サイト小説の記事一覧
2022/03/25
【第二章 帰還勇者の事情】第三十五話 サトシ
俺は、サトシ。 地球から召喚された勇者の一人だ。そして、レナートの次期国王だ。と、なっている。だよな? 地球に居る時から一緒に居る。マイが今でも一緒に居てくれるのは嬉しい。 しかし、しかし、しかし、しかしだ! ユウキやヒナやレイヤは、日本に帰った。俺と一緒にレナートに残ってくれると思っていた。 ディド。テレーザ。ヴァスコ。ニコレッタ。ロミル。イェデア。レオン。フェリア。パウリ。イターラ。オリビア。ヴェル。たちは、レナートに残ってくれた。俺を支えてくれる。 地球に戻った者たちも、やるべきことがあって地球に戻っ…
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【第三章 帝国脱出】第十六話 おっさん心配する
おっさんとイーリスが、代官の屋敷から出て、宿に向かっている。 「まー様?」 「ん?どうした?対ダストンは、納得したよな?」 「はい。辺境伯様が裏切るとか、非現実的な点を除けば、納得できる内容でした」 「非現実的か・・・。まぁいいよ。それで?」 「まー様は、これから、どうされるのですか?」 イーリスの質問を、おっさんは当然だと受け止めている。イーリスは、帝国の人間だ。今の体制には不満もあるだろうし、問題だという考えは持っていても、権力側の人間で、辺境伯という協力者を持っている。そんなイーリスが恐れるのは、おっ…
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【第十章 エルフの里】第二十六話 善後策
いい方法が思い浮かばない。 俺は、所詮はトラックの運転手だ。小難しい事を考えるのは、専門にやっている奴が行うべきだと考えてきた。 しかし、このエルフの里の奴らは・・・・。 最低限の事さえもできていない。説明をしても理解ができるとは思えない。最大の問題は、魔物の排除が行える力があるのかさえも怪しい。 「なぁ」 「なに?」 リーゼが、俺の問いかけに返事をするが、俺が聞きたかったのは、リーゼではない。神殿のコアに善後策を考える上での、条件やできる事を聞きたかった。俺が考えた事がどこまでできるのか、確認が必要になっ…
続きを読む2022/03/24
【第五章 共和国】第十九話 攻略中?
「ナベ!」 「ΑД‡ο∝ξ∝с」 「しっかりしろよ」 「♭р∝Г∝Ё∝Φ∝Э∝σ∝ж」 「それならいい。お前を名指しで来ている。指名だぞ」 「∝О∝Φ∝О∝Φ∽≧∝χ∝к∝Ж∽′」 「それで?お前、本当に解っているのか?俺のボーナスがかかっているのだぞ!」 「∝Ч∝Ω∝χ∝и∝в∝ΣΔёΘР∝Ж∝σ∝М∽≧∝Ж∝б∽≦♭ο∝К∝О♪Ч‡○∝Й∝Φ∝Ж∝σ∝ж∽≧」 「関係ないって・・・。まぁいい。案件を奪うぞ!」 「∝О∝Φ∝О∝Φ」 — 懐かしい情景の夢を見た。 俺が話している言葉は、どこの言…
続きを読む2022/03/24
【第六章 ギルド】第十三話 王都
ミルが戻ってきた。 怪我もしていないので、相手は問題になるレベルではなかったのだろう。 「リン!」 ミルが駆け寄ってきて、ミアを見つけて、安堵の表情を浮かべる。その表情のまま、俺に抱きついてくる。 ミルの頭を撫でながら、状況を聞く。 「どうだった?」 ミルの様子から、奴らでは無い。貴族関係の者でもなさそうだ。 「関係ない人たちだった。僕や、ミアを見て、奴隷として売ろうと考えたみたい」 それは、それで問題だけど、確かに、ミアは珍しい種族だし、ミルは”美少女”だ。狙うのは理解ができる。でも、簡単に捕まえられない…
続きを読む2022/03/14
【第二章 スライム街へ】第二十六話 ??
