サイト小説の記事一覧

2022/01/23

小さく大きな出会い

 おめでとう。  僕が、君に伝えるのは「おめでとう」の言葉だ。  君が僕の所に来て、まだ5年だけど、君が来てからの僕の日常は、一気に色めき立ったよ。  あの頃の僕は生きていくのが辛かった。”消えてなくなりたい”と、本気で思っていた。  両親を亡くし、妹を失った。僕は、ただ一人、死ぬ場所を求めて、彷徨っていた。 ”にゃぁ?”  側溝で泣いている君を見つけた時に、僕は自分自身を君に重ねてしまった。側溝でずぶ濡れになって”可哀そう”な君に・・・。  僕は、周りから”可哀そう”だと思われるのに精神が疲れ切ってしまっ…

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2022/01/23

【第二章 リニューアル】第五話 連鎖

 女性は、店に入ってきた。静かな、店内に女性の歩く靴音が響く。 「マスター。ウイスキー・フロート」  いつもと雰囲気が違う常連の女性からの注文。  それも、今までに頼んだことがない。ウイスキー・フロートだ。 「バランタインの17年が入ってきています。どうですか?」 「うん!あっ足りる?」  女性は、普段と違うテンションでカウンターに座る。  上機嫌を装っているが、空元気なのは誰の目にも明らかだ。 「大丈夫です」  マスターは普段と同じテンションで、女性に向き合う。 「お願い」  タンブラーにロックアイスを入…

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2022/01/23

【第二章 ギルドと魔王】第二十話 ハウス

 潜り込ませていた諜報部隊や城塞村のギルドから、連合国の情報がレポートとして上がってきた。  四天王たちに、敗れ去った連合国の”討伐軍”は、各国に逃げ帰った。  各国で事情は異なるが、参加した国では粛清の風が吹き荒れたようだ。嵐のようだと表現した諜報部隊も存在していた。  粛清が激しかったのは、序列2位のカルカダン国だ。  序列1位のエルプレ国から戦犯のような扱いをされてしまったからだ。エルプレ国も、デュ・ボアを失った損失は大きく、権力闘争に発展した。民衆からの突き上げも発生してしまった為に、目先をごまかす…

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2022/01/23

【第二章 スライム街へ】第二十話 序盤

”ライ!状況を常に報告して” 『はい!』  ライにお願いをして、私たちは天子湖のキャンプ場に向かう。  向かっている最中も、外周部から攻めている者たちの状況が報告されてくる。  先行していた、フィズとナップが結界の中に入って、魔物たちへの牽制を始める。少しでも、私たちの負担を減らそうとしてくれているのだろう。 ”フィズ!魔物よりも、人の牽制をお願い。制服を来ている人と、スキルを持つ人には注意して!結界の内側から牽制をお願い”  フィズとナップから了承と返事が来る。  ライとのリンクで、制服を来ている者には注…

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2022/01/22

【第二章 帰還勇者の事情】第二十九話 少女

 私は、今”日本”に来ている。  事故で全身に火傷を負った。その時に、片耳と片目を失った。喉も焼かれて、言葉は出せるが、雑音が混じるような汚い声だ。  そして、火傷は、私の心まで焼いた。  パパは、私を治そうと必死に医師を求めた。  しかし、私も見た医師の反応は同じだ。パパの権力を恐れて、”難しい”以外の言葉を聞いた事がなかった。  左手は、癒着して開かない。右手は辛うじて動かすことができるが、火傷の後が疼いて痛い。  右足は膝から先が無い。左足は、腿から先に感触がない。存在してはいるが、触られても解らない…

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2022/01/22

【第三章 帝国脱出】第十話 おっさん安堵する

 おっさんとカリンを載せた馬車は、中央通りを進んでいる。 「イーリス。どこに向かっている?」  馬車は、どんどん、領都でもっとも栄えた場所から離れている。馬車の目的先はイーリスが指示を出していた。おっさんは、イーリスをまっすぐに見つめて、質問を行っている。 「・・・」  イーリスは、感情を読み取られないように、バステトを見るように視線を外した。イーリスは、おっさんの追及を躱せた。と、考えたが、おっさんの追及は止まらない。  イーリスの態度から、追及ではなく、確認になってしまった。 「イーリス。もしかして、自…

