サイト小説の記事一覧
2020/04/01
【第三章 託された手紙】第二話 星
唯の話に補足を入れているユウキの言葉が余計に話を複雑にして大人たちを翻弄した。 どうせいつも通りだろうと、その場に居た者たちは唯とユウキの話を聞き流していた。 「遅くなってごめんなさい」 警察の取り調べが終わった鈴が丸大飯店に入ってきた。進が書いて置いた伝言を見て来たのだ。 「鈴。遅かったな」 「桜さん。”遅かったな”じゃないわよ。私に聞いたって何も知らないわよ」 鈴は話を聞くという取り調べを受けていた。 桜が関係していないのは知っているのだが、当たりたくなる気持ちもわかる。 「そうだろうけど・・…
続きを読む2020/03/31
【残された3分】冷めてしまった紅茶
私と彼の距離を表現するのに、一番適切な言葉は、紅茶が冷めない距離。 彼は隣の部屋に住んでいる。 それは偶然だった。 中学卒業までは、一緒の学校に通っていた。 高校になったら、彼のご家族は引っ越してしまった。何か理由が有ったのだろう。 中学卒業の時に彼に告白しようと思っていた。でも、告白ができなかった。 学校で一番可愛いと言われている子に告白されていた。受け入れると思っていた。 「紀子!」 「え?」 「一緒に帰ろう。オヤジとオフクロとお前のご両親は先に帰ると言っていたぞ」 「なんで?」 「ん?な…
続きを読む2020/03/31
【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 ドーリスと子どもたち
私はドーリス。生まれは・・・。わからない。気がついた時には王都のスラムで生活していた。5歳になるときに、孤児院に入った。そこで、お母さんが出来た。王都に行った時に会いたかったけど都合が合わなかった。 王都までヤスさんを案内した。王都では各ギルドを回って、神殿に新たにできるギルドが承認された。すでに根回しが終わっていたがやはり緊張した。現状の神殿の都(テンプルシュテット)の様子が伝わっていたら間違いなく各ギルドは別々に作ると言い出すに違いないからだ。幸いなことに、ヤスさんのアーティファクトの速度が異常だっ…
続きを読む2020/03/30
【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 イチカとカイル
私の名前は、イチカ。お母さんが付けてくれた。お母さんと言っても、私を勝手に産んで身勝手に捨てた女じゃない。私を育ててくれて、優しく家族になってくれた人。 お父さんは少しだけ怖いけど、すごく優しい。いろいろ私たちに教えてくれる。カイルなんて、影でも父さんや母さんと呼んでいるのに、お父さんやお母さんの前に出ると、クソジジイやババアと言っている。 カイルは、私の一つ年上だけど、手間のかかる弟って感じ。 今、私たちは住んでいた孤児院から逃げ出して、スラム街のルーサさんの所に来ている。 「カイル!イチカ!逃げ…
続きを読む2020/03/30
【第三章 託された手紙】第一話 報告
「ママ!ただいま!」 九条唯は、来たときと同じように長嶋校長が運転するバスに乗って家に帰ってきた。 玄関は空いていたので、そのまま家に上がって、母親を探す。 いつもは、パソコンが有る部屋に居るか家事をしているのだが、今日はどこにも居ない。 「あれ?ママが居ない?」 「唯。おかえり。早かったな」 九条(くじょう)進(すすむ)。 唯の父親だ。今日は、仕事が休みで珍しく家に居たのだ。 進の仕事は、船大工で主に漁船のメンテナンスをしている。あとは、メカ音痴の為に魚群探知機やオート操舵のセッティングを行っ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】幕間 手紙
唯はもらった2通の手紙を眺めている。 (ママに渡してって言われたけど、ママの知っている子なのかな?) そして、唯は知らなかった。 この手紙を、母親である九条(くじょう)鈴(すず)が読む時に新しい犠牲者が産まれる事を・・・。 (マホちゃん?私以外には声をかけなかったけど良かったのかな?もうどっかに居なくなっちゃったけど?) 「唯!」 「うん!」 自分を呼ぶ声に気がついた唯は周りを見回すが、手紙と順番を教えてくれた女の子が居なかった事を不思議に思ったが、気にしないで名前を読んでくれた、タクミの方に急いだ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第五話 手紙
