~ 復讐を嗜むには、俺は幼すぎるのか? ~
2022/11/12
【第三章 復讐の前に】第十話 駒?
ユウキは、新居になる家の前に居た。 鍵はない。電子キーだ。パスワードと生体認証が組み込まれた扉をつけている。 監視カメラも、見つけさせる為のカメラと、隠されているカメラと、スキルで見られない状況になっているカメラを確認している。 玄関に入った。 「そうか、革靴かぁ・・・」 ユウキは、玄関に揃えて置かれていた靴を見ている。 学校には、学校指定の革靴が必要になる。他にも、学校指定とされている物が存在している。 全てとは言わないが、学校の理事の息が掛かった場所からの購入が”推奨”されている。 ユウキが準備したので…
続きを読む2022/11/05
【第三章 復讐の前に】第九話
フィファーナの辺境にある小国レナート。辺境は、人類の辺境である。レナートの近くには、広大な未開の地が存在している。 その王城にある一つの部屋。召喚勇者の1人、サトシが使っている部屋。 今、部屋の主であるサトシとサトシの婚約者の1人であるマイが、ローテーブルに広がった資料を片づけながら雑談をしている。資料は、次期国王への説明が多く含まれている。 もう1人の婚約者である王女であるセシリアとマイがまとめた資料を、次期国王であるサトシに説明をしていた。説明は、優しい言い方なのは、サトシだけが理解をしていればいい。よ…
続きを読む2022/10/22
【第三章 復讐の前に】第八話 受験
ユウキは、マイとセシリアに物資を依頼して、地球に戻った。 ユウキが依頼した物資は、これからの生活に必要だと思える物だ。 物資は、地球では入手が不可能な物が多い。 魔物を狩った時に得られる魔石は必須だ。魔法陣や結界の維持に使われる。ユウキは、充填ができるために、空の魔石でもいいのだが、最初の手間を省く為に、簡単な加工はレナートにいる加工師に行ってもらう。 マイが気を利かせて、魔石を水晶などの地球に有っても不思議ではない形に加工した。できる限り、体裁を整えて、値打ちがある宝石ではなく、土産物で売っている程度にな…
続きを読む2022/09/16
【第三章 復讐の前に】第七話 物資
マイが感謝する気持ちは解る。 解るが、これは、”俺が”連れて行きたいだけなので、感謝されると心がざわざわする。 「そうだ。マイ。必要な物資は?」 元々確認をしておきたかった内容に話を戻す。 「そうね。その前に、ユウキ。地球で何か必要になっていないの?持ち込むばかりで、セシリアが心配しているわ」 マイが、少しだけ笑いながら俺に話を合わせてくれる。 「心配?」 ”心配”と言われても、俺たちは”別に構わない”が答えになってしまう。 地球での買い物も、それほど高い物ではない。 サトシの買い物は、サトシの報酬から支払…
続きを読む2022/09/10
【第三章 復讐の前に】第六話 状況説明
今度は、マイから地球での状況を質問された。 報告をしている上に、問題になりそうな状況の時には、マイと一応サトシには伝えている。 「そう。父さんも母さんも大丈夫なのね」 マイが一番に心配したのは、父さんと母さんの事だ。 もちろん二人には、これから俺が行う事を説明した。内容までは話していないのだが、行為に関してはしっかりと説明した。最初は、反対されるかと思ったが、全ての話を聞き終わってから、賛成ではないが、引き止めないと約束してくれた。 そして、引っ越してきてくれてからは、何度も何度も話を聞いてもらった。アイツ…
続きを読む2022/08/28
【第三章 復讐の前に】第五話 宝珠
マイの説明から、現状が把握できた。大丈夫だとは思っているが、念には念を入れておいたほうがいいだろう。 やはり、俺の用事に取り掛かる前に、帰る場所をしっかりと、安全に、問題がない状況にしておいた方がいいかもしれない。サトシに譲位されるのは、早くても、10年後だけど、何があるか解らない。 今の国王はまだ40になっていない。まだまだ現役で活躍できるのだが、セシリアの話では、隙があればサトシに譲位しようとしている。らしい。 まだ、宰相が止めているのだが、宰相は国王よりも年齢が上で、そちらも次の宰相が決まれば、さっさ…
