サイト小説の記事一覧

2021/04/05

【第一章 バーシオン】第二話 マスターの仕事

「マスター。聞いてよ」 「聞いていますよ」  心地よいテンポで音を奏でていたシェーカーから、グラスに淡いオレンジ色の液体を注ぎ込む。  カウンターに座る彼女の前に、グラスを静かに置く。 「シンデレラです」 「夢見る少女か・・・。マスター。私、少女なんかじゃないですよ。汚れちゃっています」 「それなら、なおさら、それを飲んで、汚れを洗い流してください。貴女に必要なのは、夢を見る時間ですよ」 「夢を見るのには、私は・・・。ううん。マスター。ありがとう。夢を見せに行ってくる」 「いってらっしゃい」  女性がドアか…

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2021/04/05

【第一章 バーシオン】第一話 バーシオン

繁華街の外れにある寂れた雑居ビル。 その地下でひっそりと営業をしているバーがある。このバーは昼の1時から営業を開始して、夕方には店を閉めてしまう。 少しだけ変わったバーテンダーが居る。店名は、”バーシオン”ありふれた名前のカウンターだけの狭いバーだ。 「マスター。いつもの」 客層は、営業時間の関係もあるが、夜の店で働く”ワケあり”な者たちが多い。 素性は誰にも語らない。誰も聞かない。この街で働く、最低限のマナーだ。 「それを飲んだら、今日は帰ってください」 カウンターに座った女性は、”いつもの”モヒートを頼…

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2021/03/26

【第四章 ダンジョン・プログラム】第十四話 エヴァとギルと・・・

「エヴァ!」 「あ!ギルベルト様」 「辞めてくれよ。友達の嫁さんに、”様”付けされると、気持ちが落ち着かない。”ギル”で頼む」  一気に言い切るが、エヴァの顔色が赤くなっていくのがわかる。  アルノルトの”嫁”と言われるのは慣れないようだ。実感が無いだけかもしれないが、俺たちの中では既定路線だ。 「いえ・・・。そうですね。ギルさん」 「まだ、昔のクセが抜けないな。そうだ!エヴァ。奴から、手紙と贈り物を預かってきた」 「え?」  エヴァは、すでに”聖女”と呼ばれている。  回復だけではなく、アンデット系の魔物…

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2021/03/25

【第五章 マヤとミル】第十話 依代

「旦那様」  俺が、ミルに魔力を循環させてから、どのくらいの時間が経過しているのか・・・。循環を行っている魔力が、ミルの身体に溶け込むようになった。 「どうした?」  ブロッホが何か慌てだす。 「旦那様。依代を用意したほうがよろしいかと・・・」 「依代?」 「はい・・・」  ブロッホの説明では、 ミルとマヤが、一つの身体に共存しようとして、身体が耐えきれなくなっている。ミルの身体では、2つの魂の入れ物には小さくなってしまっている。俺が、魔力を循環させたことで、ミルの身体の崩壊は止まったのが、マヤとミルの存在…

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2021/03/23

【第二章 王都脱出】第十六話 おっさん交渉する

 今日のおっ(まー)さんは、召喚された時に来ていた作務衣に似た衣装を着ている。辺境伯と対面して、交渉を行うためだ。正装など持っていないし、どうせわからないだろうと考えて、作務衣が正装だと言い切るつもりでいる。  今日は、カリン(糸野夕花)も同席することになっている。イーリスの頼みでも有った翻訳(読み上げ)に一定の進捗が見られた。進捗に見合う報酬を辺境伯が支払うと言ってきたのだ。読み上げ以外にも、漢字は無理だが、”ひらがな”や”カタカナ”の説明を終えて、数字や英字を説明したのだ。漢字の説明は難しいので、よく出…

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2021/03/22

【第十章 エルフの里】第七話 森の村

 砦の門が閉まる寸前に、ヤスたちは到着した。  貰い受けた許可書では、門が閉まっていても通過はできるのだが、ヤスが特例を行使したくないと言って、アクセルを踏み込む力を強めたのだ。 「ふぅなんとか間に合ったな」 「うん。どうする?砦で休むの?」 「俺としては、砦で休むのは避けたい」 「??」 「砦の責任者が、俺に会いたいとか言っていたからな。先を急ぐ用事があると伝えているから、砦でちんたらしていたくない」 「あぁ・・・。そう言えば、守備隊の人が言っていたね」  ヤスと言うよりも、アーティファクトを欲しがってい…

