【第三章 町?街?え?】第三話 街道?
門での審査がOKになったので、町に入ろうかと思ったが・・・。
そうだ、ディアナを移動しないと駄目だろう。こんな目立つ場所に停めておくことはできない。
「イザークさん」
「なんだ?それから、俺の事は、イザークでいいからな。ヤス!」
「あっわかりました・・・。いや、わかった。イザーク」
「おぉ!それで頼む。それでなんだ?」
「あぁディアナを移動したいけど、町の周りを大きく迂回して反対の門に行きたいのだけど道は通っているのか?」
「そうだな。少し待っていろ。リーゼは早く帰れよ」
「えぇぇぇ僕も・・・ヤスのアーティファクトがどこに置かれるのか興味ある!」
「おやっさんに、怒られても知らないぞ?」
「大丈夫!あとで、ヤスを宿に案内する!それが僕の仕事!」
なんだか、都合がいい事を言っているが、まぁ右も左もわからない俺からしたら頼りになるのは、リーゼとイザークだけだからな。心強いと思っておこう。
水晶を持って、イザークが屯所に戻っていく。
10分位して戻ってきた。
「ほれ」
何か、木の板を俺に投げてきた。
板を受け取って眺めたが、何も書かれていない。
「これは?」
「あぁそうか・・・記憶が無いのだったな。ユーラットの仮身分証だ。本来なら、銀貨一枚をもらうのだが、リーゼを助けた事や、どうやらゴブリンの集団を倒したらしいから、俺のおごりだ!」
「え?悪いな」
「なんだ・・・。本当に、記憶が無いのだな?」
「え?」
リーゼとイザークが笑い始める。
俺、笑われるような事をしたのか?
「いや、悪い。悪い」
「ヤス。この札は、仮身分証なのは間違いないのだけど、ギルドや領主様やここだと代官に、身分証を発行してもらってから、屯所に返しにくれば、銀貨は返してくれる事になっている」
へぇよくあるラノベの設定そのままなのだな。
「へぇそれじゃ遠慮なく受け取っておくよ。後で、イザークに返せばいいのだろう?」
「あぁ俺じゃなくても大丈夫だ。あぁリーゼに帰してもいいからな。おやっさんが代官の代理をしている一人だから、おやっさん経由でも問題はねぇ」
「わかった。それで、ディアナを移動したいのだが?」
「そうだったな。ヤス。俺をその馬車に乗せてくれ、道案内する」
「えぇぇぇ僕も僕も!あっちの出口の方が、宿に近いから、ヤス。僕も乗せていってよ」
うーん。助手席は無理だし・・・。二人共、居住区に入ってもらうしか無いよな。
「少し狭くなるけど文句言うなよ」
「あぁ」「わかった!」
二人を後ろに乗せた。
イザークは、思った以上に驚いていた。偉そうに、リーゼが話しているのが微笑ましくて笑ってしまった。
裏に抜ける道は殆ど整備されていなかった。元々、町に来ている冒険者が、裏門から行ける魔の森から素材を持ち帰った時に、裏門から入る事ができないので、道を作ったのが始まりのようだ、途中から素材の買取は裏門で行うようになってから使う者が殆ど居なくなってしまったのだと説明された。
神殿の事も簡単に説明をしてくれた。俺が思っているような、宗教的な物ではなく、どちらかと言えば、ダンジョンに近いような物のようだ。
だから、”攻略”という言葉が適切なのだな。最後には、ボスが居て、それを倒すと神殿を攻略した事になるのだと話していたが、イザークは俺がそこまで強くはないと思っているようだ。
俺は記憶をなくしているので、攻略とか言われてもよくわからないと説明を繰り返すだけだった。
イザークが導き出した結論は、俺が何らかの間違いで神殿に迷い込んで、偶然ボスを倒してしまったのだろうという事だ。もしかしたら、ディアナを先に得て、その力でボスを倒したのかもしれないという結論を語って1人で納得していた。
俺もその設定に乗っかる事にした。
神殿を攻略した事を確認したら、領主の所に報告を行う義務が、ユーラット町にはあるそうで、俺の都合にあわせて、一度代官を連れて行って欲しいと言われた。
面倒だけどしょうがないだろう。領主が出てくると面倒なのだけどな・・・・。そう言えば、直轄領だったな。なんか面倒な匂いがしてくる。
俺が面倒そうな表情を見せてしまった。
