帰還した召喚勇者の憂鬱の記事一覧

2022/01/22

【第二章 帰還勇者の事情】第二十九話 少女

 私は、今”日本”に来ている。  事故で全身に火傷を負った。その時に、片耳と片目を失った。喉も焼かれて、言葉は出せるが、雑音が混じるような汚い声だ。  そして、火傷は、私の心まで焼いた。  パパは、私を治そうと必死に医師を求めた。  しかし、私も見た医師の反応は同じだ。パパの権力を恐れて、”難しい”以外の言葉を聞いた事がなかった。  左手は、癒着して開かない。右手は辛うじて動かすことができるが、火傷の後が疼いて痛い。  右足は膝から先が無い。左足は、腿から先に感触がない。存在してはいるが、触られても解らない…

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2022/01/13

【第二章 帰還勇者の事情】第二十八話 治療?

 スパイにギアスをかけてから、2日が経過した。 「なぁユウキ。日本の・・・。いや、この場合は、地球にある”その手”の組織は、情報を軽く扱っているのか?」 「どうだろう?」  情報はユウキの予想を上回る速度で集まっている。  上がってくる情報を、ユウキと一緒に精査しているのは、リチャードとロレッタだ。  精査された情報だけが、ユウキたちに届けられるが、それでも驚くほどの情報が手元に蓄積される。 「なぁ」 「そうだな。ミケールに渡して・・・」 「ユウキ。”丸投げ”だろう?俺たちじゃ対処できない」 「そうだな。丸…

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2021/12/31

【第二章 帰還勇者の事情】第二十七話 ギアス

 ユウキたちは、安全になってから、お嬢様の治療をしたほうがよいと考えていた。  ミケールも賛同した。問題の解決には、2週間程度は必要だとミケールから告げられた。  ユウキたちは、”2週間”という時間は、襲撃者たちの対応ではなく、反乱分子の始末に必要な時間だと考えていた。  しかし・・・。 「ユウキ!お客さんが来ているぞ」 「そうだな。いつもと同じ対処で頼む。質も落ちてきているから、捕えるだけでいい。後は、ミケールに渡して終わりにしよう」  最初の襲撃があってから、10日が過ぎているが、当初は夜だけの襲撃だっ…

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2021/12/15

【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜

 少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。  そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』  屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。  ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』  ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。  会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…

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2021/12/01

【第二章 帰還勇者の事情】第二十五話 証拠

 少女が貴賓室に入って、護衛が扉の前を、メイドが内側を調べている為に、ヴェルとパウリはユウキに念話を繋げた。 『二人には、悪かったな』 『いいですよ。マイにも頼まれましたし、未来の国王の側近に恩を売るチャンスですからね』 『ヴェル。俺は、宰相になるつもりはない。異世界と地球の秘境をめぐる旅がしたいと思っている』 『ユウキもヴェルも、その話はマイがなんとかすると言っていたでしょ。それよりも、ユウキ。護衛の一人で間違いはなさそうよ』 『わかった。パウリ。助かる』  わざわざ手が足りているのにも関わらず、ユウキが…

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2021/11/23

【第二章 帰還勇者の事情】第二十四話 魔法使い

 ユウキがニヤリを笑ってから、少女と大人たちに告げる。 「挨拶の代わりに・・・」  少女は、握られた手を見ると、少しだけ不思議な暖かさを感じた。 『聞こえますか?』  少女の頭の中に、目の前に居る男性・・・。ユウキの声が響いた。  びっくりした表情で、ユウキを見つめる。 『あっ手を離さないでください。すぐに終わります』  少女は、身体から倦怠感が抜けるのが解る。濁っていた視界もはっきりとしてくる。そして、同時にモヤがかかっていた思考がはっきりとしてくるのが解る。そして、目の前に居るユウキを見つめてしまった。…

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2021/10/26

【第二章 帰還勇者の事情】第二十三話 客人

 ユウキたちは、客人をもてなす準備を始める。客人が、ユウキたちの拠点に来て、ポーションを渡すだけには出来ない事情ができてしまった。  部屋の準備はできているのだが、それ以外の準備ができていない。滞在は、長くはならないと仮定しているのだが、客人の都合で伸びることも考えなければならない。 「今川さん。それで、客人は?」 「明日に、成田で、翌日には来る」 「わかりました。それでどうします?上級を利用しますか?」 「うーん。なぁユウキ。中級と上級の違いは?」 「違いですか?中級は、欠損は治りません、上級は欠損が治り…

