帰還した召喚勇者の憂鬱の記事一覧

2022/06/30

【第二章 帰還勇者の事情】第四十話

リチャードとロレッタは、一つの建物に向かって歩いている。建物と言っているが、実際には複合施設だ。いくつかの建物を厳重な塀で覆われた場所だ。 「ロレッタ」 「うん。大丈夫」 二人が今から行おうとしているのは、単純だ。 二人の故郷を破壊して、教会を破壊して、二人の親、兄や姉、弟や妹を殺した奴らに復讐する。殺すように命令した奴らを・・・。 異世界に召喚されて、ユウキに”絶対に地球に戻る”その意思を聞いた時から・・・。これからの・・・復讐の為に、スキルを求めた。 『異世界にいる間は、復讐を忘れよう』 サトシの言葉だ…

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2022/06/15

【第二章 帰還勇者の事情】第三十九話

ユウキとリチャードは、マイとロレッタと合流してから、移動を開始した。 「リチャード」 作戦(復讐)の実行が近づいてきているのを感じて、リチャードから殺気が漏れ出す。 周りに人は居ないが、誰かに気が付かれては、これから何かがあると思われてしまう。 ユウキは、リチャードの名前を呼びながら、肩を軽く叩く。 ユウキにも、リチャードの気持ちは理解ができる。ユウキ自身も、目的(復讐相手)を前にして、普段と同じで居られるとは考えていない。そのために、準備期間だけではなく、ターゲットの順番を考えているのだ。 「すまん」 リ…

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2022/05/31

【第二章 帰還勇者の事情】第三十八話 情報

ユウキたちは、襲撃を受けた事で、当局に拘束されている。正確には、拘束されているのは、マイとロレッタだ。ユウキとリチャードは、拘束された二人をまっている状況だ。 マイとロレッタは、”被害者”として当局の取り調べを受けている。マイが、日本からの観光客。ロレッタが現地の友達という設定になっている。 取り調べでは、マイとロレッタの身元調査が行われた。怪しい所が一切見当たらない偽造された身元だ。 ユウキとリチャードは、撮影した動画は、まだ公開していない。マイとロレッタの取り調べが終わって、もう一つの餌に食いついた後だ…

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2022/04/30

【第二章 帰還勇者の事情】第三十七話 襲撃

ユウキとリチャードは、建物の入口で椅子に座っている。 建物の中では、マイとロレッタが準備を行っている。 これから、4人で次の作戦を実行する。骨子を考えたのは、ユウキだがいやがらせの部分で日本に居るメンバーも手伝ってくれている。 そして・・・。 ユウキが持っているスマホに着信がある。ユウキは、着信した番号を見て、”にやり”と子供に似合わない表情をする。リチャードは、この表情を見るのが好きだ。ユウキが活き活きとしているのがわかる。リチャードだけではなく、皆がユウキを頼りにして、ユウキを守ろうとして、ユウキに助け…

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2022/04/10

【第二章 帰還勇者の事情】第三十六話 葬送

ユウキたちは、アメリカに渡っていた。 皆で歩いているのは、よくある街並みだ。 街並みを歩く子どもたちは、人種もバラバラで統一しているのは、”子供”だと思える年齢だということだ。ユウキたちを見つめる視線は存在しない。 今回の作戦で最後に訪れる予定になっていた場所だ。 先頭を黙って歩いているのは、リチャードとロレッタだ。 ユウキだけは、リチャードとロレッタと一緒に来ているので、リチャードの態度は理解ができる。 「リチャード?」 たまらず、ディドが声をかけるが、ユウキがディドだけではなく、皆を手で制する。皆もユウ…

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2022/03/25

【第二章 帰還勇者の事情】第三十五話 サトシ

俺は、サトシ。 地球から召喚された勇者の一人だ。そして、レナートの次期国王だ。と、なっている。だよな? 地球に居る時から一緒に居る。マイが今でも一緒に居てくれるのは嬉しい。 しかし、しかし、しかし、しかしだ! ユウキやヒナやレイヤは、日本に帰った。俺と一緒にレナートに残ってくれると思っていた。 ディド。テレーザ。ヴァスコ。ニコレッタ。ロミル。イェデア。レオン。フェリア。パウリ。イターラ。オリビア。ヴェル。たちは、レナートに残ってくれた。俺を支えてくれる。 地球に戻った者たちも、やるべきことがあって地球に戻っ…

