サイト小説の記事一覧
2022/01/12
【第三章 帝国脱出】第九話 おっさん入領する
領都の門には、長蛇の列ができている。 距離にして、800mはあるだろう。 距離に対して、待機している人数が少ないのは、馬車や護衛が居るために、隊列が伸びてしまっているだけだ。 「まー様。カリン様。少しだけお待ちください」 カリンは、馬車の扉を開けて、護衛の者を呼び寄せる。伝令を頼むつもりのようだ。 「ちょっと待って。なぁイーリス?」 伝令が走り去ろうとした瞬間に、まーさんが伝令を止めた。 止められた伝令も、馬車に戻ろうとしていたイーリスもなぜ、呼び止められたのかわからない。まーさんの顔を見てしま…
続きを読む2022/01/12
【第十章 エルフの里】第十九話 大興奮
話がまとまったので、リーゼを呼びに行く、隣の部屋なので、結界を解除して、声をかければ、すぐに部屋に入ってきた。 そこまではよかった。 栗鼠(カーバンクル)と、猫(キャスパリーグ)と、鷲(ガルーダ)を見て大興奮。 可愛い以外には言葉が離せなくなってしまったのかと思うくらいに大興奮だ。 「リーゼ?リーゼさん?」 「なに、ヤス。今、忙しいのだけど!」 「眷属に会ったことがあるよね?」 「・・・。うーん。栗鼠(カーバンクル)には会っていない!ヤス!こんなかわいい子を隠していたの?」 「隠していない。会わせた…
続きを読む2022/01/09
【第五章 共和国】第十二話 増援
朝になって、シャープが朝食の用意を始めている。 落ち着く為に、飲み物だけを頼んだ。朝には、コーヒーを飲んでいたが、紅茶を飲むのが多くなった。 紅茶を飲んでいると、アルバンが部屋に入ってきた。 「兄ちゃん!おはよう!」 アルバンの声が頭に響く。 「もうすぐ、朝食だ。アルも食べるだろう?」 「うん!でも、兄ちゃん!おいらも、エイダたちと戦いたかった」 アルバンの分の紅茶が置かれる。朝食まで、ここで待っていて欲しいという意味なのだろう。 カルラもだけど、アルバンは探索や御者以外の能力が欠如しているのか…
続きを読む2022/01/08
【壊れたパソコン】第四話 鍵
部屋に帰って、変人の荷物を入れた段ボールを開ける。 変人と会話している雰囲気を思い出す。私の部屋に来た事はもちろんない。私の住所をしっていた可能性すらない。 でも、テーブルの向こう側に、変人がいつものように片足だけを椅子に載せて、座っている様子が見える。 そうやって、なんでも解っているような顔で、私を見ている。 そして、実際に私のミスを何度も助けてくれた。その都度、私を慰めてくれる。ミスした箇所ではなく、些細なことを褒めてくれる。ミスはしょうがない。ミスをした時の対応方法を教えてくれる。バグが消え…
続きを読む2022/01/08
【壊れたパソコン】第三話 荷物
結局、変人のデスクで寝てしまった。 始発の1時間前に起きられたのは僥倖だ。作成した部分をコミットして、ポータルに結果と注意事項を書いておく、休むと言っても、咎められないのは解っている。荷物を受け取りに行くだけだ。でも、部長からは休めと言われた。 「笹原さん。貴方が生きていたら、私がこんなに苦労をしなかったのですよ?」 文句を言いたいのは、変人も同じだろう。理不尽に、無慈悲に殺された。通り魔は、翌日に捕まった。ただ、受験に失敗したという理由で勝手に絶望して、自殺が怖いという理由で、”死刑”になるために、…
続きを読む2022/01/08
【壊れたパソコン】第二話 夢
あっこれは、いつもの夢だ。 会社で仕事をしていると、変人が話しかける。 「美穂さん」 ほら、そこで変人は私の作成した所の修正箇所を告げて来る。 変人が居なくなってから繰り返される夢。 夢だと解っていても、変人を目で追ってしまう。 ほら、今回も同じ。 注意される箇所も同じ。 私の返事も同じ。 そして・・・。翌日になって、修正したモジュールを提出しようとするが、変人は会社に来ない。 解っている。 時計を見る。目覚めたい。ここで、目が覚めれば、同じ苦しみを感じることはない。 でも、無常にも…
続きを読む2022/01/08
【壊れたパソコン】第一話 変人
