【第二章 ギルドと魔王】第二十話 ハウス

 

 潜り込ませていた諜報部隊や城塞村のギルドから、連合国の情報がレポートとして上がってきた。

 四天王たちに、敗れ去った連合国の”討伐軍”は、各国に逃げ帰った。
 各国で事情は異なるが、参加した国では粛清の風が吹き荒れたようだ。嵐のようだと表現した諜報部隊も存在していた。

 粛清が激しかったのは、序列2位のカルカダン国だ。
 序列1位のエルプレ国から戦犯のような扱いをされてしまったからだ。エルプレ国も、デュ・ボアを失った損失は大きく、権力闘争に発展した。民衆からの突き上げも発生してしまった為に、目先をごまかすために、カルカダン国のジャガールが魔王に情報を流していたと”証拠”を突き付けた。

 そんな事実が無いのは、俺たちは解っているが、序列で物事を考える癖が付いている連合国では、上位の国から”証拠”付きで出された情報は飲み込むしかなかった。特に、序列1位のエルプレ国はギルドと密接な関係があり、ギルドから齎される、魔王所縁の素材やスキルは絶大な効果がある。それらを上手く使って、自分たちの国に都合がいいように世論を誘導している。世論だけではなく、貴族や商人を味方につけている。

 序列の変動には至らなかったようだが、カルカダンの国力を想像以上に落とした。その結果、序列3位のヴァコンに迫られるようになってしまっている。

 魔王ルブランに対する方策は、継続して”討伐”を目指すという物だ。

 俺たちは、俺とセバスが出した方針に従って、トラップハウスを作成した。
 当初は、四天王にそれぞれを担当させようと思っていたが、魔物ばかりの簡単に突破できそうなハウスを作られて、方針を変更した。

 ハウスから離れた場所に、村を用意する。
 城塞村のギルドに居るボイドから提案されて、面白そうだから実行の許可を出した。

 村は、自主的に作成されたと思わせる必要があった。そのために、俺たちが用意する村ではない。ただ、場所は、支配領域内に作られるように誘導した。物資の集積所から始まって、魔王城にアタックする人たちが集まる場所になって、村になるように誘導した。
 敵対する組織のギルドが場所を確保するようになった。

 ボイドの息が掛かった者たちが、魔王城と村の間に植樹するように進言して、認めさせた。
 木々は、俺が用意して、ボイドたちに移植させた。村を、魔王城から隠すという狙いで認めさせた。目隠しができてしまえば、徐々に植林が増えても、なかなか気が付かない。誰かがやったと考える。

 ボイドの思惑通りに、村にいるギルド員だけではなく、連合国から魔王討伐の報奨金目当てで集まってきている傭兵たちも、村は”連合国”の物だと思い始めている。

 4つのハウスは、結局メアが担当して、メアの種族が知恵を絞って罠を張り巡らしている。

 最初の頃は、連合国軍の序列何位なのか解らないけど、軍が出てきて、ハウスに攻撃をして、爆風で大ダメージを受けていた。
 連合国に属している国々は順番に攻略を仕掛けてきた。爆風を防ぐような工夫をしてき軍も存在していた。しかし、その都度、大量の死者と負傷者を出していた。

 モミジとヒアからの提案を受けて、立て看板を用意した。
 ハウスの説明と攻略手順の説明だ。

 いつまでも、ハウスに攻撃を加えて、大ダメージを受けている愚か者たちに、ヒントを与えることにした。
 ハウスを直すポイントは、爆風に寄る死者や負傷者から得られていたが、メアたちのテンションが下がっていくのを見て、我慢の限界を越えたヒアが対応を考えた。

 立て看板には、子供でも”解るように”、丁寧に”ハウスの仕様”を書いた。

 ハウスの攻略者には、金貨100枚が得られるとも宣伝説明した。これから、ハウスの外からの攻撃は、褒賞の金貨を減らすと宣言したこともあり、破壊工作は無くなった。
 解りやすい褒賞を用意すれば、人はそれを得ようとする。邪魔する者が”悪”なのだ。

