サイト小説の記事一覧

2020/03/30

【第一章 過去】第二話 同窓会

 そこは、ビルの3階にある結婚式の二次会で使われることが多い広いスペースを持つ飲食店だ。  同い年の男女が200名ほど集まっている。俗に言う”同窓会”が執り行われている。  通常の同窓会では、会費を入り口で徴収するなどのことが行われるが、この同窓会では、受付に名簿があるだけで誰かが立っているわけではない。  心配した数名が、会場の設営をしてくれた者たちに確認をしたら、すでに代金の支払いが終わっていることや、進行や設営の指示は貰っているということだ。 『同窓会にお越しの皆様』  アナウンスが始まった。  席が…

続きを読む

2020/03/30

【第一章 過去】第一話 葬儀

 黒い服に、黒いネクタイをした男性が2人で話をしている。  葬式に参列して、顔なじみに会って近況を話し合っているようにも見える。 「なぁ」 「なんだよ」    しかし、二人はここ4ヶ月で、3回の葬式に参列して顔を会わせている。   「少し葬式が多くないか?」 「あぁ?そうか?こんな感じじゃないのか?」  4回を少ないと考えることはできそうに無い。  しかし、二人は多いと考える事ができなかった。 「おっ西沢!久しぶりだな」  西沢と呼ばれた女性が立ち止まって二人を見る。 「なに?立花くんも山崎くんも来ていたの…

続きを読む

2020/03/30

【序章】第一話 終わり

 すべて終わったわけじゃないけど、ボクにできる事はもうない。  パパ。ママ。ユズ姉。ボクは地獄に行くよね。ボクは、天国には行けないよね。これだけのことをしたのだから、当然だよね。  後悔なんてしていないよ。ヤツラは、奴は、それだけの事をしたのだから、報いを受けないとね。ボクは、喜んで地獄に行くよ。この身体が・・・心が・・・100万回引き裂かれても、悠久の時を苦しもうと後悔はしないよ。ボクは、パパとママとユズ姉とナユ兄のことを思い出して、それだけでボクは大丈夫。だから、ボクのことは安心してね。  パパとママと…

続きを読む
広告

2020/03/30

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 孤児院

 俺がしっかりしないと!  クソジジイから初めて頼まれた。  弟と妹たちを頼むと言われた。当然だ。俺の妹と弟だ。絶対に守る!  俺たちの生活が変わったのは、領主のバカ息子が妾のために屋敷を建てると言い出した時だ。  前から、俺たちが住んでいる場所が目障りで何かと嫌がらせをしていた。成人して卒院した兄ちゃんや姉ちゃんが遊びに来たときに教えてくれた。  俺たちは、クソジジイが運営している孤児院で俺を含めて11人の子供が住んでいる。  俺が一番年上だから、長男だ。本当の兄弟や姉妹ではないけど、俺たちは兄弟で姉妹だ…

続きを読む

2020/03/30

【君と決めたルール】僕がルールを破る時

 何気ない日常の何気ない時間。  それが僕にとってかけがえのない物だったと知ったのは、何もかも・・・。”自分の身体”と”君への想い”と”君と決めたルール”だけが残された日だった。  君は、僕にそんな事を望んでいないだろう。  僕は、初めて、君との約束を僕の都合で破る事にする。  君と決めたルールは4つ。この4つは何が有っても変えないと二人で決めた。 1.嫌がる事はしない 2.他人に迷惑をかけない 3.辛くても笑おう 4.大切にする  だ。  今から1番と4番のルールを破る。 —  高校1年の最初…

続きを読む

2020/03/29

【第七章 王都ヴァイゼ】第十六話 孤児とユーラット

 子どもたちはすぐに見つけられた。  セミトレーラのライトに照らされた子どもたちは怯えていた。  馬が居なくても走る大きな馬車で、大きな目玉から光を放って、自分たちを見ているように見えれば大人でも怖くなってしまうだろう。子どもたちは、粗末な格好で生きているのが不思議な状況になっている者も存在している。  皆が怯えた目でライトが落とされたセミトレーラを見ている。  最初、ヤスが近づこうとしたのだが、ドーリスに止められた。男性が近づくよりも、女性である自分が行った方がいいと判断したようだ。  ドーリスを降ろして…