唯が1人で寂しい思いをしている時に、手紙のリレーは鳴海から晴海に、晴海からユウキに繋がろうとしていた。 「あ~る~は~れ~た~きょ~う~の~ひ~を~」 晴海に歌声が聞こえてくる。 正直タクミ以外には、なんの歌かわからない。晴海は、一度タクミに聞いたのだが、言葉を濁して逃げられてしまった。 そして、問題ないのは歌詞だけではない音程がめちゃくちゃなのだ。 しかし、晴海は音程が外れた調子の歌声を聞いてユウキが近い事を確信した。 「ユウキ!」 「ハルちゃん!待っていたよ!」 「だから、僕は男だ!」 「解っ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第四話 肝試し
夕飯が終わって、キャンプ場に集められた生徒たちは座って、先生が離す怪談を聞いていた。 ”キャァァ!!” ”ヤメロ!” 誰が言ったのは名誉のために伏せておこう。 しかし、タクミたちではない事だけは確かだ。 タクミたちの班は一箇所に集まって話を聞いているのだが・・・。 ”フッフーン。怖くなんて無い” ユウキが口ずさんでいるが、タクミの服の裾を離す気配はない。同じく、鳴海は晴海を後ろに座らせて、自分の背後を守らせている。 怪談は、よくある話だ。 よくある話だけに怖いのだ。そして、積み重ねられた歴史が…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第三話 タクミの能力?
「ちょっと待て!ユウキ!」 タクミの静止も虚しく、肝試しの順番が最後に決定してしまった。 それには理由もあった。班のリーダーはユウキなので、ユウキが言ったのなら決定事項になる。 先生方もわざと意地悪をしたわけではない。 これが、最初を望んだりしているようなら、タクミの静止を聞いて、”班で話し合ってからもう一度申告しなさい”と言ってくれだろう。しかし、ユウキが言ったのが”最後”だったので、先生はこれ幸いと受諾してしまったのだ。 先生方の考えもわかる。理由も簡単だ。肝試しの順番では、最後を選ぶ班はほと…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第二話 二日目
「ねぇユウキ?」 「なに?」 班ごとに部屋に入っている。 もう、夕ご飯も食べて、夜のリクリエーションも終わって、各班に割り当てられている部屋の一室だ。 9時を少し回った位の時間だが、朝早い時間に集合して、慣れない山歩き。疲れて寝てしまう子が出ても不思議ではない。 この部屋に居るタクミ。ユウキ。唯。鳴海。晴海の5名も疲れて寝てしまっている者も居る。起きているのは、元気いっぱいなユウキと慣れない場所で寝られない唯だ。 「ユウキのパパとママは、私のパパと同級生だよね?」 「うん。タクミの克己パパも同級生だ…
続きを読む2020/03/30
【第二章 キャンプ】第一話 お泊まり会
「桜!」 「なんだよ」 そこは、篠崎家のリビングだ。 森下桜は、悪友で隣に住む篠崎克己の家をたずねている。 お互いは幼馴染だと言っていい関係だ。 二人は、生まれ育った町に家を新築した。隣り合った土地が空いていた事や、とある事情で安く購入する事ができるなどのいくつかの偶然が重なった結果だ。二人とも、実家は別にある。実際には、篠崎克己には実家と呼べる物は無い。両親や親戚は、全て他界してしまっている。篠崎克己には、妻の沙菜と息子の巧が居るだけだ。 森下桜には、母親は存命だが隣町に引っ越してしまっている。…
続きを読む2020/03/30
【第一章 過去】第三話 忍び寄る影
『きゃぁぁぁぁ!!!!』 どこからか悲鳴が聞こえる。 鈴と菜摘も悲鳴の方を見ると、前面に備え付けられていたスクリーンが降りてくる。 スクリーンに何かが投影され始めたのだ。 最初は、最近死去した者たちの写真が流れた。 その後、鈴と菜摘も会場で見かけた者たちの名前が流れるように表示される。 「(山中と古谷?)」 鈴は後ろの席に座っていた二人の名前を見つけて、気になって後ろを振り向いた。 鈴と菜摘のテーブルは中央の最前列になっている。 横には、今は静かになっているが、騒がしかった立花たちが座ってい…
続きを読む2020/03/30
【第一章 過去】第二話 同窓会
