【第二十六章 帰路】第二百六十四話

 

クレバスは置いておくとして、生態系とか大丈夫なのか?
別の場所で狩った魔物には、いろいろ・・・。まぁ気にしてもしょうがない。違う世界ではないし、細菌とかに違いはないのだろう。

「シロ」

「はい」

「モデストたちと合流して、帰ろうと思うけど、カイとウミが、このクレバスを放置することが出来ないらしくて・・・」

「わかります。ここまで死んでしまった森を見たのは初めてです」

シロがステファナを見る。

ステファナが悲しそうな表情を崩さない。
よほどショックなのだろう。

「ステファナ」

「・・・」

「クレバスから、多様性が産まれるかわからないが、森は復活するだろう。大型の獣もまだ生き残っているだろう」

カイとウミの様子から、少なくなっていると思うが、生き物の気配はある。クレバスが復活して、周りの草木が復活して、小動物の数が増えるのが先か、大型の獣が全滅するのが先か・・・。
大型の獣を連れてくるのは簡単だけど、それでは意味は無い。
自然発生は無理でも、他の森からやってくるのを待つしか無いだろう。

「ステファナ。森エルフの連中は、モデストたちが抑えるけど、他にもエルフが居るよな?」

「え?沼エルフと草原エルフだけです」

「え?他の森にも、森エルフが住んでいるのだよな?」

「いえ、この一帯だけです。他に移り住んでいる者が、”存在しない”、とは・・・。思えませんが、集落にはなっていません」

「そうなのか?」

「はい。集落になっていれば、その・・・」

「あぁあの、頭の中が、権力で染まっている森エルフの連中が許さないか?」

「はい。それが嫌で、他のエルフに身を寄せようにも・・・」

「救いようがないな」

「はい」

「草原エルフも、かなり・・・。痛かったが、森エルフはそれ以上なのだろう?池や沼や川に住んでいるエルフは?」

「・・・。脳筋という評価です」

「わかった。それだけで十分だ。やはり、エクトルにまかせて、俺たちは帰ろう」

「はい!」「はい」

シロはやはり、帰りたいのだろう。
俺も帰りたい。馬車の中や、ここでの生活が不便ということではなく、どことなく”ここでは”ない感じがしている。待っていてくれる人が居る。待たれていると思える場所があるのは嬉しいことだ。

「カイ!ウミ!クレバスは任せていいか?俺たちは、モデストたちが居る草原エルフの集落に移動する」

”にゃ!”

了承が伝えられた。必要になりそうな物を渡してから、移動を開始した。
護衛は必要ないと思っているが、モデストの眷属が俺たちから少しだけ離れた場所から見守っている。

大型の獣や魔物が存在しない森で、驚異となり得る敵性生物は居ないだろう。
魔物の存在は考えなければならない驚異だが、魔物でも居れば、また話が違ってくるのだが、小型の魔物以外の存在は確認できそうにない。

新種の魔物は、どこからか渡ってくる。

「ステファナ」

「はい?」

「草原エルフのメンバーは、新種については知らなかったのだよな?」

「はい。全員に聞いたわけでは有りませんが、港と交易をしている者たちに確認をしましたが、新種は知りませんでした」

草原エルフの新しく作られた集落に向かいながら、ステファナが聴き込んできた情報を整理する。

新種は、エルフの大陸では確認されていない。
本当なのか?大陸の広さに比べて、エルフの絶対数がすくなくて、確認が出来ていない場所が多いのではないか?

俺たちも、あれだけ警戒していたのに、上陸を許している。
たまたま、そこにイサークたち。ノービスが居たから、対応が出来た。もし居なかったら、開発途中の町が破壊されていただろう。それだけなら、町を作り直せばいいのだが、戦えない者が居る場所だったら・・・。考えれば、考えるほどに、厄介な存在だ。そもそも、海を渡り歩くことができるのが反則だ。船を使うのなら、まだ対応が可能だ。海を泳いできたり、空を飛んできたり、姿が見えるのなら監視を強めれば、補足は出来るだろう。しかし、海から現れるようだと、スキル探索を使って監視出来る仕組みを作らなければならない。大陸の沿岸部を、覆うようにしなければならないのが問題だ。
対人なら、沿岸部の全てを網羅する必要はない。スキルを使っても突破が難しい。不可能と考えてもいい場所は多く存在している。人が上陸出来る場所に絞って警戒をすればいい。