続きを読む
広告

2020/03/29

【紙とペンと復讐】復讐を誓った男の行動

 そこは、寂しい港町。始発を待つ者は誰も居ない。  誰も居ないと解っていながら、1人の男性は毎日ホームに立つ。  ホームで始発電車が到着するのを待っている。  男が持つメモ用紙には、電車の時刻表と到着時間がメモされている。  ホームに電車が滑り込んでくるのを待っている。  数分後に、電車がホームに滑り込んできた。  男は、ホームに吊り下げられている時計を見る。毎朝、男が調整している時計だ。  電車が止まって扉が開く。  寂れた港町の駅では降りる客も少ない。  始発となれば、0人が規定の数字だ。  男は、ホー…

続きを読む

2020/03/28

【隣の料理人】食事のスパイスは勘違い?

 その女性の住む部屋は、古いアパートだだ。 (はぁ今日も疲れた)  誰も待っていない部屋に女性が入っていく。手に持っているのは、近くにある弁当屋さんの袋だ。  部屋に入って、仕事場にしていくポニーテールを解いて、髪の毛を下ろす。 (どんどん。好きだけど・・・今日も、隣の部屋からはいい匂いがしている)  アパートと言っても、女性の一人暮らしだ。セキュリティには気を使った。  部屋を借りる時に、隣に音が聞こえないようにとか、周りにどんな人が住んでいるのかを確認していた。  しかし、匂いまでは気にしていなかったの…

続きを読む

2020/03/28

【第七章 王都ヴァイゼ】第十五話 ユーラットへ・・・到着出来なかった

 ヤスと辺境伯が話をしている最中に、物資を積んだ馬車が門を抜けてきた。  馬車を見たヤスが辺境伯に、情報はドーリスに伝えるようにお願いして、その場を立ち去る。 「ドーリス殿」 「クラウス様。もうしわけありません。ヤス様は・・・。その・・・」 「サンドラから聞いていた通りの人ですね」 「え?」 「貴女もですが、ヤス殿は・・・。”よくわからない”という言葉が似合う御仁はいませんね」 「そうですね。数日間、一緒にいましたが本当に”よくわからない”人でした」  コンテナを開けて物資の搬入を始めたヤスを二人が見つめて…

続きを読む
広告

2020/03/25

【二番目の愛情】戸惑いの告白

 俺には長男だけど二番目の子供だ。  当然の事だと思う。  俺は少しだけ複雑な子供だ。  俺の父はバツ1なのだ。  父の再婚相手が、俺の産みの母で、産みの母の最初の配偶者が本当の父なのだ。  ようするに、俺が今『父』『母』と呼んでいる両親とは血が繋がっていない。  本当の両親が、どうなったのかは知らない・・・ことになっている。  一度酔った父が話してくれた。  俺の本当の父は、父の友人だった人物ですでに死去している。産みの母も、父と再婚して2年後に死去した。  自殺だと言っていた。父は、本当の母の死を自分た…

続きを読む

2020/03/25

【白いフクロウ】御使い

 そこは終末医療専門の病院だ。  誰も訪ねてくる事もなく、ただ死を待つだけの人たちが、最後の時を心安らか過ごす場所だ。冥界に旅立つその時まで、サポートを行う病院なのだ。  1人の女性が運び込まれた。  身寄りのない女性。女性というには幼い。少女と言ってもいい年齢だ。 「先生」 「もって1ヶ月と言われている」 「でも、なんでここに?」  看護師が不思議に思うのも当然だ。  ここは救いのない病院。少女が最後を迎えるのに相応しいとは思えない。 「彼女の希望だ」 「え?」 「彼女は、とある事件の被害者の家族で、唯一…

続きを読む

2020/03/23

【第七章 王都ヴァイゼ】第十四話 移動中の会話

 ヤスは、ドーリスから冒険者ギルドに出された依頼書を見せられて、簡単に説明された。 「ヤスさん。もうしわけありません」 「別に、ドーリスが謝罪する必要はないだろう?」 「でも・・・」 「必要ない。それに、依頼を受けた奴は居ないのだろう?」 「リップル子爵領にあるギルドは不明だけど、他のギルド経由でも依頼を受けた者が居ないのは確認されています」 「それなら別にいいよ」 「え?」 「だって、襲ってきた連中は、俺を殺すつもりなのだろう?」 「そうですね」 「だったら、殺されても文句は言えないよな?」 「ヤスさん。…

