大川大地(猫)と女子高校生と行く気ままな放浪生活

2024/03/17

【第四章 建国騒動】第八話 森の中

 おっさんは、あらためて子供たちを見る。  バステトのスキルで命の灯火が消えそうになっていた者もなんとか持ち直している。しかし、このままではまた同じ状態になってしまう。  見渡すと、子供たちはおっさんを見つめている。 「37人か?全員なのか?」 「え?」  目の前に居る男児は、おっさんの答えに質問で返してしまった。 「ここに居るのが全員なのか?」 「・・・」 「連れて・・・。動かせないのか?」  おっさんの問いかけに、男児は泣きそうな表情で頷いた。 「そうか、バステトさん。お願いします」 ”にゃ!” 「隠れ…

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2024/01/21

【第四章 建国騒動】第七話 おっさん出かける

 ダンジョンと子供たちをカリンに任せて、おっさんはバステトを連れて、アルシェ帝国に来ていた。  道中は、バステトのスキルで姿を隠しながら、黄龍の眷属に運んでもらった。  本来なら、ラインリッヒ公国に立ち寄って筋を通す必要があるのだが、理由があり、おっさんは”拠点”に居る必要があった。 「まーさん。帝国の・・・。そうだ、王都まで、送るけど?いいのか?」 「大丈夫。悪いな」 「気にしないでくれ、それにしても、本当にいいのか?」 「あぁ龍族が来た事は、秘匿しておきたい」 「わかった」  龍族の眷属が、おっさんを送…

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2023/12/21

【第四章 建国騒動】第六話 少年奮闘する

 イザークは、ラインリッヒ公国と森の拠点で過ごしている。  ダンジョン内で訓練を行って、ラインリッヒ公国で文字や計算の勉強を行う。  訓練は、カリンが一緒に行ける時には、深い階層に行くこともあるが、基本は低階層での戦闘訓練を行っている。安全マージンを十分にとって、一緒に居るアキやラオだけではなく、仲間たちが単独でも倒せる場所で戦っている。  武器に慣れるように戦っている。仲間たちと連携を確認するように訓練を行っている。  カリンと朱里(シュリ)が居れば、皆で連携すれば倒せる階層に潜っている。ギリギリの戦いで…

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2023/12/02

【第四章 建国騒動】第五話 カリン報告する

 カリンが、邸に帰ったのは、ヤスが公国から帰ってきた翌日だった。 「あ!まーさん!ただいま!」 「お帰り。カリン」  カリンは、ダンジョンから帰ってきたテンションのままおっさんに報告を始めた。 「アキとイザークは、5階層までなら無傷で到達ができるよ。他の子は、3階層か4階層だね」 「そうか、ありがとう。問題は?」 「うーん。そろそろ、武器や防具を考えないとダメかな?それぞれの特性が出始めている」 「そうか・・・。ゲラルトとオイゲンに言って用意してもらうか?」 「うん!あっ!エミリーエに言って、聖樹の杖を作っ…

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2023/11/18

【第四章 建国騒動】第四話 カリン説明する

 おっさんが、イーリスに帝国を追い詰める作戦(悪巧み)を耳打ちして、ラインリッヒ公国の公都の裏路地を慣れた足取りで歩いている頃・・・。  カリンは、”魔の森”改めサイレントヒル自治区に出来たダンジョンにアタックをしていた。  サイレントヒルは、カリンが名付けた。おっさんの出身が静岡県だと聞いて、”サイレントヒル”と付けたのだ。おっさんは、別に名前には拘りが無かったが、”勇者”たちに知られたら厄介だと思っていたが、カリンの中で勇者たちとの対決を望む気持ちが芽生えてきたのかと思って、承諾した。  おっさんは、別…

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2023/11/01

【第四章 建国騒動】第三話 余波

公国が、帝国を撃退したという情報は、周辺の国々に伝播した。戦闘の開始時点からの情報が、正確に伝えられた。 帝国の7家が連合を組んで、公国に迫った。帝国も負けるとは考えていなかったために、当初からかなりの情報を流していた。公表されていた兵数は、30万。公表された兵数が、実体を捉えていないのは、当然の事だが、建国を宣言したばかりの国を攻めるのには、大げさな兵数を用意した。終戦後に行われる別の戦いの為にも、7家だけではなく、後ろに控えている者たちも兵を貸し与えていた。 帝国は、戦況が判明するにしたがって、情報統制…

