【第二章 スライム街へ】第三話 タカとフクロウとキメラ?

 

 私の生活が一変してから、1ヶ月が経過した。
 世間は、とある感染病で自粛が続いている。学校も、8月の末から始まる予定だったが、緊急事態宣言が発布されて、延期になったと教えられた。

 久しぶりにスマホの電源を入れたら、同級生からメールが来ていた。
 私が休学になったのを聞いて、連絡をしてきてくれたらしい。当たり障りのない返事を出したら、それからメールが来なくなった。皆が、自分のことで忙しいのだろう。元々、学校では一人だった。家族が居なくなって、独りになった。学校でも、独りになることが多かった。
 でも、今は独りではない。私のことを心配してくれる家族が出来た。種族は違うけど、家族だ。

 居間のTVを見ていると、ギルドが大幅に変わると、偉そうな人が説明していた。
 ふーん。と、しか思えない。どうせ、私には関係がない。ハンターと呼ばれる人たちが出来るようだ。私の家族や、私を守る手段を考えなければダメかもしれない。家の裏山は、私有地になっている。自衛隊やギルドでも、無理やり入り込むことはないだろう。でも、TVの情報では不確かなこともある。魔物が産まれる条件がはっきりしてきたと言っていながら、その条件を伝えてくれない。
 裏山に、大量だと思われる魔物がいた事や、裏山だけではなく近隣の山にも大量に魔物は存在していた。

 私が、スキルとギフトの検証を行っている最中も、家族は、裏山や近隣の山々を周っている。魔物を発見しては、対処を行っている。

 私が分体を作って安全に過ごせる様になってから、カーディナルとアドニスは積極的に”狩り”に出かけるようになった。
 隣の山に住んでいた、タカの夫婦をスカウトしてきた。
 最初は警戒していた二匹だが、私の前に出てきて”伏せ”の形になった。鑑定で見てみると、”魔物”にはなっていなかったが、カーディナルとアドニスが言うには、二匹には『復讐したい魔物が存在している。そのために、力を得られるのなら、”魔物”になりたい』と、いうことらしい。
 二匹にもう一度だけ確認を行って、了承を得られた。
 私は、初めて自分の意思で動物を”魔物”にして、”支配”を行った。パスが繋がる感じがして、二人に名前を与えた。雄には、”キング”という名前を、雌には、”クイーン”を与えた。

 アドニスも、カーディナルと同じ様に、4匹のフクロウを連れてきた。
 概ね、キングとクイーンと同じ理由だ。二組の番だ。キングとクイーンと同じ魔物に、子供を殺された。

 4人にそれぞれ、コノハズクの番には、”テネシー”と”クーラー”と名付けた。コミミズクの番には、”ピコン”と”グレナデン”と名付けた。

 新しく加わった6人の家族は、当然の様にスキルが使えて、私に新しいギフトを芽生えさせてくれた。
 復讐の準備を行うために、カーディナルとアドニスと一緒に、山々を巡っている。魔物から、弱い者たちを守るためだ。

 キングたちからの提案を受けて、弱い結界を作ることにした。
 まだ検証を行っているが、弱い結界でも魔物が湧き出すのを抑制できるようだ。産まれてしまった魔物を排除するには、強い結界が必要だけど、産まれなくするのは、可能なようだ。
 裏山の近くの山々を、弱い結界で覆ってしまう計画だ。
 これで、キングたちのような悲劇を減らすことができるかもしれない。すぐに、いくつかの結界を作成した。薄く伸ばすような結界で、結界の強度よりは、広さを重視した物だ。

 アイテムボックスの魔石がなくなりかけていたが、また増え始める。私の”負”に繋がる感情は、ライと一緒になってから治まっている。正確には、感情が流れ込んでくるが、私だけで耐える必要がなくなった。ライが、感情を吸収して和らげてくれる。

 キングたちが家族に加わって、他にもパルたちが巣分かれをした。
 新たな嬢王蜂が産まれたが、名前は必要なかった。パルが女王をまとめる女王になる。身体は”大きい”ミツバチだが生体は別物のようだ。パルの要望を聞いて、私は頑張った。正確には、錬金のスキルが素晴らしく有効だった。スキル錬金に複製というスキルがあり、ミツバチの養蜂箱を複製できた。偵察を兼ねて、いろいろな場所に配置したいと言われた。養蜂箱の設置が難しそうな場所には、巣になりそうな場所を構築した。

