【第二章 ギルドと魔王】第二十五話 【連合国】魔王

 

どういう事だ。
なぜ、新参の魔王があれほどの施設魔王城を!!

「誰か答えろ!」

俺が築き上げた、連合国という仕組みを使っても、攻略できない?

新参の魔王は、中央に位置する魔王領だ。攻略と同時に勢力を伸ばそうと考えていた。

前回は、帝国が攻略を行った。
やっと戦力が揃って、序列2-4位も戦力に数えられるようになってきた。やっと、これで、中央の魔王を討伐して、産まれたばかりの魔王を、味方下僕にできる。そう考えていて、実際に寸前までうまく行っていた。
帝国の阿保が、中途半端な戦力で討伐を・・・。”獣人”や”人もどき奴隷・エルフ・ドワーフ”を差し向けるから、新参の魔王がポイントを得てしまったのだろう。

「使えない奴らだ」

俺の前で跪いている連中だが、誰一人として意見を言おうとしない。
何から何まで、俺が考えないとダメなのか?

傘下の魔王も使い物にはならない。
新参の魔王は、俺と同じ方法で、ポイントを獲得し始めている。

「エルプレからは、何か言ってきたか?」

「はっ。魔王様。書状が届いております」

「あ?」

持ってきた眷属を殴り飛ばす。
本当に、使えない奴らだ。書状があるのなら先に持って来るのが当然だ。

眷属が、壁際で痙攣している。

「おい。片づけろ」

近くにいた眷属を呼んで、壁際で死にそうになっている眷属を片づけさせる。死ぬのなら、ダンジョンの中で殺すべきだな。人に殺させればもっといい。

「おい」

死にぞこないを片づけようとしていた眷属を呼び止める。

「はっ」

こっちを向いて跪く。しっかりと教育が為されている眷属のようだ。

頭を下げている。早めに指示を出さないと、死んでしまいそうだ。

「お前と、そこのお前で、こいつを連れてダンジョンに向かえ。そうだな。5階層ほど行けば、そいつの始末もできるだろう」

「・・・。かしこまりました」「はっ」

本当に、使える眷属がいない。
まだ、人の方が使い物になるが、あいつらは、ポイントであり、餌だ。使いつぶす前に増やす必要がある。眷属だけだと、ポイントが入ってこない。人に殺される必要がある。5階層くらいなら、3体の眷属を殺すくらいの者が居るだろう。

書状は、いつもと同じだろう。

封蝋を確認してから、封を切る。

ふむ・・・。
謝罪から始まって、いつもの要求だな。負け続けている状況を変えたいから、スキルを欲するのは解るが、そのスキルを得るためのポイントが必要になってくる。それにしても、神聖国が絡んできたか?

スキルは、いつものように対価を要求すればいい。
その対価で、女を用意しよう。今回は、戦闘に必要になるスキルや、探索系が多いから、いつもよりも対価を多めに要求が可能だ。

眷属ではなく、久しぶりに、人間の女を要求するか?

「おい」

「はい」

この者も飽きてきた。
そろそろ、殺してポイントに還元させるか?

「羊皮紙とペンを用意しろ」

「かしこまりました」

用意された羊皮紙に、用意が可能なスキルと対価を記していく、最初に対価を決めて、そこからスキルを書いていけばいい。

こんな所だろう。
あまり欲張っても、屋台骨が弱ってしまってはしょうがない。

そうか・・・。
神聖国の魔王に、魔王ルブランを攻めさせる。弱った所で、連合国に攻めさせればいい。

帝国に攻め入った時のように、眷属を貸し与えてもいいかもしれない。
一考の価値はありそうだ。

神聖国としては、魔王ルブランが提供をしている”回復のスクロール”は許せないだろう。エルプレからの報告でも、ギミックハウス魔王ルブランのハウスでもドロップするようだ。神聖国が占有していた、いくつかのスクロールと同じ効果があるという報告が上がってきている。同じ効果で、同じ物ではない。魔王ルブランも、回復系のスクロールの公開はしていない。それだけではなく、魔王ルブランが新しい追加項目をオープンにしていない。対価の設定もしていないのだろう。魔導書モノリスにも表示されていない。