「ヤス。安心していい。この国と言うか、世界的な取り決めで、神殿を攻略した者は、本人が望まない限り、独立した場所とするのが習わしだからな。事実、このバッケスホーフ王国も、初代が神殿を攻略して作った王国だからな」
「へぇそうなのか?ん?でも、そうなると、俺は自分の国という事になるのか?」
「それもできるという事だけど、今だと現実的じゃないな。神殿の状況がわからないけど、自給自足はできないだろう?あっそこを右に行けば、ユーラット町の裏側に出るぞ」
そうだよな。
国なんて面倒な事はしたくないな。桜も・・・。ダメだな。真一はもっとダメだ。克己の奴なら・・・。嫌がるな。
俺の周りにはまともな人間が居なかったという事だな。そういやぁ和人の奴なら、お節介焼きながら国くらい作りそうだな。
俺には、そのつもりはない。
できれば沢山の嫁さんに囲まれて・・・。いや、嫁さんは1人でいい。嫁同士で同盟とか結ばれたら勝てそうに無いからな。うんうん。
そこそこに仕事して、そこそこの生活ができればいいかな。
娯楽が少なそうだけど、マルスの言い方だと、いろんな車が作られそうだからな。前世では手が届かなかった車とか運転してみたいな。どうやら、俺は死ににくいようだし多少無理な運転をしても大丈夫だろうからな。
ナビを見ると、新たに走った場所は、地図として認識されるようだ。
そうなると、まずは地図を完成させる事から始めたほうがいいかも知れないな。
「ヤス」
「あぁイザーク。ありがとう。この辺りなら、ディアナを停めておいても問題ないよな?」
「大丈夫だ。それにしても、このアーティファクト。すごいな」
「そうか?」
「あぁ中もそうだけど、切り株や倒木や石位なら簡単に乗り越えていくからな」
・・・そういう事か・・・。
確かに、馬車でこの道を通ろうと思ったら難儀しそうだよな。
それに、神殿に通じる街道もなかなか素晴らしい道だな。
地図を作るのもだけど・・・道の整備が先かな?
俺とイザークとリーゼがディアナから降りた。
ディアナのドアをロックする。
『マスター。自動モードに切り替えますか?』
自動モード?
宿に入ってからにするか、今は、イザークやリーゼの目もあるし、少し落ち着きたい。
『待機モードに移行します』
スゥーンと、エンジンが止まる音がした。
イザークとリーゼは驚いて、ディアナを見る。
「ヤス。今のは?」
「ディアナが停まっただけだ。気にしなくていい」
「そうか、何か攻撃とかでは無いのだな」
「あぁ待機モードといって、そうだな。”待て”の状態になっただけだ」
「・・・そうか、アーティファクトだからな。何か有るのだろう」
うん。便利な言葉だな”アーティファクト”と”記憶喪失”は今後も使う事になるのだろうな。
あとは、神殿を攻略したって事も合わせれば、だいぶ自由は確保できそうだな。
そんな事を考えていると、イザークが街に入るための門を開けてくれた。
そして、俺を手招きしている。
ユーラット街に足を踏み入れた。
「ようこそ、ユーラット街へ、俺たちは、ヤスを歓迎する」
「ありがとう」
「ねぇねぇヤス。宿に泊まるよね?」
「そうだな。リーゼが無料にしてくれるって言っているからな」
「えぇぇぇ僕が言ったのは、ご飯くらいだよ。でも、聞いてみるね」
リーゼが俺の手を引っ張って、走り出した。
おじさんには・・・。いや違った今は若がっているのだった・・・。うん。今度は、酒はそこそこにしよう。
「リーゼ。ちょっとまった。俺、先にギルドに行きたいのだけど案内頼めるか?」
「え?うん。いいよ。冒険者ギルドなら、宿の隣だよ?だから、まず宿に寄ろう!おじさんやおばさんを紹介するから!」
え?ご都合主義も真っ青だな。
まぁ都合がいいと言えば都合がいいな。
「それは都合がいいな」
「でしょ?」
街並みが見えてきた。
そういう事か・・・街としての防衛ラインは、その塀だが、それとは別に街の中にも塀を作っているのだな。
門は開けられているし、木で作られているだけの塀だ。
中に入って、すぐに目的の宿屋があった。
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