 もうひとり?家族が増えた。
 裏山の見晴らしがいい場所に、魔物の犠牲になった動物や魔物になってしまった者たちを屠った。そのときに、一緒に魔石を埋めたのだが、なんと”キメラ”が産まれてしまった。不可抗力だ。裏山の偵察に出ていたカーディナルが慌てて戻ってきて驚いた。報告だけ聞くと、ホラーなのだが、骨だけで動いているとか、ゲームやアニメでは何度も見たけど、実際に見ると、怖さよりも滑稽に見えた。
 鑑定で調べたら、種族名が”キメラ・スケルトン”となっていた。

 そして、このキメラ・スケルトンが進化した。キメラ・スケルトンは、暴れないが、意識がない状況だった。意識が混濁している印象もなかった。ただ、存在しているだけだ。
 進化は、完全に私が悪い。新たに送られてきた、魔石を結合して、こぶし大の魔石を作成して、ライの意識を入れた分体を作成した。そして、キメラ・スケルトンを吸収させた。

 キメラ・スケルトンに、ライの意識と私が持つスキルが”再生”された。
 そして、キメラ・スケルトンとして、”再生”された。血肉が付いて、スケルトンではなくなったが、キメラなのは確かだ。魔石の力を使って、固有スキルが芽生えた。

 ライは、ライとして、私と一緒になっている。
 しかし、キメラになったライも、またライなのだ。ライは、キメラの名前として使うことに決めた。

 ライのすごいところは、キメラなので、キメラに使われた素体には、変わることが出来る。

 そして、ライは私でもあるので、私の意識を乗り移すことが出来た。

 そして・・・。薄々気がついていたが、ライの素体の中には、”人”が含まれていた。多分、頭蓋骨から二人だと思う。
 私が記憶している中で、人が裏山や近くの山で死んだというニュースは知らない。行方不明になったという話も聞いたことがない。しかし、1-2年前に、隣の県で、いじめを苦にした自殺が報道された。自殺した場所が、富士の樹海だと言われている。サイトを検索しても、”見つかった”という報道はなかった。もしかしたらという思いは、存在しているが確認する方法がない。ライに、”人”になってもらったが、ニュースで流れている人物とは似ていない。むしろ、私に似ている。ある一部が小さいところなどそっくりだ。ライも忖度して、大きくしてもいいのだよ。あっダメだ。下着のサイズが合わなくなる。似ているだけで、私ではない。もしかしたら、私の意識と、女の子?の意識が混じり合った結果、こんなに可愛い私が出来上がったのだろうか?

 中学や高校では校則で禁止されていて、出来なかった・・・。夢だった、腰まである長髪で、黒髪だ。太陽光の下で見ると、黒ではなく”赤”に近い色に見える。胸は、高校生だった私と同じサイズだ。ブラがぴったり過ぎて悲しくなった。少しくらい夢を見させてくれてもいいのに・・・。
 身長は、元々の私と同じくらい。多分、150cmに届かない。こんな所まで・・・。年齢は、よくわからないけど、顔立ちから12-3歳くらい?中学に入ったくらいの私に似ている。

 キメラに意識を移して気がついたのだけど、”男の子”にもなれるようだ。なんとなく、ダメな気がして、男の子にはなっていない。女の子になったときに、全裸だった。だから、男の子にはなっていない。興味がないと言ったら嘘になる。でも、ダメな気がする。

 これで、私は、”リム○様”に近づいた。私は、最強のスライムになる!

 ライと、私と、家族の復讐相手に繋がるヒントが備考(履歴)に書かれていた。
 ライと一つになったときに、相手の認識が出来た。顔はわからなかったが、千数百回も私を殺した人。同級生だ。クラスで苛められていた人だと思う。私も、クラスでは、ある事情からアンタッチャブル状態だから、よくわからない。

 手段がわからなかったが、はっきりと書かれていた。

 探し出して、復讐しなければならない相手は、”スキル魔物化”を持つ人物だ。