サイト小説の記事一覧

2020/04/11

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第八話 嫌がらせの相談(3)

「頼む。それで・・・。王都に、塩と砂糖と胡椒が盗まれてから、王都に運ぶ役目は俺がするしかないかな?」  ヤスが周りをみながら宣言する。  長距離の運転だけではなく、街から出て運転できるのは、カスパルとツバキとセバスだけなのだ。ヤスが運ぶのが現実的だろう。 「旦那様。僭越ながら、今回の運搬は、私が担当いたします」 「セバスが?」 「はい。いくつか理由がありますが、旦那様は神殿に残られまして、皆に指示を出していただきたい。もう一つは、なるべく旦那様が貴族や王家との付き合いをしないようにしたほうがよろしいかと思い…

続きを読む

2020/04/10

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第七話 嫌がらせの相談(2)

「さて、サンドラ。この塩と砂糖を、俺が売ると言ったらどうなる?」 「え?これを・・・。ですか?」 「そうだな」 「量は?」 「さすがに無制限とは言えないけど、かなりの量が用意できる」 「それは、2-30キロですか?」 「ハハハ」  ヤスは、サンドラの言い方が面白かった。  討伐ポイントで交換できるのは、キロ単位だ。20キロや30キロなら簡単に交換できる。ポイントに余裕がある今なら簡単な量だ。 「そっそうですよね」  サンドラは、ヤスが笑ったのは、2-30キロも用意できるわけがないと思ったのだ。  1-2キロ…

続きを読む

2020/04/09

【初級】存在意義

 IT会社には悲しいすれ違いから産まれる喜劇があります。  この話しも、そんな悲しいすれ違いから産まれた喜劇です。  私の勤めた会社に、前園という某サッカー選手と同じ名字を持つ男性がいました。  本人の自己申告なので、どこまで本当なのかわかりませんが・・・  彼曰く  ・小中高校と主席だった  ・主席だった為に、友達が居なかった  ・旧家なのでそこそこの資産がある  ・兄が居て、兄が跡継ぎになる事が決まっている  ・兄に疎まれて家から出て生活している  ・バイクの腕には自信がありレースに出た事がある  ・大…

続きを読む
広告

2020/04/09

【初級】ケーキ持参

 この業界は、甘党が一定数存在する。  私も甘党の1人である。  甘党と言ってもいろいろな種類の人が居ます。自分の基準が普通で、皆がそうだと思って行動している人がいました。  ケーキが大好きで、昼飯に20cm超えのホールケーキを食べる人がいました。そして、少し残念な事に、この人物は頭のネジが数本入れ違いになっているのか?なくなっているのか?原因はわかりませんが、昼飯にホールケーキを食べるのは”普通”だと思っていたのです。  そんな人物なのですが、困った癖も有ったのです。  仕事で行き詰まったり、上司に怒られ…

続きを読む

2020/04/09

【初級】趣味・嗜好

 仕事をする上で、メンバーの趣味嗜好はどうでも良いと考えていました。  そう思わなければ、業界では長生きできません。  しかし、まったく関心を寄せないのは、仕事をする事ができなくなる恐れがあります。  趣味は潤滑油くらいに考えていれば問題は少ないと思っていました。  初対面の人と仕事を急にしなければならない事が多い業界です。  そのために、面倒な人間関係に悩まされる事も多くあります。  そして厄介なのがこの業界の人で、多くは無いのですが一定数居るのが趣味の事を聞かれて、パソコンやプログラムと答える人たちです…

続きを読む

2020/04/09

【初級】約束と言い訳

 とある大手家電系IT企業の部長が部下(メンバー)たちに向って宣言しました。 ”この仕事が終わったら、長めの休暇を取って遊びに行こう”  メンバーたちは、部長の言葉が自分たちに向けられた言葉だと考えました。  この会社は、2-3日程度の休みなら部長決済で問題は無いのですが、4日を超えるような長期休暇は人事部に申請を出して許可をもらう事になっているのです。  この部署の仕事は、主に業務サポートで資料の整理や顧客対応だったのですが、この部長が来てから独自性が必要と言いだして、社内ツールの開発を行い始めたのです。…