オーガ・キング(仮称)が倒れた。 ラストアタックは、私がもらってしまった。別に、ラストアタックだから、特典があるわけではない。多分。 ”ライ!” 『ダークとフィズの一部がオーガの範囲攻撃で怪我をしましたが、かすり傷です。命にも、移動にも、問題はありません』 ”よかった。他は?” 『疲れは出ていますが、問題はありません』 ”わかった。一度、拠点で休んでから、家に戻ろう” 『はい。結界に使った魔石は、回収しますか?』 ”うーん。回収をしておいたほうがいいとは思うけど、難しいよね?” 『いえ、人と接している場所は…
続きを読む2022/03/14
【第三章 懲悪する惡】第五話 サイレントサード
昼間に営業している変わったバーシオン。夜の仕事をしている人たちが通う。 「マスター。ありがとう」 カウンターに座っていた一人の女性が席を立つ。 マスターは、手を上げる。勘定が終わっているという合図だ。 「そう・・・。マスター。まだ残っている?」 女性から言われて、マスターはノートを見てから、うなずく。 マスターからの言葉を聞いて、立ち上がった女性はカウンターに腰を戻す。 「マスター。最後に、一杯いいかな?」 「はい。何に、しましょうか?」 「そうね・・・(シオン。君を忘れない)」 女性は、壁にかかっている紫…
続きを読む2022/03/14
【第二章 ギルドと魔王】第二十六話 平穏
連合国側に作った砦の機能は大丈夫だ。 最初はモニタリングをしていたが、セバスたちに任せてしまっている。最初に俺が設定したハウスは不評だった。やりすぎだと酷評だった。 連合国側に作った砦(ハウス)は、赤字にならなければいいと思っていたのだが、収支で言えば十分な黒字になっている。 新しく作った砦の鍵となる家は、連合国にあるギルドから、”ギミックハウス”とか呼ばれ始めているらしい。 攻略者への対応が、リポップする魔物で対処が十分だとは思わなかった。メルヒオールとか名乗った、神聖ギルドに寝返った奴が言っていたけど、…
続きを読む2022/03/08
【第二章 スライム街へ】第二十五話 決着
”キング!クイーン!お待たせ” キングとクイーンが、オーガたちにスキルを浴びせかける。 ”ライ!” 『はい。タイミングはマスターがお願いします』 ”わかった。キング。クイーン。離脱!” 二人から、了承が伝えられる。 ”テネシーとクーラーは、キングとクイーンが抜けた場所にスキルを!” 『マスター。サポートに、フィズを!』 ”お願い。皆。キングとクイーンの離脱をサポート。行くよ!” キングとクイーンを追撃しようとしていたオーガがスキルを受けて、立ち止まる。離脱が成功したのを見て、ライから作戦が伝えられる。 『マ…
続きを読む2022/03/07
【第二章 ギルドと魔王】第二十五話 【連合国】魔王
どういう事だ。 なぜ、新参の魔王があれほどの施設(魔王城)を!! 「誰か答えろ!」 俺が築き上げた、連合国という仕組みを使っても、攻略できない? 新参の魔王は、中央に位置する魔王領だ。攻略と同時に勢力を伸ばそうと考えていた。 前回は、帝国が攻略を行った。 やっと戦力が揃って、序列2-4位も戦力に数えられるようになってきた。やっと、これで、中央の魔王を討伐して、産まれたばかりの魔王を、味方(下僕)にできる。そう考えていて、実際に寸前までうまく行っていた。 帝国の阿保が、中途半端な戦力で討伐を・・・。”獣(獣人…
続きを読む2022/03/07
【第二章 帰還勇者の事情】第三十四話 作戦
ミケールがユウキとの会談を終わらせて、部屋を出た。 当初の予定通りと言っても、ユウキは契約が成立する可能性は、五分五分だと考えていた。実際に、ユウキが提案した内容は、荒唐無稽だと言われてしまうような内容だ。 「ユウキ!」 レイヤが部屋に駆け込んできた。 「レイヤ。落ち着きなさいよ」 カップを片付けながら、ヒナはあきれた表情をレイヤに向ける。親しい人にしか向けない表情だ。 「ヒナ。そういうけど・・・。作戦の可否が決まるのだぞ?」 「はぁ・・・。レイヤ。貴方まで、サトシと同レベルになってしまったの?」 「あ?」…
続きを読む2022/03/06
【第三章 帝国脱出】第十五話 カリン出歩く
