【第二章 遭遇?】第二話 神人族?
「細かい事は覚えていないけど、ユーラットだと思うけど、神殿でこのアーティファクトに乗り込んだら知らない場所に飛ばされた」
「え?ユーラット?」
「そう・・・だけど?」
「僕も、ユーラットに住んでいるけど、古代神殿?なんてあったかな?」
おい。なんて展開だ。
ご都合主義の塊だな。嫌いじゃない展開だ。小説なら読み飛ばすかもしれないが、現実だとありがたい。
『大丈夫です。”山の中腹あたりにある神殿だ”と伝えて下さい』
「あぁ・・・山の中腹あたりだと設け度、神殿だったぞ」
「・・・あそこ・・・神殿だったの?」
もう、ラノベの定番設定で説明だ!
「らしいぞ?なんで俺が神殿に居たのかはわからない。神殿の中で、マルスを名乗る声から、そう説明されただけだからな。聞こえた声の指示された通りに、このディアナに乗り込んで、エミリアに触れたら・・・。いきなり、使い方とかが頭に流れ込んできて、気を失ってしまったようで・・・な。気がついたら、ここよりも東の知らない場所に居たってわけだ」
「・・・それじゃ、自分の名前もわからないの?」
「いや、名前とかは覚えているけど、自分が居た場所がどこなのかとか、何をしていたかとか、そういうのが一切わからない」
「え?家族は?見た目から、奥さんも居たでしょ?」
「家族は居なかった。1人だったのは間違いない。嫁さんも居なかったなって。俺ってそんなに年寄りに見える?」
「え?20歳くらいでしょ?人族なら結婚しているのが普通だと思うけど?」
そうか・・・。
嘘言ってもしょうがないな。結婚はしていないし、子供も”多分”いない。家族は弟が居るけど、音信不通で何年も声さえ聞いていない。
それにしても、20歳で結婚か・・・。そんな気にはならないな。
「そっ・・・。そうか?それで、お前さんはどうする?俺も、一度神殿に戻る必要が有るみたいでな、ユーラットに向かうつもりだ。それに、あの辺りが俺の支配下になったみたいだからな」
「え?山って、どっちだろう?」
『山を検索・・・失敗。マスター、雌に、山の名前と形を聞いて下さい』
「さぁ俺もわからない。そもそも、山の名前も形もわからないからな」
「そうだよね。ユーラットから見える山は3つでね。ブレフ山はそれほど高くないけど麓に森が広がっていて魔物が沢山住んでいると言われているの、アトス山は高さも高いけど大きく峰が広がっていて3つの山の中では1番だと思う。アトス山の中腹からは神域が広がっていて入られない、ザール山は高いけどそれだけの山だけど・・・。貴重な植物やなんとかっていう高級な薬草も生えているらしいけどよくわからない」
『マスター。雌の説明にあった、神域がマスターのために確保した領域です』
「へぇ・・・(え?)・・・。多分だけど、そのアトス山にあるのが古代神殿だな」
「・・・。・・・。はぁ?貴方・・・。神人族なの?」
『神人族を検索・・・失敗。マスターの種族は、人族だとお答え下さい』
「違う、違う、人族だ」
「本当なの?それなら、なんで神域に入られるの?」
「それこそ、俺が知りたい。それよりも、お前はどうする?俺は、今からユーラットに戻るぞ?乗っていくか?」
おっ心が動いているな。表情が大分変わった。
ここに残されても、次に来るのが、俺のようなジェントルマンとは限らないからな。
「何もしない?」
「しない。しない。あと10年経ったらわからないけどな」
「うぅぅぅ・・・。ここにおいていかれるのも・・・。怖い。でも・・・。鉄の馬車・・・。それに、男の人・・・。でも、神域に入られるという事は、神に認められた・・・。可能性だってある。う・・うぅゥゥ」
何やら激しく葛藤しているな。
タバコ・・・は、やめたのだった・・・コーヒー・・・も無い。飴ちゃん・・・お!ある!
