【第十七章 攻略】第百七十一話

 

全体会議から2ヶ月が経過した。
リヒャルトが、ゼーウ街のスラム街の開発を行い始めている。現地では概ね問題は出ていないようだ。下準備が済んでいたようで、スラム街の住民も協力的だと連絡が入っている。
ゼーウ街は、新しい領主とリヒャルトにまかせておけば大丈夫だろう。

ロックハンドも開発が開始された。
基礎工事は俺と眷属達で終わらせた。当初、陸路も作ろうと思っていたが、イサークから陸路は作らないで、魔の森の中心地点に橋頭堡を作って、ロックハンドからしか行けないようにしたいと言われた。
イサークが代官なので、代官に任せることにした。

従って、ロックハンドには船でしか行けない。
広い魔の森の中心地点に、魔の森での採取の特に使える休憩施設だけを作っている。

これにも理由があり、魔の森の植生がブルーフォレストと違っていて、魔の森でしか採取できない物が見つかっている。魔の森の調査は、2%ほどしか終わっていない。急ぎたいようだが、居住スペースの確保を優先しているようだ。派遣した居住区の住民も、ロックハンドでイサークに協力して、居住スペースの確保をしながら魔の森の調査を行ってくれている。
パレスケープから出港してパレスキャッスルを経由してロックハンドへ回ってロングケープへ至る定期便を走らせる事に決定した。右回りと左回りを設定している。報告が先日上がってきて、第一便が大陸を一周ようだ。予定通り、2ヶ月で一周する事になる。
ゼーウ街の港を経由する形の定期便は約3ヶ月で一周する事になる。今は、全体で4隻を廻しているが、再来月にはもう4隻増やそうと思っている。

アトフィア教に占拠されていた、ゼーウ街のもうひとつの港の開放が決まった。
ヨーゼフが俺の作戦を上手く利用した結果だ。街の中で暴動が頻発した。アトフィア教としては、これ以上アトフィア教の名前で街を占拠していてもメリットも何も無い事から、ゼーウ街への返還が決まった。
ローレンツを介した、穏健派の働きかけで、教皇派が動いた結果だ。街を占拠していた、強硬派はことごとく捕らえられて、アトフィア教の総本山に送られた。即刻裁判で死罪が言い渡された。それに関しては、俺達には関係ない。
リヒャルト経由で、支援を申し出て、ヨーゼフへの貸しが膨れ上がった。

ペネムとティリノにも変化が見られた。
俺からあふれる魔力を吸収して、魔核を食事するかのように、レベルが高い魔核で穴が空いていない物を吸収していたおかげなのか、支配領域を広げる事に成功した。

魔の森の運営は、アズリの権能である魔物核を配置する事で対応している。
知恵無き魔物だが、魔の森に住む魔物達には必要な餌だ。

ペネムとティリノで、チアル大陸の1/2程度をカバーできるようになった。
ダンジョン区を除く、各区はティリノが支配する事にした。ティリノが飛び地でのダンジョン化ができるためだ。流石に、他の大陸のゼーウをダンジョンにする事が出来なかった。他のSAやPAや道の駅に関しては、順次進めているが多くは手付かずの状態だ。
ユーバシャール区とロックハンド区とロングケープ区とパレスケープ区とパレスキャッスル区とミュルダ区とサラトガ区とアンクラム区と行政区と商業区と自由区と居住区と神殿区と洞窟区と宿区に関して、ティリノの支配領域になったために、洞窟から移動する事ができるようになった。
使うのは、俺とシロと眷属だけにしている。ダンジョンを使っての移動ができる事は、行政区のトップだけに共有している。

それから、会議の議題の中で、各区を昔のように”街”と呼称したいという物があって、自由に呼称してよい事になった。
行政区と商業区と自由区と居住区と神殿区と洞窟区と宿区に関しては、”チアル街の各区”と呼称する事が決定した。

来年の全体会議の開催も決定した。それと同時に、表の行政区に各の執務室か屋敷を設置する事になった。
1名から数名の範囲内で、行政区に各の代官への連絡係を配置する。大使館の役目をもたせた施設だ。SAやPAの資料が欲しい時に、今まではそのSAやPAに使いを走らせていたが、これからは行政区の関連施設に依頼する事になる。
時間的には遅くなるが、責任の所在がはっきりさせる事ができる。

街の基盤ができた。

街の基盤ができた事で、俺とシロはチアルダンジョン攻略に乗り出す準備をおこなっている。
一日の半分を、決裁書類に目を通す時間として、残りの半分をチアルダンジョンの50階層付近での訓練の時間にしている。
増えた眷属の能力把握を行いつつ、武器防具を揃えて、スキル道具の開発をおこなっている。

