【第六章 ギルド】第二十九話 修羅場?

 

ギルドの入口が見えてきた。
しっかりと見張りが立っている。

知らない顔だ。
ハーコムレイかローザスが雇った護衛か?

「なぁリン。大丈夫なんか?睨まれているぞ?」

「大丈夫だ。女子・・・。重久が中心になって作った組織だ。重久は、フェナサリム・ヴァーヴァンが名前だからな。間違えるなよ」

「おっおぉ」

「本当に、大丈夫か?」

「大丈夫だ。名前を覚えるのは得意だ」

まぁ困るのは、オイゲンだからいいけど・・・。
後ろを振り返ると、奴隷の少女たちが、俺とオイゲンの会話を聞いている。不思議な表情を浮かべている。

ハーフエルフの少女と視線が交差した。

「どうした?」

「いえ・・・」

「ん?何か、疑問が有れば、聞いてくれ、その方が、俺も嬉しい」

ハーフエルフの少女は、獣人の少女たちを見てから、立ち止まった。
俺とオイゲンも、少女たちに合わせて、立ち止まった。

「はい。あの・・・。ご主人様と、オイゲン様は、お知り合いなのですか?」

「難しい質問だ。詳しくは、オイゲンに聞いてくれ」

所謂、丸投げだ。
別に教えても良いとは思うが、オイゲンが奴隷の少女たちと心を通わせられなかったら、困ってしまう・・・。ことは、ないのか?
俺の奴隷なのは、確かな事実だ。その上で、オイゲンから離れたいと言い出したら、違う仕事を割り振ればいい。

「わかりました。オイゲン様」

「ん?何?」

オイゲンの声が上ずっている。
気にしないようにしているのだろうけど、気になってしまっているのだろう。

「私たちに、名前を頂けないでしょうか?」

「名前?」

「はい」

おかしな事は言っていない。
奴隷になってから、名前が消されている。真名はあるのだが、真名を呼ぶのは、控えた方がいい。奴隷を奪われてしまう。そのために、”呼び名”が必要だ。

「うーん。落ち着いてからでいいか?」

「はい。お願いいたします」

一応、オイゲンに釘を刺しておいた方がいいかもしれない。
何気なく、好きなアニメやマンガのキャラ名を付けそうで怖い。俺も、それほど詳しいわけではないが、ハーフエルフと獣人に、似たアニメキャラは存在するだろう。俺が、知らなくても、誰かが気が付いたら・・・。大丈夫だとは思うけど・・・。

「オイゲン。解っていると思うけど・・・」

「ん?」

「アニメやマンガのキャラ名はやめておけよ。似ている位ならいいけど・・・」

「・・・。ん?あっそうだな」

解っていなかった。
意味は解ってくれたようなので、大丈夫だろう。

先にギルドに行ってもらっていたセバスチャンが、俺を見つけてギルドから出てきた。

「セブ」

「ご主人様。皆さまには、簡単にご説明を致しました」

セバスチャンが、オイゲンと奴隷の少女たちを見ながら、自分の事や購入した奴隷は、簡単に説明をした。
そういえば、同じ神殿だけど、マガラ神殿で”パシリカ”が行えるのか?
ロルフに確認した方がいいよな。もし、マガラ神殿でも行えるのなら、奴隷の少女たちのパシリカが行える。それだけではなく、奴隷になってしまったから、パシリカが行えていない人たちが居ると聞いたことがある。できるのか、確認しなければならないけど、話を聞いていると、出来そうな雰囲気がある。

「ありがとう。後は、オイゲンの事だけ?」

「はい」

セバスチャンは、優雅に一礼してみせた。
面倒な説明が残ったという事だな。

「皆は?」

「ギルドでお待ちです」

やっぱり・・・。
待っているのか?
神殿に案内をすると約束しているから、待っていてもらわないと都合が悪いけど、オイゲンの事とか説明が少しだけ面倒だ。

面倒だと思っていても・・・。

オイゲンと奴隷の少女たちを連れて、ギルドに向かう。
やはり、入口で止められた。

奴隷の少女たちは、連れていかれた。
俺とオイゲンだけが残された。

戻ってきたのは、フェムだけだ。

「リン君?」

フェムは、部屋に入ってきて、オイゲンを無視して俺に話しかける。
俺は、関係ないよな?奴隷の少女たちは、オイゲンに任せたと説明している。ギルドのメンバーも納得している。

