【第三章 復讐の前に】第十六話 侵入者

 

伊豆の拠点にフォレストキャットとシルバーフェンリルを連れて帰った。
状況を説明したら、ヒナとレイヤが呆れて居た。サトシのオルトロスを捕まえようとしていたのには、笑い始めてしまった。オルトロスを連れて帰ったら、すぐに話題になって、マスコミで家の周りが埋め尽くされるだろう。世界各国からインタビューという名前の強制撮影が始まるのが解り切っている。
幻影のスキルを使えば、解らないようにするのは可能だが、かけ続けるのは面倒だ。道具に付与しようにも、わざわざオルトロスを眷属にする意味はない。サトシも解っていると思ったのだが、俺の認識が甘かったようだ。

馬込先生にお願いして、口が堅い獣医を紹介してもらった。
獣医師の所まで移動しようとしたが、動物の大きさと希望内容予防接種を聞いて、拠点まで来てくれることになった。

予防接種の実施と、健康診断を頼んだ。
シルバーフェンリルとフォレストキャットという”魔物”だという事は、伏せている。
状態異常に対して、高い適性を持ち、殆どの状態異常が無効になる。注射を打たれても、大丈夫だと思うが、一応スキルで耐性をあげてから、お願いをした。証明書を発行してもらった。シルバーフェンリルもフォレストキャットも”MIX雑種”で登録を行う。

予防接種の証明書を貰って届け出をだしてから家に戻った。
結界に接触した形跡があった。時間を確認して、隠している監視カメラを確認した。

どうやら、家に人が住み始めたと思った、放送局の集金員が見回りに来たようだ。他には、ポスティングを行う人のようだ。

この手の侵入者への対応も考えなければならない。本命が釣れなくなるのは困る。しかし、邪魔な存在だ。

まず俺が考えなければならない事がある。シルバーフェンリルとフォレストキャットの名前だ。
シルバーフェンリルは、アインス/ツヴァイ/ドライにしよう。覚えやすいのが一番だ。フォレストキャットの名前は、決めている。アイツが、院に住み着いた猫を呼ぶときに使っていた名前だ。ウミとソラ。

アインスは、シルバーフェンリルのリーダーだ。ウミとソラは、シルバーフェンリルの群れには入らない。基本は、家の中で過ごしている。

アインスたちは、犬用の餌を喜んで食べる。ウミとソラは、最初はそれほど高くない猫用の餌を食べていたが、徐々に贅沢になり、試供品で貰って来た高い餌を食べてからは、それしか食べなくなった。あとは、お決まりのおやつを好んで食べる。
お前たちは、犬でも猫でもない。魔物だろうと言っても、そんな時だけ可愛く鳴くだけだ。

気にしないようにしている。

アインスたちが庭で過ごすようになって、気が付いたことがある。
まず、椋鳥が多かったが、今では見かけない。元々、空き家で、庭と海側も空地になっていた。荒れ放題だったために、虫など椋鳥に餌になる物が多かった。綺麗に片づけた事で、餌が少なくなり、アインスたちが常に居るために、椋鳥が居なくなった。夕方になると現れていた蝙蝠も見なくなった。

厄介な訪問者は、椋鳥や蝙蝠だけではない。
もともと、空き家と空地で、人の目が少なく、道路から離れている。海岸は、お世辞にも綺麗ではないが、人が居ない。
そんな場所に夜中に訪れる者たちが居る。具体的に言ってもしょうがないけど、椋鳥や蝙蝠の方がいい。アイツら、私有地に入っている意識がない。行為の後始末をしない者が殆どだ。煙草の吸い殻を捨てていく位なら可愛い物だ。コンビニで買ってきた物を飲み食いしてやることだけやってゴミをおいて帰りやがる。

区役所に相談した。ゴミの収集はしてくれると言ってくれた。
一度、金を使って掃除を行った。
その後は、私有地を明確に示すようにしてから、大型犬注意の看板を設置した。
実際に、夜中に入り込もうとした奴らは、アインスたちに襲わせた。捕縛させて、スキルで記憶をいじって、150号の途中に放置した。車からは、ガソリンは抜いておいた。現金も抜いて、スマホは水没させた。そのあとも、同じように忍び込んだ者たちを、始末したら噂が立ったのか、侵入者は確実に減った。
侵入者が少なくなってきたタイミングで、結界を強化した。バイクをおいている場所以外は、結界を強めにしている。

問題は、ポスティングを行う侵入者だ。
しょうがないので、ポストを結界の外側に設置することにした。それでも、家の玄関に挟もうとする者たちが多い。確かに、有益な情報が含まれている地域の情報誌もあるが、ポストに入れてくれればいい。玄関まで入って来られると、ウミとソラがスキルを発動して攻撃をしてしまう。

