【第三章 復讐の前に】第八話 受験

 

ユウキは、マイとセシリアに物資を依頼して、地球に戻った。
ユウキが依頼した物資は、これからの生活に必要だと思える物だ。

物資は、地球では入手が不可能な物が多い。
魔物を狩った時に得られる魔石は必須だ。魔法陣や結界の維持に使われる。ユウキは、充填ができるために、空の魔石でもいいのだが、最初の手間を省く為に、簡単な加工はレナートにいる加工師に行ってもらう。
マイが気を利かせて、魔石を水晶などの地球に有っても不思議ではない形に加工した。できる限り、体裁を整えて、値打ちがある宝石ではなく、土産物で売っている程度になるようにした。

地球に戻っても、ユウキが休める時間は少ない。

地球に戻ってきたユウキたちは、年齢で言えば中学生だ。

受験が迫っている。誰も、受験の心配はしていない。本人も、不合格になるとは思っていない。筆記試験には自信がある。
しかし、面接が問題になってくるだろうというのが、森下美和の見解だ。地球に戻ってきてから、ユウキは”面接対策”を行っている。

森下美和が、面接官役でいろいろなシチュエーションでユウキに質問をぶつける。
大きな問題は無かったが、ユウキは家族に関する・・・。特に、母親との生活に関する質問で感情が揺れてしまう。それが、あまりにも他の質問に答える時と違うので、どちらが本当のユウキなのか面接官に”疑惑を持たれかねない”と、いう話になっていた。

ユウキたちには、特例措置が出ている。中学卒業の免状などもその一環だ。一般の職員には解らないようにはなっているが、調べれば解ってしまう。これらのことから、調べられないようにする必要がある。

ユウキの心の問題なので、誰にも解決策が浮かばなかった。ユウキ自身にも、心を落ち着かせるという対策しか考えられなかった。

面接対策を行っている時に、レナートにいるマイから、ユウキに提案があった。

”イスベルのスキルを使えば?”

ユウキは、試験でスキルを使うことは考えていなかったが、面接で心が乱れては、今後の作戦に支障がでる可能性を考えた。

「イスベル。頼む」

イスベルのスキルは、精神を安定させる物だ。
使い方次第で、精神を崩壊まで導くことができる。操るのではない。精神の起伏を抑える効果が期待できる。今回は、ユウキの精神をトリガーで抑えることにした。実験が重ねられた。

これなら大丈夫だと、森下美和から合格が出たのは、受験の2週間前だ。

「ユウキ!」

「レイヤ。こっちは任せる。ヒナもいるから大丈夫だろう?」

「あぁ大丈夫だ。向こうに行くのか?」

レナートではなく、ユウキが学校に通うために準備した家だ。
いい場所が見つかって、一軒家だが庭が広く、周りに民家もない。

ユウキは、拠点をレイヤとヒナに任せた。
拠点を任せると言っても、建物や場所ではない。レイヤとヒナに任せたのは、自分たちの家族を守ることだ。これからの事を考えると、人質にされる可能性が考慮されている。特に、妹や弟は可能性が高い。そのために、拠点近くに学校まで作った。さすがに、中学校や小学校の設立は認可の関係で間に合わなかった。来年には、認可が通る予定だ。高校も手配が終わっている。少人数だが、しっかりとした教育ができる場所が出来ている。
テクノロジーを前面に押し出した未来型校舎がコンセプトになっている。

レイヤやヒナは、拠点にできる学校に通う事が決定している。
マイも定期的に学校に通う事にしている。サトシは、レナートでの教育が思っていた以上に進んでいないために、高校には通わない事に決まった。

「そうだな。俺なら、移動の問題はない」

「あぁそうか・・・。こっちにも帰ってくるのだろう?」

「そのつもりだ。毎週、サトシに送っておかないと・・・」

「あぁ・・・。週刊誌か?」

「最近の荷物の殆どが、サトシからの要望だ。それに、マイの送り迎えもある」

「わかった。ユウキなら大丈夫だろう。・・・・。けど、無理はするなよ」

「わかっている。大丈夫だ」

ユウキは、転移を発動して、確保した家に移動した。
生活を整える為だ。

実際に、生活は考えていないが、レナートに物資を送る場所は作っておこうと考えた。

内装のこだわりがないことから、元の家を改装した形だ。ユウキに”借り”があると思っている大人たちが改装した形だ。

家の土台を5m近く持ち上げた形だ。
ユウキに内緒で行われた改装だ。リチャードが、ヒナに頼まれて行ったことだ。ヒナが、住所を聞いて台風時の浸水を気にした結果だ。

作られた階段を上がる。ユウキの表情は、面倒だという感じになっている。
しかし、家への襲撃を防ぐのには丁度よいとも考えている。

ユウキは、玄関を開ける。既に、鍵を生体認証に変えてある。ダミーで鍵は持ち歩くつもりなのだが、実際には鍵は必要がない状況にしておこうと考えている。家の周りには、スキルで結界を展開している。

(ダメだな。フィファーナの癖が抜けない)

ユウキは、苦笑をしながら結界を解除した。
家に入ってから、監視カメラを監視モードに切り替える。

監視カメラは、専門家に設置してもらった。
ユウキからのオーダーは、家に向かう場所のカメラは牽制の意味も込めて、見える位置にカメラを配置する。監視カメラの監視を含めた他のカメラは、解らないように配置することだ。
そのうえで、カメラが見つからないように隠蔽のスキルで隠した。

全部のカメラが正常に動作していることを確認したユウキは、録画の設定を変更した。

(よし。次は、転移陣を作っておこう)

ユウキは、1階にある3部屋の一つを転移用の部屋にする予定にしていた。
家具の設置をしていない部屋で、玄関からも離れていて、窓がない部屋に”転移用の魔法陣”を設置した。

転移陣は、ユウキの家と拠点を結ぶ魔法陣と、ユウキの家とレナートを結ぶ魔法陣を作成した。

貴重品は無いのだが、何かが有りそうな金庫なども置いてある。
部屋の様子を確認してから、ユウキは拠点に戻った。

拠点にも魔法陣を設置した。双方向にするためだ。
続いて、レナートにも設置して、マイとセシリアに説明を行った。

家と拠点とレナートを行き来しながら、ユウキは家の中に家具の設置を行った。

試験のギリギリまで、内装を作っていた。

試験日の前日になって、ユウキは”新城シンジョウ裕貴ユウキ”の名前で受験を行う。荷物や名前の最終確認を行った。受験に必要な物は既に揃っている。最終確認をしておかないと落ち着かなかった。

(よし)

忘れていることがないか確認してから、横になった。

朝になって、拠点に移動する。
皆が待っていた。

「イスベル。頼む」

「わかった」

イスベルが、スキルを発動する。
暗示型のスキルだ。ユウキの気持ちが高揚した時に、抑える効果がある。いろいろ研究した結果、効果が一番よかったスキルだ。もちろん、デメリットもあるのだが、試験に関してだけ言えば、デメリットは存在しない。受け答えに人間味が無くなってしまうだけだ。

試験は、午前中に基本の教科が行われる。
その後に、面接が行われる。集団面接ではなく、個別面接だ。

(筆記試験は、クリアだな)

その後の面接もイスベルのスキルが発動して、ユウキは精神が安定した状態で行った。
いきなり、家族構成や母親のことを聞かれるとは思っていなかった。対策をしていなければ、激昂していた可能性があった。面接官は、通常の質問の延長でしかない。ユウキの事情を知って質問をしたのではない。

受験から、2週間後に、ユウキの家に合格通知と手続きの案内が届いた。

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