「あき!先に帰るね」 「うん。お疲れ様」 「うん。あきも無理しないでね」 「解っているよ。インターフェース部分のエラーが無くなったら帰るよ。週末は、頼むね」 「わかっているよ。あき。お疲れ様」 泉が、私が座っている場所以外の電気を消す。 タイムカードを押す音が響いて、扉が開く音がする。 エレベータが到着する音が響いた。 これで、このフロアに居るのは、私だけだ。 明日から、来週の月曜日まで、会社を休む申請を行っている。 ふぅ・・・。 煮詰まってしまったコーヒーを流し込む。舌と喉が刺激されて、眠か…
続きを読む2022/01/07
【第六章 ギルド】第六話 猫人族
力の波動?を抑える話になっていたが、元々は、ブロッホに洞窟の奥に潜んでいる獣人との接触を頼むためだ。 「ブロッホ」 「はい」 「洞窟の中に居る獣人は、無事なのか?」 「無事か・・・。解りませんが、こちらを警戒しています」 「わかった。俺とミルは少しだけ離れた方がいいか?アイルが居れば、大丈夫だろう?」 「はい。旦那様たちは、入口から離れた場所でお待ちください」 「ミル。少しだけ離れるよ」 「うん」 ミルが、俺の腕を取る。 洞窟から直接見えない位置まで下がる。丁度いい場所に、露出している岩があったので、…
続きを読む2022/01/01
【第二章 スライム街へ】第十八話 報告
円香さんにお願いされたミッションはクリアでいいのかな? 「千明!」 「あっ円香さん。舞に情報を渡してきました」 「そうか、解った」 「よかったのですか?」 「なにが?」 「舞は、直接報道はしませんが、制作ですよ?」 「構わない。どうせ、どこかに流す情報だ。それに、調べればわかることだ」 確かに、新しい情報もあるけど、調べればわかる事だ。 実際に、ギルドのメンバーになってみて解ったけど、隠すべき情報は、ほとんど存在しない。秘匿コードで呼んでいる、”ファントム”の情報くらいだ。ファントムを秘匿しているのも…
続きを読む2022/01/01
【第二章 ギルドと魔王】第十八話 会談
与えられたミッションは、ギルドとの会談を成功させることだ。 魔王様からは、指示を頂いていない。 島の運営と城塞村との関係は、任されている案件だ。 入ってきたのは、二名。報告にあった、ボイドとメルヒオールだろう。 メルヒオールが、連合国にあるギルド本部のギルド長を勤めていたのは把握ができている。ボイドは、うまく経歴を隠しているようだが、ギルドの暗部を取り仕切っていたのは把握ができている。 ヒアとメアがソファーに誘導する。カエデは、後ろで控える形にした。横に座るのは、メアとヒアだ。幹部として、城塞村…
続きを読む2021/12/31
【第二章 帰還勇者の事情】第二十七話 ギアス
ユウキたちは、安全になってから、お嬢様の治療をしたほうがよいと考えていた。 ミケールも賛同した。問題の解決には、2週間程度は必要だとミケールから告げられた。 ユウキたちは、”2週間”という時間は、襲撃者たちの対応ではなく、反乱分子の始末に必要な時間だと考えていた。 しかし・・・。 「ユウキ!お客さんが来ているぞ」 「そうだな。いつもと同じ対処で頼む。質も落ちてきているから、捕えるだけでいい。後は、ミケールに渡して終わりにしよう」 最初の襲撃があってから、10日が過ぎているが、当初は夜だけの襲撃だっ…
続きを読む2021/12/31
【第三章 帝国脱出】第八話 おっさん家名を知る
途中で、村に立ち寄って補給と情報収集を行った。王都からの追跡や捕縛命令が出ていないことを確認した。 おっさんの一行は、辺境伯領の領都まで移動ができた。 領都が目前に迫った事で、まーさんは思い出したかのように、イーリスに質問をぶつけた。 「そういえば、イーリス。辺境伯領の名前と、領都の名前を聞いていなかったが?」 「え?」 おっさんの質問に、イーリスは固まった。おっさんが聞きたい事はわかるが、”なぜ”名前を聞く必要があるのか解らないのだ。 「辺境伯領は、他にもあるのだろう?それに、領都は別にして、街は…
続きを読む2021/12/31
【第十章 エルフの里】第十八話 召喚