「え?俺?」

「話を聞けば、貴方が”主人”なのよね?」

確かに、名義は俺だが、主人はオイゲンだ。

「金を出したのは、俺だからな。でも、実質的な主人は、オイゲンだ」

「それは、いいの。彼女たちから事情を聞いている。オイゲン君を”主”だと認識していた」

オイゲンの事は、オイゲンとして認識することにしたようだ。
茂手木では話がややっこしくなってしまう。

「なら!」

「彼女たちの服装は何?狙っているの?あんな服装が、リン君の好みなの?」

「え?あっ!違う。あれは、オイゲンが気に入るように仕向けるために・・・」

「リン君が選んだのよね?」

ダメだ。
言い訳ができない。確かに、俺が選んだ。それは正しい。でも・・・。ダメだ。フェムの視線は、俺が認めるまで追及してくる視線だ。ここは、認めてしまったほうが、傷が浅くなる。

「はい。そうです」

「次、オイゲン君」


服装を問題ではないようだ。
フェムが何を確認したいのか解らない。

「え?俺?何?自己紹介もまだだけど?」

「自己紹介は、追々やっていけばいいでしょ?違う?」

「はい。間違っていません」

あぁ確かに、日本名での自己紹介はしていない。
フェムの言い方では、追々やっていくつもりなのだろう。それか、日本名の自己紹介をしないつもりか?

「フレットに聞いて、驚いた。君。パシリカで大騒ぎを起こしたらしいわね?馬鹿なの?」

「反省しています」

え?

「さて、リン君」

それだけ?
反省しているだけでいいの?

「何?」

「マガラ神殿の話は、大まかに聞いて納得している。でも、前に聞いた時には、オイゲン君は居なかったよね?オイゲン君に何をやらせたいの?」

「うーん。分類をすると、通路の運営はギルドに任せたい。オイゲンは、ギルドで活躍をする・・・。広告塔かな?」

簡単に説明はしているけど、オイゲンとギルドで話し合ってもらいたい。
俺が決めるのは、簡単な方針だけだ。

「広告塔?」

「あぁマガラ神殿には、訓練用のダンジョンがある。そこで、ギルドに来た依頼の素材を、オイゲンに取りに行かせる」

「え?リン君はやらないの?」

「俺は、別の事をしようと思う。それに、オイゲンならダンジョンの改善点とか、施設の改善点とか、出せるだろう?」

「ふぅ・・・。わかった。リン君の提案に、全面的に乗るか、話し合いをする時間を頂戴。オイゲン君の事を含めて・・・」

状況が変わったから、話し合いの必要性があると考えているようだ。
俺が、オイゲンを奴隷として連れてきてしまった。奴隷の少女だけではなく、セバスチャンや他の奴隷も居る。俺が、奴隷商に言っている最中に、ローザスやハーコムレイから話を聞いたのかもしれない。

「わかった。それで、ミルは?」

「ミアちゃんとレオちゃんを連れて、宿に移動したわよ。リン君が初めて、使った宿だから覚えている?」

「大丈夫だ。オイゲンは、置いていくから、好きにしてくれ」

「えぇ」

オイゲンが、俺を見て”なぜ?”という表情をしているけど、”連れて行く”と思っていたのか?
ギルドのメンバーに自己紹介をしてもらわないと困る。
それに、奴隷の少女たちの名前も考えていない。

修羅場は回避できたようだ。

ギルドの王都本部?から出ると、俺の考えが甘かったと思い知らされた。

そこには、豪華な馬車が止まっていた。
無視して通り過ぎるには、難しい視線を俺に投げかけている。

ローザスが、馬車から降りて、しっかりと俺を見定めて、手招きしている。

馬車の中には、ハーコムレイの姿が見えることから、逃げられそうにもない。セバスチャンも、すぐに理解したのだろう。ローザスに近づいて行って、話を聞いている。

「ご主人様。殿下が、”話を聞きたい”との事です」

そうだろうね。
雰囲気でわかった。セバスチャンに案内されるように、馬車に近づいた。

そのまま、ローザスが俺を馬車に案内する。
セバスチャンは、固辞したのだが、ローザスが半ば無理矢理に、セバスチャンを馬車に乗せた。今後の話もあるので、セバスチャンにも効かせた方がいいだろうと・・・。一応、理由を説明している。
そもそも、継承権を持つ者が、”気軽に平民に会いに来るな”と言いたい。

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