サイト小説の記事一覧

2020/06/07

【第九章 復讐】第一話 側仕

「夕花。可愛いよ。気にしなくていいのに・・・」 「駄目です。私が嘲られるだけなら構いません。でも、晴海さんが馬鹿にされるのは我慢出来ません!」 「うーん。大丈夫だよ。僕を馬鹿にしたら、その家は終わりだよ。解っていて、そんな愚行は犯さないと思うよ」 「違います。その場で言われる位なら我慢出来ます。帰ってから言われるのが我慢出来ないのです!」 「わかった。時間はまだあるから好きにしていいよ」 「ありがとうございます」  晴海と夕花は、礼登が用意した会議を行うクルーザーに移動している。大学に顔を出して、駿河から礼…

続きを読む

2020/06/01

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十五話 帝国の村

 子爵たちの処分に目処が付いたヤスは、保留していた帝国への対応を開始した。  マルスからの情報で、帝国軍は、3つの家の連合で作られているようだ。それぞれの家の三男や四男が率いている。連合と言っても、統率が出来ているわけではない。ただ一緒にいるだけの関係だ。兵士数も、各家では3、000の兵士を出して、物資を輸送する兵站を1,000名出している。合計すると1万2,000にもなるが烏合の衆であるのは間違いない。  石壁が始まっている場所で、陣取って動こうとしない。  先に攻撃を仕掛けて、失敗したら笑いものになる。…

続きを読む

2020/06/01

【第八章 踊手】第九話 端緒

 晴海はコーヒーを飲みながら情報端末を操作している。  かばんの中にはタブレットも入っているが、逃げる場合を考えて、すぐに動ける状態にしてある。  夕花のエステの施術は予定終了時間を少しだけ過ぎたが、概ね予定通りに終わったようだ。 ”晴海さん。終わりました”  晴海の情報端末に、夕花からのメッセージが届いた。  晴海は、夕花がビルから出てくるのを、コーヒーショップから見えていたので、支度をして夕花に近づく。夕花も晴海に気がついた。 「夕花。綺麗になったね」 「ありがとうございます」  うつむきながら晴海に礼…

続きを読む
広告

2020/05/31

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十四話 捕らわれの者たち

 見世物になるのが確定しているリップルたち”ヒトモドキ”は、隷属の首輪をするのを拒否している。  リップル子爵の命令で、身分の低い者が首輪を付けられた。宣言通りに、絶命するまでゆっくりと首輪が絞まっていった。その間、首輪を付けられた者は苦しみ続けた。それを見て誰も首輪を着けようとしなくなってしまったのだ。一人と首輪一つが減った檻の中では、醜い争いが発生していた。  身を隠すことが出来ない場所に捕らわれている。食事も人数分しか提供されない。  快適な生活が出来るような場所と環境ではない。魔物が出ないだけマシだ…

続きを読む

2020/05/31

【第八章 踊手】第八話 文月

 晴海は、夕花を助手席に乗せて市内に向かった。 「晴海さん。どこに?」 「明日の準備」 「え?準備?晴海さんの?」  夕花が驚くのも当然だ。  昨日の段階で、準備が終わったと晴海は宣言しているのだ。  夕花にも、明日の会談は重要な物だと説明している。 「ううん。夕花の準備だよ。綺麗になろう!」 「え?僕?なんで?」 「ん?夕花は、僕の奥さんだよ」 「はい」 「うん。うん。一族の者が揃うからね。夕花のお披露目の意味を込めて、会ってもらおうと考えたのだよ」 「・・・。えぇぇぇぇ。僕、聞いていませんよ?」 「うん…

続きを読む

2020/05/30

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十三話 トーアヴァルデ

 帝国は確かにトーアヴァルデには近づいてきている。  しかし、戦闘が開始されるような距離ではない。入口に到達したに過ぎない。それも、野営地を作って新たに作られた壁を調べている段階だ。帝国は、リップルとは違って撤退しても問題はない。攻めてこない可能だって残されている。  リップル元子爵軍は、騎士を中心に一斉に動き出した。  規則正しい動きではなく、統率も取れていない。ただ、門を目指しているのだ。  先頭が門に到達する寸前に、門が内側に開かれた。 ”開いた!” ”進め!勝利は我らの物だ!” ”何が神殿の主だ!所…