俺達だけの探索になるのは目に見えているので、自重すること無く考えられる最高の物を準備する事にした。

ペネムとティリノの見立てでは、120階層以上150階層未満だと思われるという事だ。
上層階の広さと中階層の広さからそう考えている様だ。それに、チアル大陸はチアル街のおかげで魔力が豊富にある。どういう理屈なのかペネムにもティリノにもわからないらしいが、チアルダンジョンも魔力を吸収して大きくなっている様子が見られるという事だ。

実際に、居住区の住民たちからの報告で、低階層が入り始めた頃に比べると広くなっていると言われた。どういう広げ方をしているのかは不明だが、広くなっているのは間違いないようだ。
常にダンジョン内に潜っている眷属に聞いたら、実感として感じているようだ。

そのために、早急に攻略を再開する事が決定した。
そう言っても、60階層付近の魔物に多少なりとも苦戦する事から、戦力強化は必須だと判断している。

ティリノダンジョン攻略の時の様にパーティーでの攻略が必須になる事が考えられる。
ペネムは一人としてカウントされなかったので、ティリノも大丈夫だろうと思っている。それでも、18名3パーティーに分かれる事になる。3パーティーは常に一緒に行動しているがボス戦などはパーティー単位での戦いになる事が予測される。

俺とシロとカイとウミとエーファとアズリ
リーリアとステファナとレイニーとライとティアとティタ
エリンとオリヴィエとレッチェとレッシュとエルマンとエステル

この組み合わせでパーティーを組む事になった。戦力は、俺の所が飛び抜けて強くなっているのは、眷属達が強固に主張した結果だ。他の2つのパーティーは戦力を上手く分散できていると思う。オリヴィエが貧乏くじのような気がするが、気が付かないふりをしておこう。本人の表情が全てを物語っている。エリンに振り回されてもらおう。エルマンとエステルがいる事から、斥候役もこなしてもらう事になる。

エリンたちが先行して、俺たちが続いて、後方をリーリアたちが続く事になる。最後尾をライが守るので、安心する事ができる。

先行グループは、オリヴィエが全体の指揮をとっている。エリンが戦闘に参加する事は少なく、レッチェやレッシュとエルマンとエステルが戦闘を担当している。疲労が見えてきた時に、エリンが出る事にしたようだ。

俺達の戦闘も基本はエーファとアズリが行う。
50階層付近では連携が乱れなければ、どのパーティーも問題なく戦う事ができる。
パーティー間の連携の確認もおこなっている。

全体の指揮は、俺がおこなっている。これは、全員の総意で決まった。俺としては、全体が見えるアズリ辺りにやらせたかったのだが、固辞されてしまった。

今日も昼過ぎからチアルダンジョンで訓練をおこなっている。
昨日作った武器の調整をおこなっている。

「エーファ使い勝手はどうだ?」
「旦那様。問題ありませんわ」
「そうか、アズリも大丈夫か?」
「うん!」

アズリが、エリンに引きずられるかのように幼女化していくのが気になるが突っ込んだら負けだと思って放置している。
すくなくても、武器と防具を揃えて、服装を整えたので、リッチだとは誰も思わない。

商業区を、俺とシロとアズリとエリンで歩くと、アズリとエリンが俺とシロの子どもだと勘違いする連中が多発した。子どもが居たとしても、年齢が合わないだろうとは思うが、スキルがある世界だからどうとでもなるのかもしれない。
それで、アズリが気分がよくなったのか、子どものフリをする事が多くなっている。

アズリは、撲殺リッチになると言って、スタッフを使っている。スキルが付いた魔核を大量に持って、スタッフに取り付けてスキルの発動を行ったり、魔物を殴り殺すような戦法を好んだ。

エーファは、弓との相性が良さそうだ。
本人に確認したら、弓で狙われる事が多かったので、特性は把握しているのだと言っていた。どこまで本気なのか判断はできないが、草原などのオープンフィールドでは弓を使って、ダンジョンフィールドでは短剣かかぎ爪を使っている。接近戦も問題ないようだ。エーファの場合には、それだけではなく魔物形態になれば専用の攻撃もできる。

他の眷属たちは武器が持てないので、スキル攻撃や爪やくちばしが主な攻撃手段となる。
そこにも一工夫して、爪やくちばしが強化できるような装備を特注で作ってもらっている。訓練は、前線に出る者はカイがスキル攻撃と後方支援はウミが教えている。

