【第二章 スライム街へ】第二十五話 決着

 

”キング!クイーン!お待たせ”

キングとクイーンが、オーガたちにスキルを浴びせかける。

”ライ!”

『はい。タイミングはマスターがお願いします』

”わかった。キング。クイーン。離脱!”

二人から、了承が伝えられる。

”テネシーとクーラーは、キングとクイーンが抜けた場所にスキルを!”

『マスター。サポートに、フィズを!』

”お願い。皆。キングとクイーンの離脱をサポート。行くよ!”

キングとクイーンを追撃しようとしていたオーガがスキルを受けて、立ち止まる。離脱が成功したのを見て、ライから作戦が伝えられる。

『マスター。掃討作戦が終了。剥ぎ取り班の作業は続行中。意識のある者たちを、後方に搬送。結界に異常なし』

ライから、戦況が伝えられる。
私たちが、オーガと正面から戦う必要はない。解っている。でも、気分が悪いと感じたのも間違いではないが、なぜか私たちが戦った方がいいと感じていた。理由は解らない。戦いを決めた時には、赤字覚悟だったけど、ライの報告からは、収支は黒字になりそうだ。使った魔石は回収が出来そうだ。大物からは、素材も取れているようだ。家を守ってくれている者たちへのお土産もできた。

キングとクリーンが、上がってくる。

オーガたちが、追撃を止めて元の位置に戻ろうとしている。

”追撃は必要ない。持ち場に戻って”

フィズたちが、当初の作戦の位置まで下がる。

私がいる位置まで、テネシーとクーラーとピコンとグレナデンが上がってくる。

ライを乗せたアドニスが戻ってくれば、作戦が開始できる。

『マスター!』

”アドニス!ライ!大丈夫?”

『大丈夫です。返り血です』

どうやら、魔物になってしまった動物が意識を芽生えさせて、野良ゴブリンと戦闘をしていた所を発見して、アドニスとライで撃破してきたようだ。スキルは、動物が居たので使えなかった。

”それで、助けた動物は?”

『パロットと同種で、話をしたら、”是非”と言って居ます』

”わかった。オーガを倒したら、連れて行こう”

『はい』

さすがに、パロットと同種だと猫だと思う。アドニスだけでは難しいだろう。ライが乗っていなければ可能なのかもしれないけど・・・。

今は、帰りの心配をする時ではない。まずは、こちらを睨んでいる(だろう)オーガたちを殲滅することが最優先だ。

”それで、猫は?”

『ドーンとジャックが保護しています』

”わかった”

オーガは、7体。キングとクイーンの攻撃で多少は体力を消耗している。

”作戦の変更はなし。オーガたちが最後だよ。無理しないで、全力を出そう。大丈夫。作戦は考えてある。大丈夫。私たちは勝てる!行くよ!”

キングとクイーンが、オーガの上位種にスキルを浴びせる。
オーガの一体が釣れたことを確認すると、距離をとる。開いた場所にテネシーとクーラーが楔を打ち込むために、スキルを発動する。楔を基点として、射程範囲から土のスキルが使える者が、壁を作る。壁に、ダークたちが結界の魔石を埋め込んで発動する。弱い結界だけど、これでオーガの上位種の一体が隔離できた。

あとは、同じ事を6回繰り返すだけだ。

同じように繰り返した。上位種はこれで隔離できたが、色違いは・・・。

『マスター。色違いはダメです』

”そうだね。プランBに移行”

陣形を変更する。
キングとクイーンが中心となって、隔離したオーガの上位種を倒す。アイズやドーンが遠隔攻撃を行う。
上位種のオーガたちは耐えているが、体力を削っていけば倒せる。

プランBは、色違いがオーガ・キング(仮名)から離れなかった時の作戦だ。
色違いは、スキル攻撃ができる。オーガ・キングから離れない可能性を考えていた。実際に、キングとクイーンが攻撃をしている時にも、オーガ・キングから離れなかった。

プランBは、離れない事を積極的に利用する。
時間がかかるが、安全は絶対だ。

”ライ。準備は?”