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2022/03/07

【第二章 帰還勇者の事情】第三十四話 作戦

ミケールがユウキとの会談を終わらせて、部屋を出た。 当初の予定通りと言っても、ユウキは契約が成立する可能性は、五分五分だと考えていた。実際に、ユウキが提案した内容は、荒唐無稽だと言われてしまうような内容だ。 「ユウキ!」 レイヤが部屋に駆け込んできた。 「レイヤ。落ち着きなさいよ」 カップを片付けながら、ヒナはあきれた表情をレイヤに向ける。親しい人にしか向けない表情だ。 「ヒナ。そういうけど・・・。作戦の可否が決まるのだぞ?」 「はぁ・・・。レイヤ。貴方まで、サトシと同レベルになってしまったの?」 「あ?」…

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2022/02/21

【第二章 帰還勇者の事情】第三十三話 契約

 エアリスの周りを覆っていたスキルが解かれる。  そこには、自分の手足を触って、自分の顔を、自分の手で触って、耳の形を確認して、触った手を自分の目で見つめる。大きな目が印象的な少女が立っていた。  自分の目で見て、自分の手で確認して、立っていることを確認して、自分を見つめている視線に気が付いた少女は、足を進めようとした。  しかし、何年も自分の足で立ち上がっていなかった少女は、立っていることが奇跡のような状態だ。歩くのは難しい。  しかし、少女は自分を見つめて、目を見開いて、流れ出る涙を拭わずに、自分だけを…

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2022/02/13

【第二章 帰還勇者の事情】第三十二話 エアリス

 ミケールは痛みに耐えながら、自分をまっすぐに見つめる少女に微笑みを向ける。  凝縮した痛みを受けているミケールを少女は流れ出る涙を拭わないで見続ける。 『ユウキ様。ありがとうございます』  少女は、まっすぐにミケールを見ながら、斜め後ろにいるユウキに感謝を向ける。 「いえ」  ユウキは短く言葉を発するだけだ。  治療の前段階は、終焉に近づいている。  ミケールは声が出せない。肩で息をしている。支えられなければ立っていられない。 『ミケール』  少女の呟きが室内に木霊する。  それだけ、室内には音が存在しな…

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2022/02/07

【第二章 帰還勇者の事情】第三十一話 絶叫

 優しく3回ノックされたドアを、ユウキが開けた。  そこには、車いすに乗った少女とそれを押しているミケールが居た。他には、誰も連れていない。  ユウキたちの拠点の中は安全だと言っても、今までは護衛の者が付いていたが、二人だけで、ユウキたちが待っている部屋を訪れた。 「決まりましたか?」  ユウキは、直球で少女に問いかけた。 『はい。残念ですが、ミケールを説得できませんでした』 『お嬢様』 「わかりました。準備はできています。地下で施術を行います」  ユウキたちは、立ち上がって地下に繋がる階段がある部屋に向け…

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2022/01/29

【第二章 帰還勇者の事情】第三十話 準備

 ユウキの前に、ミケールが座っている。 「本当に?」 『はい。お願いします』  ユウキは、頭を抱えてしまった。  治療の方法をいくつかオプション付きで説明をした。翌日に、ミケールに連れられた少女がユウキを訪ねてきた。  そして、一番、非人道的だが、確実に治せる方法を選択したとユウキたちに告げたのだ。ここまでなら、ユウキたちも想定していた。準備に動き出そうとしたときに、一緒に来ていたミケールが、ユウキの前に進み出た。そして、治療を試すのを、自分でやって欲しい、少女の許可は取っていると、言い出した。ユウキたちは…

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2022/01/22

【第二章 帰還勇者の事情】第二十九話 少女

 私は、今”日本”に来ている。  事故で全身に火傷を負った。その時に、片耳と片目を失った。喉も焼かれて、言葉は出せるが、雑音が混じるような汚い声だ。  そして、火傷は、私の心まで焼いた。  パパは、私を治そうと必死に医師を求めた。  しかし、私も見た医師の反応は同じだ。パパの権力を恐れて、”難しい”以外の言葉を聞いた事がなかった。  左手は、癒着して開かない。右手は辛うじて動かすことができるが、火傷の後が疼いて痛い。  右足は膝から先が無い。左足は、腿から先に感触がない。存在してはいるが、触られても解らない…

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2022/01/13

【第二章 帰還勇者の事情】第二十八話 治療?

