り出した魔道具を俺に見せて、説明した。 マルスが使う結界の範囲が狭い物だと判断した。 「大丈夫だ」 「ありがとうございます」 『マルス。結界の外側に結界を展開できるか?』 『是』 マルスの結界が展開した。 姫が持っていた魔道具も無事に起動をしたようだ。マルスの結界は、色は自在だが、姫の結界は少しだけ色が入っている。曇りガラスのように見える。張られているのが解ってしまうのだ。 強度もそれほど強そうには見えない。エルフ族の攻撃は防げそうにない。これで使い物になるのか? 『マルス。声は通過できるか?』 『是…

続きを読む

2022/06/28

【第十章 エルフの里】第三十三話 亡命?

目の前に居るピンク頭は、”亡命”と言ったか? ”神殿への亡命”と言ったよな? リーゼを見ると、完全に聞かなかったことにしたようで、フェンリルを撫でている。話に加わろうとしない。実際に、リーゼに”何か”できるとは・・・。思わないが、話を聞くくらいはしてもいいだろう。 フェンリルを撫でながら、少しずつ距離を取っている。うまいやり方だ。 どこで、そんな姑息なテクニックを覚えたのか、じっくりと聞き出したい所だが、今は、目の前で発生している事柄を・・・。 「はぁ・・・。亡命ですか?理由を伺っても?」 「え?」 あっこ…

続きを読む
広告

2022/06/14

【第十章 エルフの里】第三十二話 不敬

馬車の中で動きがある。 気にしてもしょうがない。帰るか・・・。 「ヤス?」 馬車に背を向けているけど、動きは把握できる。 俺も、この世界に馴染んできたのか?単純に、マルスが優秀だから、俺がその恩恵を享受しているだけかもしれないけど、知らない人が見たら俺の力だ。リーゼには、神殿に帰って落ち着いたら、話をしたほうがいいような気がしている。 しばらくの間、一緒に行動をしているが、いい女だ。わがままとかではなく、自分を持っている。守るべき事をわきまえている。 「ヤス?」 「あぁすまん」 馬車から人が出てきたようだが…

続きを読む

2022/06/06

【第十章 エルフの里】第三十一話 不穏

リーゼが、赤い点に向かってアクセルを踏み込む。 運転も、大分うまくなっている。多少荒い所もあるが、助手席に座っていられる状況にはなっている。 マルスがナビをしながら、危険な場所を避けるような指示を出す。的確とは言えないが、走行が不可能な状況になるようなダメージは受けていない。FITのダメージは、あとで確認すればいい。結界があるので安全だが、外部からの振動は内部にも伝わってしまう。機械的な損傷が発生するのはしょうがない。 視認はできないが、馬車の状況が見えてきた。 『馬車と思われる物が襲われています』 視認は…

続きを読む

2022/05/28

【第十章 エルフの里】第三十話 珍道中

エルフの里を出るときに、大樹に向かってリーゼと一緒に頭を下げる。 コアであるマリアにではない。大樹の側で眠るエルフたち・・・。リーゼの母親に向かってだ。 リーゼが、一筋の涙を初めて見せた。黙って、リーゼを抱き寄せる。それだけで、リーゼは身体を少しだけ強張らせたが、俺の背中に腕を回して、抱きついて、泣き出してしまった。 リーゼは、声を出さずに泣き続けた。溜まっていた物が流れ出たのだろう。 「ゴメン」 身体を離すと、リーゼは俺に謝ってきた。何に対して、謝っているのか・・・。聞かない。聞いてはダメなことくらい解る…

続きを読む
広告

2022/05/04

【第十章 エルフの里】第二十九話 エルフ

エルフの里まで戻ってきた。 歓迎されている雰囲気は皆無だが、俺とリーゼが行った事は、ラフネスから皆に伝えられているのだろう。嫉妬や嫌悪の視線は消えていないが、前の様に侮蔑を含んだ視線は少なくなっている。 ”助けてやった”から、感謝しろとは言わないが・・・。本当に、この種族を延命させたのは正しかったのか疑問に感じてしまう。 そして、コアからある事実を教えられた。当然の事だが、考えてもいなかった。このエルフの里には、ハイエルフを含めて、300名程度が住んでいる。外に作られた村には、里に入ることができないエルフた…