「ヤス様。主様?」 ラフネスが、跪いている。 不思議に思ったのが、ラフネスの立ち位置だが、問題にはならないようだ。 まずは、立たせたい。それで、ソファーに座らせた方がいいだろう。 「大丈夫だ」 「すぐに移動を開始しますか?」 移動と言われても、リーゼには準備が必要だろう。エルフの里だと言っているのだから、森の中を歩くことになるのだろう。俺も、靴は変えた方がいいかもしれないし、準備が必要になる。 それに、森で襲われたら、いくら結界があっても、絶対に安全だとは思えない。森は、やはりエルフの主戦場だ。 …
続きを読む2021/12/31
【第五章 共和国】第十一話 予想外
町長や、監視している連中が動くかと思ったが、最初に状況が動いたのは、魔物の討伐に向かったエイダたちだった。 『マスター』 夜明けに近い時間帯に、パスカルから連絡が入った。 『どうした?』 『はい。エイダが魔物との戦闘に入ります』 魔物? 『ゴブリンの集団か?』 報告は聞いている。村から少しだけ移動した所に、ゴブリンの集団がいる。エイダが、討伐に向かった。 『いえ、オーガに率いられた、魔物の集団です』 『オーガ?』 パスカルが情報を整理してくれている。 当初、エイダたちが向かった場所には、ゴブリン…
続きを読む2021/12/26
【第六章 ギルド】第五話 力?
洞窟の中から、こちらを伺っている様子が伝わってくる。 「リン。ぼくが行こうか?」 「どうして?」 「うーん。うまく言えないけど、中から伝わってくる雰囲気が、リンを恐れているように思える」 「俺?人畜無害だぞ?」 「ぼくは知っているから大丈夫だけど、すごい力を感じるよ?」 「え?俺が?」 「うん。気が付いていなかった?」 俺が驚いていると、リデルがミルの肩で頷いている。 気が付くわけがない。ミルもマヤも眷属たちも、態度が変わらないし、そうだ! 「ナナも、何も言わなかったぞ?」 え?なに?ミルが盛大な溜…
続きを読む2021/12/15
【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜
少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。 そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』 屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。 ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』 ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。 会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…
続きを読む2021/12/14
【第三章 帝国脱出】第七話 おっさん移動をする
カリンが魔力切れを起こして馬車に戻ってきた。 「それで、イーリス。秘匿魔法は、さっきの説明では、各属性を”刃”のように飛ばす魔法に思えるけど、その認識でいいのか?」 「私の解釈は、まー様のおっしゃっている通りです」 丁度、おっさんとイーリスの話が”秘匿魔法”になっていた。 「まーさん。イーリス。バステトさん。ただいま。疲れた」 「おぉおかえり。収穫はあったようだな」 まーさんは、帰ってきたカリンの表情を見て、カリンを褒める。頬を赤くするカリンを、イーリスが”生”暖かい表情で見ている。 「うん!」 普…
続きを読む2021/12/14
【第十章 エルフの里】第十七話 ラフネス
遮音の結界が発動した。 長老は、何かを探している。目線が、ボイスレコーダーで止まる。もしかしたら、遮音の力で、ボイスレコーダーが無効になっていると期待しているのか?原理が解らなければ、無効になると考えても不思議ではない。 遮音の結界だけではなく、物理攻撃を弾く結界も発動しているようだ。外部からの攻撃を警戒しているのか?気が付かないフリをしておいた方がよさそうだ。何か、進展があったのだろう。 俺が考えるのもおかしな話だけど、もう少し腹芸とか学んだ方がいいと思うぞ?商人に騙されまくって、終わってしまうぞ…
続きを読む2021/12/04