魔王ルブランも馬鹿ではないという事だな。
しかし、神聖国の魔王に対するいやがらせとしては成功しているのだろう。奴らが、対価の設定している物を、違う形で認めさせて、スクロールとして、提供を行っている。

神聖国としては、魔王ルブランを・・・。
そうか、やつらは自分たちの手で討伐する必要がある。人の手も借りられない。

魔王ルブランが、人の手で討伐されてしまったら、魔王ルブランが作ったスクロールの情報が公開されてしまう。俺たちにも、回復の奇跡が使えるようになってしまう。神聖国の魔王としては、絶対に避けなければならない。
自分や属している者が倒せば、秘匿条件を満たせられる。魔王ルブランが持っている技術や秘匿している情報を引き継げる。そうしなければ、神聖国としては終わりだ。

連合国の奴らに神聖国が動くから”待て”とは命令できない。
エルプレだけなら、”待て”と命令しておくか?ギルドにも、非推奨を通達すればいいだろう。それでも、餌に飛びつく者たちは居るだろうから、その者たちは、勝手にすればいい。

よし、方向性が決まった。

あとは、書状にしてエルプレに届ければいい。

待っていた者に、書状を渡して、エルプレに帰らせる。

さて、今日は誰にしようか・・・。

「よし、今日は、気分がいい。お前と、お前と、お前。後で、寝所に来い」

今日は、眷属ではなく、奴隷で楽しもう。3人も居れば、しばらくは持つだろう。壊れたら、眷属を使えばいい。

「主様は?」

「いつもの要求だ」

「はぁ・・・。要求が増えているように思うのですが?」

「いうな。主様も苦しいのだろう」

「魔王ルブランの攻略が進まないのが問題だと?」

「いや、攻略は、控えるようにと、ご命令だ」

「控える?」

「お前も、聞いているだろう。神聖国の奴らが、乗り出している。彼等の邪魔をするなと・・・」

「え?あいつらは、聖職者とは名ばかりの強盗ですよ?」

「わかっている。主様は、魔王ルブランと神聖国が潰しあいを始めるまで”待て”とご命令だ」

「潰しあい?あぁ・・・。スクロールの話が拗れたらしい・・・。とは、聞いていたけど、そこまで深刻なことになっていたのですか?」

「解らない。主様は、ギルドにも通達を出すようにおっしゃっている」

「通達?」

「魔王ルブラン城への攻撃は非推奨とすることが書かれている」

「”非推奨”ですか、でも、止まりますか?あのギミックハウスは、おいしい狩場ですよ?」

「それは、ギルドから”素材やスクロール”集めに、ギミックハウスへの突入を禁止すると通達を出せばよいと書かれている」

「あぁ・・・。それは、攻略をしなくてもいい、狩場として使えってことですか?」

「そうだな。主様の狙いは、解らないけど、神聖国だけにおいしい目をみせるのは癪だ。”非推奨”は出すが、情報は小出しに流せ」

「わかりました。スクロールは、確認しましたが、対価の準備をします」

「頼む」

男が主様から送られてきた書状を持って、部屋から出ていく。奴隷と罪人を集める為だ。スクロールを渡す対価に、人を差し出す。奴隷でも、罪人でも、人なら誰でも良い。エルプレは、連合国のトップに君臨し続けるために、魔王からスクロールを買っていた。以前は、対価に金銭を求められたが、金銭ではなく、奴隷を求められるようになった。奴隷や罪人は、エルプレだけではなく、連合国の他の国々から集められる。拠出した奴隷の人数で、スクロールお割り当てが変わる場合もあるが、殆どの場合が連合国の序列1位が独占する。おこぼれを、他の国が拠出の割合でスクロールや救援物資を貰っている。

「ふぅ・・・。新生ギルドのことには触れていないか・・・。メルヒオールが魔王ルブランと交渉しているのは・・・。問題は・・・。それに、神聖国か・・・。敵の敵は、やっぱり敵だろう・・・」

部屋に残った男は、連合国の魔王から送られてきた書状で自分宛の書状を読み終えてから、燃やした。

「最後に生き残るのは・・・。連合国の魔王様か?神聖国の魔王か・・・。それとも・・・」

連合国の魔王が作り上げた強固な支配体勢は、うまくいっているように思える。

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