続きを読む
広告

2020/03/22

【雨の日】海に浮かぶ傘

 僕は、雨が嫌いだ。  この表現は、間違っていないが、合っているわけではない。  正確に言うのなら、雨が降っているときに、差して一人で歩くのが嫌いだ。傘を差さないで移動することは、別に嫌いでもない。むしろ好きだと言える。雨に濡れながら歩くことで、思い出も、過去も、積み重なった想いも、全て流してくれる・・・そんな感じがする。  雨の日は、僕の心の中にある、蓋さえも溶かしてしまう。  思い出したくもない。でも、忘れたくない。そんな、蓋をしてしまい込んだ思い出を・・・。  そう、あれは、僕が初めて人を好きになった…

続きを読む

2020/03/22

【近くて遠い50cm】最後の一歩

 僕が彼女を意識し始めたのは、何時だっただろうか?  彼女が、僕に向かって 「ちょっと家まで遠いけど送ってくれる?」  送った時に話した事がきっかけだったのだろうか?  彼女は、1つ年下の19歳になる大学生。話を聞いて初めて知ったのだが、僕と同じ大学の2つ下の学年になる。  僕と彼女の出会いは、バイト先が同じになったことがきっかけになる。  バイト先も同じだし、同じ大学に籍を置いている、話そうと思えば話せる関係にあるし、メールアドレス・電話番号も知っている。  同じ時間を共有する機会は多く存在している。  …

続きを読む

2020/03/22

【嘘と裏切り】彼と彼女の選択

 彼は、僕にこんな感じで話を切り出した。 「彼女は僕を好きでいてくれるし、僕も彼女を愛している」  彼には家庭がある。  その事実を、彼女には告げているという。裏切りが成立してからの恋。  これほど残酷な結末を二人以外に強いる関係ははない。僕は、不倫を否定するつもりはない。僕には出来ない、ただそれだけだ。  僕の持っている”物”で、約束できることは、  ”裏切らないこと”  話すことに”嘘”を、入れないこと。聞かれていない事や聞かれたくないことは、そう答える。それが唯一、僕が、恋人や、好きな人たちに言ってい…

続きを読む
広告

2020/03/22

【第七章 王都ヴァイゼ】閑話 テンプルシュテットでは・・・

「リーゼ!それはダメだと思うの!」  姦しい声が地下のカート場に響いている。  神殿のカート場に居るのは、ハーフエルフのリーゼ。帝国から連れてこられたディアス。神殿近くに領地を持つ辺境伯の娘であるサンドラ。  それと、ドワーフの方々だ。 「何がダメなの!問題は無い!ね!サンドラもそう思うでしょ?」 「私を巻き込まないでよ。わたしは、調整で忙しいの!」  3人で会話をしているようにも聞こえるが実際には違っている。  リーゼとディアスはカートでならし走行をしている。サンドラは、ドワーフにお願いして愛機をいじって…

続きを読む

2020/03/21

【第七章 王都ヴァイゼ】第十三話 問題が発覚した。

『マスター。個体名ドーリスが近づいてきています』  マルスは、居住スペースで寝ているヤスを起こす。  起こすのはそれほど難しくない。 「おはようございます」  ドーリスが運転席にたどり着く頃にはヤスも起きて外に出ていた。 「おはよう。荷物の積み込みか?」 「はい。お願い出来ますか?」 「わかった。コンテナを開けて待っている。この町では何が手に入る?」 「今までと同じです。主に、イモ類です」 「わかった。積み込みの監視は頼む」 「はい。ギルドも人を出してくれるので大丈夫です」  ヤスが監視を気にするのは、2つ…

続きを読む

2020/03/20

【感じた重さ】失った物

 確かに、僕は、彼女の・・・君の重さを感じていた。ほんの数秒前に、君は僕の腕の中に居た。  彼女は僕の前に現れた。僕は、一目見て君を愛する道を選んだ。そして、彼女もそれを受け入れてくれた。僕の心には、彼女がいて、彼女が側にいる日常が当然の事の様に思っていた。  僕は、彼女の夢を聞いて、彼女は僕の夢を聞いてくれた。そう、二人を別つ事が来ることを考えていなかった。  僕は、彼女と初めて身体を合せた公園に来ている。あの時は、確かに彼女を身体で感じる事が出来た。  そして、彼女も僕の重みを感じてくれていた。二人は、…