「この大陸は、探索がされていないのか?」

「それは、どういう?」

「あぁ単純に、窓口となる港が一箇所だけだろう?中央に、森エルフが住んでいた森があり、森の近くに他のエルフが住んでいる集落があるよな?」

「はい」

「沼や池や川に住んでいるエルフは、川エルフや沼エルフや池エルフと呼んでいるが、蔑称だよな?」

「え?あっ・・・。そうです。本人たちは、普通にエルフと呼んでいますし、草原エルフと違いはありません」

「だよな。今まで、何度か話には出てきているが、水辺に住んでいるのだろう?」

「そうです。集落としては、一つと数えています。彼らも、それほど違いがあるわけではなく、気にしていません」

「へぇ。呼ばれても、怒らないのか?」

「そうですね。区別されている程度に思うだけだと思います」

「それで納得した。でも、大きい集落が3つと、港が一つだよな?移動した感じだと、俺たちの大陸よりは、少しだけ小さい気がするが、それほどの違いはないよな?」

「そうですね。森エルフの集落は、昔から中央と思われていますが、正確にはわかっていません」

「そこからか・・・」

「はい」

「それなら、港と反対側に何が有るのかとか、他の森に何が有るのかとか、解っていないのだろう?」

「・・・。はい。解っていないと思われます。草原エルフのテル・ハールから、最新の情報は聞けていませんが・・・」

「そうだよな。そんなに簡単に、性質は変わらないよな?」

「はい。森エルフは相変わらずでしたし、草原エルフも変わっていませんでした」

「エクトルの仕事が増えたな。それとも、冒険者たちを誘致する方法を考えるか?」

「冒険者は無理だと思います」

「ん?あぁそうか、エルフたちに相手が出来るとは思えない・・・。か」

「はい。相手をさせたら、破綻するのが目に見えています。それこそ、奴隷に落としても、同じだと思います。私は、メリエーラ様に、エルフだからという気持ちを持たない利益を教えられましたので、すんなりと話を聞くことが出来ましたが、今のエルフたちでは・・・」

「そうだな。俺が見ても無理だとわかる。それこそ・・・」

シロを見る。
会ったばかりのシロは酷かった。自分の正義を信じて疑わないのはいいとしても、価値観が一つしかないと思っていた。

エルフたちも、それぞれに価値観が有るように見えて、根本が同じだ。
エルフこそが至高の種族であるという思い込みだ。そのために、平気で多種族を下に見る。森の管理をしているフォレストキャットを絶滅に追いやることが出来る。そんなエルフが、宿屋を経営したり、冒険者を案内したり、対応ができるとは思えない。

”自分たちが上”だという価値観に染まりきった者たちから、その幻想を消し去るのは難しい。
これが、人族や獣人族なら、価値観の上書きを子どもたちに施せば、その子どもたちが大人になる頃には、新しい価値観が産まれてくる。しかし、エルフは長命種だ。それに、子供も少ない。子供に価値観を植え付けるにも、全体に行き渡る前に、教え込むはずの者たちが死んでしまう。
だから、エルフは”自分たちが上”だと勘違いしてしまうのだ。

人族や獣人族と関わりを持っていても、すぐに世代交代が発生する種族を見れば、”劣等種”だと蔑みたくなるのだろう。

それが大きな勘違いだとしても、自分たちが子供の時から持っている価値観を返ることは難しい。
そもそも、間違いだとは思っていないのだろう。今回も、たまたま負けただけで、時間が経てば、自分たちが優位になるとでも思っているのかもしれない。

ステファナと情報交換をしていたら、草原エルフの新しい拠点が見えてきた。
エクトルとの打ち合わせも面倒だな。帰路に付く前に、済ませておかないと、飛び火する可能性もある。やるべきことはやっておこう。

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