続きを読む
広告

2020/05/30

【第八章 踊手】第七話 準備

 大学に通い始めて3日が過ぎた。  晴海と夕花は、屋敷と学校での生活を楽しんでいる。  屋敷では、片時も離れない。離れるのを恐れているかのように常に一緒に居る。学校では、研究室の設営がまだ出来ていないために、夕花は図書館に通い詰めている。晴海は、その時間を利用して、城井から蔵書や他の家の情報を聞いている。  そして、晴海が期限を区切った会談の前日。  礼登が城井を訪ねてきていた。城井に会うためではなく、晴海に会うためだ。 「城井。明日は、どのくらい集まる?」  晴海は、正面に座った城井に質問をする。まとめ役…

続きを読む

2020/05/29

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十二話 帰還と開戦

 ヤスとリーゼとサンドラが神殿に帰ってきた翌日には大量のドワーフがアシュリに到達した。  酔っぱらい状態だったらしいが、足取りはしっかりしていた。それだけではなく、リップルの神殿討伐軍(笑)の動向も掴んできていた。途中で逃げ出した者や軍から物資を持ち逃げして、盗賊になった者を討伐してきたようだ。逃げ出した者は、そのままレッチュ辺境伯領に押し付けてきたとルーサに説明した。  ドワーフたちが討伐軍よりも早く到達したのにも理由がある。  ドワーフたちは、最短距離を移動してきた。レッチュ辺境伯領を突っ切った形だ。限…

続きを読む

2020/05/29

【第八章 踊手】第六話 疑惑

 晴海は、夕花と別れて、城井貴子の部屋に向かった。  ドアをノックすると部屋から返事があった。 「文月さん。お待ちしていました」 「教授。お時間を頂きありがとうございます」  晴海が丁寧な言葉遣いをしているのは、城井の秘書が今日は一緒だからだ。 「晴海様。大丈夫です。この者は、我家の者です」 「そうか、わかった」  城井の後ろに控えていた女性が頭を下げる。  名乗らない所を見ると、城井家に属している分家筋なのだろう。晴海も、気にはしないで話を開始した。 「城井。それで、六条からの本のリストは出来たのか?」 …

続きを読む
広告

2020/05/28

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十一話 鉱山の村

「ディアス。二人の様子はどうだ?」 『エミリアが応えます。ファーストからの問題点の指摘はありません』 「そうか・・・」  神殿を出て、ユーラット経由でアシュリに向かっている。  一度、アシュリでルーサに会って、リップルの動向を確認してから、鉱山の村に向かう道を考えることに決まった。 「ディアス。ファーストに連絡して、アシュリの駐車スペースに停車させろ」 『了』  運転しているのは、リーゼだ。  ヤスの指示に従って、駐車スペースにFITを停めた。  リーゼが運転席。サンドラが助手席に座っている。後部座席には、…

続きを読む

2020/05/28

【第八章 踊手】第五話 秘鍵

 晴海は、夕花の隣に戻った。  能見と話をして情報が増えてモヤモヤした気持ちを、頭を冷やすためだ。  情報端末で、表向きの情報を読んで見て、情報を整理してみる。  文月コンツェルン  東京都に本家を置く企業の集合体。爪楊枝から大陸弾道ミサイルまでがコンセプトのような企業だ。第三次世界大戦の後に大きくなった企業体で、戦争特需をうまく利用した。本体は、上場しているわけではなく、子会社や孫会社を次々と上場させ本体は株式の取引で大きくなった。  現在の会長は112歳になる文月巌だ。日本の平均寿命が、110歳だと言わ…

続きを読む

2020/05/27

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四十話 イワンの依頼

 ドアを開けて入ってきたのは、リーゼとサンドラだ。  サンドラは、ヤスを見て頭を下げるが、リーザはヤスに飛びついたのだ。 「ヤス!僕が案内するよ!」 「わかった。わかった。イワン。二人で間違っていないのか?」 「あぁ・・・。サンドラの嬢ちゃんだけの予定だったが・・・」 「駄目だよ!サンドラとヤスを二人だけなんて!僕も一緒に行く!案内なら任せて!」  ヤスは、サンドラを見るが、なぜか懇願する表情になっている。ヤスはリーゼが無理矢理サンドラを説得したのだと理解した。 「わかった。その鉱山の村までは遠いのか?」 …