そこは、ビルの3階にある結婚式の二次会で使われることが多い広いスペースを持つ飲食店だ。 同い年の男女が200名ほど集まっている。俗に言う”同窓会”が執り行われている。 通常の同窓会では、会費を入り口で徴収するなどのことが行われるが、この同窓会では、受付に名簿があるだけで誰かが立っているわけではない。 心配した数名が、会場の設営をしてくれた者たちに確認をしたら、すでに代金の支払いが終わっていることや、進行や設営の指示は貰っているということだ。 『同窓会にお越しの皆様』 アナウンスが始まった。 席が…
続きを読む2020/03/30
【第一章 過去】第一話 葬儀
黒い服に、黒いネクタイをした男性が2人で話をしている。 葬式に参列して、顔なじみに会って近況を話し合っているようにも見える。 「なぁ」 「なんだよ」 しかし、二人はここ4ヶ月で、3回の葬式に参列して顔を会わせている。 「少し葬式が多くないか?」 「あぁ?そうか?こんな感じじゃないのか?」 4回を少ないと考えることはできそうに無い。 しかし、二人は多いと考える事ができなかった。 「おっ西沢!久しぶりだな」 西沢と呼ばれた女性が立ち止まって二人を見る。 「なに?立花くんも山崎くんも来ていたの…
続きを読む2020/03/30
【序章】第一話 終わり
すべて終わったわけじゃないけど、ボクにできる事はもうない。 パパ。ママ。ユズ姉。ボクは地獄に行くよね。ボクは、天国には行けないよね。これだけのことをしたのだから、当然だよね。 後悔なんてしていないよ。ヤツラは、奴は、それだけの事をしたのだから、報いを受けないとね。ボクは、喜んで地獄に行くよ。この身体が・・・心が・・・100万回引き裂かれても、悠久の時を苦しもうと後悔はしないよ。ボクは、パパとママとユズ姉とナユ兄のことを思い出して、それだけでボクは大丈夫。だから、ボクのことは安心してね。 パパとママと…
続きを読む2020/03/30
【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 孤児院
俺がしっかりしないと! クソジジイから初めて頼まれた。 弟と妹たちを頼むと言われた。当然だ。俺の妹と弟だ。絶対に守る! 俺たちの生活が変わったのは、領主のバカ息子が妾のために屋敷を建てると言い出した時だ。 前から、俺たちが住んでいる場所が目障りで何かと嫌がらせをしていた。成人して卒院した兄ちゃんや姉ちゃんが遊びに来たときに教えてくれた。 俺たちは、クソジジイが運営している孤児院で俺を含めて11人の子供が住んでいる。 俺が一番年上だから、長男だ。本当の兄弟や姉妹ではないけど、俺たちは兄弟で姉妹だ…
続きを読む2020/03/30
【君と決めたルール】僕がルールを破る時
何気ない日常の何気ない時間。 それが僕にとってかけがえのない物だったと知ったのは、何もかも・・・。”自分の身体”と”君への想い”と”君と決めたルール”だけが残された日だった。 君は、僕にそんな事を望んでいないだろう。 僕は、初めて、君との約束を僕の都合で破る事にする。 君と決めたルールは4つ。この4つは何が有っても変えないと二人で決めた。 1.嫌がる事はしない 2.他人に迷惑をかけない 3.辛くても笑おう 4.大切にする だ。 今から1番と4番のルールを破る。 — 高校1年の最初…
続きを読む2020/03/29
【第七章 王都ヴァイゼ】第十六話 孤児とユーラット
子どもたちはすぐに見つけられた。 セミトレーラのライトに照らされた子どもたちは怯えていた。 馬が居なくても走る大きな馬車で、大きな目玉から光を放って、自分たちを見ているように見えれば大人でも怖くなってしまうだろう。子どもたちは、粗末な格好で生きているのが不思議な状況になっている者も存在している。 皆が怯えた目でライトが落とされたセミトレーラを見ている。 最初、ヤスが近づこうとしたのだが、ドーリスに止められた。男性が近づくよりも、女性である自分が行った方がいいと判断したようだ。 ドーリスを降ろして…
続きを読む2020/03/29
【紙とペンと復讐】復讐を誓った男の行動
そこは、寂しい港町。始発を待つ者は誰も居ない。 誰も居ないと解っていながら、1人の男性は毎日ホームに立つ。 ホームで始発電車が到着するのを待っている。 男が持つメモ用紙には、電車の時刻表と到着時間がメモされている。 ホームに電車が滑り込んでくるのを待っている。 数分後に、電車がホームに滑り込んできた。 男は、ホームに吊り下げられている時計を見る。毎朝、男が調整している時計だ。 電車が止まって扉が開く。 寂れた港町の駅では降りる客も少ない。 始発となれば、0人が規定の数字だ。 男は、ホー…
続きを読む2020/03/28
【隣の料理人】食事のスパイスは勘違い?