続きを読む

2022/04/28

【第十章 エルフの里】第二十八話 行商

ヤスは、ラフネスから受けた依頼を考えていた。 神殿から、エルフの里までの距離が問題になってくる。ヤスがディアナで移動するには、無理がある。集積所を作る場所も問題になってくる。 しかし、ヤスはラフネスの依頼を前向きに考えていた。物流ですべてが解決するとは思っていないが、神殿から派遣する行商人なら、エルフの里に喰い込んでいた商人の様に、エルフ族を騙して至宝を掠め取ろうとしたり、結界の中に無理矢理入ったり、愚かな行為は控えるだろう。 ”マリア(コア)”と絡んでしまったから、見捨てる選択肢はないのだが、面倒なことに…

続きを読む

2022/04/05

【第十章 エルフの里】第二十七話 決着?

この神殿。詰んでいないか? いや、まだ大丈夫だ。魔物への対処ができればいい。それに、大物は多くない。対処が可能な魔物だけなら、問題ではない。 どうやら、俺がこのコアを吸収するのはできるようだが、そうなると、エルフたちをどうするのか考えなければならない。神殿に依存している者たちを、俺の神殿に住まわせるだけで終わるのならいいのだけど、問題まで一緒につれていくことになりそうだ。 それでなくても、俺の神殿は”多種族”が住んでいる。 エルフのように他種族を見下す者たちは来て欲しくない。他種族との接触を避けるために、エ…

続きを読む
広告

2022/03/24

【第十章 エルフの里】第二十六話 善後策

いい方法が思い浮かばない。 俺は、所詮はトラックの運転手だ。小難しい事を考えるのは、専門にやっている奴が行うべきだと考えてきた。 しかし、このエルフの里の奴らは・・・・。 最低限の事さえもできていない。説明をしても理解ができるとは思えない。最大の問題は、魔物の排除が行える力があるのかさえも怪しい。 「なぁ」 「なに?」 リーゼが、俺の問いかけに返事をするが、俺が聞きたかったのは、リーゼではない。神殿のコアに善後策を考える上での、条件やできる事を聞きたかった。俺が考えた事がどこまでできるのか、確認が必要になっ…

続きを読む

2022/03/05

【第十章 エルフの里】第二十五話 鍵

いつまでも、神樹を見上げていても何も解決しない。 解っているが、見上げる首が痛くなっても見て居たい気持ちにさせる。 神秘的な風景は、TVや本で見てきたが、一線を画す美しさがある。言葉で表すとチープになってしまうが、他に表現できる言葉が見つからない。 「ヤス。ヤス」 「なんだ?」 「すごいね」 「そうだな」 リーゼも同じ気持ちのようだ。 どんなに言葉を飾っても、チープに思えてしまう。 『(・・・)神殿の主様』 ん?リーゼのはずがない。 マルスも、俺を”神殿の主”とは呼ばない。 「リーゼ。何か、聞こえたか?」 …

続きを読む

2022/02/21

【第十章 エルフの里】第二十四話 神樹

 ほぉ・・・。  マルスが守る神殿とは違った美しさがある。  馬車を降りてから、20分ほど森の中を歩いて到着したのは、エルフたちの集落のはずだ。 「ここは?」 「集落の入口です」 「ヤス様。リーゼ様。里に向かう前に・・・」  ラフネスが、俺とリーゼの前に出て頭を下げる。  リーゼの方を向いている。 「そうだな。リーゼ。墓を見に行こう。里の中には作られていないのだろう?」  長老が申し訳なさそうな表情をするが、俺としては、素直に墓参りができそうな事に驚いた。何か、対価を要求してくる可能性があると考えていた。そ…

続きを読む
広告

2022/02/12

【第十章 エルフの里】第二十三話 秘密

 里に向かって、”結界の森”を進む。  エルフたちは、この森を”結界の森”と呼んでいると教えられた。  結界は、なんとなくだが簡単に突破できそうな雰囲気がある。 「なぁ」  俺の前に座っているのは長老だ。  長老なら、俺の疑問に答えてくれるだろう。 「なんでしょうか?」 「結界を越える条件はなんだ?」  俺たちは、結界をすんなりと越えられた。  ラフネスも長老も問題はなかった。  この結界は、”ほぼ”俺がよく知っている結界と同じ物だ。 「え?」 「俺たちを襲った奴らは、結界に入る前に襲ってきた。これは、結界…