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2022/01/21

【第十章 エルフの里】第二十話 襲撃

 ラフネスは、ナビに驚いている。  今までの者たちも、移動速度にも驚くが、一番に衝撃を受けるのは、ナビの地図情報だ。  この世界では、地図は一般的ではない。国家機密と言ってもいいほどだ。しかし、神殿から提供している”アーティファクト(トラック)”には簡易的な物になってしまっているが、ナビが付けている。  知識があれば、取り外しもできるだろうが、簡易キットでもしっかりと固定している。外すと、主要な部品が離れるようにしている。盗難対策だ。アーティファクトないの道具だから、アーティファクトがなければ動かないと思っ…

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2022/01/19

【第二章 スライム街へ】第十九話 開戦

 夕日が眩しい時間だ。  天子湖から、私たちがいる場所は離れている。私は、スライムになってカーディナルに乗っている。  状況分析と最終確認をしている。  結界も上手く作動しているから、天子湖にいる人たちは中には入られていない。  数名の、—多分自衛官だと思うけど・・・。結界を調べている。もしかしたら、鑑定のスキルを持っている人がいるのかもしれない。何度も、鑑定で調べているけど、私に繋がるような情報は結界では表示されない。  もし、私に繋がったとしても、今の私はスライムだ。問題になったとしたら、逃…

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2022/01/19

【第二章 ギルドと魔王】第十九話 新しい施設

 会談が終わって、セバスが帰ってきた。  内容は、聞いていたので把握している。しかし、セバスからの報告を聞くのも、俺の役割だろう。 「マスター」 「いいよ。入ってきて」 「はい」  セバスが入ってくる。  ミアとヒアも付いてくるのかと思ったけど、どうやらセバスだけのようだ。  入口で二人に指示を出して、下がらせた。 「マスター。ギルドとの会談を行いました」 「聞いていたから大丈夫。それで、セバスはどうしたらいいと思う?」 「城塞村に本部を作ったギルドは、現状でよいと思います」 「そうだな。問題は、連合国のギ…

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2022/01/19

【第五章 共和国】第十三話 休養

 ウーレンフートからの補給物資が届くまで、休養にあてる事にした。 「旦那様」  カルラが部屋に入ってきて、頭を下げる。  何か用事ができたのか?  休養にあてるようには伝えてあるはずだ。 「どうした?」  カルラは、書類を手に持っている。  報告書なのだろうか?  昨日の段階で、前回までの報告書と、クリスからの返答を貰った。問題になるような記述は無かった。近況報告のようになっていただけだ。皇太孫だけが、わがままを言っているようだが、そこはクリスに頑張ってもらおう。共和国に、皇太孫が身分を隠してでも来られるわ…

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2022/01/16

【第六章 ギルド】第七話 ミア

「リン様。一つ、お願いがあります」  突然、猫人族の長が俺に話しかけてきた。 「ん?」  長は、連れてきた少女を呼んでいる。固有名詞が無いのは、不便ではないのだろうか?  少女が、俺の前に出てきて、跪く。  どういう状況なのか解らない。ブロッホを見ても、何か納得した顔をしているだけだ。ミルを見てみても、首を横に振るだけで、俺と同じで困惑している。 「長?」 「リン様。この者を、リン様の従者として連れて行って頂けないでしょうか?」  状況がさっぱり解らない。 「どういうこと?」  ブロッホが耳打ちするように説…

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2022/01/13

【第二章 帰還勇者の事情】第二十八話 治療?