【第二章 スライム街へ】第十七話 絶望
望月舞は、迷っていた。 手元にあるネタだけでは、番組にならない。ギルドのメンバーに、昔なじみの”柚木千明”を見つけて話しかけたが、重要な情報は聞き出せなかった。自分たちが持っている情報と違いはなかった。 ギルドから配られた情報には、知らなかった内容が含まれているが、それは皆に共有されてしまっているので、ネタとしては弱い。 本社筋からは、ギルドや警察や自衛隊を無視して、キャンプ場に突入しろと意味がわからない命令まで出ている。 もう、何人も死んでいる。幸いなことに知り合いに犠牲は出ていないが、地元の猟…
続きを読む2021/12/04
【第二章 ギルドと魔王】第十七話 【ギルド】会談前
朝から・・・。いや、正確には3日前から、緊張してしまっている。 今までの会談とは、持っている意味が違う。メルヒオール様が控えているが、自分が全面に出なければならない。 魔王ルブランは、理知的な魔王だ。いきなり、激昂して我らを処断するような状況にはならないだろう。 今までの報告では、魔王ルブランは従者たちを愚弄した者や、自ら作り出した物を粗雑に扱った者には、厳罰をもって接しているが、自分自信への暴言には寛容な態度を示している。それが、苦言だとしたら、その者に褒美を取らせたこともある。 「ボイド。今から…
続きを読む2021/12/04
【第五章 共和国】第十話 前準備
婦人が頭を下げて、離れから出ていく。 「カルラ。どう思う?」 「問題の解決は難しいと思います」 そうだよな。 この町の問題は、隣町のダンジョンだけが問題ではない。根本的には、”共和国の無策”に繋がっていくのはわかっている。だからこそ、俺たちに何かができるわけではない。 盗賊団を壊滅させることはできるだろう。 しかし、盗賊団が産まれる原因を排除することはできそうもない。俺たちが、この町や周辺の領主にでもなれるのなら、本腰を入れて考えるのだが、俺たちは”商人”でしかない。もっと、本質的なことを言えば、…
続きを読む2021/12/04
【第六章 ギルド】第四話 王都の途中
街道に出るまでは、急いだ。アゾレムからの追っ手を警戒したが、追っ手どころか、俺たちの後ろからは誰もついてきていない。まだ、商人が揉めているのだろうか? 「リン?」 ミルが不思議そうな表情で俺を確認してくる。 「さて、森に向かおう、誰かが来ているだろう」 「うん」 ミルと二人で、近くの森に向かう。 さすがに、王都に向かう街道だけあって、整備されている。 マガラ渓谷を越えてから、1時間くらい走ると、いろいろな街道からの合流地点が見えてくる。この近くに森がある。この辺りで、お供として王都に向かう者がいる…
続きを読む2021/12/01
【第二章 帰還勇者の事情】第二十五話 証拠
少女が貴賓室に入って、護衛が扉の前を、メイドが内側を調べている為に、ヴェルとパウリはユウキに念話を繋げた。 『二人には、悪かったな』 『いいですよ。マイにも頼まれましたし、未来の国王の側近に恩を売るチャンスですからね』 『ヴェル。俺は、宰相になるつもりはない。異世界と地球の秘境をめぐる旅がしたいと思っている』 『ユウキもヴェルも、その話はマイがなんとかすると言っていたでしょ。それよりも、ユウキ。護衛の一人で間違いはなさそうよ』 『わかった。パウリ。助かる』 わざわざ手が足りているのにも関わらず、ユウキが…
続きを読む2021/11/24
【第三章 帝国脱出】第六話 おっさん認識を改める
馬車に戻ったおっさんは、残っていた飲み物を一気に喉に流し込む。 一息ついて、また目を閉じる。 ”にゃぁ” 「バステトさん。一緒に寝ますか?」 おっさんが膝を叩くと、バステトは床からジャンプをして、おっさんの膝の上に乗って、くるくると回って、何かを確認してから、丁度いい場所が見つかったのか、前足で”カシカシ”とおっさんの膝を掻いてから、その場所で丸くなる。 おっさんは、丸くなったバステトの背中をなでながら、また目をつぶる。 「まー様。少しだけお時間をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」 おっ…
続きを読む2021/11/23
