サイト小説の記事一覧
2020/04/07
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四話 主要メンバー集結(除くリーゼ)
ヤスは神殿に戻って食事(昼飯)を摂ってからから、ギルドに戻った。 ギルドでは、ミーシャがアーティファクトの登録を行っていた。 「ヤスさん。アーティファクトの登録は、全員が帰ってきてから行います。鍵の登録で問題がないと本部から通知が来ました」 「頼むな。それで、カイルとイチカは、まだディアスと見学か?」 「だと思います。呼びますか?」 「いや、いいよ。デイトリッヒも帰ってきていないから、急がなくてもいいだろう。奥の部屋を使っていいよな?」 「はい。ギルドマスターの部屋を使ってもいいですよ?」 「ドーリスの…
続きを読む2020/04/06
【そして空を見上げた】あの日見た空
私は、今会社の屋上に登っている。 あの人が最後に見た空は、私が今見ている空とは違うのだろう。こんなに、滲んで居なかっただろう。 私は、あの人が最後に見た空を見たかった。 光化学スモッグで汚れた空だが、あの人にはどんな風に映っていたのだろう。 空を見上げていた、口元は笑って居た。ただ、もう二度と、話をする事も笑顔を見ることもできない。 溢れ出る涙を拭って、部署に戻る。 もう一度空を見上げる。見上げた空は、何も変わっていなかった。 ここは、川崎駅から、南武線に乗って何駅か行った場所にある会社だ。…
続きを読む2020/04/06
【第四章 復讐】第一話 赤い手毬花
(スズ。ありがとう) 「え?」 私は、掘り起こした場所を、”ぼぉー”と眺めている。 本当に、マホが見つかるとは・・・。違う。まだ、マホだと・・・。ううん。マホだ。私の記憶している服装と同じだ。片方の靴が無いが、マホがよく履いていた靴だ。スカートも破れているが、マホが着ていたスカートと同じだ。 誰が・・・。いや、解っている。杉本だ。許せない。許せない。許せない。 許せなければどうしたらいい。 そうだ、簡単だ。 マホと同じ苦しみを味わえばいい! そうだ、殺そう。 簡単だ。 立花を、西沢を、日野…
続きを読む2020/04/06
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その3)
「カイル君。この部屋は、これから君が生活する部屋で間違っていないよ」 「ディアス姉ちゃん。俺1人で?孤児院に居た時には、この部屋よりも狭い場所で、全員が寝ていたぞ!?」 カイル君の言葉に弟たちが首を縦にふる。 「わかっています。でも、君たちはこれから沢山勉強して、ヤス様のために働いてもらいます。そのためには、広い部屋が必要です。カイル君は冒険者になって魔物を倒して強くなりたいのですよね?」 「・・・。うん」 「それなら、武器や防具を置いておく場所が必要です。それに、素材を集めて、鍛冶屋に武器や防具を作って…
続きを読む2020/04/05
【目が覚めるとそこには】夢で終わらない
あぁこれは、いつもの夢だ。誰にでも、1つくらいあるだろう。 同じような夢。疲れた時に見る夢。誰かを殺したいと思っている時に見る夢。 窓も、ドアも、部屋の調度品がなにもない部屋。上も下もわからない白い部屋に私が全裸で居る夢をよく見る。 私は、部屋の中を抜け出すために走りまくる。床だけでなく、壁や、天井を使って、走りまくる。走って、走って、走って、疲れ切って、倒れる。最後は、なぜか部屋から抜け出す。 その時に、必ず振り返ってしまう。白かった部屋が、真っ赤に染まったシーンで目をさます。 目を覚ますと、…
続きを読む2020/04/05
【第三章 託された手紙】第六話 青い手毬花
「それで、沙奈。いつにする?」 克己が沙奈に予定を訪ねる。 「そうね。美和さん。次のお休みは?」 沙奈は、美和の予定に合わせるようだ。 「土日なら休めるわよ」 鍵となる鈴の予定を最後に聞いたのは、鈴の予定次第でスケジュールを決めなければならないためだ。 「鈴さんは?」 「え?あっ私も大丈夫だけど、進さんが休みの時がいいかな?唯をお願いできる」 鈴はいつでも大丈夫だというが土日だと唯の学校が休みで家に居る。 進が居ないと1人に鳴ってしまうのは心配だと考えた。 「それなら、土曜日だな。日曜日は呼び出し…
続きを読む2020/04/05