 スパイにギアスをかけてから、2日が経過した。 「なぁユウキ。日本の・・・。いや、この場合は、地球にある”その手”の組織は、情報を軽く扱っているのか?」 「どうだろう?」  情報はユウキの予想を上回る速度で集まっている。  上がってくる情報を、ユウキと一緒に精査しているのは、リチャードとロレッタだ。  精査された情報だけが、ユウキたちに届けられるが、それでも驚くほどの情報が手元に蓄積される。 「なぁ」 「そうだな。ミケールに渡して・・・」 「ユウキ。”丸投げ”だろう?俺たちじゃ対処できない」 「そうだな。丸…

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2022/01/12

【第三章 帝国脱出】第九話 おっさん入領する

 領都の門には、長蛇の列ができている。  距離にして、800mはあるだろう。  距離に対して、待機している人数が少ないのは、馬車や護衛が居るために、隊列が伸びてしまっているだけだ。 「まー様。カリン様。少しだけお待ちください」  カリンは、馬車の扉を開けて、護衛の者を呼び寄せる。伝令を頼むつもりのようだ。 「ちょっと待って。なぁイーリス?」  伝令が走り去ろうとした瞬間に、まーさんが伝令を止めた。  止められた伝令も、馬車に戻ろうとしていたイーリスもなぜ、呼び止められたのかわからない。まーさんの顔を見てしま…

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2022/01/12

【第十章 エルフの里】第十九話 大興奮

 話がまとまったので、リーゼを呼びに行く、隣の部屋なので、結界を解除して、声をかければ、すぐに部屋に入ってきた。  そこまではよかった。  栗鼠(カーバンクル)と、猫(キャスパリーグ)と、鷲(ガルーダ)を見て大興奮。  可愛い以外には言葉が離せなくなってしまったのかと思うくらいに大興奮だ。 「リーゼ?リーゼさん?」 「なに、ヤス。今、忙しいのだけど!」 「眷属に会ったことがあるよね?」 「・・・。うーん。栗鼠(カーバンクル)には会っていない!ヤス!こんなかわいい子を隠していたの?」 「隠していない。会わせた…

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2022/01/09

【第五章 共和国】第十二話 増援

 朝になって、シャープが朝食の用意を始めている。  落ち着く為に、飲み物だけを頼んだ。朝には、コーヒーを飲んでいたが、紅茶を飲むのが多くなった。  紅茶を飲んでいると、アルバンが部屋に入ってきた。 「兄ちゃん!おはよう!」  アルバンの声が頭に響く。 「もうすぐ、朝食だ。アルも食べるだろう?」 「うん!でも、兄ちゃん!おいらも、エイダたちと戦いたかった」  アルバンの分の紅茶が置かれる。朝食まで、ここで待っていて欲しいという意味なのだろう。  カルラもだけど、アルバンは探索や御者以外の能力が欠如しているのか…

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2022/01/08

【壊れたパソコン】第四話 鍵

 部屋に帰って、変人の荷物を入れた段ボールを開ける。  変人と会話している雰囲気を思い出す。私の部屋に来た事はもちろんない。私の住所をしっていた可能性すらない。  でも、テーブルの向こう側に、変人がいつものように片足だけを椅子に載せて、座っている様子が見える。  そうやって、なんでも解っているような顔で、私を見ている。  そして、実際に私のミスを何度も助けてくれた。その都度、私を慰めてくれる。ミスした箇所ではなく、些細なことを褒めてくれる。ミスはしょうがない。ミスをした時の対応方法を教えてくれる。バグが消え…

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2022/01/08

【壊れたパソコン】第三話 荷物

 結局、変人のデスクで寝てしまった。  始発の1時間前に起きられたのは僥倖だ。作成した部分をコミットして、ポータルに結果と注意事項を書いておく、休むと言っても、咎められないのは解っている。荷物を受け取りに行くだけだ。でも、部長からは休めと言われた。 「笹原さん。貴方が生きていたら、私がこんなに苦労をしなかったのですよ?」  文句を言いたいのは、変人も同じだろう。理不尽に、無慈悲に殺された。通り魔は、翌日に捕まった。ただ、受験に失敗したという理由で勝手に絶望して、自殺が怖いという理由で、”死刑”になるために、…

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2022/01/08

【壊れたパソコン】第二話 夢

 あっこれは、いつもの夢だ。  会社で仕事をしていると、変人が話しかける。 「美穂さん」  ほら、そこで変人は私の作成した所の修正箇所を告げて来る。  変人が居なくなってから繰り返される夢。  夢だと解っていても、変人を目で追ってしまう。  ほら、今回も同じ。  注意される箇所も同じ。  私の返事も同じ。  そして・・・。翌日になって、修正したモジュールを提出しようとするが、変人は会社に来ない。  解っている。  時計を見る。目覚めたい。ここで、目が覚めれば、同じ苦しみを感じることはない。  でも、無常にも…