続きを読む
広告

2020/05/27

【第八章 踊手】第四話 遺伝

 部屋に入った二人は疲れているのもあって、風呂に入ることにした。 「晴海さん。お風呂の準備をします」 「頼む」  晴海は、礼登から渡されるはずだった資料を従業員から受け取った。  夕花が風呂の準備を始めたのを見て、封筒を開けて資料を見た。  資料は、予想通り夕花の母親の情報だった。 (大物だな)  夕花の母親は、東京都の裏社会をまとめている家の出だ。昔風に言えば、反社会的勢力の家の生まれだ。東京の裏を支えると言っても過言ではない。裏の顔も表の顔も持っている。表の顔の時に使う家の名前が”文月”だ。本当の家名は…

続きを読む

2020/05/26

【第八章 踊手】第三話 薯蕷

 晴海は図書館に用事があるわけではなかった。  祖父が寄与した蔵書があるはずなのだ。その中から、歴史に関係する本ではないが、”人食いバラ”とかの稀覯本もあると思っている。晴海の数少ない家族との思い出の中に祖父の書庫で見た”人食いバラ”が忘れられないのだ。  図書館の中は、静かだった。書生が居るわけではなく、ガードロボットが管理をしているだけだ。  晴海と夕花は、情報端末で身分を説明した。 「夕花、好きにしていいよ。僕も、気になる本を探したいからね」 「わかりました」  夕花は、晴海から離れて、歴史書が置いて…

続きを読む

2020/05/26

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十九話 後始末の準備

 ヤスは、魔通信を切った。  ヤスは、大事な用事を思い出した。辺境伯でも良かったが、サンドラに繋いだ。 「サンドラ。聞きたいことがあるけど大丈夫か?」 『大丈夫です』 「豚公爵の名前と領地を教えてくれ」 『ヤスさん。何をなさるおつもりですか?』 「明確な敵なのだろう?名前と所在がわからないと、気持ちが落ち着かない」 『・・・。ヴァルブルグ公爵です。領地はありません。王都にお住まいです』 「へぇ王都か・・・。そりゃぁ大変だな。狐侯爵は?」 『お父様ですか?ヤスさんに教えたのは?』 「うーん。それで?」  サン…

続きを読む
広告

2020/05/25

【第八章 踊手】第二話 城井

 晴海が運転する車は、旧国道150号を西に進む。  ここは、前世紀から石垣いちごを生産している場所だ。晴海は、窓を開けて外の空気で車の中を満たす。伊豆に居たときは違う潮の匂いが二人の鼻孔を擽る。 「夕花。寒くないか?」 「大丈夫です」  ここ百年の気候変動で日本もかなり平均気温が下がっている。氷河期が訪れようとしているのは間違いない。しかし、駿河の気候は安定している。地質学的に考えても不思議な場所なのだ。平均気温が下がって琉球州国でも年に数日は雪が降り何年かに一度は積もるような状況なのに、駿河は雪が降っても…

続きを読む

2020/05/25

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 国の行く末を憂慮する辺境伯

『お父様!』 「わかった。サンドラ。みなまで言わなくていい。ハインツに連絡して、王家に筋を通しておく」 『ありがとうございます。後ほどヤスさんからお父様にご連絡があると思います。よろしくお願いします。それでは!』  娘からの連絡を受けて、リップルの連中が暴発したのを知った。  儂が放っていた者たちからの連絡よりも、娘から連絡が早かったのが情けなくなる。抜本的な変革が必要になってきたのかも知れない。魔通信機が使いやすい環境だとしても、時間の差を考えてしまう。そして、娘は神殿が負けるとは考えていない。王家への連…

続きを読む

2020/05/24

【第八章 踊手】第一話 上陸

「晴海さん。本当に、このままで・・・。行くのですか?」 「うん。だって、夕花が負けたのだから諦めようね。大丈夫。駿河が近づいてきたら着替えるのだし僕以外に夕花のそんな姿を見せたくないからね」 「解っていますが・・・。うぅぅぅ。恥ずかしいです。全裸の方が恥ずかしくないですよ・・・」  夕花も今の格好になって混乱している。晴海の前で裸になるのに慣れているので、裸の方が”まし”だと思ったのだが、客観的に考えて裸でクルーザーを動かすのはシュールだし危ない感じがする。 「大丈夫だよ。見ているのは僕だけだからね」 「そ…

