【第十四章 開発】第六話 勉強会4

 

 発表が終わる。
 上位のソースコードが並べて表示される。

 本当に、些細な違いで結果が違ってくる。IF文の書き方だけではない。代入のタイミングでも違いが出てくる。
 最速は、電脳倶楽部の1年生だ。勉強してきているのがわかる。通常の業務用のアプリでは使わないテクニックを使っている。必要になるメモリを先に確保していたのだ。プログラムの答えは一度動かせば解る。そこから確保すべきメモリの量を計算しているのだ、”ずる”と言えば”ずる”なのだがルールに規定していない。スレッドを使ってこなかっただけよかったのかもしれない。

 一年生には、UMPCと余って居た100GB程度のSSDを景品として渡した。選んだ、UMPCは、スペックではなくバッテリーの大きさで選んだようだ。低スペックというわけではないが、バランス型のUMPCを選んだ。開発ではなく、趣味にしている小説を書く為に欲しかったと笑っていた。

 勉強会のメンバーは、それほど大きな違いはなかった。
 ソースが同じように見えても、書き方の違いで速度には差が出る。どこまで調査してテストを実行したかで結果が変わってくる。些細な書き方の違いだ。

 上位者の発表が終わって、景品を渡した。

 昨晩、考えた。スケジュールを発表する。
 勉強会が始まる前に、戸松先生にも津川先生にも、電脳倶楽部の対象者にも許可を貰っている。

「十倉さんたちには、二つに分かれてもらいます。チームごとに、フロントエンドを担当してもらいます」

「ちょっとまて、篠崎!俺たちは、この前、プログラミングを始めたばかりだぞ?」

「わかっています。だから、戸松先生と津川先生と電脳倶楽部がサポートで入ります。それで、十倉さんと安池さんには、各チームのリーダーをお願いします」

 十倉さんと安池さんは、三年生だ。
 二年生や一年生は、来年も学校に居る可能性が高いし、継続して特別授業を受けてもらえる可能性がある。しかし、3年生はあと数ヶ月で卒業してしまう。リーダーになって調整役を頼むしか無い。

「わかった」「あぁ」

 二人は、急に振られた話しにも関わらず承諾してくれた。

「それで、篠崎。何を、やればいい?」

 十倉さんの問いかけに、俺は用意していた資料を配布する。
 作ってもらう物は、二つ。

 一つは、データベースの死活管理用のプログラムだ。
 もう一つは、APIのパフォーマンスを管理するプログラムだ。

 仕様に関しては、俺が作って先生たちに見てもらってある。
 両方とも、システムには必要ではないが、あって困るものではない。それに、意外と作り出すと、拘って作ることができる。二つのプログラムを作る上での必要になってくるAPIはすでに作ってある。

「篠崎。これを、俺たちが?」

「そうです。十倉さんと安池さんには、もうしわけないのですが、完成しない場合には、チームがそのまま引き継ぐことも考えています」

「おっそうか、わかった。まずは、作り方を教えてくれ、想像も出来ない」

 安池さんも、十倉さんの意見に賛同するように頷いている。

 残りの時間を使って、開発ツールの説明を行う。
 学校のパソコンに、Visual Studio を入れて良いという許可も貰っている。ライセンスは、コミュニティ版だ。アカデミック版でも良かったのだが、自宅で同じものを使おうと考えると、コミュニティ版のほうがいいだろうと判断した。ライセンスの問題が発生しないので、学校にも文句を言われない。

 インストールは次の特別授業で行う。そう思っていたが、特別授業を受けていたメンバーが、今日の授業を延長して、インストールだけは終わらせたいと言い出した。先生たちが見ていてくれると言っているので、任せて帰ることにした。

 秘密基地に戻ってから、戸松先生からメールで状況が伝えられた。
 皆が前のめりになっているのは、プログラムが楽しくなってきているかららしい。電脳倶楽部の面々は、予算が増えて欲しかった技術書が買えて読めたり、アカデミック版のソフトが購入出来たり、すぐには必要ないけど触ってみたかったソフトに触れるようになって嬉しいようだ。