カリンは、おっさんとイーリスが代官に会いに行く時に、最初は自分も一緒に行くと言っていたが、イーリスから代官の為人を聞いて、考えを改めた。一緒に言って、言質を取られるのはよくないと、言い訳を伝えた。 実際には、話を聞いただけで面倒な人とは関わりたくない。せっかく、元同級生たちとも離れることができたのに、自分からおっさん以外の面倒な人とかかわりを持ちたいとは思えなかった。 カリンは、バステトと一緒に宿?で待っていることになった。イーリス付きの護衛は居るのだが、元々は辺境伯の部下だ。その辺境伯からの命令で、イーリ…
続きを読む2022/03/05
【第十章 エルフの里】第二十五話 鍵
いつまでも、神樹を見上げていても何も解決しない。 解っているが、見上げる首が痛くなっても見て居たい気持ちにさせる。 神秘的な風景は、TVや本で見てきたが、一線を画す美しさがある。言葉で表すとチープになってしまうが、他に表現できる言葉が見つからない。 「ヤス。ヤス」 「なんだ?」 「すごいね」 「そうだな」 リーゼも同じ気持ちのようだ。 どんなに言葉を飾っても、チープに思えてしまう。 『(・・・)神殿の主様』 ん?リーゼのはずがない。 マルスも、俺を”神殿の主”とは呼ばない。 「リーゼ。何か、聞こえたか?」 …
続きを読む2022/02/26
【第五章 共和国】第十八話 攻略中
アルバンとダンジョンに入った。 草原フロアと言ってもいい場所で、眠った。 大丈夫だ。覚えている。 起きてから、探索を再開したが、このフロアは広い。 本当に広い。帰りたくなるが、変える方向も解らなくなっている。 俺とアルバンだけでは厳しい状況だけど、魔物は適度に現れるし、修練にはちょうどいい。難易度は低いけど、縛りを付けた戦闘には丁度良かった。 戦闘訓練にはなっている。 ただ、同じような魔物ばかりで飽き始めているのが問題だ。 「兄ちゃん」 「アル。言うな。俺も飽きてきている」 「そうだよね。ゴ…
続きを読む2022/02/25
【第六章 ギルド】第十二話 散策
見る物すべてが珍しいのか、ミアは周りを見ては、ミルに質問をしている。 ミルも嬉しそうに、ミアの手を握りながら、説明を行っている。俺から少しだけ前を歩く形になっていて、俺には二人の会話が聞こえない。 「あるじ!」 ミアが、後ろを振り返って俺を見た。 「どうした?」 「ミルお姉ちゃんと、あるじは”ふうふ”なの?」 「ん?ミトナルさん?」 ミルを見ると、視線を逸らした。 レオが目線をそらすという器用な真似をしている。 「レオ!」 ”ワフ・・・” レオは、ミルを見つめる。 やはり元凶は、ミルのようだ。…
続きを読む2022/02/23
【第二章 スライム街へ】第二十四話 掃討
キングとクイーンに、追加の援軍を送った。オークの処置は、後方で待機していた者たちに頼んだ。 ”ライ!” 『はい。ダークとドーンで、結界の外を警戒させます』 ”うん。魔物が居たら、討伐を頼める?” 『上位種までなら、色違いが居たら、ピコンとグレナデンを向かわせます』 ”お願い” ダークとドーンなら、結界の外に居ても不自然には思われない。と、いいな。 『マスター。結界の外、2キロ範囲には、魔物は居ないようです』 ”わかった。動物も?” 『魔物になってしまった。猫が3匹だけ確認できました』 ”え?魔物?猫?”…
続きを読む2022/02/23
【第二章 ギルドと魔王】第二十四話 【新生ギルド】受付
私は、魔王様に助けられた。元奴隷です。現在はカプレカ島にあるギルドで受付の仕事をしています。名前は、魔王様から頂きました。名前は、秘密です。乙女の秘密としています。それに、大切な名前なので、仲間にしか教えていません。カプレカ島のギルドでは許可を得て偽名を使っています。 これは業務日誌のような日記です。 モミジ様からの指示で、受付は些細な事でもメモとして残して、報告を上げることになっています。新生ギルドのギルド長であるボイド様には、モミジ様が精査した報告が上がる仕組みです。出勤した時には、必ず書いている…
続きを読む2022/02/22
【第三章 懲悪する惡】第四話 ブロンクス
「マスター」 マスターは、グラスを磨いていた手を止めて、カウンターに座る女性を見つめる。 「はい」 「何か作って」 「わかりました」 「あっ今日で最後だから、マスターのオリジナルが飲みたい」 「かしこまりました」 マスターは少しだけ考えてから、みかんの缶詰と白桃の缶詰を開ける。中身を取り出してミキサーにかける。ドライ・ジンとドライ・ベルモットを取り出す。すべての液体をシェークしてから、味を確かめる。カクテルグラスに注いで、女性の前に置く。 「即興で作りました。名前はありません」 「ありがとう。マスター。…