 スパイにギアスをかけてから、2日が経過した。 「なぁユウキ。日本の・・・。いや、この場合は、地球にある”その手”の組織は、情報を軽く扱っているのか?」 「どうだろう?」  情報はユウキの予想を上回る速度で集まっている。  上がってくる情報を、ユウキと一緒に精査しているのは、リチャードとロレッタだ。  精査された情報だけが、ユウキたちに届けられるが、それでも驚くほどの情報が手元に蓄積される。 「なぁ」 「そうだな。ミケールに渡して・・・」 「ユウキ。”丸投げ”だろう?俺たちじゃ対処できない」 「そうだな。丸…

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2021/12/31

【第二章 帰還勇者の事情】第二十七話 ギアス

 ユウキたちは、安全になってから、お嬢様の治療をしたほうがよいと考えていた。  ミケールも賛同した。問題の解決には、2週間程度は必要だとミケールから告げられた。  ユウキたちは、”2週間”という時間は、襲撃者たちの対応ではなく、反乱分子の始末に必要な時間だと考えていた。  しかし・・・。 「ユウキ!お客さんが来ているぞ」 「そうだな。いつもと同じ対処で頼む。質も落ちてきているから、捕えるだけでいい。後は、ミケールに渡して終わりにしよう」  最初の襲撃があってから、10日が過ぎているが、当初は夜だけの襲撃だっ…

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2021/12/15

【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜

 少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。  そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』  屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。  ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』  ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。  会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…

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2021/12/01

【第二章 帰還勇者の事情】第二十五話 証拠

 少女が貴賓室に入って、護衛が扉の前を、メイドが内側を調べている為に、ヴェルとパウリはユウキに念話を繋げた。 『二人には、悪かったな』 『いいですよ。マイにも頼まれましたし、未来の国王の側近に恩を売るチャンスですからね』 『ヴェル。俺は、宰相になるつもりはない。異世界と地球の秘境をめぐる旅がしたいと思っている』 『ユウキもヴェルも、その話はマイがなんとかすると言っていたでしょ。それよりも、ユウキ。護衛の一人で間違いはなさそうよ』 『わかった。パウリ。助かる』  わざわざ手が足りているのにも関わらず、ユウキが…

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2021/11/23

【第二章 帰還勇者の事情】第二十四話 魔法使い

 ユウキがニヤリを笑ってから、少女と大人たちに告げる。 「挨拶の代わりに・・・」  少女は、握られた手を見ると、少しだけ不思議な暖かさを感じた。 『聞こえますか?』  少女の頭の中に、目の前に居る男性・・・。ユウキの声が響いた。  びっくりした表情で、ユウキを見つめる。 『あっ手を離さないでください。すぐに終わります』  少女は、身体から倦怠感が抜けるのが解る。濁っていた視界もはっきりとしてくる。そして、同時にモヤがかかっていた思考がはっきりとしてくるのが解る。そして、目の前に居るユウキを見つめてしまった。…

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2021/10/26

【第二章 帰還勇者の事情】第二十三話 客人

 ユウキたちは、客人をもてなす準備を始める。客人が、ユウキたちの拠点に来て、ポーションを渡すだけには出来ない事情ができてしまった。  部屋の準備はできているのだが、それ以外の準備ができていない。滞在は、長くはならないと仮定しているのだが、客人の都合で伸びることも考えなければならない。 「今川さん。それで、客人は?」 「明日に、成田で、翌日には来る」 「わかりました。それでどうします?上級を利用しますか?」 「うーん。なぁユウキ。中級と上級の違いは?」 「違いですか?中級は、欠損は治りません、上級は欠損が治り…

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2021/09/14

【第二章 帰還勇者の事情】第二十二話 客人の事情

「ユウキ。明日の夕方に、富士山静岡空港に到着する」  今川が、ユウキが使っている部屋に入ってきて、予定を告げる。 「え?客人はフランスからですよね?」  富士山静岡空港に、フランスからの直行便はない(はず)。  どこかを経由する位なら、新幹線を使ったり、東名高速を使ったり、飛行機以外の交通手段を使ったほうが楽だ。フランスから来るのなら、愛知か成田か羽田だ。 「プライベートジェットだ。世の中、大抵のことは、金でなんとかなる」  今川の話を聞いて、”キョトン”とした表情をしてから、納得した顔をする。 「そうです…