続きを読む
広告

2020/05/24

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十八話 落日のリップル

 ”リップル子爵領から兵士が関所を目指して進軍している”  この情報が神殿にもたらされたのは、ヤスが関所の森、神殿の森、魔の森にポッドの配置を終えた翌日だ。  休む暇も無いと愚痴を言っているヤスだったが、報告をあげてきたルーサと話をするためにモニターの前に居た。 『ヤス!』  ルーサがモニター越しに怒鳴っている。  ヤスが言った愚痴が聞こえてしまっていたのだ。わかっていた話だが、緊急事態には違いない。 「ルーサ。聞こえている。状況を教えてくれ」 『すまん。ヤスだけか?』  いつものメンバーが揃っていると思っ…

続きを読む

2020/05/23

【第七章 日常】第八話 濫觴

 晴海と夕花は、晴海の運転する車で屋敷に帰ってきた。  翌日も試験が控えていた。翌日は、運転免許の更新と限定解除を行うのだ。教習所に通えばよかったのだが、能見が夕花に晴海と一緒に居る時間を大切にしてくださいと助言したので、免許更新時に試験を受ける方法を選択した。  夕花の誕生日ではなかったが、奴隷になったことで効力が停止されていた免許を復活させるためには手続きが必要になっていた。同時に、バイクの免許の取得を行うので、丸一日試験場に居る状態になる。  晴海も、夕花に合わせてバイクの免許を取得する予定にしていた…

続きを読む

2020/05/23

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十七話 ヤスの勘違い

 ヤスは、レイクサーペントを、安全を考慮して配置範囲のギリギリにあたる100メートル先に召喚した。いきなり襲われる可能性は無いと思ったが、魔物の大きさが解らなかった為の処置だ。  ヤスの目の前に体長10メートルを超えそうな巨大な白蛇が姿を現した。赤い目を持つ白い蛇だ。 『マスター』  白蛇は、ヤスに頭を垂れるような姿勢になっている。 「ん?お前か?」  目の前の白蛇にヤスは話しかける。 『マスター。名前を頂けないでしょうか?』 「名前?」 『はい。マスターの眷属にしていただきたいのです』  白蛇はヤスに懇願…

続きを読む
広告

2020/05/22

【第七章 日常】第七話 怠惰

 欲望をぶつけ合った翌日は昼過ぎまで惰眠を貪っていた。  起き出した二人は、昨晩の状態で放置された布団を見て、笑いあった。それから、”おはよう”のキスをしてから、洗濯物をまとめた。体力を使い果たしたと言っても若い二人は起きる頃には体力”も”戻ってきていた。  洗濯物をまとめる作業をしているが、服を着たわけではない。風呂から上がってきたのと同じ全裸なのだ。  晴海は、夕花の形のいいおしりを見て自分が反応しているのに気がついた。 「晴海さん」 「どうした?夕花?」  晴海もそれだけで解った。  夕花は、晴海の反…

続きを読む

2020/05/22

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十六話 日常の一コマ

 難民たちは、神殿の領地内に散らばった。  ヤスに取って、嬉しい誤算もあった。村で、宿屋をやっていた夫婦が数組だが存在していた。それだけではなく、神殿内に足りなかった雑貨屋や食堂の経験者も居た。希望を聞きながら、神殿の都(テンプルシュテット)とアシュリとトーアヴァルデとローンロットに散らばった。冒険者たちも、ユーラットや神殿の都(テンプルシュテット)に拠点を移動した。  関所の森に作った2つの村は、食料供給の一大拠点となった。  現在は、畑仕事だけだが、マルスから食料確保の簡単な方法が提示されて、実行すると…

続きを読む

2020/05/21

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十五話 急報

 ラナが立ち上がって、部屋から出ていく。 「それで、ルーサは?」 「魔通信機からの連絡です」 「マルス!ルーサからの通信を繋いでくれ!」 『了』  モニターにルーサが表示される。 「ルーサ。何があった?」 「ヤス。いきなりすまん。ドーリスにも繋げたいが大丈夫か?」 「マルス。手配してくれ」 『了』  すぐに、画面が分割されて、ドーリスが表示される。 「ヤスさん。ルーサさん。緊急事態だと聞きましたが?」 「あぁ時間的には、1-2日は余裕があるが、どうしたらいいのか判断出来ない」  ルーサが、ドーリスに返事をす…