続きを読む
広告

2020/04/09

【初級】遅刻の連絡

 私が経験した”業務以外で”もっとも楽しかった人たちとの現場の話しです。  この現場では、朝の9:00出社が義務付けられていました。  フレックスタイムは存在していましたが、事前申請が必要で1週間以上前に理由と出社予定時間を書いた物を、課長と部長に許可を貰って、業務が遅れていない事を証明した上で、フレックスタイムを使った時間を補填する残業予定を書かなければならなかったのです。  今考えると十分ブラックな状態だったと思いますが、このときには現場で事情が違うので、そういう物だと受け入れていました。  特に朝の連…

続きを読む

2020/04/09

【初級】ある職場の 1 週間

 私が関わった多くの現場の中で、最強にして最悪な職場が最初に勤めた会社から派遣された部署でした。  そして、一番楽しかったのもこの現場だったと思います。  時期は、バブルが弾けたすぐ・・・。世間的には、システム投資をこれから行うと思っていて予算が組み込まれ始めた頃です。  仕事は途切れる事なく舞い込んできます。  その部署で作って売っていた物は、一式で買えば1億円程度はする物です。  それが月に何台かは売れていくのです。実際にはリース契約なのはわかっていますが、羽振りが良くなっていくのは当然の事です。  世…

続きを読む

2020/04/09

【初級】今は1時間の睡眠を・・・

 私は、病院での激務を乗り越えて、会社に送還された。  別に問題が有ったわけではない。もともとその予定だったのだ。事務所でパッケージ開発だけを行えばよかったはずだった。  怒号も聞こえない。誰かの呻き声も聞こえない。  怨嗟の声や呪いの言葉も聞こえない。そんな一般的で健やかな気持ちで作業を行っていた。  私が会社に提案して作成したアプリケーションが納入された。  売上なんて気にしていなかったのだが、会社に貢献できたのは単純に嬉しかった。  4ヶ月間の時間を使って作ったアプリケーションが一本とはいえ売れたのだ…

続きを読む
広告

2020/04/09

【初級】自分の結婚式

毎年3月末から4月中旬にかけて地獄の日々を過ごす現場がある。長い時には、5月末まで続く。 この時期は、自分の部屋で過ごす時間はほぼ皆無で殆どの時間を職場で過ごしている。 それは、システム屋に出された、お上からの命令だからしょうがない。 4月1日から会計システムを変更して、新しい料金体制で業務を行わなければならない。 その仕様を決めているのが、”東京都千代田区霞が関1-2-2”にある役所だ。そして、その仕様が出てくるのが、早くても3月半ば。しかもこの時点で最終稿ではない。 お役所の文章を読んだことがある人はわ…

続きを読む

2020/04/09

【初級】親の葬式

 徹夜作業まで必要がなく、終電では帰る事が出来る現場での話。  上司は、責任感もあり、人間としては尊敬に価する部分も有ったのですが・・・。  責任感に見合う能力が欠落していたのです。  上司は、40代後半で、チームリーダでした。現場に出ているチームのまとめ役をやっていました。  同僚からも客先からも部下からも頼り(便利)にされ(使われ)ていました。  確かに信頼はされていましたし、最低限の事は出来るのですが、能力が信頼を越えていないのです。これが不幸の始まりだったのです。その現場は、月で作業の偏りが激しい現…

続きを読む

2020/04/09

【初級】パフォーマンスとしての徹夜

 徹夜作業。  実際には、貫徹をする時は少なく、途中で仮眠を取る。貫徹しても作業が進むわけではないためなのです。  しかし、状況によっては、徹夜をしたという事実が大事になることがあります。  そんな時の話です。  客先常駐の作業で、1週間泊まり込みの作業が続いていたある日。  客筋の上層部が、視察に来る事が急遽決まった(らしい)。  システムの納期が遅れている現場に”客筋”の上層部が来る事は殆ど無い。遅れている現場に来ても、誰も幸せになれないからだ。  そして、その現場では特にリリースが遅れている原因が客筋…

続きを読む
広告

2020/04/09

【歴戦の勇者】作者の戯言と注意事項

 本来こんな文章は必要は無いでしょう。  あくまでこれは”小説(フィクション)”であり”文章(想像の産物)”として公開しています。  しかし、何人かの人に遠回しに質問されました。 ”某有名企業の人ですか?”  違います。 ”あの話はあの会社の事ですよね?”  違います。 ”もしかして、自分の会社の事ですか?”  違います。  名前を挙げられた企業と仕事をした事はありますが、名前が通るような企業に在籍していた事はありません。  また、自分の周りに居た人に酷似していると言われても困ってしまいます。  それほど、…