その女性の住む部屋は、古いアパートだだ。 (はぁ今日も疲れた) 誰も待っていない部屋に女性が入っていく。手に持っているのは、近くにある弁当屋さんの袋だ。 部屋に入って、仕事場にしていくポニーテールを解いて、髪の毛を下ろす。 (どんどん。好きだけど・・・今日も、隣の部屋からはいい匂いがしている) アパートと言っても、女性の一人暮らしだ。セキュリティには気を使った。 部屋を借りる時に、隣に音が聞こえないようにとか、周りにどんな人が住んでいるのかを確認していた。 しかし、匂いまでは気にしていなかったの…
続きを読む2020/03/28
【第七章 王都ヴァイゼ】第十五話 ユーラットへ・・・到着出来なかった
ヤスと辺境伯が話をしている最中に、物資を積んだ馬車が門を抜けてきた。 馬車を見たヤスが辺境伯に、情報はドーリスに伝えるようにお願いして、その場を立ち去る。 「ドーリス殿」 「クラウス様。もうしわけありません。ヤス様は・・・。その・・・」 「サンドラから聞いていた通りの人ですね」 「え?」 「貴女もですが、ヤス殿は・・・。”よくわからない”という言葉が似合う御仁はいませんね」 「そうですね。数日間、一緒にいましたが本当に”よくわからない”人でした」 コンテナを開けて物資の搬入を始めたヤスを二人が見つめて…
続きを読む2020/03/25
【二番目の愛情】戸惑いの告白
俺には長男だけど二番目の子供だ。 当然の事だと思う。 俺は少しだけ複雑な子供だ。 俺の父はバツ1なのだ。 父の再婚相手が、俺の産みの母で、産みの母の最初の配偶者が本当の父なのだ。 ようするに、俺が今『父』『母』と呼んでいる両親とは血が繋がっていない。 本当の両親が、どうなったのかは知らない・・・ことになっている。 一度酔った父が話してくれた。 俺の本当の父は、父の友人だった人物ですでに死去している。産みの母も、父と再婚して2年後に死去した。 自殺だと言っていた。父は、本当の母の死を自分た…
続きを読む2020/03/25
【白いフクロウ】御使い
そこは終末医療専門の病院だ。 誰も訪ねてくる事もなく、ただ死を待つだけの人たちが、最後の時を心安らか過ごす場所だ。冥界に旅立つその時まで、サポートを行う病院なのだ。 1人の女性が運び込まれた。 身寄りのない女性。女性というには幼い。少女と言ってもいい年齢だ。 「先生」 「もって1ヶ月と言われている」 「でも、なんでここに?」 看護師が不思議に思うのも当然だ。 ここは救いのない病院。少女が最後を迎えるのに相応しいとは思えない。 「彼女の希望だ」 「え?」 「彼女は、とある事件の被害者の家族で、唯一…
続きを読む2020/03/23
【第七章 王都ヴァイゼ】第十四話 移動中の会話
ヤスは、ドーリスから冒険者ギルドに出された依頼書を見せられて、簡単に説明された。 「ヤスさん。もうしわけありません」 「別に、ドーリスが謝罪する必要はないだろう?」 「でも・・・」 「必要ない。それに、依頼を受けた奴は居ないのだろう?」 「リップル子爵領にあるギルドは不明だけど、他のギルド経由でも依頼を受けた者が居ないのは確認されています」 「それなら別にいいよ」 「え?」 「だって、襲ってきた連中は、俺を殺すつもりなのだろう?」 「そうですね」 「だったら、殺されても文句は言えないよな?」 「ヤスさん。…
続きを読む2020/03/22
【雨の日】海に浮かぶ傘
僕は、雨が嫌いだ。 この表現は、間違っていないが、合っているわけではない。 正確に言うのなら、雨が降っているときに、差して一人で歩くのが嫌いだ。傘を差さないで移動することは、別に嫌いでもない。むしろ好きだと言える。雨に濡れながら歩くことで、思い出も、過去も、積み重なった想いも、全て流してくれる・・・そんな感じがする。 雨の日は、僕の心の中にある、蓋さえも溶かしてしまう。 思い出したくもない。でも、忘れたくない。そんな、蓋をしてしまい込んだ思い出を・・・。 そう、あれは、僕が初めて人を好きになった…