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2023/10/16

【第四章 建国騒動】第二話 親書

元辺境伯領であり、建国宣言を行った公国は、『”龍族”に守られている』と言われている。 帝国は直接的には、公国への対応を表明していない。 『認める』とも『認めない』とも表面上は無視を貫いている。 裏では、資金がショートしている貴族を動かして、公国に侵攻させた。 7家の貴族が、連合を組んで公国に侵攻を開始した。資金の一部は、帝国が貸し付けている。侵攻している貴族には、公国から奪ったものは奪った貴族に帰属することになっている。 他にも取り決めがされている。 公国は、帝国の一部であり、辺境伯が勝手に建国宣言をしてい…

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2023/09/11

【第四章 建国騒動】第一話 建国と婚約

建国宣言で一番盛り上がったのが、龍族が住まう森に繋がる街道の公開と龍族が隣人として付き合っていけるという内容だ。 辺境伯は、公王を名乗ることになる。 おっさんの助言もあり、ラインリッヒ公国を名乗ることになった。 イーリスが、公王の長男と婚約が発表された。 民衆からは好意的に迎えられた。 イーリスが、辺境伯領に来てから行っていた行動が評価された結果だ。一部の者たちからは、帝国との橋渡しを期待する声も聞こえたが、イーリスが帝国の名前である。アルシェの名前を外したことから、失望する声も聞こえてきた。 イーリスも、…

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2023/08/10

【第三章 帝国脱出】第五十話 建国宣言

イーリスは、おっさんからの言葉を受け取って、領都に向った。 領都では、準備が進んでいた。 反対意見は有ったが、最終的な判断は王都に居るフォルミ・フォン・ラインリッヒ辺境伯に委ねられた。 領内をまとめたのは、代官だったダストンだ。ダストンにも打算はあった。正確な言い方をすれば、打算しかなかった。辺境伯領として、意思の統一を行う必要があった。丁度、代官と各町や村の長が領都に集まっていた。 同調圧力が無かった・・・。とは、言わないが、概ね独立はいい方向に捕えられていた。以前から、辺境伯領は、周りの貴族家から疎まれ…

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2023/08/02

【第三章 帝国脱出】第四十九話 建国宣言(準備)

イーリスが緊張した面持ちで部屋に入ってきて、おっさんの正面に座る。 おっさんの横には、カリンが座っている。もちろん、反対側にはバステトが座って、カリンの肩には、シュリが止まっている。 イーリスは、最初におっさんを見てから、カリンが横に座っているのを見て、少しだけ顔を歪める。そして、カリンの肩に居るシュリを見て驚愕の表情に変わる。最後に、おっさんとカリンの座っている場所を見て、何か納得した表情をしてから、背筋を伸ばす。 「まー様。カリンさん」 「なんだ?」 「辺境伯フォミル・フォン・ラインリッヒは、辺境伯の地…

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2023/07/23

【第三章 帝国脱出】第四十八話 おっさん困惑?

イーリスが、辺境伯領の独立を考えている頃、おっさんはカリンと会話(対峙)していた。 聖獣を連れたカリンが帰ってきたのだ。そして、おっさんに”聖獣を眷属にした”と告げたのだ。 「糸野さん。聖獣を眷属にした弊害は理解していますよね?」 おっさんは、カリンを日本で使っていた苗字で呼んだ。驚いたのは、おっさんだ。自分で思っていた以上に感情が外に出てしまっている。理由にも心当たりがある。そして、”いつか”が近づいて来ているように思える。 そして、その”いつか”を・・・。待っているのか?受け入れているのか?感情が制御で…

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2023/07/02

【第三章 帝国脱出】第四十七話 おっさんの企み

おっさんの話を聞いて、イーリスは何かを感じた。と、考えている。 実際に、解っていたことだ。今の帝国には未来がない。 そして、勇者召喚に巻き込まれたおっさんに帝国の問題を押し付ける行為は間違っている。 イーリスは、来た時とは違った表情に変っている。 考えがまとまったのではなく、気持ちが固まったのだ。覚悟ができたと表現してもいいかもしれない。 イーリスとロッセルは、二人だけで話す時間が欲しいとおっさんに申し出て、部屋の用意をお願いした。 おっさんは、近くに居たメイドを呼んで部屋の用意と案内を頼んだ。 部屋に残っ…

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2023/06/23

【第三章 帝国脱出】第四十六話 おっさん建国?