ステファナとレイニーは、武器よりも先に防具の充実をおこなった。
シロからの要望を取り入れた形だ。

スキル道具に関しても、市場に出せないレベルの大きな魔核を使った道具を多数作っている。
同時に、武器に付与する形でスキル攻撃が可能な状態にしている。話を聞いた、ルートガーが遠い目をしていたので、市場に出したり世間に出したりしなければ問題にはならないのだろう。

戦力は十分な補強ができた。
連携も確実に良くなっているが、満点という感じではない。まだまだぎこちない部分が残るが、数をこなしていけば問題は解決していくだろう。

そんなわけで、俺達は明日からチアルダンジョンの攻略を開始する。
ダンジョンの中に入る前にやって置かなければならない事がある。

「ツクモ様!」
「悪いな。ルート。忙しいだろうから、要件を伝えるな」
「え?」

ルートガーに、ダンジョン攻略を始めることを告げておく必要があると考えていた。
スーンたちにはすでに伝えてある。ヌラやヌルやゼーロたちはバックアップ体制を作ってくれている。進化後の個体を待機させている。ライが呼び出せばいつでも参戦できるようになっている。連絡要因としても優秀なのだ。

「ルート。俺とシロと眷属たちは、明日からチアルダンジョン攻略を開始する」
「はい」
「街の体制が整ったこともあって、今度は攻略するまで戻ってこないつもりでいるからな」
「かしこまりました」

意味がわかったのだろう。
ルートガーが恭しく頭を下げる。

「頼むな。簡単に帰ってこられない可能性も有るからな」
「はい。それほどなのですか?」
「そうだな。今度、ルートは全部の街を回るのだろう?」
「あ・・。そうですね。そのつもりです」

俺が提案したのだが、ルートガーは大陸を見て回る事にしている。手始めに”ロックハンド”に行く事にしている。ルートガーもだがクリスも以外と見識は浅い。現場を知っているつもりになっているだけで、実際にはわからない事が多いようなのだ。そのために、港や街のでき始めを見ておく必要があると話したのだ。

「それなら、ロックハンドでナーシャに聞いてみるといい。俺の悪口を交えながら、半日以上ダンジョンのことを語ってくれると思うぞ」
「わかりました。クリスもナーシャ殿に会うのは楽しみにしていたので、手土産を持って行きたいと思います」
「手土産か・・・クリスは収納が有ったよな?」
「スキル収納ですか?」
「あぁ」
「はい。持っております」

それなら丁度いい物がある。

「わかった。俺からと告げなくていいから、持っていって欲しい物がある」
「なんでしょうか?」
「後で、メイドドリュアスに届けさせる。いろんな種類のジャムだ」
「それは、喜びそうですね」
「あぁあと、”梅酒”という種類の酒で、漬け始めてから1年が過ぎていて丁度いい塩梅の物がある」
「わかりました。ジャムはナーシャ殿に、酒はイサーク殿とガーラント殿に渡せばいいですか?」
「そうだな。それから、ワイバーンを複数体、つがいで持っていってくれ」
「かしこまりました、ピム殿に渡せばいいですか?」
「そうだな。繁殖が可能な組み合わせで頼む」
「わかりました」

ピムから申請が上がっていた、魔の森の探索を行うたに必要なことだと言われている。戦力は順次増えているのだが、連絡方法が不足している。魔の森は広大なので、なんとか連絡を取れる方法が欲しいと言われていた。
スキル道具の開発を行っているが、とりあえずの方法としてはワイバーンが一番いいだろう。

「大荷物になって悪いな」
「いえ、大丈夫です。手土産の大切さはわかっています。それに、ツクモ様からの物ですので、イサーク殿も喜ぶでしょう」
「あぁイサークたちには、俺からだと伝えなくていいからな。特に、ナーシャにはな」
「はい。わかっています。でも、多分イサーク殿は解ると思います」

少し雑談をしてから、ルートガーは帰っていった。
控えていた執事エントメイドドリュアスに指示を出して、土産を揃えてもらう事にした。俺からの物以外でも、ルートガーが独自になにか持っていくのだろう。

指示を出した所で、シロたちが帰ってきた。
今日は、シロとリーリアとエリンとアズリとエーファとステファナとレイニーで、ダンジョンの中で着るための下着や服の調達をしてきてくれている。オリヴィエはまだ帰ってこない。オリヴィエは、ライと一緒にスーンの所に行って、調味料や食材を仕入れてきてくれている。ダンジョンの中での食事のためだ、狩った魔物を食べる時に調味料があると味に大きな違いがでてくる。最低2ヶ月分くらいは確保してきてもらっている。

今日は、最終準備のためにダンジョンには潜らない事にしている。
皆が揃ったら、食事をして今日は休む事にした。明日からは楽しい楽しいダンジョンアタックだ。カイとウミと相談して、60階層から開始する事にしている。

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