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その2)
私は、ディアス。このくだりも何回か行っていると飽きてきます。 今、私はヤス様が保護を約束された子供たちと一緒にアーティファクトに乗っています。東門から西門に向かっています。 「ディアスお姉ちゃん。今度はどこに行くのですか?」 ”お姉ちゃん”いい響きです。カイル君はやんちゃな弟という感じで、イチカちゃんは好奇心が旺盛な妹という感じです。 「今度は、学校に行きます。イチカちゃんたちがこれから神殿の都(テンプルシュテット)で生活するのに必要な知識を学べる場所です」 「え?学べる?何か、教えてくれるのですか?…
続きを読む2020/04/04
【さよならの理由】取られる事の無いコール
もう、貴方の事は忘れたほうがいいの? もう、連絡帳にも入れていない、貴方の連絡先。 消すまでに、1ヶ月掛かったのよ? 消してからも、指が、心が、体中が覚えてしまった、貴方の連絡先。 連絡帳から選択しないでも、貴方の電話番号をコールする事ができる。 ダメな事だとは理解している。 この取られないコール音だけが、私と、貴方を繋ぐ。細い。細い。細い。一本の糸。 けして繋がる事がない。一本の糸。 あれから、コール音を何回聞いた?出るはずが無いコール。1回、2回、3回、4回、解っている事だけど、コール…
続きを読む2020/04/04
【第三章 託された手紙】第五話 記憶
「はい。マホが私に”見つけてほしい”と言っています。見つけて、帰ってきて欲しいです」 鈴の宣言を聞いた4人は覚悟を決めた。 「美和。悪いけど、沙奈を呼んできてくれ」 「わかった。子供たちの様子も見てくるね」 美和が部屋から出ていく。追い出したわけではない。今後の動きを確認するためと、行動するのなら沙奈が居たほうがいいと判断したのだ。関係者だけで行動するよりも、部外者が居たほうが言い訳ができる。 「克己。どうする?内容から、俺は動けないぞ」 「そうだな。桜と進は動かないほうがいいだろうな」 「進は絶対にダ…
続きを読む2020/04/04
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その1)
私は、ディアス・アラニス。もうすでに、アラニスの姓は捨てたから、今はただの”ディアス”だ。 アデヴィト帝国で生まれたのだが、帝国を恨んでいる。家族を殺されたからだ。そして、私も殺されかけた。カスパルに救われて、私は神殿の都(テンプルシュテット)に住んでいる。 神殿の主であるヤス様にお願いされて、子供たちに神殿を案内している。子供たちは、来たばかりで神殿の施設(地下)に入る許可は降りていないが、神殿の都(テンプルシュテット)の施設なら案内できる。 まずは、魔の森方面に向かう。子供の代表は、カイルとイチ…
続きを読む2020/04/03
【最高のおめでとう】一番欲しい言葉
「弘樹(ひろき)!」 同級生で、幼馴染の由紀乃(ゆきの)だ。 「なに?」 「卒業前に、みんなでボーリングに行くけどどうする?」 「みんな?」 「そう、大志(たいし)や弥生(やよい)も一緒だよ」 うーん。ボーリングは魅力的だけど、僕は高校受験が残っている。 「ごめん。行きたいけど、受験がまだ有るからね」 「え?弘樹は、私立に受かっているよね?」 「うん。滑り止めだからね。本命は、商業だよ」 「そうだったの?」 「うん」 大志や弥生と家に来て、兄さんたちと受験の話をしていた。 「でも、私立なら、私と一緒に…
続きを読む2020/04/03
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三話 ヤスの勘違い
「ヤスさん。これは、ですね・・・。そう、そう、子供たちにヤスさんの偉大さを伝えていたのです!はい。多少の誇張は許されるべきです!」 ドーリスが一気に捲し立てるが、ヤスの笑顔の前では無意味に思えてくる。 サンドラも何か言おうとしたが、口を開いてから音にするのは止めた。 「ミーシャ!」 「はい?」 後ろからミーシャの声が聞こえる。 「ミーシャ。悪いけど、エイトと一緒に子供たちに神殿の案内を頼む。そう言えばリーゼは?」 「リーゼ様は、地下です」 「カート場か・・・」 「・・・。はい」 「しょうがないな。まだ…
続きを読む2020/04/02