一人だけ意味が解っていなかったイザークが、カップに注がれた飲み物を飲み干した。 「イザーク。”おかわり”は居るか?」 「うーん」 イザークは、周りに居る者に視線を送るが、皆が首を横に振っている。 「おっちゃん。ダメみたい」 「そうか、残念だな。それなら・・・」 近くに立っていた者に、おっさんは視線を向ける。 頷いて部屋から出ていく。 「まー様?」 「気にするな。さっきの物とは違う。別の飲み物も用意している」 別の飲み物と聞いても、イーリスとロッセルの警戒が緩むわけではない。 おっさんが用意したのは、アキとイ…

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2023/06/09

【第三章 帝国脱出】第四十五話 おっさん招き入れる

おっさんは、裏(本当)の拠点に建築した屋敷で寛いでいた。 表の拠点の作業も概ね終わって、現在は街道の整備を行っている。 そして、おっさんは意外なことを知ってしまった。 ドワーフたちは、”酒”特化なのは想定していたのだが、他のサラマンダーやウィンディーネやエルフも酒造りを行って、かなりの人手を割いてしまっている。 種族で役割分体でもあるのか、ドワーフたちは武器と防具しか作らない。小物か日用品は、サラマンダーの方が得意なのだ。エルフは、仕掛け物が好きで馬車などを作るのを得意としている。材料の加工もおこなえるので…

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2023/05/17

【第三章 帝国脱出】第四十四話 そのころ(2)

おっさんが、拠点の建築をドワーフの代表であるゲラルトと行っている。 ダミー拠点は、自分たちの屋敷と宿に使える建物と商店に使える建物とギルドに使える建物を建築した所で、適度な広さを持つ様に城壁を建築した。 街道側に二重の門を設置した。 城壁は、おっさんの趣味で星形になっている。三角形部分は独立した防衛のための施設になっている。内部の五角形部分に施設がまとまっている。防衛の為の塔は作っていないが土台だけは準備している。 住民が増えたら塔の建築を行えばよいと思っている。 — おっさんが、ダミー拠点の出…

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2023/05/03

【第三章 帝国脱出】第四十三話 そのころ(1)

おっさんが拠点の構築を進めている頃に、カリンは森の探索を行っている。 おっさんには、森の状況を確認すると伝えている。 実際には・・・。 「バステトさん。朱雀か玄武が居るのですよね?」 ”にゃ!” バステトも、本当に居るのかは解らない。 気配を感じているのだが、どこに潜んでいるのかは解らない。 ただ、自分が近づけば出てくると確信している。 朝の早い時間に拠点を出立して、日が落ちるまでには戻ってくる生活をカリンは行っている。 おっさんは、カリンが自分に相談をしないで、行動しているのは解っていた。何も言ってこない…

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2023/04/14

【第三章 帝国脱出】第四十二話 拠点整備

おっさんは、領都で建築の依頼は出さなかった。 出す必要が無かった。 黄龍は、眷属を持っていないが、他の四龍は、それぞれが眷属を持っていた。 青龍は、ドワーフ族を眷属として使役することができる。四龍のまとめ役も、青龍の役割だ。もう一つの役割を持つ、龍族の中で役割が多いのが青龍だ。 紅龍は、サラマンダー族を眷属として使役することができる。 白龍は、ウィンディーネ族を眷属として使役することができる。 黒龍は、エルフ族を眷属として使役することができる。 黄龍を除く、四龍が、それぞれの眷属を召喚して、おっさんとカリン…

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2023/03/30

【第三章 帝国脱出】第四十一話 移動

光が収まって、バステトの姿を見た、おっさんとカリンは唖然としていた。 白虎が、おっさんを見ていた。 「バステトさん?」 ”にゃ” 鳴き声が多少は低くなっているが、バステトと同じ鳴き方だ。 『ほぉ。バステト殿は、やはり”白虎(びゃっこ)”だったのか?』 ”にゃにゃ” 『なに?違うのか?』 ”にゃぁに、にゃ!” バステトの言葉に、おっさんとカリンが安堵の表情を浮かべる。 ”白虎”になったのは、力の制御が出来ていないからであって、本来は”猫”の姿が本来の姿だと説明をしている。 制御には、訓練が必要になるが、明日に…