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2021/09/02

【第二章 帰還勇者の事情】第二十一話 反響

 初めてのオークションが終わった。商品の引き渡しも終わった。 「ユウキ。時間を貰えるか?」 「大丈夫です」  森田が、拠点にあるユウキの部屋にやってきて、ユウキに資料を渡した。 「これは?」 「ユウキが望んでいた情報だ」 「え?もう?」 「・・・。あぁ」 「愚かですね」 「俺もそう思う。でも、暫くは無視するのだろう?」 「もちろん、焦らすだけ、焦らします。俺たちの唯一と言ってもよかった弱点・・・。母も父も、こちらに来てくれています。弟や妹に関しても、安全の確保が出来ています」 「そっちは、安心してくれ、先生…

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2021/08/21

【第二章 帰還勇者の事情】第二十話 オークション

 一部で有名になった、異世界から帰ってきた子どもたちは、日本に集結していると思われていたが—”帰ってきた29名だったが”—14名が消えるように居なくなってしまった。  記者会見をしている会場で、質問を受けている最中に、服と灰を残して消えた。ネットでの配信だけではなく、大手マスコミの前で実際に発生した。  ユウキたちが、森田を通してマスコミ各社に、記者会見を行うと通知してきたのがきっかけだった。  (別段、親しい間柄でもなかったが)”袖にされた”と考えていた大手マスコミにも仁義の意味で…

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2021/07/31

【第二章 帰還勇者の事情】第十九話 準備と仕込み

 ユウキは、自分で立てた計画通りに、一部では名前を知られる程度には有名になった。  会見(見世物)の動画も拡散されている。ユウキだけが、(本当の)顔と名前を出している。  拠点でユウキがやっているのは、所謂、連絡係だ。  連絡係をしながら、ユウキは自分の計画に必要な事柄を調査して、準備を進めている。  差し当たっての問題(法務関係)がクリアできたので、レナートに戻っていた。 「ユウキ!」 「悪いな。こっちは大丈夫なのか?」  ユウキが手を差し出すと、男女は嬉しそうな表情をして、ユウキの手を順番に握った。 「…

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2021/07/05

【第二章 帰還勇者の事情】第十八話 狩人

「ユウキ。俺たちも行ってくる」 「解った」 「2ヶ月で戻ってくる。ユウキ。頼む」「お願い」  ユウキの手を握りながら、頭を下げるのは、リチャードとロレッタだ。 「わかった。お前たちが帰ってくるまで、しっかりと守る」 「ありがとう」「ユウキ!感謝!」  リチャードとロレッタが、”転移”を発動させる。目的地は、アメリカのリチャードが育った。今は、誰も居ない教会だ。 「行ったか?」 「あぁ残っているのは、お前たちだけど、どうする?」 「ヒナは、残して行こうと思っていたけど・・・」「イヤ!」 「レイヤ。愛されている…

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2021/06/22

【第二章 帰還勇者の事情】第十七話 磨いた牙

「ユウキくん。本当に、この条件でいいのか?」  佐川は、ユウキから渡された書類を見ながら、質問を重ねていた。最終確認という意味を込めて、ユウキに言葉をぶつける。 「構いませんよ。近くの方が、いろいろと便利でしょ。その代わり」 「わかっている。各国の研究者との窓口は引き受けよう」  佐川が欲しいと思っていた、ポーションの素材をユウキが渡す条件を入れている。  ユウキが佐川に頼んだのは、各国の研究所から上がってくる研究結果の取りまとめだけではなく、日本国内のうるさい連中への対応を任せた。特にうるさいのは、記者会…

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2021/06/18

【第二章 帰還勇者の事情】第十六話 朝倉比奈

 私は、ヒナ。日本にいた時には、”朝倉(アサクラ)比奈(ヒナ)”と名乗っていた。  レイヤやユウキやサトシやマイや弥生と一緒に異世界(フィファーナ)に召喚された。フィファーナでの話は、悲しいことも多かったが、楽しいことも多かった。日本に居た時と違って、自分たちでできることが増えたのが一番の理由だ。  リーダは、サトシだが、実質的なリーダがユウキなのは皆がわかっていることだ。  ユウキには、日本に戻ってやりたいことが有った。私とレイヤにもやりたいこと・・・。知りたいことがある。  ユウキは、自分のことを棚上げ…

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