 メクという10歳の少年が設定したハウスが攻略された。
 罠は単独で、魔物との連動も少なく、簡単に攻略ができるだろうと、俺たちは考えた。

 連合国の連中は、簡単に攻略ができると思っていたハウスの攻略に1か月の時間が必要だった。何度も罠を発動させては、撤退していった。情報の共有ができていないのか、初見殺しの罠を何度も発動していた。
 攻略したのは、最初に罠を発動させた傭兵たちだ。5回目のアタックで、難易度が低いと判断したハウスの攻略ができた。

 門を開ける為の罠を発動させると、金貨100枚が貰えるようにしてあった。
 傭兵たちは、一つのハウスを攻略して、金貨を拾い集めて、帰っていった。

 この出来事から、ハウスは魔王からの挑戦状だと思われたようだ。
 立て看板取り扱い説明書もバージョンアップを繰り返した。

 当初、ハウスの名前は、付けていなかった。
 罠を設定した者の名前で呼んでいた。しかし、毎回、同じ者が罠を設定するわけではない。村にあるギルドが名前を付けないか見守っていたが、結局名前を付ける様子が無かった。

 セバスから、名前が無いと不便だと言われた。
 確かに、その都度、違う名前で呼ぶのも面倒なので、ハウスに色を付けて、色で判別するようにした。今後の事を考えて、方角をセットにした。

 西黒/西赤/西緑/西青が、4つのハウスの名前にした。

 もちろん、立て看板にも明記した。
 そして、その時の罠の設定をした者と四天王とモミジとセバスと種族の代表で、ハウスの評価を行い。

 ハウスのレベルを5段階で表示するようにした。
 5段階の星の数で表現する。親切設計だ。

 星一つで、報奨金が金貨100枚。星が増えれば、その分、攻略の難易度が上がる。しかし、報奨金が上がる仕組みにした。
 4つのハウスを同時攻略して、門を開いた者には、金貨1000枚を進呈するとともに、魔王城への挑戦権が与えられるとした。

 その間に、連合国のギルドは情報封鎖を行った。連合国も、負けた事だけではなく、戦力がダウンしたことは周辺国に知られたくなかった。
 魔王ルブランに完全に負けた事も伏せられた。筋書は、魔王を追い詰めたが、卑怯な魔王ルブランは、序列2位のカルカダンに連絡を取り、ジャガールを裏切らせた。連合国は、あと一歩の所で、ジャガールの裏切りがあって、討伐軍の連携が瓦解してしまった。

 この情報だけは速やかに拡散された。

 魔王城の周りにできた、新しいハウスの情報は完全に秘匿された。
 金貨が得られる情報が伏せられた。連合国に属している傭兵にだけに情報が流れた。もちろん、各ギルドにも情報が伝わった。

 これで攻略が進むと考えたギルドだったが、攻略は遅々としてすすまなかった。
 攻略者たちの技量があがれば、罠を設置している者たちの技量も上がるので、相対的に差は縮まらない。

 それでも、同時に3つのハウスを攻略できたこともあり、ギルドとして、情報統制は間違っていないと確信している。愚かにも、情報統制も、攻略も、すべて、こちらに漏れていることを知らない。ギルドが考えて、俺たちを出し抜こうとしている情報は既に入手している。

 村の名前は、付けられていないが、俺たちの中では、連合村と呼んでいる。連合国やギルドの情報が盗める場所として役に立っている。

 ボイドたちも協力を申し出てきた。
 連合国のギルドの動きを把握するのに、丁度良いというのだ。

 定期的に報告のレポートを提出することを条件にボイドたちの諜報活動を許可した。

 ヒアたち人族を使っての”諜報活動の練習をしたい”と、モミジから提案があった。失敗を前提とした練習だったので、いつでも逃げられる算段を付けた状態にできるのなら・・・。と、許可を出した。

 現状では、モミジから上がってくるヒアたち人族を使った諜報活動のレポートと、ボイドたちから上がってくるレポートが、連合国やギルドに関する報告になっている。

 レポートを読み終わった。
 今日も、魔王城は平和だ。

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