【第三章 託された手紙】第四話 邂逅
鈴は、マホが自分を恨んでいると思った。だから手紙を唯に渡して、届けさせたのだと考えたのだ。 「鈴!鈴!いいか、手紙が、本当にマホが書いた物なら、お前や進や唯を恨む内容ではない。大丈夫だ。マホがお前たちを恨むはずがない。鈴やなつみを恨んでいるのなら、同窓会のときに対応していたはずだ。だから、鈴。大丈夫だ」 克己が鈴を見てはっきりと宣言する。進も同調する。 「・・・。進さん。・・・」 年齢で言うと、鈴だけ年下になる。それでも、一児の母親だ。自分の子供に被害が及ぶかも知れないと思って恐怖を感じていたが、手紙…
続きを読む2020/04/02
【3年目の出来事】3周年のチラシ
高校生の男子が1人で住むには、少しだけ不釣り合いなマンションだが、大城(おおしろ)和義(かずよし)は一人暮らしをしている。 よくある理由で、不幸が重なったからだけだ。 高校2年になっているが、部活もバイトもしていない和義は、学校からまっすぐに部屋に帰ってくる。 マンションはオートロック機能がついている上に常時人が居る状態になっている。その上、部屋のドアには監視カメラがついていて、帰ってからでも訪ねてきた人を確認できる状態になっている。 和義が部屋のドアを開けると、白い1枚のチラシが床に落ちた。拾い…
続きを読む2020/04/02
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二話 ドーリスとツバキと子供たち
「旦那様。旦那様。ツバキ様とドーリス様がお戻りになりました」 ヤスはまだしっかりと目覚めていない。 エイトが持ってきた水を飲んで、頭がと身体が起き出してくるのを感じている。 「子供たちは?」 「幼体は、孤児院に預ける前にギルドで話を聞くそうです」 「そうか、審査は問題なかったのだな」 「はい。幼体の代表が旦那様に面会を求めております」 「わかった。セバスに言って時間を調整してくれ」 「かしこまりました」 「あっそれから、シャワーを浴びたらリビングに行くから朝食の準備を頼む」 「はい」 ヤスがシャワーを…
続きを読む2020/04/02
【第三章 託された手紙】第三話 託された手紙
「あ!ママ。忘れ物は見つかった?」 美和と沙奈が制止しようとしたが、唯は鈴に抱きついた。 「うん。ありがとう。見つかったよ。それで、唯。手紙は読んだの?」 「うん!菜々ちゃんが書いたのは先生から貰ったよ!」 「菜々ちゃんが書いた?」 「うん!お休みするときに、書いてくれて、菜々ちゃんのママが持ってきてくれたの!」 唯の話を聞いて、鈴と進は安心した。 やはり、唯の話し方が悪かっただけで、先生が2つ先に居る唯に届けてくれたのだろう。そう考えた。 しかし、桜は唯が不自然だと感じた。 「なぁ唯」 「何?ユウ…
続きを読む2020/04/01
【残された記憶】何気ない日々
今日も憂鬱な一日が始まる。 最低な目覚めだ。 「太輔!太輔!朝だよ。早く起きて、ご飯を食べちゃいな!」 「解っている。起きるよ」 ほら、こうして、無理矢理起こされる。勉強なんてしてもしなくてもさほど変わる事はない。 母親も父親も弟も妹も幼馴染のあいつも俺に何を期待している。 どうせ、今更勉強しても変わらない。 中堅の大学に入って、運が良ければどっかの公務員にでもなれるだろう。そうじゃなかったら、俺程度が入られる会社なら、大した仕事もさせてもらえないだろう。楽しくもない仕事を、もらえる賃金で釣り合…
続きを読む2020/04/01
【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第一話 ヤスの帰還
ヤスはセミトレーラを地下に停めた。 「セバス。コンテナの開け方はわかるよな?」 「はい。旦那様」 「降ろすのも大丈夫か?」 「はい。大丈夫です。セミトレーラの切り離しもマルス様から覚えるように言われております」 「そうか、トラクターとトレーラを切り離して、工房に移動しておいてくれ。コンテナは降ろして、物資は皆に提供してくれ、方法は・・・。ドーリスは居ないか?サンドラとミーシャとセバスでやってくれ」 工房に持っていくのは改造ではなく、メンテナンスのためだ。本格的な移動を行ったので、トラクターにダメージが出…
続きを読む2020/04/01
【第三章 託された手紙】第二話 星