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2022/01/08

【壊れたパソコン】第一話 変人

「あき!先に帰るね」 「うん。お疲れ様」 「うん。あきも無理しないでね」 「解っているよ。インターフェース部分のエラーが無くなったら帰るよ。週末は、頼むね」 「わかっているよ。あき。お疲れ様」  泉が、私が座っている場所以外の電気を消す。  タイムカードを押す音が響いて、扉が開く音がする。  エレベータが到着する音が響いた。  これで、このフロアに居るのは、私だけだ。  明日から、来週の月曜日まで、会社を休む申請を行っている。  ふぅ・・・。  煮詰まってしまったコーヒーを流し込む。舌と喉が刺激されて、眠か…

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2022/01/07

【第六章 ギルド】第六話 猫人族

 力の波動?を抑える話になっていたが、元々は、ブロッホに洞窟の奥に潜んでいる獣人との接触を頼むためだ。 「ブロッホ」 「はい」 「洞窟の中に居る獣人は、無事なのか?」 「無事か・・・。解りませんが、こちらを警戒しています」 「わかった。俺とミルは少しだけ離れた方がいいか?アイルが居れば、大丈夫だろう?」 「はい。旦那様たちは、入口から離れた場所でお待ちください」 「ミル。少しだけ離れるよ」 「うん」  ミルが、俺の腕を取る。  洞窟から直接見えない位置まで下がる。丁度いい場所に、露出している岩があったので、…

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2022/01/01

【第二章 スライム街へ】第十八話 報告

 円香さんにお願いされたミッションはクリアでいいのかな? 「千明!」 「あっ円香さん。舞に情報を渡してきました」 「そうか、解った」 「よかったのですか?」 「なにが?」 「舞は、直接報道はしませんが、制作ですよ?」 「構わない。どうせ、どこかに流す情報だ。それに、調べればわかることだ」  確かに、新しい情報もあるけど、調べればわかる事だ。  実際に、ギルドのメンバーになってみて解ったけど、隠すべき情報は、ほとんど存在しない。秘匿コードで呼んでいる、”ファントム”の情報くらいだ。ファントムを秘匿しているのも…

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2022/01/01

【第二章 ギルドと魔王】第十八話 会談

 与えられたミッションは、ギルドとの会談を成功させることだ。  魔王様からは、指示を頂いていない。  島の運営と城塞村との関係は、任されている案件だ。  入ってきたのは、二名。報告にあった、ボイドとメルヒオールだろう。  メルヒオールが、連合国にあるギルド本部のギルド長を勤めていたのは把握ができている。ボイドは、うまく経歴を隠しているようだが、ギルドの暗部を取り仕切っていたのは把握ができている。  ヒアとメアがソファーに誘導する。カエデは、後ろで控える形にした。横に座るのは、メアとヒアだ。幹部として、城塞村…

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2021/12/31

【第二章 帰還勇者の事情】第二十七話 ギアス

 ユウキたちは、安全になってから、お嬢様の治療をしたほうがよいと考えていた。  ミケールも賛同した。問題の解決には、2週間程度は必要だとミケールから告げられた。  ユウキたちは、”2週間”という時間は、襲撃者たちの対応ではなく、反乱分子の始末に必要な時間だと考えていた。  しかし・・・。 「ユウキ!お客さんが来ているぞ」 「そうだな。いつもと同じ対処で頼む。質も落ちてきているから、捕えるだけでいい。後は、ミケールに渡して終わりにしよう」  最初の襲撃があってから、10日が過ぎているが、当初は夜だけの襲撃だっ…