続きを読む
広告

2020/03/20

【消された証】過去の清算

 俺は、消防士をしている。  よくある話だが、この職業をしていると、”バカ”に遭遇する事が多い。  今日も、高校生の”ガキ”が、公園で花火をしていると連絡が入った。”警察に言えよ”とも思うが、公園の遊具が燃えていると言われたら、緊急出動しなければならない。  俺は、大木の様にはなれないだろう。  やつは、中学生の時に、学校で自殺騒ぎがあり、それが後に事故だと言われて、最終的には、いじめの延長で殺されたと知った。その殺人がきっかけで、同窓会で数名が殺されるという事件があった。やつは、それがきっかけで、今でも収…

続きを読む

2020/03/20

【消えない絆】それぞれの思い

 僕には、彼女が居る。他の人には見えないが、僕には彼女を感じる事が出来るし、彼女を見ることができる。  彼女とのであいは、かなり前にさかのぼらなければならない。僕と彼女は、世間で言う”幼なじみ”の関係にある。僕が、彼女を好きだって事に気がついて、彼女が受け入れてくれたのは、つい最近の事で、彼女が肉体を失った日になる。  彼女が好きなアニメの劇場版のチケットを買って、日曜日に映画に誘った。彼女は友達と行く予定だったようだが、僕の誘いを受けてくれた。  そして、映画を見る前に、待ちの駅前の喫茶件で僕の気持ちを打…

続きを読む

2020/03/20

【第七章 王都ヴァイゼ】第十二話 帰り道

 セミトレーラが動き出してしばらく経ってから、ドーリスがヤスに話しかける。  王都に向かう行程ではアーティファクトを動かすには魔力と精神力を使うと思って無駄な話はしないようにしていたのだが、ヤスが大丈夫だと言ったので、ドーリスも気にしないで話しかけるようになった。 「ヤス殿」 「そうだ!ドーリスも、”殿”とか”様”とか付けないで欲しいけどダメか?」  ヤスは、以前から気になっていたのだ。  ”殿”とか”様”とか言われるのが好きじゃない。できれば、神殿の主と言われるのも止めてほしいと思っていた。 「良いのです…

続きを読む
広告

2020/03/19

【第七章 王都ヴァイゼ】第十一話 王都にて

 ヤスは、居住スペースで目を覚ました。 『マスター。おはようございます』 『マルスか?』 『はい。報告はエミリアがいたしますが、昨晩は、誰からも攻撃はありませんでした』 『そうか、ありがとう。ドーリスは?』 『まだ来ていません』 『わかった。近くに来たら教えてくれ』 『了』  ヤスが起きてマルスに指示を出している頃。  ドーリスは、冒険者ギルドで神殿の都(テンプルシュテット)の承認申請を行っていた。すでに根回しは終わっているので、軽く質問されただけで終わった。  ギルドマスターになる祝詞を宣言するだけで終わ…

続きを読む

2020/03/19

【笑えない話】仕事を頑張る人

 あぁ今日も終電を逃してしまった。  しょうがない。いつものように、プロジェクトの進行状況を確認して、問題がありそうなところをレビューしておこうかな。  僕が務める会社は、ソフトウェアの開発を行っている。小さな地方都市の、小さな小さな会社ですが、幸いな事に仕事が切れる事がない。人手不足とまでは言わないけど、待機工数が発生しないくらいには仕事が充実している。こんな事を言うと自慢に聞こえかもしれないが、僕が開発した”開発ライブラリ”が売れている。  音声を使って操作コマンド入力を可能にする開発ライブラリだ。各種…

続きを読む

2020/03/19

【見えない手】港町の喧騒

 僕の田舎は、東名高速が通って居ることと、銘産となる海産物があるくらいしか取り柄がない。田舎町だ。  その中でも、港に近い地区には、昔からの風習が残されている。中学校卒業を間近に控えた、十分冬と言われる季節に行われる行事だ。  春漁の豊漁と、新しく船乗りになる、男児が行う行事だ。  僕は、漁師にはならない。高校に進学するし、できれば、大学にも行きたい。伝統行事と言われるが、はっきりって迷惑この上ない。しかし、悲しい村社会・・・漁師ではない僕は、参加を拒否する事はできるはずだったが、円味(まるみ)が参加する。…

