仏舎利塔と青い手毬花の記事一覧

2020/04/30

【終章】最終話 始まり

「ママ!行ってきます」 「気をつけるのよ」 「うん。大丈夫。スズとナツミと一緒だから!」  真帆は学校でいじめられている。家では、”いじめられている”とは言っていない。両親を心配させたくなかったのだ。  家から出る時には、無理にでも元気に出ようと思っているのだ。  両親は、真帆の気遣いを嬉しく思いながら、実際に”いじめられている”状態が解っているのだ。放置しているわけではない。学校に相談したが、担任の杉本が出てきて”いじめなんてない”と言うだけだ。校長に話をしたが何も変わらなかった。家族はそれでも諦めなかっ…

続きを読む

2020/04/29

【第四章 復讐】第六話 最後の1人

 警察の取調室。一人の男が警察官と対峙していた。ドアは閉められている。取り調べの前に、警察官がしっかりと宣誓している。取り調べの様子が録画される事や、記憶として残される事、弁護士を呼ぶのなら先に呼んで欲しいという事だ。  男は、杉本という名前だ。  元小学校の教師だ。元というのは、10日前に依願退職しているからだ。依願退職となっているが、スポンサー(親戚の山崎)からの圧力があり、辞めるしかなかった。本人は辞めるつもりはなかった。来年には、校長が見えていたのだ。校長になってから、無難に6年過ごして、スポンサー…

続きを読む

2020/04/28

【第四章 復讐】第五話 須賀谷真帆

 須賀谷真帆の毛髪は、ナツミが保管していた。正確には、ナツミが子供の時に使っていたブラシに毛髪が残っていた。お泊り会をしたときに、ナツミがマホに貸した物だ。そのまま使わないでしまわれていたのだ。ブラシからナツミとスズ以外の髪の毛を探して、白骨死体から見つかった物と突合した。結果、かなりの確率で白骨死体が須賀谷真帆だと断定された。  翌日、白骨死体が須賀谷真帆だと確定した。  記憶を無くしていた、那由太が仏舎利塔に現れたのだ。  那由太のDNAと白骨死体のDNAが調べられた。兄妹関係が確認されて、行方不明にな…

続きを読む
広告

2020/04/27

【第四章 復讐】第四話 立花祐介

 西沢円花が、東京に向けて高級外車を走らせ、日野香菜が別荘で悪態を付いている頃。立花祐介もマスコミから身を隠すように父親から命令されていた。立花祐介は、他の二人と違って細かい指示はされなかった。  蝿のように集ってくるマスコミに見つからないようにすればいいと考えたのだ。  立花祐介は、インテリジェンスビル(高度情報化建築)にある自身が契約した最上階の部屋に居る。  同級生で、同窓会の時に犠牲となった山崎の実家が持っているビルの最上階をタダ同然で借りているのだ。  タダ同然というのにも理由がある。毎月の賃料は…

続きを読む

2020/04/26

【第四章 復讐】第三話 日野香菜

 西沢円花が、東京に高級外車を走らせている頃、日野香菜は父親が用意した別荘に居た。  日野香菜も、西沢円花と同じ様に地元では有名だ。祖父が長年に渡って町議会で委員長を勤めた。地盤を継いだ父親は、町議会から県議会に、そして国政に打って出た小選挙区では相手候補が強すぎて負けてしまったが、比例で復活当選を果たしている。  その娘なのだ。現在、同じ派閥の議員の息子と婚約をしたばかりなのだ。  そこに、スキャンダルと言える、同窓会での事件が発生した。日野香菜も他の参加者と同じで参加する予定ではなかったのだが、なぜか参…

続きを読む

2020/04/24

【第四章 復讐】第二話 西沢円花

 西沢円花は、旦那が会社の資金を流用して購入した高級外車を走らせていた。 「なんで私が、私は社長夫人なのよ!」  旦那のIT企業は本社を地元に置いて、都内に支社を作っていた。規模は、支社の方が大きいのだが、本社機能だけを残している。 「あの人も、あの人よ。今更、なんだって言うのよ!」  円花は、先日警察から呼び出しを受けた。地元の古くあまり使われていないキャンプ場で白骨化した死体が見つかったのだ。  同窓会の時に起きた凄惨な事件と相まってマスコミが騒いだ。  見つかった当初は、20年近く前の白骨死体とだけ報…

