【第三章 復讐の前に】第六話 状況説明

 

今度は、マイから地球での状況を質問された。
報告をしている上に、問題になりそうな状況の時には、マイと一応サトシには伝えている。

「そう。父さんも母さんも大丈夫なのね」

マイが一番に心配したのは、父さんと母さんの事だ。
もちろん二人には、これから俺が行う事を説明した。内容までは話していないのだが、行為に関してはしっかりと説明した。最初は、反対されるかと思ったが、全ての話を聞き終わってから、賛成ではないが、引き止めないと約束してくれた。

そして、引っ越してきてくれてからは、何度も何度も話を聞いてもらった。アイツらは、俺の弱い場所を突いてくるのは間違いない。父さんと母さん以外に、俺が守るべき人はいない。だから、二人には、避難して欲しかった。

「引っ越しは終わった。他の国にも連絡をして、避難場所は確保してある」

「・・・」

マイには解っているのだろう。
母さんに似ているのは、マイだ。だから、マイは、母さんが何を言ったのか解っているのだろう。

「母さんは、日本を離れるつもりは無い」

子供たちを含めて、海外に避難してもらう計画を話したのだが、拒否されてしまった。子供たちは、しっかりと話をして、避難を受け入れた者だけを避難することになった。母さんの話も解る。俺の都合で、子供たちに何度も引っ越しを強要することはできない。解っている。

「想定していたけど、やっぱり?」

マイやヒナやレイヤとは、何度もシミュレーションしたが、父さんは最終的に頷いてくれると思っていたが、母さんはダメだろうと想定していた。

「あぁ父さんも、俺の足を引っ張るようなら、自害すると言っている」

「ユウキ!」

マイが立ち上がる。
手で、落ち着くように表現するが、マイの気持ちは落ち着かない。当然だ。俺も同じ気持ちだ。

「もちろん、そんな事はさせない。拠点の中に居てくれたら守り切れる」

拠点の強化は更に進める。
自分たちでも落すことが不可能な状況にしておきたい。日本にある場所なので、いきなりミサイルを打ち込まれるような状況は想定しにくい。車が突っ込んできて爆破するくらいだと思うが、誰も傷つかない状況に持っていきたい。

「でも、それだけじゃ弱いでしょ?」

「あぁ」

マイの言っていることは解る。
奴らが俺を狙ってくる可能性が高いだけに、拠点の防御を固めるだけでは弱い。父さんや母さんや弟や妹たちにも日常が存在している。無視して、拠点に押し込めておくことはできない。緊急事態ならしょうがないと思うが、日常を壊すのは間違っている。

「だから、俺は拠点を出ようと思っている」

レイヤたちには、俺の考えを伝えてある。
概ね賛成してくれている。母さんは喜んでいた。

「え?」

マイが驚くのは当然だ。
俺が、拠点を出るメリットはない。今までの説明だけなら、マイがそう考えても不思議ではない。

「俺が隠れていると奴らは、周りを狙う。それなら、俺が堂々と姿を晒して正面から対峙すれば、奴らは他には手を出せない」

「でも・・・」

「大丈夫だ。それに、今なら”学校”に通うという理由付けができる」

これが、俺の目的だ。
学校に通うという目的の為に、拠点を出る。

拠点から通える学校でも良かったのだが、俺は、拠点近くの学校ではなく、別の学校を考えている。

「学校?ユウキが?」

「おかしいか?」

「おかしくないとでも?」

マイの視線が痛い。
俺が何を考えているのか解らないのと、学校に通う意味が解らないのだろう。

「そうか?年齢で考えれば、高校生だぞ?」

次の4月で高校生だ。
精神年齢は、既に三十路なのだが、日本では高校生で通ってしまう。戸籍があると、こういう時に便利だ。

「勉強は大丈夫?」

高校受験なら大丈夫だ。
最悪はスキルを使えば余裕だろう。マイにいうと、説教コースなのは解り切っているので、黙っている。でも、マイの表情から、俺が考えている内容は解っているのだろう。