続きを読む

2022/02/06

【第十章 エルフの里】第二十二話 ルーサ

「旦那!」  おい。おい。 「ルーサ?お前が来たのか?」 「おぉ。セバス殿から連絡を貰って、誰が来るのか揉めたけど、俺が勝ち取った」 「ん?」 「”大将が困っている”と聞いたぞ?」 「そうだな。困っているが、ルーサが来るほどの事ではないぞ?」 「別に、誰が来てもよかったのなら、俺でもよかったのだろう?それに、大型のアーティファクトが必須だと聞いたぞ?」  たしかに、最初の段階では必要がなかったが、襲撃者が増えてしまった。今では、バスでも狭い。トラックの荷台に詰め込む形がベストだな。  ルーサが乗ってきたアー…

続きを読む

2022/01/27

【第十章 エルフの里】第二十一話 誰?

 逃げ出すのか?  男は、俺に土なのか?石なのか?わからない物を投げつけてきた。結界に阻まれているが、気分のいい物ではない。  石?に、気を取られたすきに、背を向けて逃げ出す。逃げられないのに、ご苦労なことだ。  聞こえるかどうかの声量で、マルスに指示を出す。 「(ファイアーウォール)」  逃げる男の前方に炎の壁が出現する。横に逃げようとしても、同じように、炎の壁ができる。  戦闘を終えた、ガルーダが俺の肩に降りて来る。 『マルス。戦闘不能にした者を確保してくれ』 『了』  戦闘不能になっていた、46人の足…

続きを読む
広告

2022/01/21

【第十章 エルフの里】第二十話 襲撃

 ラフネスは、ナビに驚いている。  今までの者たちも、移動速度にも驚くが、一番に衝撃を受けるのは、ナビの地図情報だ。  この世界では、地図は一般的ではない。国家機密と言ってもいいほどだ。しかし、神殿から提供している”アーティファクト(トラック)”には簡易的な物になってしまっているが、ナビが付けている。  知識があれば、取り外しもできるだろうが、簡易キットでもしっかりと固定している。外すと、主要な部品が離れるようにしている。盗難対策だ。アーティファクトないの道具だから、アーティファクトがなければ動かないと思っ…

続きを読む

2022/01/12

【第十章 エルフの里】第十九話 大興奮

 話がまとまったので、リーゼを呼びに行く、隣の部屋なので、結界を解除して、声をかければ、すぐに部屋に入ってきた。  そこまではよかった。  栗鼠(カーバンクル)と、猫(キャスパリーグ)と、鷲(ガルーダ)を見て大興奮。  可愛い以外には言葉が離せなくなってしまったのかと思うくらいに大興奮だ。 「リーゼ?リーゼさん?」 「なに、ヤス。今、忙しいのだけど!」 「眷属に会ったことがあるよね?」 「・・・。うーん。栗鼠(カーバンクル)には会っていない!ヤス!こんなかわいい子を隠していたの?」 「隠していない。会わせた…

続きを読む

2021/12/31

【第十章 エルフの里】第十八話 召喚

「ヤス様。主様?」  ラフネスが、跪いている。  不思議に思ったのが、ラフネスの立ち位置だが、問題にはならないようだ。  まずは、立たせたい。それで、ソファーに座らせた方がいいだろう。 「大丈夫だ」 「すぐに移動を開始しますか?」  移動と言われても、リーゼには準備が必要だろう。エルフの里だと言っているのだから、森の中を歩くことになるのだろう。俺も、靴は変えた方がいいかもしれないし、準備が必要になる。  それに、森で襲われたら、いくら結界があっても、絶対に安全だとは思えない。森は、やはりエルフの主戦場だ。 …