続きを読む
広告

2020/05/21

【第七章 日常】第六話 性愛

 夕花は、立ち上がった。晴海は夕花の姿を目で追った。  二人が居る露天風呂は星や月の明かりだけに照らされている。入ってくるときには、足元を照らすライトが点灯するが人が居なくなれば消えてしまう。  振り向いた夕花を照らすのは星の明かりだけだが、晴海には夕花がしっかりと見えている。夕花が微笑んでいるのも見えている。 「晴海さん」  夕花は、他にも言葉を考えていた。抱いて欲しいと口に出そうと思っていた。  しかし、自分を見つめる晴海を見てしまうと、名前を呼ぶのが精一杯だった。名前を呼ぶだけで心臓の音が晴海に聞こえ…

続きを読む

2020/05/20

【第七章 日常】第五話 確認

 晴海と夕花は精神的に疲れてしまった。晴海に送られてきた、家の情報は嘘ではないが本当でもなかった。うまく編集されていたのだ。全容だと思っていたものが一部でしかなかったのだ。 「晴海さん。先に、荷物を受け取りませんか?それと、食堂と7階のキッチンを見ておきたいのですが駄目ですか?」 「いいよ。食料もある程度は買ってきていると言っても、手探り状態なのは間違い無い。いろいろ調べよう」 「はい」  7階へ直通になっているエレベータはすぐに見つかった。  エレベータに乗ってみて解ったのは、パネルが新しくなっているので…

続きを読む

2020/05/20

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十四話 散歩

 ヤスは、今日ものんびりと過ごしていた。ヤスが受けなければならない依頼が来ていないのが主な理由(いいわけ)だ。  プラプラと、神殿の街をぶらついている。  帝国で行っている意識改革(報復)も目に見える成果が出てくるのはしばらく時間が必要だろう。  リップル子爵家がそろそろ王都に付きそうだという報告は読んだ。到着してから自分たちがどれほど愚かだったのか気がつくのには、それでも2-3日はかかるだろう。  ヤスは、綺麗に整備された道をギルドに向かった。ギルドに用事があるわけではないが、なんとなくギルドに足を向けた…

続きを読む
広告

2020/05/19

【第七章 日常】第四話 住居

 狙っていた通りに、暗くなってから、六条が所有する離れ小島の前に到着した。  ナビが示しているのは、島の中央ではなく、海沿いになっている。島の全体が私有地なので、地図は表示されていない。 「晴海さん。入口が封鎖されています」  夕花が指摘した通り、島の入り口は封鎖されている。  厳重な門の扉が閉じられている。島に向かう道路にも高い壁と鉄柵で海からの侵入を防いでいる。  門には、ガードロボットが配置されている。武装が許可された物だ。 「大丈夫だよ」  晴海は、情報端末を取り出して近づいてきたカードロボットに認…

続きを読む

2020/05/19

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三十三話 報復

 ヤスが出した指示をマルスは計画を立てた。  すぐに実行しなかったのは、魔力の吸収を優先させたからだ。せっかくなので、彼ら自身の魔力で魔物を召喚してみることにした。  ヤスが命じたとおりに、ゴブリンとオークとオーガのメスを召喚した。  奴隷化を実行しようとしたが、下位の個体では不可能だったので、上位個体を12体召喚した。その中の一体が主(あるじ)となるのだ。上位種は身体も顔つきも違ってしまうので、主(あるじ)の見分けが出来てしまう。ヤスの意図とは違うが、下位個体に兵士たちの相手をさせて上位個体に貴族と司祭と…

続きを読む

2020/05/18

【第七章 日常】第三話 報告

 晴海の運転する車は、旧国道414号を白浜方面に向けて走っている。年号が使われており、昭和や平成や令和と呼ばれていた時代と道は変わらない。伊豆中央道が出来てからは時間が停まってしまったような場所だ。  古き良き時代が好きで移り住んでいる者は居るが、そのような人物は多くない。生活の殆どを自給自足でまかないながら生活をしているので、生活道路となっている旧国道414号にも車の影は少ない。  国が管理していた速度規制が撤廃され、全ての道路で地域の生活様式に合わせた速度制限が定められた。  旧国道414号線の様に生活…

続きを読む
広告
1 42 43 44 45 46 47 48 49 50 57