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2021/12/31

【第三章 帝国脱出】第八話 おっさん家名を知る

 途中で、村に立ち寄って補給と情報収集を行った。王都からの追跡や捕縛命令が出ていないことを確認した。  おっさんの一行は、辺境伯領の領都まで移動ができた。  領都が目前に迫った事で、まーさんは思い出したかのように、イーリスに質問をぶつけた。 「そういえば、イーリス。辺境伯領の名前と、領都の名前を聞いていなかったが?」 「え?」  おっさんの質問に、イーリスは固まった。おっさんが聞きたい事はわかるが、”なぜ”名前を聞く必要があるのか解らないのだ。 「辺境伯領は、他にもあるのだろう?それに、領都は別にして、街は…

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2021/12/31

【第十章 エルフの里】第十八話 召喚

「ヤス様。主様?」  ラフネスが、跪いている。  不思議に思ったのが、ラフネスの立ち位置だが、問題にはならないようだ。  まずは、立たせたい。それで、ソファーに座らせた方がいいだろう。 「大丈夫だ」 「すぐに移動を開始しますか?」  移動と言われても、リーゼには準備が必要だろう。エルフの里だと言っているのだから、森の中を歩くことになるのだろう。俺も、靴は変えた方がいいかもしれないし、準備が必要になる。  それに、森で襲われたら、いくら結界があっても、絶対に安全だとは思えない。森は、やはりエルフの主戦場だ。 …

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2021/12/31

【第五章 共和国】第十一話 予想外

 町長や、監視している連中が動くかと思ったが、最初に状況が動いたのは、魔物の討伐に向かったエイダたちだった。 『マスター』  夜明けに近い時間帯に、パスカルから連絡が入った。 『どうした?』 『はい。エイダが魔物との戦闘に入ります』  魔物? 『ゴブリンの集団か?』  報告は聞いている。村から少しだけ移動した所に、ゴブリンの集団がいる。エイダが、討伐に向かった。 『いえ、オーガに率いられた、魔物の集団です』 『オーガ?』  パスカルが情報を整理してくれている。  当初、エイダたちが向かった場所には、ゴブリン…

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2021/12/26

【第六章 ギルド】第五話 力?

 洞窟の中から、こちらを伺っている様子が伝わってくる。 「リン。ぼくが行こうか?」 「どうして?」 「うーん。うまく言えないけど、中から伝わってくる雰囲気が、リンを恐れているように思える」 「俺?人畜無害だぞ?」 「ぼくは知っているから大丈夫だけど、すごい力を感じるよ?」 「え?俺が?」 「うん。気が付いていなかった?」  俺が驚いていると、リデルがミルの肩で頷いている。  気が付くわけがない。ミルもマヤも眷属たちも、態度が変わらないし、そうだ! 「ナナも、何も言わなかったぞ?」  え?なに?ミルが盛大な溜…

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2021/12/15

【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜

 少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。  そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』  屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。  ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』  ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。  会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…

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2021/12/14

【第三章 帝国脱出】第七話 おっさん移動をする

 カリンが魔力切れを起こして馬車に戻ってきた。 「それで、イーリス。秘匿魔法は、さっきの説明では、各属性を”刃”のように飛ばす魔法に思えるけど、その認識でいいのか?」 「私の解釈は、まー様のおっしゃっている通りです」  丁度、おっさんとイーリスの話が”秘匿魔法”になっていた。 「まーさん。イーリス。バステトさん。ただいま。疲れた」 「おぉおかえり。収穫はあったようだな」  まーさんは、帰ってきたカリンの表情を見て、カリンを褒める。頬を赤くするカリンを、イーリスが”生”暖かい表情で見ている。 「うん!」  普…

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2021/12/14

【第十章 エルフの里】第十七話 ラフネス

 遮音の結界が発動した。  長老は、何かを探している。目線が、ボイスレコーダーで止まる。もしかしたら、遮音の力で、ボイスレコーダーが無効になっていると期待しているのか?原理が解らなければ、無効になると考えても不思議ではない。  遮音の結界だけではなく、物理攻撃を弾く結界も発動しているようだ。外部からの攻撃を警戒しているのか?気が付かないフリをしておいた方がよさそうだ。何か、進展があったのだろう。  俺が考えるのもおかしな話だけど、もう少し腹芸とか学んだ方がいいと思うぞ?商人に騙されまくって、終わってしまうぞ…

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