続きを読む2022/08/18
【第三章 復讐の前に】第四話 レナート
ユウキは、綺麗になった母親の墓前から、スキルを発動した。 異世界(フィファーナ)の小国(レナート)に転移したユウキは、まずは王城を目指す。 城下町を歩いていれば、ユウキは住民から話しかけられる。 「ユウキ!戻ったのか?」 住民や、レナートの国民でユウキたちを知らない者は、産まれたばかりの子供くらいだ。それほど、国民はユウキたちに感謝している。 魔王を討伐して、レナートだけではなく、フィファーナに安穏を齎した英雄だ。 実際には、魔王を討伐してしまったことで、統制されていた魔物たちが各地に散らばっただけなのだが…
続きを読む2022/08/10
【第三章 復讐の前に】第三話 墓参り
ユウキは、一人で寂れた港町に来ていた。 ”墓参り”というセリフには嘘はない。 ユウキは、港町には公共機関を使って訪れた。拠点からは、フェリーに乗って、湾を渡って、電車に乗り換えて、二駅の旅だ。 潮の強烈な匂いで向かえる駅で降りた。船の上で感じる潮の匂いとは違う、風に流される潮が、ユウキの鼻孔をくすぐる。 目的地までは、徒歩で2時間くらいだ。 ユウキは、周りを確認するように、見回しながら、ゆっくりとした歩調で目的地に向かっている。 すれ違う人も車も少ない。 港の入口を通り過ぎて、山側に向かう。 町の人間でも、…
続きを読む2022/08/03
【第三章 復讐の前に】第二話 帰還?
拠点の整備を行っていた、ユウキたちだが、現状で行えることを行った段階で、足りない物が見えてきた。 「それで、ヒナとレイヤは、こっち(日本)に残るのか?」 ユウキたちは、リチャードとロレッタの復讐を終えて、残りはユウキだけの状況になって、拠点の充実を行うことに決めた。いろいろな理由があるが、ユウキの相手が国に喰い込んでいるだけではなく、裏社会にも話が通すことができる。フィクサーというと大げさだが、国会議員だけではなく、地方限定だが基盤を支える企業を運営している。知識層の人材も抱えている。ユウキの復讐相手は、極…
続きを読む2022/07/27
【第三章 復讐の前に】第一話 日常?
ユウキたちの拠点の近くには、人が増えた。 拠点は、今までと同じで、異世界から帰ってきた者たちしか住んでいない。 拠点以外の場所には、町ができ始めている。 主に、拠点に居る者の関係者だが、レナートに残った者たちの関係者も移り住んでいる。各国から、来日してきていることも、住民が増えている原因の一つだ。人が増えれば、その増えた人を目当てにした人が増える。 もう一つの原因が、ユウキたちが戯れで作った魔道具が原因になっている。 「ユウキ!」 「おかえりなさい。森田さん。何か、用事ですか?」 「あ?!ユウキ!俺がどれだ…
続きを読む2022/07/16
【第二章 帰還勇者の事情】第四十一話 事情
ユウキとマイが約束の場所で待っていると、リチャードとロレッタがいつもと変わらない雰囲気で戻ってきた。 「おかえり」 ユウキは、リチャードとロレッタに言葉をかける。 二人は、差し出された手を握ってから、感謝を伝える。 「ただいま」 ロレッタは、マイに抱きついて緊張を解すかのように身体の力を抜く。大丈夫だと解っていても、緊張はしていたのだろう。リチャードがやりすぎないか心配していた度合いが大きい。 ユウキは、リチャードの腰にあるべき物がないことに気が付いた。腰を指さしている。 「あぁ」 リチャードもユウキが言い…
続きを読む2022/06/30
【第二章 帰還勇者の事情】第四十話