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2021/09/14

【第二章 帰還勇者の事情】第二十二話 客人の事情

「ユウキ。明日の夕方に、富士山静岡空港に到着する」  今川が、ユウキが使っている部屋に入ってきて、予定を告げる。 「え?客人はフランスからですよね?」  富士山静岡空港に、フランスからの直行便はない(はず)。  どこかを経由する位なら、新幹線を使ったり、東名高速を使ったり、飛行機以外の交通手段を使ったほうが楽だ。フランスから来るのなら、愛知か成田か羽田だ。 「プライベートジェットだ。世の中、大抵のことは、金でなんとかなる」  今川の話を聞いて、”キョトン”とした表情をしてから、納得した顔をする。 「そうです…

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2021/09/02

【第二章 帰還勇者の事情】第二十一話 反響

 初めてのオークションが終わった。商品の引き渡しも終わった。 「ユウキ。時間を貰えるか?」 「大丈夫です」  森田が、拠点にあるユウキの部屋にやってきて、ユウキに資料を渡した。 「これは?」 「ユウキが望んでいた情報だ」 「え?もう?」 「・・・。あぁ」 「愚かですね」 「俺もそう思う。でも、暫くは無視するのだろう?」 「もちろん、焦らすだけ、焦らします。俺たちの唯一と言ってもよかった弱点・・・。母も父も、こちらに来てくれています。弟や妹に関しても、安全の確保が出来ています」 「そっちは、安心してくれ、先生…

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2021/08/21

【第二章 帰還勇者の事情】第二十話 オークション

 一部で有名になった、異世界から帰ってきた子どもたちは、日本に集結していると思われていたが—”帰ってきた29名だったが”—14名が消えるように居なくなってしまった。  記者会見をしている会場で、質問を受けている最中に、服と灰を残して消えた。ネットでの配信だけではなく、大手マスコミの前で実際に発生した。  ユウキたちが、森田を通してマスコミ各社に、記者会見を行うと通知してきたのがきっかけだった。  (別段、親しい間柄でもなかったが)”袖にされた”と考えていた大手マスコミにも仁義の意味で…

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2021/07/31

【第二章 帰還勇者の事情】第十九話 準備と仕込み

 ユウキは、自分で立てた計画通りに、一部では名前を知られる程度には有名になった。  会見(見世物)の動画も拡散されている。ユウキだけが、(本当の)顔と名前を出している。  拠点でユウキがやっているのは、所謂、連絡係だ。  連絡係をしながら、ユウキは自分の計画に必要な事柄を調査して、準備を進めている。  差し当たっての問題(法務関係)がクリアできたので、レナートに戻っていた。 「ユウキ!」 「悪いな。こっちは大丈夫なのか?」  ユウキが手を差し出すと、男女は嬉しそうな表情をして、ユウキの手を順番に握った。 「…

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2021/07/05

【第二章 帰還勇者の事情】第十八話 狩人

「ユウキ。俺たちも行ってくる」 「解った」 「2ヶ月で戻ってくる。ユウキ。頼む」「お願い」  ユウキの手を握りながら、頭を下げるのは、リチャードとロレッタだ。 「わかった。お前たちが帰ってくるまで、しっかりと守る」 「ありがとう」「ユウキ!感謝!」  リチャードとロレッタが、”転移”を発動させる。目的地は、アメリカのリチャードが育った。今は、誰も居ない教会だ。 「行ったか?」 「あぁ残っているのは、お前たちだけど、どうする?」 「ヒナは、残して行こうと思っていたけど・・・」「イヤ!」 「レイヤ。愛されている…

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2021/06/22

【第二章 帰還勇者の事情】第十七話 磨いた牙

「ユウキくん。本当に、この条件でいいのか?」  佐川は、ユウキから渡された書類を見ながら、質問を重ねていた。最終確認という意味を込めて、ユウキに言葉をぶつける。 「構いませんよ。近くの方が、いろいろと便利でしょ。その代わり」 「わかっている。各国の研究者との窓口は引き受けよう」  佐川が欲しいと思っていた、ポーションの素材をユウキが渡す条件を入れている。  ユウキが佐川に頼んだのは、各国の研究所から上がってくる研究結果の取りまとめだけではなく、日本国内のうるさい連中への対応を任せた。特にうるさいのは、記者会…