スキルをごまかす為の方法も一応は考えていた。

「それは、コネを最大限に使う。試験を受けても何とかなるだろう?」

コネを使って入られる学校がある。
裏口入学ではない。特例処置だ。特に、俺たちは、特例の塊だから、学校側としても受け入れたいと思ってくれている。打診した学校の半分以上が受け入れに積極的な態度を示してくれた。
拠点近くの学校に、皆が通っている。弟や妹の護衛の意味もある。年齢的に厳しい場合には、留学生の特例だと押し込んでもらった。

「どこに行くの?」

「そうだな。一高とかどうだ?」

「本気?巣窟でしょ?」

マイの表情が変わる。
一高は、奴の息がかかった連中が多くいる。そして、母親違いの姉と兄が通う学校だ。

「面白いだろう?」

マイが、より一層、呆れた表情をする。
俺が使う”面白い”で、マイの表情が変わる。

「貴方は、そういう奴だったわね。サトシなら反対するけど、ユウキなら大丈夫でしょう」

「だから、市内に家を買おうかと思っている」

「買う?借りないの?」

「借りると、改修・・・。改造ができない。近隣に迷惑をかけるのは間違いないだろう?」

「そうね。見つけたの?」

「探してもらっている。最悪は、建てればいいと思っている」

「ん?」

「海に近い場所で、船が接岸できる場所があって、周りに民家が少ないか、ない場所。できれば、周りが開けているといい」

「あきれた。三保に住むの?」

「候補は絞ってもらっている。150号の入り口に丁度いい物件があるらしい」

「あの辺りなら、一高には行きやすいからいいと思うわよ」

マイは、しっかりと地理を頭の中に描けている。
150号(通称イチゴロード)の清水側の始点から、三保方面に向かった場所に一高の校舎がある。無駄に広い校舎だ。奴が資金提供を行っている。実際には、ロンダリングのための建物も多い。

「あぁあと、特例をいくつか申請するつもりだ」

「特例?」

「ほら、俺は一人だろう?」

「そうね」

マイは、呆れた顔で俺をにらみつける。
実際に、周りから見たら、俺は一人だ。戸籍上も一人だ。施設にも入っていない。

「そこで、バイク通学を許可してもらって、バイトの許可も貰う」

「呆れた。免許は?」

「もちろん、取得予定だ。俺の誕生日は、4月2日だ。戸籍上は、すぐに16歳になる」

「へぇいいわね。サトシは、学科が心配だけど、なんとかなるわよね?」

「そうだな。レイヤも取得を目指すと言っているから、一緒に勉強したらいいと思うぞ?」

「あっよく考えたら、ユウキは転移があるから必要はないよね?」

「あぁ必要はないぞ?でも、学校に特例で認められて、バイクで通ったら目立つだろう?調べてもらったら、申請を許可する教諭は金で動くみたいだから、簡単だろう?ダメそうなら、弱みを握ればいい」

学校に通う生徒の一部は腐っている。
学校の上層は完全に腐っている。

だからこそ、特例など無茶ができる。

許可する教諭が、腐っているからやりやすい。単位も金で買える。権力に媚びを売って、大学への道筋ができる学校としては、それで十分なのだろう。

「・・・。まぁ大丈夫ならいいわ。それで、バイクの手配は?」

「森田さんがしてくれた。CBR400R」

旧型は難しく、新型になってしまう。
本当は、旧型が欲しかった。中古ならあるらしいのだが、森田さんと相談して、新型に決めた。

「よくわからないけど、前にサトシと話していた奴よね?」

とあるマンガの話だ。
古い古いマンガで、施設に置いてあるのを、サトシとレイヤと読んだ。そして、俺が、免許を取ってCBR400Rを買ったら後ろに乗せてやると約束をしていた。約束は、永遠に果たせなくなってしまったが、それでも・・・。

「そうそう。よく覚えていたな」

「覚えているわよ。日本に帰ったら、乗せてやるって約束していたわよね?」

「あぁだから、CBR400Rが手に入ったら、少しだけドライブに出かける。行きたがっていた場所に連れていく」

「そう・・・。ありがとう」

マイが頭を下げる。

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