リチャードとロレッタは、一つの建物に向かって歩いている。建物と言っているが、実際には複合施設だ。いくつかの建物を厳重な塀で覆われた場所だ。 「ロレッタ」 「うん。大丈夫」 二人が今から行おうとしているのは、単純だ。 二人の故郷を破壊して、教会を破壊して、二人の親、兄や姉、弟や妹を殺した奴らに復讐する。殺すように命令した奴らを・・・。 異世界に召喚されて、ユウキに”絶対に地球に戻る”その意思を聞いた時から・・・。これからの・・・復讐の為に、スキルを求めた。 『異世界にいる間は、復讐を忘れよう』 サトシの言葉だ…
続きを読む2022/06/15
【第二章 帰還勇者の事情】第三十九話
ユウキとリチャードは、マイとロレッタと合流してから、移動を開始した。 「リチャード」 作戦(復讐)の実行が近づいてきているのを感じて、リチャードから殺気が漏れ出す。 周りに人は居ないが、誰かに気が付かれては、これから何かがあると思われてしまう。 ユウキは、リチャードの名前を呼びながら、肩を軽く叩く。 ユウキにも、リチャードの気持ちは理解ができる。ユウキ自身も、目的(復讐相手)を前にして、普段と同じで居られるとは考えていない。そのために、準備期間だけではなく、ターゲットの順番を考えているのだ。 「すまん」 リ…
続きを読む2022/05/31
【第二章 帰還勇者の事情】第三十八話 情報
ユウキたちは、襲撃を受けた事で、当局に拘束されている。正確には、拘束されているのは、マイとロレッタだ。ユウキとリチャードは、拘束された二人をまっている状況だ。 マイとロレッタは、”被害者”として当局の取り調べを受けている。マイが、日本からの観光客。ロレッタが現地の友達という設定になっている。 取り調べでは、マイとロレッタの身元調査が行われた。怪しい所が一切見当たらない偽造された身元だ。 ユウキとリチャードは、撮影した動画は、まだ公開していない。マイとロレッタの取り調べが終わって、もう一つの餌に食いついた後だ…
続きを読む2022/04/30
【第二章 帰還勇者の事情】第三十七話 襲撃
ユウキとリチャードは、建物の入口で椅子に座っている。 建物の中では、マイとロレッタが準備を行っている。 これから、4人で次の作戦を実行する。骨子を考えたのは、ユウキだがいやがらせの部分で日本に居るメンバーも手伝ってくれている。 そして・・・。 ユウキが持っているスマホに着信がある。ユウキは、着信した番号を見て、”にやり”と子供に似合わない表情をする。リチャードは、この表情を見るのが好きだ。ユウキが活き活きとしているのがわかる。リチャードだけではなく、皆がユウキを頼りにして、ユウキを守ろうとして、ユウキに助け…
続きを読む2022/04/10
【第二章 帰還勇者の事情】第三十六話 葬送
ユウキたちは、アメリカに渡っていた。 皆で歩いているのは、よくある街並みだ。 街並みを歩く子どもたちは、人種もバラバラで統一しているのは、”子供”だと思える年齢だということだ。ユウキたちを見つめる視線は存在しない。 今回の作戦で最後に訪れる予定になっていた場所だ。 先頭を黙って歩いているのは、リチャードとロレッタだ。 ユウキだけは、リチャードとロレッタと一緒に来ているので、リチャードの態度は理解ができる。 「リチャード?」 たまらず、ディドが声をかけるが、ユウキがディドだけではなく、皆を手で制する。皆もユウ…
続きを読む2022/03/25
【第二章 帰還勇者の事情】第三十五話 サトシ
俺は、サトシ。 地球から召喚された勇者の一人だ。そして、レナートの次期国王だ。と、なっている。だよな? 地球に居る時から一緒に居る。マイが今でも一緒に居てくれるのは嬉しい。 しかし、しかし、しかし、しかしだ! ユウキやヒナやレイヤは、日本に帰った。俺と一緒にレナートに残ってくれると思っていた。 ディド。テレーザ。ヴァスコ。ニコレッタ。ロミル。イェデア。レオン。フェリア。パウリ。イターラ。オリビア。ヴェル。たちは、レナートに残ってくれた。俺を支えてくれる。 地球に戻った者たちも、やるべきことがあって地球に戻っ…
続きを読む2022/03/07
【第二章 帰還勇者の事情】第三十四話 作戦