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2021/06/18

【第二章 帰還勇者の事情】第十六話 朝倉比奈

 私は、ヒナ。日本にいた時には、”朝倉(アサクラ)比奈(ヒナ)”と名乗っていた。  レイヤやユウキやサトシやマイや弥生と一緒に異世界(フィファーナ)に召喚された。フィファーナでの話は、悲しいことも多かったが、楽しいことも多かった。日本に居た時と違って、自分たちでできることが増えたのが一番の理由だ。  リーダは、サトシだが、実質的なリーダがユウキなのは皆がわかっていることだ。  ユウキには、日本に戻ってやりたいことが有った。私とレイヤにもやりたいこと・・・。知りたいことがある。  ユウキは、自分のことを棚上げ…

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2021/06/03

【第二章 帰還勇者の事情】第十五話 拠点

 見世物は、休憩の後から加速していった。  大手が居なくなってくだらない協定や序列や忖度がなくなった。外国人の記者だけではなく、ネット系の記者たちも、ユウキたちに疑問をぶつけた。  スキルの質問は、ユウキが受けて実際に持っているスキルの中で、安全だと思えるスキルは、実演を行うことにした。  外国人の記者からは、暗殺や毒物に関するスキルに質問が集中したが、”出来ない”と返答する場面が多かった。それを信じるかどうかは、記者や読者に任せるしか無い。しかし”公”には、”出来ない”ことにしておく必要がある。  早く移…

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2021/06/02

【第二章 帰還勇者の事情】第十四話 マスコミ

「ユウキ!」  アロンソが、嬉しそうな顔でユウキに駆け寄ってきた。  休憩時間が、休憩時間になっていないのは、問題ではないようだ。 「ん?」 「ポーションの提供は、ミスター佐川から説明があった本数を考えてくれるのか?」 「説明?」 「初級が4本と中級が4本だ」 「佐川さんから、検証にはその本数が必要だと言われた」 「そうか・・・。ユウキ。俺たちは、違うな。研究所が、初級ポーションに500ドル。中級ポーションに1万ドルの支払いをする用意がある」 「え?」 「それに、検証の結果や研究結果は、全ての研究所で公開す…

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2021/06/01

【第二章 帰還勇者の事情】第十三話 見世物

 ポーションの確認を終えて、記者会見をしていた会場に戻ってきたら、記者の数が半分になっていた。ポーションの確認から外された最前列に陣取っていた記者たちが、帰ってしまっていた。機材を抱えていた者も半数が帰っているので、会場で待っている者の数も減ってしまっていた。  司会が状況を説明しているが、それでも詰め寄る者は存在していた。  ”弾かれた”記者たちだ。残っていた者たちには、佐川から動画が送られることで落ち着いた。佐川の研究資料が付いているので、記事にするのには十分な資料になる。  森田と14番にも群がった。…

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2021/05/29

【第二章 帰還勇者の事情】第十二話 記者会見.3

 視線が集中する記者は、番号札を投げ捨てて、出口に向かう。  司会が、冷静に指摘する。 「○○新聞の飯島さま。先程の質問が終わっておりませんが?」 「ふざけるな!俺は、こんな茶番に付き合うのは、馬鹿らしいと思ったから、帰る!」 「そうですか、○○新聞は、お帰りになるということですね。ご自身がされた質問に対する真偽を確認しないで、一方的にこちらを・・・。生還者たちを悪者にした状態で退場されるのですね」  飯島と名乗った男は、一度だけ振り向いたが、そのまま会場から出ていった。 「質疑が途中になりましたが、何方か…

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2021/05/27

【第二章 帰還勇者の事情】第十一話 記者会見.2

「それでは、記者会見を始めます。始めに、生還者の情報を・・・」  司会が、ユウキたちの情報を話し始める。  記者たちには、事前に情報として渡されているが、名前を呼ばれるときに立ち上がるだけでも、情報としては十分なのだろう。  10分ていどかかって、ユウキたちの諸元が発表された。  記者たちが黙って聞いているのには理由があった。まずは、ユウキたちが未成年だったことが大きな問題だ。ユウキたちは、記者会見で語られた情報に関しては公にしても問題はないと伝えている。しかし、姿かたちに関しては明言されていない。  そこ…