唯の話に補足を入れているユウキの言葉が余計に話を複雑にして大人たちを翻弄した。 どうせいつも通りだろうと、その場に居た者たちは唯とユウキの話を聞き流していた。 「遅くなってごめんなさい」 警察の取り調べが終わった鈴が丸大飯店に入ってきた。進が書いて置いた伝言を見て来たのだ。 「鈴。遅かったな」 「桜さん。”遅かったな”じゃないわよ。私に聞いたって何も知らないわよ」 鈴は話を聞くという取り調べを受けていた。 桜が関係していないのは知っているのだが、当たりたくなる気持ちもわかる。 「そうだろうけど・・…
続きを読む2020/03/31
【残された3分】冷めてしまった紅茶
私と彼の距離を表現するのに、一番適切な言葉は、紅茶が冷めない距離。 彼は隣の部屋に住んでいる。 それは偶然だった。 中学卒業までは、一緒の学校に通っていた。 高校になったら、彼のご家族は引っ越してしまった。何か理由が有ったのだろう。 中学卒業の時に彼に告白しようと思っていた。でも、告白ができなかった。 学校で一番可愛いと言われている子に告白されていた。受け入れると思っていた。 「紀子!」 「え?」 「一緒に帰ろう。オヤジとオフクロとお前のご両親は先に帰ると言っていたぞ」 「なんで?」 「ん?な…
続きを読む2020/03/31
【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 ドーリスと子どもたち
私はドーリス。生まれは・・・。わからない。気がついた時には王都のスラムで生活していた。5歳になるときに、孤児院に入った。そこで、お母さんが出来た。王都に行った時に会いたかったけど都合が合わなかった。 王都までヤスさんを案内した。王都では各ギルドを回って、神殿に新たにできるギルドが承認された。すでに根回しが終わっていたがやはり緊張した。現状の神殿の都(テンプルシュテット)の様子が伝わっていたら間違いなく各ギルドは別々に作ると言い出すに違いないからだ。幸いなことに、ヤスさんのアーティファクトの速度が異常だっ…
続きを読む2020/03/30
【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 イチカとカイル
私の名前は、イチカ。お母さんが付けてくれた。お母さんと言っても、私を勝手に産んで身勝手に捨てた女じゃない。私を育ててくれて、優しく家族になってくれた人。 お父さんは少しだけ怖いけど、すごく優しい。いろいろ私たちに教えてくれる。カイルなんて、影でも父さんや母さんと呼んでいるのに、お父さんやお母さんの前に出ると、クソジジイやババアと言っている。 カイルは、私の一つ年上だけど、手間のかかる弟って感じ。 今、私たちは住んでいた孤児院から逃げ出して、スラム街のルーサさんの所に来ている。 「カイル!イチカ!逃げ…
続きを読む2020/03/30
【第三章 託された手紙】第一話 報告
「ママ!ただいま!」 九条唯は、来たときと同じように長嶋校長が運転するバスに乗って家に帰ってきた。 玄関は空いていたので、そのまま家に上がって、母親を探す。 いつもは、パソコンが有る部屋に居るか家事をしているのだが、今日はどこにも居ない。 「あれ?ママが居ない?」 「唯。おかえり。早かったな」 九条(くじょう)進(すすむ)。 唯の父親だ。今日は、仕事が休みで珍しく家に居たのだ。 進の仕事は、船大工で主に漁船のメンテナンスをしている。あとは、メカ音痴の為に魚群探知機やオート操舵のセッティングを行っ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】幕間 手紙
唯はもらった2通の手紙を眺めている。 (ママに渡してって言われたけど、ママの知っている子なのかな?) そして、唯は知らなかった。 この手紙を、母親である九条(くじょう)鈴(すず)が読む時に新しい犠牲者が産まれる事を・・・。 (マホちゃん?私以外には声をかけなかったけど良かったのかな?もうどっかに居なくなっちゃったけど?) 「唯!」 「うん!」 自分を呼ぶ声に気がついた唯は周りを見回すが、手紙と順番を教えてくれた女の子が居なかった事を不思議に思ったが、気にしないで名前を読んでくれた、タクミの方に急いだ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第五話 手紙