続きを読む

2020/04/09

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第六話 嫌がらせの相談(1)

「ヤス様」 「デイトリッヒ。様は必要ない。それで?」 「そうでした。ヤスさん。”それで”とは?」 「説明しろよ?デイトリッヒが神殿と関係を無くしたいと思った理由は、”それ”なのだろう?」 「そうです」  デイトリッヒは、3つの山を見る。  ヤスを見てから諦めたように説明を始める。  最後の山は、カイトたちに宛てた手紙だったために、デイトリッヒは簡単に説明だけして、手紙の束をカイルに渡した。  卒院していく子供たちに渡していた物で、カイルたちの卒院に向けて書かれていたものだった。  話を聞いて、カイルとイチカ…

続きを読む

2020/04/08

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第五話 ヤスと愉快な仲間たち?

 新たにギルドに到着した面々は、セバスが案内して会議室にやってきた。  先にタブレットの説明を始めようか、ヤスが迷っていると、マルスから念話が入った。 『個体名デイトリッヒがギルドに到着します』 「ミーシャ。デイトリッヒがギルドに来る頃じゃないのか?見てきてもらえるか?」  ヤスは、ミーシャに話をデイトリッヒの出迎えを頼む。  カイルとイチカがデイトリッヒと聞いて、ヤスの顔を見る。 「わかりました。連れてきてもいいのですよね?」 「頼む。会議室に入る許可は出してあるから、直接入ってもらって欲しい」 「わかり…

続きを読む
広告

2020/04/07

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四話 主要メンバー集結(除くリーゼ)

 ヤスは神殿に戻って食事(昼飯)を摂ってからから、ギルドに戻った。  ギルドでは、ミーシャがアーティファクトの登録を行っていた。 「ヤスさん。アーティファクトの登録は、全員が帰ってきてから行います。鍵の登録で問題がないと本部から通知が来ました」 「頼むな。それで、カイルとイチカは、まだディアスと見学か?」 「だと思います。呼びますか?」 「いや、いいよ。デイトリッヒも帰ってきていないから、急がなくてもいいだろう。奥の部屋を使っていいよな?」 「はい。ギルドマスターの部屋を使ってもいいですよ?」 「ドーリスの…

続きを読む

2020/04/06

【そして空を見上げた】あの日見た空

 私は、今会社の屋上に登っている。  あの人が最後に見た空は、私が今見ている空とは違うのだろう。こんなに、滲んで居なかっただろう。  私は、あの人が最後に見た空を見たかった。  光化学スモッグで汚れた空だが、あの人にはどんな風に映っていたのだろう。  空を見上げていた、口元は笑って居た。ただ、もう二度と、話をする事も笑顔を見ることもできない。  溢れ出る涙を拭って、部署に戻る。  もう一度空を見上げる。見上げた空は、何も変わっていなかった。  ここは、川崎駅から、南武線に乗って何駅か行った場所にある会社だ。…

続きを読む

2020/04/06

【第四章 復讐】第一話 赤い手毬花

(スズ。ありがとう) 「え?」  私は、掘り起こした場所を、”ぼぉー”と眺めている。  本当に、マホが見つかるとは・・・。違う。まだ、マホだと・・・。ううん。マホだ。私の記憶している服装と同じだ。片方の靴が無いが、マホがよく履いていた靴だ。スカートも破れているが、マホが着ていたスカートと同じだ。  誰が・・・。いや、解っている。杉本だ。許せない。許せない。許せない。  許せなければどうしたらいい。  そうだ、簡単だ。  マホと同じ苦しみを味わえばいい!  そうだ、殺そう。  簡単だ。  立花を、西沢を、日野…

続きを読む
広告

2020/04/06

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その3)