自分だけで食べてもいいけど・・・。試しに!
「おい!」
反応がない。葛藤中なのか?
「おい!」
「あっ?なに?」
「口を開けろ!」
無造作に口を開ける。危険だと考えないのか?
開けられた口に、1つ取り出した飴玉を放り込む。日本に居る時に、同僚の子供にやっていたから同じ要領でやればいいだけだ。
「え!」
驚いた顔をする。
そりゃぁそうか、毒でも入れられたのかと思ったのだろう。
顔がみるみる変わっていく。
俺も、一つ飴玉を口にいれる。
口が寂しいときには、これに限る。甘党ではないが、疲れている時に特に欲しくなる。
「!!!」
おっびっくりしている。
それほど甘い物じゃないけど、美味しいだろう?
質より量で、量と値段で選んだ物だがなかなか気に入っている。味は、6種類ある。
俺が食べたのは”みかん”味のようだ。女の口に放り込んだのは”りんご”味のようだ。
「なにこれ?すごく美味しい!甘い!甘い!」
興奮してくれて俺も嬉しいよ。
飛び跳ねるように騒いでいる。
「うまいか?」
「うん。うん。うん。すごく、美味しい!」
「なめろよ。噛むなよ」
「うん。うん。でもこれって何?なんで、”りんご”の味がするの?」
おっ嬉しい。”りんご”が”りんご”で通じるのか?
『りんごを検索・・・成功。マスターの認識に合わせて翻訳されます』
ということは、食材や物の名前で困る事はなさそうだな。
米が見つかれば嬉しいが、なければないで、まずは食べ物で困らないようにならないとな。
『レールテ語に変換できない物は、そのまま相手に伝わります』
そうか、まぁそれで問題はないのだろうな。
伝われなければ、その物がないと思えばいいのだろうからな。
「飴玉ってお菓子だ。俺の産まれた場所でよく食べられている物だ」
しまった。
記憶が無いとか言っておきながら・・・。
「そうなの?」
大丈夫のようだ。神殿に入る前辺りからの記憶が無い事にしておけばいいかな。
実際、中井PAで仮眠したあたりからの記憶が無いのも事実だからな。
「あぁ知らないのか?」
「・・・うん。知らない。祖母様なら知っているかもしれないけど、僕ハーフだから、祖母様に会えない・・・」
なにか事情が有るのだろう。
あまり踏み込むと面倒な事に巻き込まれるのだろう。
でも、今”ピコーン”とフラグが立ったからな。
覚えておいて損はないだろう。
「それでどうする?」
「・・・。あの・・・。連れて行ってほしいけど・・・。僕、着替えと頼まれた荷物以外全部盗まれちゃって・・・。帰ったら、お金を払うから・・・。ユーラットまで連れて行って欲しい・・・。です」
そうか、前払いが基本で考えているのか。
考えていたのは、身の危険云々も有るだろうけど、お金が無いからどうしようって事だったのだろう。
「そうだな・・・。条件次第だな」
「条件?僕の身体・・・。とか?」
身体か・・・。魅力的だけど、まだ若いな。あと10年熟成してからだな。異世界だからって10代に手を出すのはダメだろう。
「違う。違う。助けて、身体よこせって・・・。ラノベでも顰蹙を喰らうような事はしない」
「”らのべ”?」
「こっちの話だ。条件は、何が有ったのかを教えて欲しい事と、この辺りのことや、ユーラットや付近のことを教えて欲しい」
「え?そんなこと?」
「俺にとっては重要なことで、なにか思い出すかもしれないだろう?どうだ?」
「うん!それなら、でも、僕が知っている事だけになっちゃよ?」
「それで十分だ。それから、俺の事は、”ヤス”と呼んでくれ」
「わかった!ヤス。僕は、リーゼ。ユーラットの宿屋で働く、ハーフ・エルフです」
そういって、リーゼは頭をピョコンと下げた。
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