続きを読む
広告

2020/03/18

【第七章 王都ヴァイゼ】第十話 王都到着

 ヤスが門の前にセミトレーラを止めると、護衛の兵士がセミトレーラの前方にやってきた。  顔が引きつっているのがわかる。ヤスは笑いをこらえて、ライトを落としてからセミトレーラのエンジンを停止した。エンジン音がなくなり静寂が訪れる。 「ヤス殿。ハインツ様と話をしてきます」 「わかった。一旦降りるけど、俺は中で待っているよ」 「わかりました」  ディアナの座席の配置の関係で、先にヤスが降りなければならない。ついでドーリスが降りる。  1人の男性が近づいてきたので、ヤスは警戒しながらエミリアに命じて結界を解除する。…

続きを読む

2020/03/17

【第七章 王都ヴァイゼ】第九話 交渉と王都へ

 ヤスの交渉は難航した。  理由は簡単だ。ヤスが”金貨”しか提示しなかったからだ。今回は、王都で大量の物資を買うので細かい硬貨よりも金貨で精算しようと思っていたのだ。足りなければ、ギルドから引き出せばいいと考えていた。  街々での購入も、ギルドに預けている硬貨で購入すればいいと思っていたのだ。 「村長。ヤス殿の条件でよろしいですか?」 「問題はありませんが、ヤス様はよろしいのですか?」  交渉をさっさと切り上げたいのは、村長もドーリスも同じだった。  ヤスが拘っているだけなのだ。そこで、ドーリスはヤスから条…

続きを読む

2020/03/16

【第七章 王都ヴァイゼ】第八話 寒村は宝の山です

「ドーリス。こっちでいいのか?」 「はい。間違いないです」 「わかった。速度を落とすから、曲がるのなら教えてくれ」 「はい」  ヤスは、山道を走っている。  山道と言ってもほぼ一本道だ。山道に進路を変更するときに、ドーリスの指示が遅れてUターンして戻った経緯があるので、ヤスはそれから速度を緩めるようにした。 「今更だけど、今から向かう村の名前を教えてくれ」 「そうでした。説明していませんでした。村の名前は、『エルスドルフ』という名前です」 「なぜその村に塩を届ける?」 「何も無い村で、交易品が無いので塩の購…

続きを読む
広告

2020/03/08

【第七章 王都ヴァイゼ】閑話 クラウス・フォン・デリウス=レッチュ辺境伯

 フォルツから報告を聞いた。  神殿の主は、強者の雰囲気は一切纏っていないと説明された。フォルツが腰の剣を振り下ろせば殺せると思えてしまったようだ。  しかし、フォルツが試しに殺気を神殿の主に向けて踏み込もうとした瞬間に自分が殺されているビジョンしか見えてこなかったと言っている。強者ではないが、逆らってはダメな人間だ。フォルツは、儂に進言してくる。 「クラウス様。神殿の主。ヤス様と敵対しないでください。敵対したときには、全力で逃げてください。何分間の時間を稼げるかわかりませんが全力で間に入ります。もしかした…

続きを読む

2020/03/07

【第七章 王都ヴァイゼ】第七話 領主からの依頼

 ヤスはエミリアに命じて結界を解除した。 「ヤス殿。感謝します」  コンラートが近づいてきて、まずヤスに感謝の言葉を口にした。  ヤスはコンラートの言葉を流しながらドーリスに話しかける。 「いや、それは良いけど・・・。ドーリス。もう出られるのか?次の街に行こう」 「いえ、領主から依頼がありまして、その関係で彼らに来てもらいました」  襲撃犯を完全に無視してヤスとドーリスは話をしているのだが、目の前で拘束された連中がなにか文句を言っている。 「・・・。はぁ・・・。ドーリス。そこで転がっている芋虫以下の奴らは潰…

続きを読む

2020/03/06

【第七章 王都ヴァイゼ】第六話 アーティファクトは偉大です?

 ドーリスが各ギルドを回って神殿への不干渉を取り付けて冒険者ギルドに戻ってきた。 「ちょうど良かった。ドーリス。塩を積んだ馬車と護衛が到着した」 「よかった。それでは行きましょう。ヤス殿が待っている・・・。と、思います」 「なぜ言い切らない」 「アーティファクトの中で寝ている姿が想像出来たので・・・」 「寝られるのか?」 「寝られます。私は入っていませんが、リーゼとアフネス様とダーホスとイザークは乗ったと言っていました」 「そ、そうか?でも、アーティファクトと言っても安全では無いのだろう?寝るとは・・・」 …

続きを読む
広告
1 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57