ミケールがユウキとの会談を終わらせて、部屋を出た。 当初の予定通りと言っても、ユウキは契約が成立する可能性は、五分五分だと考えていた。実際に、ユウキが提案した内容は、荒唐無稽だと言われてしまうような内容だ。 「ユウキ!」 レイヤが部屋に駆け込んできた。 「レイヤ。落ち着きなさいよ」 カップを片付けながら、ヒナはあきれた表情をレイヤに向ける。親しい人にしか向けない表情だ。 「ヒナ。そういうけど・・・。作戦の可否が決まるのだぞ?」 「はぁ・・・。レイヤ。貴方まで、サトシと同レベルになってしまったの?」 「あ?」…
続きを読む2022/02/21
【第二章 帰還勇者の事情】第三十三話 契約
エアリスの周りを覆っていたスキルが解かれる。 そこには、自分の手足を触って、自分の顔を、自分の手で触って、耳の形を確認して、触った手を自分の目で見つめる。大きな目が印象的な少女が立っていた。 自分の目で見て、自分の手で確認して、立っていることを確認して、自分を見つめている視線に気が付いた少女は、足を進めようとした。 しかし、何年も自分の足で立ち上がっていなかった少女は、立っていることが奇跡のような状態だ。歩くのは難しい。 しかし、少女は自分を見つめて、目を見開いて、流れ出る涙を拭わずに、自分だけを…
続きを読む2022/02/13
【第二章 帰還勇者の事情】第三十二話 エアリス
ミケールは痛みに耐えながら、自分をまっすぐに見つめる少女に微笑みを向ける。 凝縮した痛みを受けているミケールを少女は流れ出る涙を拭わないで見続ける。 『ユウキ様。ありがとうございます』 少女は、まっすぐにミケールを見ながら、斜め後ろにいるユウキに感謝を向ける。 「いえ」 ユウキは短く言葉を発するだけだ。 治療の前段階は、終焉に近づいている。 ミケールは声が出せない。肩で息をしている。支えられなければ立っていられない。 『ミケール』 少女の呟きが室内に木霊する。 それだけ、室内には音が存在しな…
続きを読む2022/02/07
【第二章 帰還勇者の事情】第三十一話 絶叫
優しく3回ノックされたドアを、ユウキが開けた。 そこには、車いすに乗った少女とそれを押しているミケールが居た。他には、誰も連れていない。 ユウキたちの拠点の中は安全だと言っても、今までは護衛の者が付いていたが、二人だけで、ユウキたちが待っている部屋を訪れた。 「決まりましたか?」 ユウキは、直球で少女に問いかけた。 『はい。残念ですが、ミケールを説得できませんでした』 『お嬢様』 「わかりました。準備はできています。地下で施術を行います」 ユウキたちは、立ち上がって地下に繋がる階段がある部屋に向け…
続きを読む2022/01/29
【第二章 帰還勇者の事情】第三十話 準備
ユウキの前に、ミケールが座っている。 「本当に?」 『はい。お願いします』 ユウキは、頭を抱えてしまった。 治療の方法をいくつかオプション付きで説明をした。翌日に、ミケールに連れられた少女がユウキを訪ねてきた。 そして、一番、非人道的だが、確実に治せる方法を選択したとユウキたちに告げたのだ。ここまでなら、ユウキたちも想定していた。準備に動き出そうとしたときに、一緒に来ていたミケールが、ユウキの前に進み出た。そして、治療を試すのを、自分でやって欲しい、少女の許可は取っていると、言い出した。ユウキたちは…
続きを読む2022/01/22
【第二章 帰還勇者の事情】第二十九話 少女
私は、今”日本”に来ている。 事故で全身に火傷を負った。その時に、片耳と片目を失った。喉も焼かれて、言葉は出せるが、雑音が混じるような汚い声だ。 そして、火傷は、私の心まで焼いた。 パパは、私を治そうと必死に医師を求めた。 しかし、私も見た医師の反応は同じだ。パパの権力を恐れて、”難しい”以外の言葉を聞いた事がなかった。 左手は、癒着して開かない。右手は辛うじて動かすことができるが、火傷の後が疼いて痛い。 右足は膝から先が無い。左足は、腿から先に感触がない。存在してはいるが、触られても解らない…
続きを読む2022/01/13
【第二章 帰還勇者の事情】第二十八話 治療?
