【第二章 スライム街へ】第二十四話 掃討

 

 キングとクイーンに、追加の援軍を送った。オークの処置は、後方で待機していた者たちに頼んだ。

”ライ!”

『はい。ダークとドーンで、結界の外を警戒させます』

”うん。魔物が居たら、討伐を頼める?”

『上位種までなら、色違いが居たら、ピコンとグレナデンを向かわせます』

”お願い”

 ダークとドーンなら、結界の外に居ても不自然には思われない。と、いいな。

『マスター。結界の外、2キロ範囲には、魔物は居ないようです』

”わかった。動物も?”

『魔物になってしまった。猫が3匹だけ確認できました』

”え?魔物?猫?”

『はい。意識ははっきりとしています。ギルドとかいう組織に属している者たちと一緒に居るようです』

”え?ギルドの人たちと?”

『はい。恩義を感じていて、このまま守りたいと思っているようです』

”わかった。眷属にはなっていないのだよね?”

『はい。確認しました。マスターとの繋がりはありません。作りますか?』

”いいよ。ギルドの人たちと一緒に居るのなら、私たちと違うと思うよ”

『わかりました。その3匹の猫以外には、魔物は存在しません』

”わかった。結界の中だけを片づければ、大丈夫だね”

『はい』

 オーガの気配は、7体。
 あとは、新しく産まれたのかな?魔物が15体・・・。もう少し多いかな?前から存在していた獣が10体ほどいるけど、そっちは任せても大丈夫かな?

”ライ。獣がいるけど、そっちは?”

『アイズとフリップが向かっています。意識があれば、連れて帰ります』

”わかった”

 人の遺品もかなりの数が見つかっている。それらは、一か所にまとめてある。私には不要な物がおおい。
 あっ。カメラのメモリだけは抜いておいた。バッテリーが切れていて、写っていないとは思うけど、万が一があると嫌だ。特に、私がスライムから人になる所は撮影されていたら困る。全裸の状態を見られてしまう。
 ここの始末が終わったら、街に買い物に行きたい。新しい服とかは無理だけど・・・。下着も無理・・・。あっ新しい漫画は欲しい。ポイントが溜まっていたはず。そうだ。ギルドで、魔物の素材とか買い取ってくれるよね?売れないかな?ダメだよね?

 ネット査定とかないのかな?

 帰ったら調べてみればわかるかな?
 光熱費は、かなりの金額で押さえられているから、前よりはすごく楽にはなったけど、収入がないのは困る。
 確かに、家は持ち家だけど、毎月減っていくのは精神的に耐えられない。それに、私の寿命がどうなったかわからないけど、ライや家族たちが困らないようにしておきたい。

”ライ。結局・・・。魔石は?”

『全部で、217個です』

”怪我をした子は?”

『居ません、全員が、安全マージンをしっかりと確保して戦っています』

”よし!皆。休憩!終わり!キングとクイーンへの圧力を減らす為に、オーガ以外の奥に居る魔物を倒すよ”

 オーガが連れたらラッキーだけど、キングとクイーンの報告から、オーガは釣れそうにない。
 ”釣り野伏せ”が使えたら、楽だけど、報告を聞いている限りだと、反転してもすぐに戻ってしまうようだ。反転しても、追いかけてこなければ、両側に伏せている者が攻撃に参加できない。

”ライ。周りの掃討を頼んでいい?”

『はい。大丈夫です。マスターは?』

”私は、カーディナルと一緒に、オーガたちを観察する”

『わかりました。アドニスも一緒に連れて行ってください』

”わかった。カーディナル。アドニス。お願い。アドニスは、キングとクイーンをスキルで援護”

 ライが皆をまとめている。
 結界の中に居る魔物の数は、増えているけど、産まれたばかりなのか、弱そうだ。

 逃げないから、討伐が楽だけど、全滅以外に決着が無いのが少しだけ哀しい。”逃げる”魔物は、知恵が芽生えた者だと思うし、知恵があれば、意思の疎通が可能かもしれない。意思の疎通が出来れば、共存の方法が見つかるかもしれない。

 想像の上に妄想を重ねた考えだけど、今の状態よりは数万倍ましだと思う。

”カーディナル。上空でホバリングできる?”