続きを読む2020/03/22
【近くて遠い50cm】最後の一歩
僕が彼女を意識し始めたのは、何時だっただろうか? 彼女が、僕に向かって 「ちょっと家まで遠いけど送ってくれる?」 送った時に話した事がきっかけだったのだろうか? 彼女は、1つ年下の19歳になる大学生。話を聞いて初めて知ったのだが、僕と同じ大学の2つ下の学年になる。 僕と彼女の出会いは、バイト先が同じになったことがきっかけになる。 バイト先も同じだし、同じ大学に籍を置いている、話そうと思えば話せる関係にあるし、メールアドレス・電話番号も知っている。 同じ時間を共有する機会は多く存在している。 …
続きを読む2020/03/22
【嘘と裏切り】彼と彼女の選択
彼は、僕にこんな感じで話を切り出した。 「彼女は僕を好きでいてくれるし、僕も彼女を愛している」 彼には家庭がある。 その事実を、彼女には告げているという。裏切りが成立してからの恋。 これほど残酷な結末を二人以外に強いる関係ははない。僕は、不倫を否定するつもりはない。僕には出来ない、ただそれだけだ。 僕の持っている”物”で、約束できることは、 ”裏切らないこと” 話すことに”嘘”を、入れないこと。聞かれていない事や聞かれたくないことは、そう答える。それが唯一、僕が、恋人や、好きな人たちに言ってい…
続きを読む2020/03/22
【第七章 王都ヴァイゼ】閑話 テンプルシュテットでは・・・
「リーゼ!それはダメだと思うの!」 姦しい声が地下のカート場に響いている。 神殿のカート場に居るのは、ハーフエルフのリーゼ。帝国から連れてこられたディアス。神殿近くに領地を持つ辺境伯の娘であるサンドラ。 それと、ドワーフの方々だ。 「何がダメなの!問題は無い!ね!サンドラもそう思うでしょ?」 「私を巻き込まないでよ。わたしは、調整で忙しいの!」 3人で会話をしているようにも聞こえるが実際には違っている。 リーゼとディアスはカートでならし走行をしている。サンドラは、ドワーフにお願いして愛機をいじって…
続きを読む2020/03/21
【第七章 王都ヴァイゼ】第十三話 問題が発覚した。
『マスター。個体名ドーリスが近づいてきています』 マルスは、居住スペースで寝ているヤスを起こす。 起こすのはそれほど難しくない。 「おはようございます」 ドーリスが運転席にたどり着く頃にはヤスも起きて外に出ていた。 「おはよう。荷物の積み込みか?」 「はい。お願い出来ますか?」 「わかった。コンテナを開けて待っている。この町では何が手に入る?」 「今までと同じです。主に、イモ類です」 「わかった。積み込みの監視は頼む」 「はい。ギルドも人を出してくれるので大丈夫です」 ヤスが監視を気にするのは、2つ…
続きを読む2020/03/20
【感じた重さ】失った物
確かに、僕は、彼女の・・・君の重さを感じていた。ほんの数秒前に、君は僕の腕の中に居た。 彼女は僕の前に現れた。僕は、一目見て君を愛する道を選んだ。そして、彼女もそれを受け入れてくれた。僕の心には、彼女がいて、彼女が側にいる日常が当然の事の様に思っていた。 僕は、彼女の夢を聞いて、彼女は僕の夢を聞いてくれた。そう、二人を別つ事が来ることを考えていなかった。 僕は、彼女と初めて身体を合せた公園に来ている。あの時は、確かに彼女を身体で感じる事が出来た。 そして、彼女も僕の重みを感じてくれていた。二人は、…
続きを読む