 ユウキからメッセージが入ったので、リビングで帰りを待っている。

「タクミ!ただいま!」

「おかえり」

「タクミ。今度の日曜日は、暇?」

「うーん。予定は何もないよ」

「僕、買い物に行きたい!」

「いいけど?何を買いに行く?」

「下着!しまむらに行きたい。あと、また本屋に行きたい」

「わかった。しまむらは、どこでもいい?」

「うん。北街道のしまむらでいいよ。あと、お寿司が食べたい!」

「わかった。それじゃセノバの本屋に行って、北街道のしまむらに寄ってから、エンチョーにある流れ鮨に行くか?」

「うん。お願い」

「わかった。本は、セノバでいいのか?」

「うん。マンガと小説を頼まれただけだから、大丈夫だよ」

「なんだ、それなら、通販でもするか?」

「ううん。セノバでいいよ」

「そうか、わかった」

 久しぶりに二人で過ごせるから、デート気分で行けばいいよな。

 日曜日に、ユウキと買い物にでかけた。

 ユウキは、本屋で本を探すのが苦手だ。
 結果・・・。俺が、ユウキからメモを渡されて、本を探した。

 全部で、13冊。内訳は、マンガが、4冊で、小説が9冊だ。

 マンガはすぐに見つかった。新刊だったようで、新刊のコーナーに置いてあった。
 小説は、新刊ではなかったので、探すのに少し苦労したが、店内にある端末で本を探して見れば、全部が店頭にあると示されていた。

 全部の情報を印刷してから、一冊一冊探していった。

「ユウキ。これでいいか?」

 メモを見ながら、本を確認している。

「うん。ありがとう」

 本を持って、会計に並んだ。
 混み合う時間でもなかったが、客足が増えてきた。

 本屋から、エレベータで地下まで移動する。地下からバスターミナルの方に抜けてから、地上の駐輪場に向かう。

 バイクの荷台に本を固定して、しまむらに向かう。
 女性ものの下着や複数のサイズで購入している。これも、頼まれたものだろう。美和さんの仕事の手伝いなのだろう。

「タクミ。ありがとう。お寿司は、僕が出すね」

「ん?」

「ママから、タクミと食べてきなさいと渡されている」

「そうか、ありがとう」

「行こう!」

「あぁ」

 本を一度外して、しまむらで買った物と一緒に荷台に固定する。
 そのままジャンボエンチョーまではすぐだ。

 寿司屋は、すんなりと座れた。
 案内された席で、タブレットで注文をする形だ。

 二人とも、初めてではないので、注文方法はわかっている。
 それに、注文する物も大体同じだ。

 味噌汁を頼んで、白身魚から始まって、光り物やタコ・イカを頼む。炙りを頼んでから、変わり種を頼んで、マグロを食べる。最後に、軍艦と巻物で締める。
 ユウキは、シラスの軍艦を頼んでから、エビや変わり種を頼んで、ホタテを頼む。その後で、炙りを頼む。これを、2セット位食べてから、巻物で締める感じだ。

 この店は、ネタが大きいので、お腹にも溜まりやすい。
 それだけではなく、注文がタブレットなので、”さび抜き”と”さび有り”が頼めるのがユウキにはポイントが高いようだ。ユウキのお気に入りだ。

「あっタクミ。帰りは、ママの所で降ろして、荷物を渡してくる」

「わかった」

 ユウキを、森下家の前で荷物と一緒に下ろす。ユウキは、そのまま美和さんに荷物を渡してから帰ってくると言っている。俺は、秘密基地に籠もると伝えた。

 秘密基地に入ると、戸松先生から連絡が入っていた。
 休みなのにと思ったら、今日、サーバが導入される予定だったのを忘れていた。俺は立ち会わないと伝えてあったのでスケジュールに入れていなかった。

 導入と設置は問題なく行われた。サーバは、戸松先生たちが使っている教員室に置かれる。
 24Uのサーバラックだ。いわゆる、ハーフラックだ。UPSも付いている。サーバは、全部で4台だ。高スペックのサーバを1台よりは低スペックのサーバを買えるだけ頼んだ結果だ。
 アクセス数や扱うデータから、それほど高スペックは必要ないと考えている。
 最小構成でサーバを作ればいいだけだ。

 週明けから、電脳倶楽部がサーバを作り始める。テストサーバと開発サーバはすでに稼働しているので、開発は進められている。

 やっと、本格的な開発が開始される。