 カーディナルが、結界のギリギリまで上昇する。
 ホバリングを開始すると、本当に動かない。私が乗っているのに、すごい。

 下を見る。
 JKの時には、目が悪かったけど、スライムに変わって目もよくなった。かなり上空だけど、戦っているオーガたちがよく見える。

 私を警戒している様子はない。
 キングとクイーンの陽動がうまく出来ているのだろう。

 ひと際大きな個体は動いていない。
 左右に色違いのオーガを従えるようにしている。

 他の4体でキングとクイーンに攻撃をしている。連携が出来ているようには見えない。各個撃破は難しい。

 ん?
 キングを襲っている者とクイーンを襲っている者が交差する。

”キング。クイーン。攻守を入れ替えて!できる範囲で!”

 二人から了承の返事が来る。
 空中で二人が場所を入れ替える。

 やはり。
 見間違いではなかった。

 攻撃のスイッチができないのだ。

”クイーン。一時的に、下がって、キング。少し、負担がかかるけど、無理なようなら逃げて!”

 クイーンが後ろに下がると、クイーンを襲っていたオーガの色違いが、前に出て来る。キングが、その場に踏みとどまっているのに、キングではなくクイーンを追う。距離が離れると、クイーンを襲っていた色違いは、戻って定位置?についてから、キングを改めて襲い始める。

”キングも下がって、ゆっくりと、クイーンの位置まで!”

 キングも下がらせる。
 4体のオーガは、キングに引きずられるように出て来る。陣形が崩れそうになる瞬間に、元の位置に戻ってしまう。あの距離では、間に割って入るのは難しい。6体の・・・。最悪は、7体のオーガに挟撃されてしまう。

 ゲームなら、何度も試してみて、いい戦術を探すのだけど、これは現実だ。家族を危険に晒すのだから、勝率の高い方法を考えなければならない。それが、私の役目だ。

”カーディナル。色違いを、足止めできる?”

 カーディナルなら問題はない。私もそう見えている。
 問題は、テネシーとクーラーとピコンとグレナデンだ。カーディナルとアドニスとキングとクイーンなら、一体なら倒せなくても、翻弄はできる。

 そうか、テネシーとクーラーで一体。ピコンとグレナデンで一体を翻弄している間に、私とライでボス・オーガ(今、命名)を倒せばいい。あとは、苦戦している者が対峙しているオーガから倒していけばいいはずだ。

 オーガの行動範囲も大凡で把握できた。

 ライたちの掃討が終わったら、最終局面だ。

 しっかりと、オーガを観察して攻撃パターンを覚えないと・・・。

 意識がない魔物は、攻撃がパターンになってくる、大きな攻撃やスキルを使う時に、予備動作が入る。必ずではないが、スキルを利用する時には、お約束のような動作が加えられる。
 オーガにも、予備動作は存在している。

 キングとクイーンから、かなりの予備動作が報告されている。

 わたしは、その中から危険度が高そうな攻撃やまだ隠していると思える攻撃を予測する。
 特に、行動範囲外の敵に攻撃するスキルの存在が鍵になってくる。

 意識なき魔物は、攻撃がパターン化する。
 個体ごとに違うので、単純に比較はできないが、行動(索敵?)範囲内に敵が居なければ、遠距離を攻撃できるスキルでも使ってこない。動物が魔物化して、意識を無くしてしまった場合には、行動範囲外でも敵対行動が確認されたら攻撃してくる。この違いは、複数でまとまっていても変わっていない。
 キャンプ場の魔物を倒すときに、確認していた。

『マスター。魔物と獣の掃討が終了しました。これで、オーガ7体のみです』

”ありがとう。作戦を説明する”

『はい』

 ライからの報告を受けて、私が考えた作戦を告げる。

 最終局面だ。
 あと、7体。
 でも、上位種でもなく色違いだ。ボス・オーガは上位種の上位種なのかな?よくわからないけど、強いだろう。

 私とライなら、最悪・・・。倒されても復活はできる。でも、他の家族はダメだ。だから、ボス・オーガは私とライが担当する。これは、譲れない。

”さぁ最終局面だよ!無理しないで、全力で戦うよ!スキルも使い切るつもりで出していいからね!”

 皆の声が頼もしい。

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