唯が1人で寂しい思いをしている時に、手紙のリレーは鳴海から晴海に、晴海からユウキに繋がろうとしていた。 「あ~る~は~れ~た~きょ~う~の~ひ~を~」 晴海に歌声が聞こえてくる。 正直タクミ以外には、なんの歌かわからない。晴海は、一度タクミに聞いたのだが、言葉を濁して逃げられてしまった。 そして、問題ないのは歌詞だけではない音程がめちゃくちゃなのだ。 しかし、晴海は音程が外れた調子の歌声を聞いてユウキが近い事を確信した。 「ユウキ!」 「ハルちゃん!待っていたよ!」 「だから、僕は男だ!」 「解っ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第四話 肝試し
夕飯が終わって、キャンプ場に集められた生徒たちは座って、先生が離す怪談を聞いていた。 ”キャァァ!!” ”ヤメロ!” 誰が言ったのは名誉のために伏せておこう。 しかし、タクミたちではない事だけは確かだ。 タクミたちの班は一箇所に集まって話を聞いているのだが・・・。 ”フッフーン。怖くなんて無い” ユウキが口ずさんでいるが、タクミの服の裾を離す気配はない。同じく、鳴海は晴海を後ろに座らせて、自分の背後を守らせている。 怪談は、よくある話だ。 よくある話だけに怖いのだ。そして、積み重ねられた歴史が…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第三話 タクミの能力?
「ちょっと待て!ユウキ!」 タクミの静止も虚しく、肝試しの順番が最後に決定してしまった。 それには理由もあった。班のリーダーはユウキなので、ユウキが言ったのなら決定事項になる。 先生方もわざと意地悪をしたわけではない。 これが、最初を望んだりしているようなら、タクミの静止を聞いて、”班で話し合ってからもう一度申告しなさい”と言ってくれだろう。しかし、ユウキが言ったのが”最後”だったので、先生はこれ幸いと受諾してしまったのだ。 先生方の考えもわかる。理由も簡単だ。肝試しの順番では、最後を選ぶ班はほと…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第二話 二日目
「ねぇユウキ?」 「なに?」 班ごとに部屋に入っている。 もう、夕ご飯も食べて、夜のリクリエーションも終わって、各班に割り当てられている部屋の一室だ。 9時を少し回った位の時間だが、朝早い時間に集合して、慣れない山歩き。疲れて寝てしまう子が出ても不思議ではない。 この部屋に居るタクミ。ユウキ。唯。鳴海。晴海の5名も疲れて寝てしまっている者も居る。起きているのは、元気いっぱいなユウキと慣れない場所で寝られない唯だ。 「ユウキのパパとママは、私のパパと同級生だよね?」 「うん。タクミの克己パパも同級生だ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第一話 お泊まり会
「桜!」 「なんだよ」 そこは、篠崎家のリビングだ。 森下桜は、悪友で隣に住む篠崎克己の家をたずねている。 お互いは幼馴染だと言っていい関係だ。 二人は、生まれ育った町に家を新築した。隣り合った土地が空いていた事や、とある事情で安く購入する事ができるなどのいくつかの偶然が重なった結果だ。二人とも、実家は別にある。実際には、篠崎克己には実家と呼べる物は無い。両親や親戚は、全て他界してしまっている。篠崎克己には、妻の沙菜と息子の巧が居るだけだ。 森下桜には、母親は存命だが隣町に引っ越してしまっている。…
続きを読む2020/03/30
【第一章 過去】第三話 忍び寄る影
『きゃぁぁぁぁ!!!!』 どこからか悲鳴が聞こえる。 鈴と菜摘も悲鳴の方を見ると、前面に備え付けられていたスクリーンが降りてくる。 スクリーンに何かが投影され始めたのだ。 最初は、最近死去した者たちの写真が流れた。 その後、鈴と菜摘も会場で見かけた者たちの名前が流れるように表示される。 「(山中と古谷?)」 鈴は後ろの席に座っていた二人の名前を見つけて、気になって後ろを振り向いた。 鈴と菜摘のテーブルは中央の最前列になっている。 横には、今は静かになっているが、騒がしかった立花たちが座ってい…
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