続きを読む
広告

2020/04/06

【第四章 復讐】第一話 赤い手毬花

(スズ。ありがとう) 「え?」  私は、掘り起こした場所を、”ぼぉー”と眺めている。  本当に、マホが見つかるとは・・・。違う。まだ、マホだと・・・。ううん。マホだ。私の記憶している服装と同じだ。片方の靴が無いが、マホがよく履いていた靴だ。スカートも破れているが、マホが着ていたスカートと同じだ。  誰が・・・。いや、解っている。杉本だ。許せない。許せない。許せない。  許せなければどうしたらいい。  そうだ、簡単だ。  マホと同じ苦しみを味わえばいい!  そうだ、殺そう。  簡単だ。  立花を、西沢を、日野…

続きを読む

2020/04/05

【第三章 託された手紙】第六話 青い手毬花

「それで、沙奈。いつにする?」  克己が沙奈に予定を訪ねる。 「そうね。美和さん。次のお休みは?」  沙奈は、美和の予定に合わせるようだ。 「土日なら休めるわよ」  鍵となる鈴の予定を最後に聞いたのは、鈴の予定次第でスケジュールを決めなければならないためだ。 「鈴さんは?」 「え?あっ私も大丈夫だけど、進さんが休みの時がいいかな?唯をお願いできる」  鈴はいつでも大丈夫だというが土日だと唯の学校が休みで家に居る。  進が居ないと1人に鳴ってしまうのは心配だと考えた。 「それなら、土曜日だな。日曜日は呼び出し…

続きを読む

2020/04/04

【第三章 託された手紙】第五話 記憶

「はい。マホが私に”見つけてほしい”と言っています。見つけて、帰ってきて欲しいです」  鈴の宣言を聞いた4人は覚悟を決めた。 「美和。悪いけど、沙奈を呼んできてくれ」 「わかった。子供たちの様子も見てくるね」  美和が部屋から出ていく。追い出したわけではない。今後の動きを確認するためと、行動するのなら沙奈が居たほうがいいと判断したのだ。関係者だけで行動するよりも、部外者が居たほうが言い訳ができる。 「克己。どうする?内容から、俺は動けないぞ」 「そうだな。桜と進は動かないほうがいいだろうな」 「進は絶対にダ…

続きを読む
広告

2020/04/02

【第三章 託された手紙】第四話 邂逅

 鈴は、マホが自分を恨んでいると思った。だから手紙を唯に渡して、届けさせたのだと考えたのだ。 「鈴!鈴!いいか、手紙が、本当にマホが書いた物なら、お前や進や唯を恨む内容ではない。大丈夫だ。マホがお前たちを恨むはずがない。鈴やなつみを恨んでいるのなら、同窓会のときに対応していたはずだ。だから、鈴。大丈夫だ」  克己が鈴を見てはっきりと宣言する。進も同調する。 「・・・。進さん。・・・」  年齢で言うと、鈴だけ年下になる。それでも、一児の母親だ。自分の子供に被害が及ぶかも知れないと思って恐怖を感じていたが、手紙…

続きを読む

2020/04/02

【第三章 託された手紙】第三話 託された手紙

「あ!ママ。忘れ物は見つかった?」  美和と沙奈が制止しようとしたが、唯は鈴に抱きついた。 「うん。ありがとう。見つかったよ。それで、唯。手紙は読んだの?」 「うん!菜々ちゃんが書いたのは先生から貰ったよ!」 「菜々ちゃんが書いた?」 「うん!お休みするときに、書いてくれて、菜々ちゃんのママが持ってきてくれたの!」  唯の話を聞いて、鈴と進は安心した。  やはり、唯の話し方が悪かっただけで、先生が2つ先に居る唯に届けてくれたのだろう。そう考えた。  しかし、桜は唯が不自然だと感じた。 「なぁ唯」 「何?ユウ…