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2023/03/22

【第三章 帝国脱出】第第四十話 聖獣

『我は黄龍。龍族の長だ』 黄龍と名乗った龍が、おっさんの前に降りて来る。 まーさんは、降りてきた龍を見て、”竜”ではなく”龍”なのに、感動を覚えていた。カリンも、輝く鱗を見て唖然としていた。ドラゴンが存在しているのは、イーリスに聞いて知っていたが、”龍”が存在しているとは思わなかった。 「私の事は、まーさんと呼んでください。”まーさん”で敬称が付いている状態です」 おっさんの自己紹介を聞いて、カリンは慌てて黄龍を見るが、表情はわからない。もともと、表情があるのかも怪しいが、不快に思ったり、怒ったり、気分を害…

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2023/03/09

【第三章 帝国脱出】第三十九話 邂逅する

おっさんとカリンは森の中で野営を行っている。 不思議なほどに魔物の姿を見ていない。魔物だけではなく、動物も息をひそめているような雰囲気だ。 「まーさん?」 「バステトさんは、事情を知っているようですが・・・」 二人で、バステトを見つめる。 しかし、バステトは、二人の視線に気が付いても、可愛く鳴くだけで事情を説明するつもりはない。 おっさんとカリンも、バステトが何かを隠していると解っているが、自分たちを害しようとしていないのも理解をしている。 何か事情があるのだろうと考えて、バステトに任せている。 「そうです…

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2023/02/22

【第三章 帝国脱出】第三十八話 野営

おっさんは、後始末をダストンとロッセルとイーリスに任せて、バステトと森に向かう。今度は、カリンが一緒だ。イザークは一緒に行きたがっていたが、イーリスに押し付けるようにして、おっさんとカリンとバステトで森に向かった。 「まーさん?」 森に入ってから、おっさんが一言も話していないのに違和感があった。 カリンも単独で森の浅い層くらいなら探索ができる。 「あぁ誘っておいて、悪いな」 「いえ」 「バステトさんが”何か”を見つけて、その場所に向かっているのだけど・・・」 「え?バステトさんが?」 ”にゃ!” バステトが…

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2023/02/16

【第三章 帝国脱出】第三十七話 おっさん探す

おっさんは、バステトと森を駈けている。 バステトが、おっさんを誘導している。 おっさんは帝国の脱出を公言している。 その為には、どこかの国に身を寄せるのが最初に考える方法なのだが、おっさんはもう一つの方法で動いている。 その為に、森の中で不自由なく活動ができる状態には、鍛えている。 正確に言えば、おっさんとバステトが揃っていれば、森の中心部に行かなければ、対処が可能だ。 中心部から溢れ出たイレギュラーな魔物が現れることもあるが、おっさんもバステトも逃げている。試していないが、カリンが居れば十分に対応ができる…

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2023/02/07

【第三章 帝国脱出】第三十六話 おっさん走る

「おっちゃん!」 呼び止める声を聞いて、おっさんは足を止める。 「イザークか?今日はどうした?」 「アキ姉が、カリン姉ちゃんと一緒に素材の採取に出かけた」 「ん?それは聞いているけど、イザークは一緒に行かなかったのか?」 「うん。なんか、ダストンさんが・・・。おっちゃんを探していた」 「ははは。イザーク。先にそれを伝えた方がいいぞ。誰からだ?」 「イーリス姉ちゃん」 「イーリスが許しているからいいけど、ダストンやロッセルが居る所で、しっかりとしろよ?」 「うん。その場合には、姫様と呼んでいるから大丈夫。イー…

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2023/01/25

【第三章 帝国脱出】第三十五話 周辺事情

おっさんは、代官のダストンを、ロッセルに押し付けることに成功した。 辺境伯領は、好景気に湧き始めている。 ロッセルが辺境伯の領都に来てから5年で辺境伯領だけではなく、近隣や派閥の貴族領を取り巻く情勢は大きく動いた。 まず、ロッセルはおっさんよりも大胆な提案をダストンにおこなった。 市民権を、現在の30万イエーンから、3万イエーンに値下げした。それだけではなく、3万イエーンが払えない者は、貸し付けを行う。返還は、辺境伯領への奉仕活動で捻出させるという事だ。そして、成人前の子供は(仮)市民権を発行することに決ま…