学校では、目立っていない。
授業は何も問題になっていない。吉田先生からは、情報が入ってくるが、あまり使い道がない情報ばかりだ。今川さんに渡して終わりにしている。それでも、相手側に与えるダメージが大きいだろうと聞いている。

スマホが鳴る。
ウミもソラも、スマホがなりだす前に反応するのは、凄い。

次の休みに、フィファーナに連れて行こう。戦闘経験やスキルの習熟を行おう。定期的に連れて行った方が良いかもしれない。

『ユウキ!』

スマホからは、マリウスの声が聞こえる。
拠点からの連絡だったから、レイヤかマイかと思ったが、珍しい。

「どうした?」

『久しぶりに、こっちにお客様だ』

「そうか?それで?」

『お前の関係だ』

「え?」

『レイヤが今、確認をしている。ヒナがいうには、”間違いない”らしい』

「ほぉ・・・。今、解っていることを教えてくれ」

『あとで、ヒナがまとめる。来るか?』

「この後、バイトが入っている。終わったら、顔を出す。レイヤとマイに伝えておいてくれ」

『わかった。無理するなよ』

「あぁ」

電話を切る。
俺の関係?誰だ?まだ、俺と拠点は繋がっていないはずだ。それに、”俺”だと認識されるようなことはないと思う。記者会見で、すぐに気が付いたのなら、すでに接触があるだろう。それがなくて、いきなり拠点に侵入を試みるのは、意味がわからない。

ひとまず、CBR400Rでバイトに出かける。
清水駅近くにある市場の清掃のバイトだ。紹介されて、スポットで頼まれた。ありがたい。今日は、区役所は休みだけど、バイトが終了したら、区役所に顔を出して欲しいと言われている。

話は、今の生活に何か困っていないか?と、いう聞き取り調査のような物だ。
金銭などのサポートを受けていないが、スポットでできるような仕事やボランティアを紹介して貰っているので、呼び出される。問題がないと話をして、困っていることを相談する。私有地になっている場所に、人が入ってゴミを捨てていくと相談したのも、この窓口だ。相談だけで、解決は、身銭を切って行ったのが良かったようだ。それから、何度か問題がないかと聞かれるようになった。

家に帰って、着替えてから、拠点に移動する。

「ユウキ。早かったな」

「あぁ。侵入者は?」

「死んだ」

「そうか・・・。何か、解ったか?」

「あぁ。地方の政治家から頼まれたらしいことまでは、記憶が読めた」

「地方の政治家?どこの?」

「オカヤマとか言っていた」

「岡山?」

「そうだ」

「それで、俺に繋がるのが解らない?」

マリウスと話をしていた部屋のドアが開いて、ヒナが入ってきた。

「これよ」

マイから渡されたのは、馬込先生から渡された、今の国会議員たちの派閥や、繋がりを表にした物だ。
複雑に線が絡み合っている。党を越えて利益供与を受けている者たちも存在している。大手マスコミや繋がりのある企業や官僚組織。天下りの団体。外郭団体。政治結社や右翼団体まで記入されている。あまりにも複雑になっているので、細かい部分は別紙参照になっている。

広げたA1の用紙には、俺が敵だと定めた奴らの名前が書かれていて、関係している企業や政治業者や官僚などが書かれている。

マイなその中から持っていたポインターで一人の名前を示す。

「これが、送り込んできた政治家の先生よ。アリスが記憶を覗いたから間違いないわ」

「指示は?」

「この場所に保管されている薬品や研究結果を盗み出すのが目的。盗み出すのが難しければ、盗聴器を仕掛ける様に言われていたみたい」

「ははは。舐められているな。盗聴器の送信機を、議員先生に送っておいてくれ、同時に、死んだ男の服も頼む」

「服は、どうする?」

「ん?綺麗な状態だろう?その方が怖くないか?」

「そうね。自分を裏切ったと思わせるのには丁度いいわね」

「頼む」

「あっユウキ。どこに送る?地方議員だけど、東京に愛人に与えた部屋があるみたいだよ?」

「へぇそこに荷物を届けておこう。先生名義の荷物が解るように、部屋の前においておこう。同じ場所に住む人には申し訳ないけど、スキルで大きな音を深夜に鳴らしておくか?それとも、異臭騒ぎの方がいいか?」

「わかった。私とリチャードとロレッタでやっておくよ。マスコミが寄ってくるようにしてから、荷物を置くようにすればいい?」

「それで頼む」

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