続きを読む

2020/04/01

【第三章 託された手紙】第二話 星

 唯の話に補足を入れているユウキの言葉が余計に話を複雑にして大人たちを翻弄した。  どうせいつも通りだろうと、その場に居た者たちは唯とユウキの話を聞き流していた。 「遅くなってごめんなさい」  警察の取り調べが終わった鈴が丸大飯店に入ってきた。進が書いて置いた伝言を見て来たのだ。 「鈴。遅かったな」 「桜さん。”遅かったな”じゃないわよ。私に聞いたって何も知らないわよ」  鈴は話を聞くという取り調べを受けていた。  桜が関係していないのは知っているのだが、当たりたくなる気持ちもわかる。 「そうだろうけど・・…

続きを読む
広告

2020/03/30

【第三章 託された手紙】第一話 報告

「ママ!ただいま!」  九条唯は、来たときと同じように長嶋校長が運転するバスに乗って家に帰ってきた。  玄関は空いていたので、そのまま家に上がって、母親を探す。  いつもは、パソコンが有る部屋に居るか家事をしているのだが、今日はどこにも居ない。 「あれ?ママが居ない?」 「唯。おかえり。早かったな」  九条(くじょう)進(すすむ)。  唯の父親だ。今日は、仕事が休みで珍しく家に居たのだ。  進の仕事は、船大工で主に漁船のメンテナンスをしている。あとは、メカ音痴の為に魚群探知機やオート操舵のセッティングを行っ…

続きを読む

2020/03/30

【第二章 キャンプ】幕間 手紙

 唯はもらった2通の手紙を眺めている。 (ママに渡してって言われたけど、ママの知っている子なのかな?)  そして、唯は知らなかった。  この手紙を、母親である九条(くじょう)鈴(すず)が読む時に新しい犠牲者が産まれる事を・・・。 (マホちゃん?私以外には声をかけなかったけど良かったのかな?もうどっかに居なくなっちゃったけど?) 「唯!」 「うん!」  自分を呼ぶ声に気がついた唯は周りを見回すが、手紙と順番を教えてくれた女の子が居なかった事を不思議に思ったが、気にしないで名前を読んでくれた、タクミの方に急いだ…

続きを読む

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第五話 手紙

 唯が1人で寂しい思いをしている時に、手紙のリレーは鳴海から晴海に、晴海からユウキに繋がろうとしていた。 「あ~る~は~れ~た~きょ~う~の~ひ~を~」  晴海に歌声が聞こえてくる。  正直タクミ以外には、なんの歌かわからない。晴海は、一度タクミに聞いたのだが、言葉を濁して逃げられてしまった。  そして、問題ないのは歌詞だけではない音程がめちゃくちゃなのだ。  しかし、晴海は音程が外れた調子の歌声を聞いてユウキが近い事を確信した。 「ユウキ!」 「ハルちゃん!待っていたよ!」 「だから、僕は男だ!」 「解っ…

続きを読む
広告

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第四話 肝試し

 夕飯が終わって、キャンプ場に集められた生徒たちは座って、先生が離す怪談を聞いていた。 ”キャァァ!!” ”ヤメロ!”  誰が言ったのは名誉のために伏せておこう。  しかし、タクミたちではない事だけは確かだ。  タクミたちの班は一箇所に集まって話を聞いているのだが・・・。 ”フッフーン。怖くなんて無い”  ユウキが口ずさんでいるが、タクミの服の裾を離す気配はない。同じく、鳴海は晴海を後ろに座らせて、自分の背後を守らせている。  怪談は、よくある話だ。  よくある話だけに怖いのだ。そして、積み重ねられた歴史が…

続きを読む

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第三話 タクミの能力?

「ちょっと待て!ユウキ!」  タクミの静止も虚しく、肝試しの順番が最後に決定してしまった。  それには理由もあった。班のリーダーはユウキなので、ユウキが言ったのなら決定事項になる。  先生方もわざと意地悪をしたわけではない。  これが、最初を望んだりしているようなら、タクミの静止を聞いて、”班で話し合ってからもう一度申告しなさい”と言ってくれだろう。しかし、ユウキが言ったのが”最後”だったので、先生はこれ幸いと受諾してしまったのだ。  先生方の考えもわかる。理由も簡単だ。肝試しの順番では、最後を選ぶ班はほと…