【第二章 スライム街へ】第十六話 最終確認
円香が、テーブルの上に放り投げた資料は、以前に見せてもらった”ファントム”に関する物だ。 「そうか、ファントムか・・・。結界のスキルを持っている可能性があったのだよな?」 「あぁ。しかし・・・。この中に”ファントム”が居るとは思えない」 円香は、キャンプ場に集まっているマスコミや自衛官や警察官や消防官を見回している。 「そうなのか?!」 蒼は、驚くが、俺もこの中に”ファントム”が居るとは思えない。 「ファントムが、どんな移動手段をもっているのかわからないが、自衛隊や警察の関係者である可能性は低い」 「…
続きを読む2021/11/23
【第二章 ギルドと魔王】第十六話 【ギルド】城塞町
帝国の辺境地域にある城塞町に、一通の召喚状が届いた。 「ボイド。魔王ルブランからの召喚状だ」 部屋に入ってきた、メルヒオールは執務机に座っているボイドに投げかける。 メルヒオールは、新ギルドの相談役のような役割になっているが、現状では、城塞町の領主になっているティモンの所で食客のような立場になって、新ギルドと帝国を繋ぐ役割を担っている。 入ってきたのが、メルヒオールだとわかっても、ボイドは言葉遣いを変えない。 今のギルドは、ボイドがトップの体制になっている。前ギルドマスターであるメルヒオールでも敬…
続きを読む2021/11/23
【第十章 エルフの里】第十六話 ネタバラシ
長老との話はマルスを通して、リーゼも聞いていた。 リーゼが自分の責任だと言い始めてしまったためだ。リーゼに責任は一切ない。元々が、リーゼの願いが始まりだったが、今回の件は間違いなく、エルフ側の問題だ。 アーティファクト(Fit)に手を出そうとしなければ、この自体にはなっていない。 それを含めて解らせるために、リーゼには聞かせていた。 宿に戻ると、リーゼが抱きついてきた。 「リーゼ?」 「ごめん。ごめん。ごめん」 泣き顔で、俺に抱きついてきたリーゼは、謝るだけだ。 何に対して、謝っているのか?リ…
続きを読む2021/11/23
【第五章 共和国】第九話 事情と情報
アルが戻ってくるのを待っていると、アルではなくカルラが戻ってきた。 「旦那様」 「宿は見つかった?」 「はい。私たち以外は、町を訪れる者が居ないようです」 「そうか・・・。それで?」 「はい。宿の店主・・・。町長が言うには・・・」 カルラの話は、シャープが聞いてきた話と同じだ。 「よく宿屋が営業していたな」 「町長を兼ねているらしく、宿屋を閉じると、泊まる場所がなくなるので、営業をしていると言っていました」 「わかった。それで、アルは?」 「エイダと、馬車を見ています」 「ん?あぁそうか、人手が足りない…
続きを読む2021/11/23
【第六章 ギルド】第三話 王都へ
ミルと二人で、マガラ渓谷の受付に並んでいる。 チケットは持っている。通過はできるとは思うが、マガラ渓谷は敵方(アゾレム)の関所だと考えられる。 ミルは大丈夫にしても、”死んだことになっている”俺はどういう形になるのかわからない。 「次!」 関所の人間が偉そうにしている。 次が俺たちの番だ。 前は、行商人のようで、荷物を検めるのに時間が必要になっているようだ。 「リン。どうして、マガラ渓谷を越えるの?」 ミルの素朴な質問だけど、確かに説明をしていなかった。 まだ、時間が掛かりそうだし、簡単な説…
続きを読む2021/11/23
【第二章 帰還勇者の事情】第二十四話 魔法使い
ユウキがニヤリを笑ってから、少女と大人たちに告げる。 「挨拶の代わりに・・・」 少女は、握られた手を見ると、少しだけ不思議な暖かさを感じた。 『聞こえますか?』 少女の頭の中に、目の前に居る男性・・・。ユウキの声が響いた。 びっくりした表情で、ユウキを見つめる。 『あっ手を離さないでください。すぐに終わります』 少女は、身体から倦怠感が抜けるのが解る。濁っていた視界もはっきりとしてくる。そして、同時にモヤがかかっていた思考がはっきりとしてくるのが解る。そして、目の前に居るユウキを見つめてしまった。…
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