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2023/01/19

【第三章 帝国脱出】第三十四話 ロッセル

ダストンは、おっさんの提案を受け入れた。 もちろん、指示書に対する対応策を質問状の形で、辺境伯に伺いを立てている。 返事を待っている間に、腹心候補を考えていた。 (誰か?俺の代わりに、領内を回る者が欲しい。いきなり、腹心は難しいだろう。俺も忙しくなる。副官が欲しい。俺に従ってくれる副官が・・・) ダストンは、自分で考えて”腹心を欲している”と思い始めている。 実際には、おっさんの入れ知恵だ。それだけではなく、おっさんは次の手を打っていた。 「ダストン様」 辺境伯から、宛がわれている家宰が、ドアをノックしてか…

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2023/01/07

【第三章 帝国脱出】第三十三話 奴隷条例

帝国史上もっと愚かで、最も人々を狂乱に落とし込んだ”条例”が、宰相のブーリエから発布された。 一部の貴族から出された懸案を、最も容易に・・・。そして、問題を解決するために、考え出された、画期的だと本人たちが本気で思っている”条例”だ。 ”奴隷条例” いくつかの条文で構成された”条例”だ。 もともと、帝国には”奴隷法”という”法”がある。借金奴隷や犯罪奴隷や戦争奴隷があり、それぞれ区分されている。 愚か者たちが奴隷を殺すことで、スキルアップが行えることを覚えてしまった。 帝国から、犯罪奴隷が消えるまで、時間が…

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2022/12/02

【第三章 帝国脱出】第三十二話 愚か者

勇者たちは、お披露目を行ってからも何も変わらない日々を過ごしていた。 お披露目は、大通りをパレードする形で行われた。 盛大という言葉が相応しい状況だったが、一部の民衆は冷めた気持ちで、パレードを眺めていた。 勇者たちは、宰相派閥の貴族に引き取られるように、貴族家の屋敷に移動した。 貴族家で、傲慢な態度はさらに酷く傲慢に拍車がかかった。勇者たちは、安易な快楽に溺れて行った。 勇者の1人であり聖剣の持ち主である剣崎凱斗(けんざきかいと)は、最初の頃は、剣の訓練をしていたが、徐々に訓練も減り楽な方向に気持ちを動か…

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2022/11/05

【第三章 帝国脱出】第三十一話 少年と少女

おいらたちの生活は、おっちゃんに会ってから変わった。 まずは、カリン姉がラオを治してくれた。他にも、体調が悪かった者も治してもらえた。それから、アキ姉や女の子だけが集められて、何かを話していた。話の内容は教えてもらえなかった。でも、その日から、アキ姉たちはカリン姉と一緒に居る時間が増えた。 おいらたちの寝る場所も変わった。 スラムの入口だったおいらたちの寝床は、おっちゃんによって壊された。おいらたちの少ない荷物は持ち出している。そのまま、街の入口。魔物の森が近くに広がる城壁近くに移動した。 しっかりした壁が…

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2022/09/15

【第三章 帝国脱出】第三十話 少年走る

俺は、イザーク。 おババに手紙を届けた。おばばから、まーさんが凄い奴だと聞かされた。 「まぁいい。まーさんからの指示を伝える。イザーク。お前には、拒否はできない。解っているか?」 解っている。アキ姉がまーさんと一緒に居る。アキ姉の所に帰る為にも、まーさんから出された指示はしっかりと実行する。 「うん」 俺の返事を聞いて、おババが俺を見て来る。いつものような視線ではない。 どこか優しい感じがする。 「まずは、イザーク。この手紙を持って、領主の館に向かいな。門番に、手紙を見せれば、いい」 「え?」 「なんだい。…

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2022/09/08

【第三章 帝国脱出】第二十九話 期待する

私の名前は・・・。名前を、呼ぶ者は居ない。名前を忘れたわけじゃないけど、”おばば”と呼ばれている。 産まれてからいろいろな名前で呼ばれていた。 今の場所に落ち着いたのは、80年以上前だ。長命種から見たら、一瞬とは言わないが、短い期間だ。しかし、これほど長く住み着いた場所は、ラインリッヒの領都だけだ。前の前の領主に頼まれて、居を構えた。それから、代替わりを見守ってきた。 今の当主も無能ではないが、先々代と比べてしまうと、少し中央を向きすぎている。先々代も先代も足下をしっかりと見てから中央と接していた。だから、…

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