「カイル君。この部屋は、これから君が生活する部屋で間違っていないよ」 「ディアス姉ちゃん。俺1人で?孤児院に居た時には、この部屋よりも狭い場所で、全員が寝ていたぞ!?」  カイル君の言葉に弟たちが首を縦にふる。 「わかっています。でも、君たちはこれから沢山勉強して、ヤス様のために働いてもらいます。そのためには、広い部屋が必要です。カイル君は冒険者になって魔物を倒して強くなりたいのですよね?」 「・・・。うん」 「それなら、武器や防具を置いておく場所が必要です。それに、素材を集めて、鍛冶屋に武器や防具を作って…

続きを読む

2020/04/05

【目が覚めるとそこには】夢で終わらない

 あぁこれは、いつもの夢だ。誰にでも、1つくらいあるだろう。  同じような夢。疲れた時に見る夢。誰かを殺したいと思っている時に見る夢。  窓も、ドアも、部屋の調度品がなにもない部屋。上も下もわからない白い部屋に私が全裸で居る夢をよく見る。  私は、部屋の中を抜け出すために走りまくる。床だけでなく、壁や、天井を使って、走りまくる。走って、走って、走って、疲れ切って、倒れる。最後は、なぜか部屋から抜け出す。  その時に、必ず振り返ってしまう。白かった部屋が、真っ赤に染まったシーンで目をさます。  目を覚ますと、…

続きを読む

2020/04/05

【第三章 託された手紙】第六話 青い手毬花

「それで、沙奈。いつにする?」  克己が沙奈に予定を訪ねる。 「そうね。美和さん。次のお休みは?」  沙奈は、美和の予定に合わせるようだ。 「土日なら休めるわよ」  鍵となる鈴の予定を最後に聞いたのは、鈴の予定次第でスケジュールを決めなければならないためだ。 「鈴さんは?」 「え?あっ私も大丈夫だけど、進さんが休みの時がいいかな?唯をお願いできる」  鈴はいつでも大丈夫だというが土日だと唯の学校が休みで家に居る。  進が居ないと1人に鳴ってしまうのは心配だと考えた。 「それなら、土曜日だな。日曜日は呼び出し…

続きを読む
広告

2020/04/05

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その2)

 私は、ディアス。このくだりも何回か行っていると飽きてきます。  今、私はヤス様が保護を約束された子供たちと一緒にアーティファクトに乗っています。東門から西門に向かっています。 「ディアスお姉ちゃん。今度はどこに行くのですか?」  ”お姉ちゃん”いい響きです。カイル君はやんちゃな弟という感じで、イチカちゃんは好奇心が旺盛な妹という感じです。 「今度は、学校に行きます。イチカちゃんたちがこれから神殿の都(テンプルシュテット)で生活するのに必要な知識を学べる場所です」 「え?学べる?何か、教えてくれるのですか?…

続きを読む

2020/04/04

【さよならの理由】取られる事の無いコール

 もう、貴方の事は忘れたほうがいいの?  もう、連絡帳にも入れていない、貴方の連絡先。  消すまでに、1ヶ月掛かったのよ?  消してからも、指が、心が、体中が覚えてしまった、貴方の連絡先。  連絡帳から選択しないでも、貴方の電話番号をコールする事ができる。  ダメな事だとは理解している。  この取られないコール音だけが、私と、貴方を繋ぐ。細い。細い。細い。一本の糸。  けして繋がる事がない。一本の糸。  あれから、コール音を何回聞いた?出るはずが無いコール。1回、2回、3回、4回、解っている事だけど、コール…

続きを読む

2020/04/04

【第三章 託された手紙】第五話 記憶

「はい。マホが私に”見つけてほしい”と言っています。見つけて、帰ってきて欲しいです」  鈴の宣言を聞いた4人は覚悟を決めた。 「美和。悪いけど、沙奈を呼んできてくれ」 「わかった。子供たちの様子も見てくるね」  美和が部屋から出ていく。追い出したわけではない。今後の動きを確認するためと、行動するのなら沙奈が居たほうがいいと判断したのだ。関係者だけで行動するよりも、部外者が居たほうが言い訳ができる。 「克己。どうする?内容から、俺は動けないぞ」 「そうだな。桜と進は動かないほうがいいだろうな」 「進は絶対にダ…

続きを読む
広告

2020/04/04

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その1)