続きを読む2022/02/21
【第二章 帰還勇者の事情】第三十三話 契約
エアリスの周りを覆っていたスキルが解かれる。 そこには、自分の手足を触って、自分の顔を、自分の手で触って、耳の形を確認して、触った手を自分の目で見つめる。大きな目が印象的な少女が立っていた。 自分の目で見て、自分の手で確認して、立っていることを確認して、自分を見つめている視線に気が付いた少女は、足を進めようとした。 しかし、何年も自分の足で立ち上がっていなかった少女は、立っていることが奇跡のような状態だ。歩くのは難しい。 しかし、少女は自分を見つめて、目を見開いて、流れ出る涙を拭わずに、自分だけを…
続きを読む2022/02/21
【第十章 エルフの里】第二十四話 神樹
ほぉ・・・。 マルスが守る神殿とは違った美しさがある。 馬車を降りてから、20分ほど森の中を歩いて到着したのは、エルフたちの集落のはずだ。 「ここは?」 「集落の入口です」 「ヤス様。リーゼ様。里に向かう前に・・・」 ラフネスが、俺とリーゼの前に出て頭を下げる。 リーゼの方を向いている。 「そうだな。リーゼ。墓を見に行こう。里の中には作られていないのだろう?」 長老が申し訳なさそうな表情をするが、俺としては、素直に墓参りができそうな事に驚いた。何か、対価を要求してくる可能性があると考えていた。そ…
続きを読む2022/02/20
【第三章 帝国脱出】第十四話 おっさん笑う
ダストンは、完全に理解する前に、おっさんに言質を与えてしまった。 イーリスの目の前だ。さらに悪い事に、このおっさんはぬかりがない。スマホを使って、言動を記憶している。勇者の使う道具だと説明して、録音している音声の一部を再生して、ダストンに聞かせた。 最終的には、秘書官を呼び寄せて文章を作成する事態になってしまった。 イーリスは、”そこまで”しなくても・・・。と、いう表情を浮かべているが、おっさんはダストンを一切信じていない。信じているのは、”風見鶏”な部分だ。今、この場ではおっさんが一番の権力を握っ…
続きを読む2022/02/19
【第六章 ギルド】第十一話 到着
王都に入る為には、パシリカの時でもなければ、検閲を受けなければならない。 ハーコムレイ辺りと、ギルドが交渉してくれたら、もしかしたら楽になるのかもしれない。 今は、列に並ぶのが自然な事だ。 それに、目立ちたくない俺たちに取っては、列に並ぶ以外の選択肢はない。 結局、列に並ぶ前に、アウレイアの眷属をどうするのか結論が出なかった。 ミアがテイムしている”白狼(ホワイトウルフ)”だということにした。 本人?に確認をしたら、そのままミアの護衛としてテイムされても問題はないということになった。身振り手振…
続きを読む2022/02/19
【第五章 共和国】第十七話 攻略開始
アルバンとダンジョンに向かっている。 道中に現れた獣は無視した。 盗賊たちが使っていると思われる拠点を発見したが、すでに使われなくなっているようなので、燃やして、穴を掘って埋めておいた。新しい盗賊が住みついたり、魔物の巣になったり、何かの拠点に使われるのは俺が望む未来ではない。 「アル。悪いな」 「いいよ。兄ちゃん。これも大事なことだよね」 「あぁ新しい盗賊が住みついたら、町は大変な目にあう」 「うん」 「それに、この前のようなゴブリンが住みついても厄介だろう?」 「そうだね。おいらの最初の村も・・・…
続きを読む2022/02/17
【第二章 スライム街へ】第二十三話 説明
プロジェクターで表示されたデータを食い入るようにギルドのメンバーが見ている。 「それで円香?見えない壁がどうした?」 「孔明。説明の前に・・・。茜」 「はい?」 「把握出来ている魔物の位置を追加して欲しい。あと、獣は除いてくれ」 「難しいことを・・・。少しだけ待ってください」 里見茜が端末で、データの整理を行う。 「円香?」 「予想が当たれば、これからの対応が少しだけ楽になるかもしれないぞ?」 上村蒼は、榑谷円香の言葉を聞いて、浮かせた腰をまた椅子に降ろした。 柚木千明が、里見茜がデータの精査をして…