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2021/05/26

【第二章 帰還勇者の事情】第十話 記者会見.1

 ユウキは、記者会見が始まるギリギリまで、佐川に捕まっていた。  佐川からの質問攻めに少しだけ・・・。本当に、少しだけ面倒に思い始めていた。 「ユウキ君。時間だ」  今川が、ユウキに声をかける。  ユウキは、少しだけ”ほっと”した表情をする。 「わかりました。佐川さん。それでは・・・」 「今川君!記者会見の時間は、もう少しだけ後だと思うが?」  ユウキは、信じられないことを言い出す佐川の顔を二度見してしまった。  確かに時計を見ると、1時間くらいの余裕はある。それに、記者会見には佐川も出席する予定だと教えら…

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2021/05/19

【第二章 帰還勇者の事情】第九話 邂逅

「ユウキ!」 「あっ今川さん。どうしました?」 「どうしたじゃない。お前こそ・・・」  息を切らしながら今川は、ユウキに駆け寄ってきた。 「あぁ皆さん。疲れが溜まっているのか、寝てしまいましたよ。部屋も寒かったから、冬眠でもしたのでしょうかね?」 「・・・。お前・・・。まぁいい。本当に悪かった。上にも文句を言ったけど、その上の上から無理矢理押し込まれた」 「大丈夫ですよ。ポーションを公にしたら、湧いて出てくるのは想定していました。台所に居る黒い虫と同レベルですよね」 「そうか・・・。次は、大丈夫だ。本当に、…

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2021/05/17

【第二章 帰還勇者の事情】第八話 前哨戦

「ユウキ。会見の場所はわかるのか?」 「サトシ・・・。マイ。任せた」 「はい。はい。サトシ。場所は、この前、皆で見に行ったでしょ?」 「え?どこ?」 「はぁ・・・」  皆が笑い出すが、サトシは本当にわからないという表情をしている。  マイやユウキも悪い。記者会見を行う場所を、見に行ったわけではなく、近くの公園から記者会見を行う建物を見ただけだ。 「ユウキ。今日は、公共機関を使うのだろう?バラバラに行くのか?」 「いや、俺とサトシ以外は、偽装した状態で、纏まっていこう」  都内の(オリビアが熱烈に希望した)秋…

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2021/05/14

【第二章 帰還勇者の事情】第七話 雑誌

 今川が手掛ける記事が掲載された雑誌が店頭に並んだ。  スクープ記事なのは間違いではない。しかし、世間の意見は2:8に分かれた。好意的な意見としては、子どもたちが集団催眠に有っているのだという考えだ。しかし、それでも、アメリカやドイツで行方不明になった子供が日本で発見された説明にはなっていない。  大手マスコミも雑誌が発売された当日に、ユウキたちに接触を試みたが、どこに居るのか調べたが、所在は不明な状態になっていた。 「おい。ユウキ!」 『あっ今川さん。なんでしょうか?見世物(記者会見)の日取りにはまだある…

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2021/05/13

【第二章 帰還勇者の事情】第六話 取り巻く状況

 ユウキたちが、地球に帰還してから、数日が経過していた。  レナートは、特に王城は火が消えたような状態になっていた。 「お父様?」 「セシリアか・・・」 「どうされたのですか?」 「騒がしかった日々が懐かしくて・・・」 「そうですね。でも、ユウキ様は約束通りに・・・」 「そうだが・・・。そうだ、セシリア。ユウキからの”お願い”はどうするのだ?」 「受けます。ユウキ様だけではなく、サトシ様やマイ様のご両親ですよ?」 「そうだな。儂も、ユウキたちの”チキュウ”での両親に会って話をしたい」 「はい」  セシリアは…

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2021/05/12

【第二章 帰還勇者の事情】第五話 記者

 俺は、週刊誌のしがない記者だ。政治や経済に関するゴシップを得意としていた。  少し前に、話題になった集団失踪事件が発生した施設の院長から連絡をもらってから、俺の日常は変わった。 「今川さん?」  俺の前に座っているガキ・・・。いや、新城裕貴(ユウキ)から発する覇気というのか、存在感が・・・。大物政治家や経済界のトップと会った時と同じ・・・。いや、それ以上に圧力を感じる。 「おっおぉ。ユウキでいいのだよな?」 「はい。新城は、捨てた名字ですし、記事では”ユウキ”でお願いします」 「わかった」 「それで?」 …

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