 私は、ディアス・アラニス。もうすでに、アラニスの姓は捨てたから、今はただの”ディアス”だ。  アデヴィト帝国で生まれたのだが、帝国を恨んでいる。家族を殺されたからだ。そして、私も殺されかけた。カスパルに救われて、私は神殿の都(テンプルシュテット)に住んでいる。  神殿の主であるヤス様にお願いされて、子供たちに神殿を案内している。子供たちは、来たばかりで神殿の施設(地下)に入る許可は降りていないが、神殿の都(テンプルシュテット)の施設なら案内できる。  まずは、魔の森方面に向かう。子供の代表は、カイルとイチ…

続きを読む

2020/04/03

【最高のおめでとう】一番欲しい言葉

「弘樹(ひろき)!」  同級生で、幼馴染の由紀乃(ゆきの)だ。 「なに?」 「卒業前に、みんなでボーリングに行くけどどうする?」 「みんな?」 「そう、大志(たいし)や弥生(やよい)も一緒だよ」  うーん。ボーリングは魅力的だけど、僕は高校受験が残っている。 「ごめん。行きたいけど、受験がまだ有るからね」 「え?弘樹は、私立に受かっているよね?」 「うん。滑り止めだからね。本命は、商業だよ」 「そうだったの?」 「うん」  大志や弥生と家に来て、兄さんたちと受験の話をしていた。 「でも、私立なら、私と一緒に…

続きを読む

2020/04/03

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三話 ヤスの勘違い

「ヤスさん。これは、ですね・・・。そう、そう、子供たちにヤスさんの偉大さを伝えていたのです!はい。多少の誇張は許されるべきです!」  ドーリスが一気に捲し立てるが、ヤスの笑顔の前では無意味に思えてくる。  サンドラも何か言おうとしたが、口を開いてから音にするのは止めた。 「ミーシャ!」 「はい?」  後ろからミーシャの声が聞こえる。 「ミーシャ。悪いけど、エイトと一緒に子供たちに神殿の案内を頼む。そう言えばリーゼは?」 「リーゼ様は、地下です」 「カート場か・・・」 「・・・。はい」 「しょうがないな。まだ…

続きを読む
広告

2020/04/02

【第三章 託された手紙】第四話 邂逅

 鈴は、マホが自分を恨んでいると思った。だから手紙を唯に渡して、届けさせたのだと考えたのだ。 「鈴!鈴!いいか、手紙が、本当にマホが書いた物なら、お前や進や唯を恨む内容ではない。大丈夫だ。マホがお前たちを恨むはずがない。鈴やなつみを恨んでいるのなら、同窓会のときに対応していたはずだ。だから、鈴。大丈夫だ」  克己が鈴を見てはっきりと宣言する。進も同調する。 「・・・。進さん。・・・」  年齢で言うと、鈴だけ年下になる。それでも、一児の母親だ。自分の子供に被害が及ぶかも知れないと思って恐怖を感じていたが、手紙…

続きを読む

2020/04/02

【3年目の出来事】3周年のチラシ

 高校生の男子が1人で住むには、少しだけ不釣り合いなマンションだが、大城(おおしろ)和義(かずよし)は一人暮らしをしている。  よくある理由で、不幸が重なったからだけだ。  高校2年になっているが、部活もバイトもしていない和義は、学校からまっすぐに部屋に帰ってくる。  マンションはオートロック機能がついている上に常時人が居る状態になっている。その上、部屋のドアには監視カメラがついていて、帰ってからでも訪ねてきた人を確認できる状態になっている。  和義が部屋のドアを開けると、白い1枚のチラシが床に落ちた。拾い…

続きを読む

2020/04/02

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二話 ドーリスとツバキと子供たち

「旦那様。旦那様。ツバキ様とドーリス様がお戻りになりました」  ヤスはまだしっかりと目覚めていない。  エイトが持ってきた水を飲んで、頭がと身体が起き出してくるのを感じている。 「子供たちは?」 「幼体は、孤児院に預ける前にギルドで話を聞くそうです」 「そうか、審査は問題なかったのだな」 「はい。幼体の代表が旦那様に面会を求めております」 「わかった。セバスに言って時間を調整してくれ」 「かしこまりました」 「あっそれから、シャワーを浴びたらリビングに行くから朝食の準備を頼む」 「はい」  ヤスがシャワーを…

続きを読む
広告
1 46 47 48 49 50 51 52 53 54 56