続きを読む2022/02/17
【第三章 懲悪する惡】第三話 シルク・ストッキングス
夕方になり、繁華街は人が増え始める。 マスターは、店の電灯を落とした。変わったバーの営業は終わった。 売り上げは、マスターが一人で生活するには十分だ。仕入れも口利きをしてもらっている為に、大きく崩れることがない。デポジット制で、一見を断っている。それでも、客が途切れたことがない。 寡黙なマスターの態度が、秘密を抱えている者たちには心地よいのだ。 マスターは片づけたカウンターに、オレンジジュースとレモンジュースとパイナップルジュースを冷蔵庫から取り出して置く。 それぞれのジュースを40ml測って、…
続きを読む2022/02/17
【第二章 ギルドと魔王】第二十三話 【カプレカ島】メア
私の名前は、魔王様から頂いた大切な物(名)だ。 奴隷だった私たちは、魔王様から名前だけではなく、命を含めてすべてを与えられた。だから、私たちの命は魔王様に捧げる。お目にかかったときに、私たちの覚悟を魔王様にお伝えした。でも、魔王様は笑いながら、”命は大事にしよう”と言われた。だから、私たちは皆で集まって相談した。 命を大事にする。大事な命に順番を付ける。一番は魔王様。次は、自分の命。そして同族、元奴隷たち。ルブラン様やカエデ様は、自分たちは考える必要はないとおっしゃった。だから、魔王様の御命を守るため…
続きを読む2022/02/13
【第二章 帰還勇者の事情】第三十二話 エアリス
ミケールは痛みに耐えながら、自分をまっすぐに見つめる少女に微笑みを向ける。 凝縮した痛みを受けているミケールを少女は流れ出る涙を拭わないで見続ける。 『ユウキ様。ありがとうございます』 少女は、まっすぐにミケールを見ながら、斜め後ろにいるユウキに感謝を向ける。 「いえ」 ユウキは短く言葉を発するだけだ。 治療の前段階は、終焉に近づいている。 ミケールは声が出せない。肩で息をしている。支えられなければ立っていられない。 『ミケール』 少女の呟きが室内に木霊する。 それだけ、室内には音が存在しな…
続きを読む2022/02/13
【第三章 帝国脱出】第十三話 おっさん勝ち取る
ダストンは、おっさんとイーリスに見られていることにも気が付かないで、自分の保身を考えるのに必死になっていた。 ダストンは、おっさんとカリンを匿う以外にも、辺境伯から指示を受けていた。 指示の実現の為にも、おっさんとカリンとは友好関係を結ばなくてはならなかった。先ぶれを受けて、息子が居ないことに、安堵していたが自分が大きなミスをしてしまった。友好関係を結ぶのが最低条件であった人物に不快な思いをさせてしまった。 「え?」 やっと二人の視線に気が付いて、自分が話しかけられていることに気が付いたのだが、二人…
続きを読む2022/02/12
【第十章 エルフの里】第二十三話 秘密
里に向かって、”結界の森”を進む。 エルフたちは、この森を”結界の森”と呼んでいると教えられた。 結界は、なんとなくだが簡単に突破できそうな雰囲気がある。 「なぁ」 俺の前に座っているのは長老だ。 長老なら、俺の疑問に答えてくれるだろう。 「なんでしょうか?」 「結界を越える条件はなんだ?」 俺たちは、結界をすんなりと越えられた。 ラフネスも長老も問題はなかった。 この結界は、”ほぼ”俺がよく知っている結界と同じ物だ。 「え?」 「俺たちを襲った奴らは、結界に入る前に襲ってきた。これは、結界…
続きを読む2022/02/09
【第五章 共和国】第十六話 準備
アルバンの武器を作った。 結局、投げナイフは諦めた。作成は可能だったが、単価があまりにも高くなってしまう。同じ単価なら、違う武器を作ったほうがいい。 アルバンに、戯れで作った多節棍を見せた所、何が気に入ったのか解らないが。多節棍を主武器に変更すると言い出した。 武器として考えると取り扱いは難しいが、難しい部分は、プログラム(魔法)の補助を組み込むことで対処を行った。複雑な動きは、アルバンの訓練が必要になってしまったが、プログラム(魔法)の補助を得て、アルバンの思い通りに動かすことができた。 単価で…
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