『終わっています』

”ピコンとグレナデンは、キングとクイーンをサポート。残りは、射程距離のギリギリから、スキルで攻撃!開始!”

カーディナルと私は、オーガ・キングの正面まで移動する。至近距離ではない。まだ武器もスキルも届かない。相手も同じだ。違うのは、オーガ・キングの後ろ側には、アドニスとライが位置している。

これで、私とライでオーガ・キングを挟んだ形になる。
上位種は、順調に削れている。まだ倒れるのには時間がかかりそうだけど、時間だけが問題になりそうだけど、大丈夫だ。

色違いは、まだ動いていない。
スキルが被弾した者は、スキルが打たれた方向に咆哮をあげている。徐々にだけど、オーガ・キングと色違いのいる場所に距離ができ始めている。色違いやオーガ・キングの動きから、2メートルくらいは引き離したい。

しかし・・・。戦ってみた感じだと、1メートルが限界だ。

あと少しだけ・・・。

”今!ライ!”

『はい』

”行くよ。カーディナル!アドニス!”

返事は必要ない。行動がすべてだ。

カーディナルとアドニスは、スキルを使って、全速で開いた隙間に突っ込む。

オーガ・キングも私には気が付いている。
武器を構えるが、一瞬だけ早くライが後ろからオーガ・キングに攻撃する。スキルは使わない。物理攻撃だ。オーガ・キングが私から視線を一瞬だけ外す。目を離された瞬間に、カーディナルに指示を飛ばす。ライが攻撃した場所とは、反対に攻撃を加える。

”硬い!”

『大丈夫です』

硬いが、攻撃が入った。
オーガ・キングから紫の体液が流れです。

”釣り野伏せ”が使えないと解ってから考えた作戦だ。
動かないのなら、動かさなければいい。上位種と色違いとの距離が開けば、オーガ・キングをその場所から動かさないことが、私とライの役目だ。そのために、ヒットアンドアウェイを繰り返す。最大戦力による、ゲリラ戦だ。すれ違いざまに攻撃を加える。ほぼ、同時に攻撃を加える事で、オーガ・キングの動きを封じる目的がある。

私とライは、オーガ・キングを倒せなくても、他の上位種や色違いが倒されるまで、ヒットアンドアウェイを繰り返す。ダメージは蓄積されていく、自然回復の能力を持っているようで、ダメージは回復されてしまうが、連続で繰り返す攻撃のダメージはゼロにはならない。
ごくわずかな違いだが、オーガ・キングの動きが悪くなる。

『マスター!テネシーとクーラーが来ました』

”テネシーとクーラーは、上空からスキル攻撃”

テネシーとクーラーが、オーガ・キングの頭上からスキル攻撃を行う。
私とライへの攻撃の圧力が減って、ヒットアンドアウェイのヒットの攻撃が1撃だったものが2撃に変更できた。

攻撃している回数から比べると、オーガ・キングが受けているダメージは、それほど深くはなさそうだ。

”ライ!”

ライが乗るアドニスが、オーガ・キングのスキルに攻撃をされる。衝撃を刃にして飛ばすスキルを使ってくる。

『大丈夫です。結界が間に合いました』

元気そうな声だし、実際にダメージはなさそうだ。
勝ち戦になりつつあると言っても、まだ勝ち切れていない。上位種も色違いもまだ健在だ。ここで、合流されてしまったら、撤退を考えなければならない。それ以上に、アドニスやカーディナルが・・・。誰かが怪我をしたら、撤退を考えなければならない。

”やれる?無理は”『大丈夫です。アドニスは被弾していません』

アドニスは・・・。が、気になるが、集中しろ。私が折れたら、終わりだ。

キングとクイーンが、上位種を倒した。

残るは、色違いとオーガ・キングだ。

今?恐れるな。自分たちを、家族を信じよう。そう・・・。大丈夫。大丈夫。

”行くよ!総攻撃!狙いは、色違いの、黄色!”

了承の声が聞こえる。
黄色の色違いが倒れた。それから、青と赤を倒した。

そして、オーガ・キングだけになってから、さらに全員で遠距離攻撃に切り替える。

オーガ・キングが倒れたのは、東の空が明るくなりかけた時だ。

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