スパイにギアスをかけてから、2日が経過した。 「なぁユウキ。日本の・・・。いや、この場合は、地球にある”その手”の組織は、情報を軽く扱っているのか?」 「どうだろう?」 情報はユウキの予想を上回る速度で集まっている。 上がってくる情報を、ユウキと一緒に精査しているのは、リチャードとロレッタだ。 精査された情報だけが、ユウキたちに届けられるが、それでも驚くほどの情報が手元に蓄積される。 「なぁ」 「そうだな。ミケールに渡して・・・」 「ユウキ。”丸投げ”だろう?俺たちじゃ対処できない」 「そうだな。丸…
続きを読む2021/12/31
【第二章 帰還勇者の事情】第二十七話 ギアス
ユウキたちは、安全になってから、お嬢様の治療をしたほうがよいと考えていた。 ミケールも賛同した。問題の解決には、2週間程度は必要だとミケールから告げられた。 ユウキたちは、”2週間”という時間は、襲撃者たちの対応ではなく、反乱分子の始末に必要な時間だと考えていた。 しかし・・・。 「ユウキ!お客さんが来ているぞ」 「そうだな。いつもと同じ対処で頼む。質も落ちてきているから、捕えるだけでいい。後は、ミケールに渡して終わりにしよう」 最初の襲撃があってから、10日が過ぎているが、当初は夜だけの襲撃だっ…
続きを読む2021/12/15
【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜
少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。 そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』 屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。 ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』 ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。 会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…
続きを読む2021/12/01
【第二章 帰還勇者の事情】第二十五話 証拠
少女が貴賓室に入って、護衛が扉の前を、メイドが内側を調べている為に、ヴェルとパウリはユウキに念話を繋げた。 『二人には、悪かったな』 『いいですよ。マイにも頼まれましたし、未来の国王の側近に恩を売るチャンスですからね』 『ヴェル。俺は、宰相になるつもりはない。異世界と地球の秘境をめぐる旅がしたいと思っている』 『ユウキもヴェルも、その話はマイがなんとかすると言っていたでしょ。それよりも、ユウキ。護衛の一人で間違いはなさそうよ』 『わかった。パウリ。助かる』 わざわざ手が足りているのにも関わらず、ユウキが…
続きを読む2021/11/23
【第二章 帰還勇者の事情】第二十四話 魔法使い
ユウキがニヤリを笑ってから、少女と大人たちに告げる。 「挨拶の代わりに・・・」 少女は、握られた手を見ると、少しだけ不思議な暖かさを感じた。 『聞こえますか?』 少女の頭の中に、目の前に居る男性・・・。ユウキの声が響いた。 びっくりした表情で、ユウキを見つめる。 『あっ手を離さないでください。すぐに終わります』 少女は、身体から倦怠感が抜けるのが解る。濁っていた視界もはっきりとしてくる。そして、同時にモヤがかかっていた思考がはっきりとしてくるのが解る。そして、目の前に居るユウキを見つめてしまった。…
続きを読む2021/10/26
【第二章 帰還勇者の事情】第二十三話 客人
ユウキたちは、客人をもてなす準備を始める。客人が、ユウキたちの拠点に来て、ポーションを渡すだけには出来ない事情ができてしまった。 部屋の準備はできているのだが、それ以外の準備ができていない。滞在は、長くはならないと仮定しているのだが、客人の都合で伸びることも考えなければならない。 「今川さん。それで、客人は?」 「明日に、成田で、翌日には来る」 「わかりました。それでどうします?上級を利用しますか?」 「うーん。なぁユウキ。中級と上級の違いは?」 「違いですか?中級は、欠損は治りません、上級は欠損が治り…
続きを読む2021/09/14
【第二章 帰還勇者の事情】第二十二話 客人の事情
「ユウキ。明日の夕方に、富士山静岡空港に到着する」 今川が、ユウキが使っている部屋に入ってきて、予定を告げる。 「え?客人はフランスからですよね?」 富士山静岡空港に、フランスからの直行便はない(はず)。 どこかを経由する位なら、新幹線を使ったり、東名高速を使ったり、飛行機以外の交通手段を使ったほうが楽だ。フランスから来るのなら、愛知か成田か羽田だ。 「プライベートジェットだ。世の中、大抵のことは、金でなんとかなる」 今川の話を聞いて、”キョトン”とした表情をしてから、納得した顔をする。 「そうです…
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