続きを読む
広告

2021/12/14

【第十章 エルフの里】第十七話 ラフネス

 遮音の結界が発動した。  長老は、何かを探している。目線が、ボイスレコーダーで止まる。もしかしたら、遮音の力で、ボイスレコーダーが無効になっていると期待しているのか?原理が解らなければ、無効になると考えても不思議ではない。  遮音の結界だけではなく、物理攻撃を弾く結界も発動しているようだ。外部からの攻撃を警戒しているのか?気が付かないフリをしておいた方がよさそうだ。何か、進展があったのだろう。  俺が考えるのもおかしな話だけど、もう少し腹芸とか学んだ方がいいと思うぞ?商人に騙されまくって、終わってしまうぞ…

続きを読む

2021/11/23

【第十章 エルフの里】第十六話 ネタバラシ

 長老との話はマルスを通して、リーゼも聞いていた。  リーゼが自分の責任だと言い始めてしまったためだ。リーゼに責任は一切ない。元々が、リーゼの願いが始まりだったが、今回の件は間違いなく、エルフ側の問題だ。  アーティファクト(Fit)に手を出そうとしなければ、この自体にはなっていない。  それを含めて解らせるために、リーゼには聞かせていた。  宿に戻ると、リーゼが抱きついてきた。 「リーゼ?」 「ごめん。ごめん。ごめん」  泣き顔で、俺に抱きついてきたリーゼは、謝るだけだ。  何に対して、謝っているのか?リ…

続きを読む

2021/11/17

【第十章 エルフの里】第十五話 償い

 カップが割れる音が、二人の間に決定的な違いが存在していることを物語っている。  ヤスは、エルフ族の長老が”綺麗事”だけを言っているようにしか思えない。”皆”のため。”繁栄”のため。そんな”こと”のために、長老衆やそれに近い者以外のエルフが犠牲になっている。  犠牲になっている者たちも、騙されているとは思わないまでも、何かがおかしいと感じるから、自分たちでなんとかしようとする。そのために、外部の者に攻撃的な態度を取る者たちが増えていく。そして、一部の者たちと手を組んで、愚かな行為に出る。  自分たちが”優位…

続きを読む
広告

2021/10/24

【第十章 エルフの里】第十四話 長老

 紅茶を飲み込んでから、ヤスは長老を睨みつける。  諦めたのか、ヤスの前まで歩いてくる。  ヤスは、また指を鳴らす。  今度は、ヤスの対面に椅子が出現する。 「座れよ」  ヤスが自分のカップに注いだポットから、長老の前に置いたカップに紅茶を注ぐ。  ハイエルフだけあって、魔法の素養は人族に劣らない自信があった。  しかし、ヤスが使っている技(魔法)が見抜けない。他の長老との会話も不可能で、一人にされてしまった。  ヤスは、懐からボイスレコーダーを取り出す。  これも、長老には何をするものかわからない。 「警…

続きを読む

2021/09/12

【第十章 エルフの里】第十三話 立ち回り

「弟?」  ヤスに近づいてきたエルフ族は、目が虚ろになっている。  それだけで、ヤスが無視するには十分な理由だが、ヤスは”弟”という言葉に反応した。 「そうだ!俺の大切な弟を、貴様が攫った」 「は?」 「弟は、お前のような人族が持つには相応しくない物を回収しようとしただけだ。何も間違っていない。貴様が悪い!」 「あ!?」  ヤスのどこから出ているのかわからないような、威圧が含まれる声に男は気後れした。  しかし、自分が威圧で負けているのが気に食わないのだろう。さきほど以上の声でヤスに文句をぶつける。 「そう…

続きを読む

2021/08/31

【第十章 エルフの里】第十二話 交渉?

 ヤスの目の前には、FITに攻撃を仕掛けた愚か者たちが、気絶した状態で放置されている。 『マルス!』 『はい』 『愚か者は、ここに寝ている連中か?』 『否』  ヤスの顔からは、”やっぱり”という表情が読み取れる。  実際に、FIT に攻撃してきた者たちは、先にFIT を盗もうとした者たちを助け出そうとした。何も出来ないと悟って、攻撃を加えたのだ。 『そうか、ひとまず、商人に話を・・・。面倒だな』 『マスター。個体名ラフネスに連絡して、引き取らせることを提案します』 『それが良さそうだな。マルス。ラフネスの居…

続きを読む
広告
1 2 3 4 5 6 10