続きを読む

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第二話 二日目

「ねぇユウキ?」 「なに?」  班ごとに部屋に入っている。  もう、夕ご飯も食べて、夜のリクリエーションも終わって、各班に割り当てられている部屋の一室だ。  9時を少し回った位の時間だが、朝早い時間に集合して、慣れない山歩き。疲れて寝てしまう子が出ても不思議ではない。  この部屋に居るタクミ。ユウキ。唯。鳴海。晴海の5名も疲れて寝てしまっている者も居る。起きているのは、元気いっぱいなユウキと慣れない場所で寝られない唯だ。 「ユウキのパパとママは、私のパパと同級生だよね?」 「うん。タクミの克己パパも同級生だ…

続きを読む
広告

2020/03/30

【第二章 キャンプ】第一話 お泊まり会

「桜!」 「なんだよ」  そこは、篠崎家のリビングだ。  森下桜は、悪友で隣に住む篠崎克己の家をたずねている。  お互いは幼馴染だと言っていい関係だ。  二人は、生まれ育った町に家を新築した。隣り合った土地が空いていた事や、とある事情で安く購入する事ができるなどのいくつかの偶然が重なった結果だ。二人とも、実家は別にある。実際には、篠崎克己には実家と呼べる物は無い。両親や親戚は、全て他界してしまっている。篠崎克己には、妻の沙菜と息子の巧が居るだけだ。  森下桜には、母親は存命だが隣町に引っ越してしまっている。…

続きを読む

2020/03/30

【第一章 過去】第三話 忍び寄る影

『きゃぁぁぁぁ!!!!』  どこからか悲鳴が聞こえる。  鈴と菜摘も悲鳴の方を見ると、前面に備え付けられていたスクリーンが降りてくる。  スクリーンに何かが投影され始めたのだ。  最初は、最近死去した者たちの写真が流れた。  その後、鈴と菜摘も会場で見かけた者たちの名前が流れるように表示される。 「(山中と古谷?)」  鈴は後ろの席に座っていた二人の名前を見つけて、気になって後ろを振り向いた。  鈴と菜摘のテーブルは中央の最前列になっている。  横には、今は静かになっているが、騒がしかった立花たちが座ってい…

続きを読む

2020/03/30

【第一章 過去】第二話 同窓会

 そこは、ビルの3階にある結婚式の二次会で使われることが多い広いスペースを持つ飲食店だ。  同い年の男女が200名ほど集まっている。俗に言う”同窓会”が執り行われている。  通常の同窓会では、会費を入り口で徴収するなどのことが行われるが、この同窓会では、受付に名簿があるだけで誰かが立っているわけではない。  心配した数名が、会場の設営をしてくれた者たちに確認をしたら、すでに代金の支払いが終わっていることや、進行や設営の指示は貰っているということだ。 『同窓会にお越しの皆様』  アナウンスが始まった。  席が…

続きを読む
広告

2020/03/30

【第一章 過去】第一話 葬儀

 黒い服に、黒いネクタイをした男性が2人で話をしている。  葬式に参列して、顔なじみに会って近況を話し合っているようにも見える。 「なぁ」 「なんだよ」    しかし、二人はここ4ヶ月で、3回の葬式に参列して顔を会わせている。   「少し葬式が多くないか?」 「あぁ?そうか?こんな感じじゃないのか?」  4回を少ないと考えることはできそうに無い。  しかし、二人は多いと考える事ができなかった。 「おっ西沢!久しぶりだな」  西沢と呼ばれた女性が立ち止まって二人を見る。 「なに?立花くんも山崎くんも来ていたの…

続きを読む

2020/03/30

【序章】第一話 終わり

 すべて終わったわけじゃないけど、ボクにできる事はもうない。  パパ。ママ。ユズ姉。ボクは地獄に行くよね。ボクは、天国には行けないよね。これだけのことをしたのだから、当然だよね。  後悔なんてしていないよ。ヤツラは、奴は、それだけの事をしたのだから、報いを受けないとね。ボクは、喜んで地獄に行くよ。この身体が・・・心が・・・100万回引き裂かれても、悠久の時を苦しもうと後悔はしないよ。ボクは、パパとママとユズ姉とナユ兄のことを思い出して、それだけでボクは大丈夫。だから、ボクのことは安心してね。  パパとママと…

続きを読む