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2021/03/10

【第十章 エルフの里】第六話 リーゼとヤス

 国境に近づいてきて、砦が見えた場所で車を停めた。 「ヤス。なんで?もう砦だよ?許可書もあるから、大丈夫だよ」  リーゼが言っている通り、王都を出る時に許可書をもらっている。許可書があれば、”行き”も”帰り”も検査を受けなくてもいいという最上級な物だ。 「ん?」  ヤスは、砦の入り口を指差す。  砦の関所を超えるための行列が出来ている。ヤスたちが持っている許可書は、行列を無視できる物で、並ぶ必要はない。 「並ばなくてもいいよね?」 「あぁだけど、列を見ると、高級な馬車が見えるだろう?」 「あ?うん」 「ほら…

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2021/03/07

【第五章 マヤとミル】第九話 執事からの提案

 ブロッホが、眷属たちの意見をまとめてくれた。  ロルフも意見をまとめるのを手伝ったようだ。  二人からまとめられた意見をもとに、神殿の内部を変更した。  俺が専用で使う部屋を用意した。マヤとミルが眠っている祭壇の横に作られた。ジャッロやヴェルデやビアンコからの要望だ。俺の部屋が無いのを気にしていた。俺は別に必要ないと思ったのだが、ブロッホから皆が安心するためにも、俺の部屋が必要だと言われた。拠点となるように、寝室と執務室を作った。調度品は、とりあえずはポルタ村から持ってくることに決めたようだ。  寝室の奥…

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2021/02/28

【第二章 王都脱出】第十五話 辺境伯の憂鬱

 儂・・・。別に、威厳を保つ必要が無いから、普段どおり、私と言うが、私は、フォミル・フォン・ラインリッヒ。アルシュ帝国の貴族だ。  伯爵の位を、陛下より賜っている。辺境の地を預かるために、辺境伯とも呼ばれている。  私のことはどうでもいい。いや、どうでもよくないが、本筋ではない。  本来なら、この時期は領地に居なければならないが、王城に居る愚か者どもが、勇者召喚という過去の遺物であり、禁忌の魔法陣を発動させてしまった。  そして、罪がない7人の異世界人が召喚されてしまった。  止めることが出来なかった、私た…

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2021/02/24

【第四章 ダンジョン・プログラム】第十三話 ユリウスの覚悟

「クリス。カルラからの報告書が届いたのか?」 「えぇギルベルト様の商会が届けてくれました」 「それで?アルは?」  俺は、アルノルトに勝つためなら、皇太孫の地位なぞ妹に譲り渡しても良いと思っている。  期待されているのは解っている。だが、俺は・・・。 「ユリウス様?」 「すまん。バカの顔を思い出していただけだ」 「そうですか・・・。カルラからの報告では、アルノルト様は共和国に行くつもりのようです」 「それは聞いた。他にも何か有るのだろう?」  カルラからの報告は、”孤児”や”農民”に関しての”噂”だ。 「孤…

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2021/02/19

【第四章 ダンジョン・プログラム】第十二話 カルラからの報告.2

 アルバンとエイダが、”地上に出る”ことにしたようだ。  エイダの新装備を軽く試すのが主題だ。それと、外に居る魔物を倒して、新装備の長子を確かめてくることになった。4-5日の予定だと報告された。ついでに、共和国への遠征に伴う準備の状況を確認してくるように指示を出した。  カルラもアルバンとエイダについていってホームの様子を見てくると言っていた。  久しぶりに、2-3日は1人で過ごすことになった。食事は、ヒューマノイドたちが準備をしてくれる。  訓練所の難易度を上げて、魔法や武器の調整に時間を使う。  カルラ…

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2021/02/17

【第五章 マヤとミル】第八話 執事と施設と

 施設の調整を行って、一息ついていたところに、ロルフと老紳士が入ってきた。  ロルフは、入り口で立ち止まったが、老紳士が俺の前まで来て綺麗な所作で跪いた。 「旦那様」  ブロッホ(黒竜)だと言うのは解っているが、理解が追いつかない。髪が長かったはずが、短く切りそろえている。白髪が老紳士を演出している。服装も、ポルタ村では絶対に無かった服装だ。貴族家の執事が着ているような服を身にまとっている。 「え?ブロッホ?」 「はい。旦那様。ロルフ様から、旦那様に仕えるなら、執事の格好にしたほうが、違和感が少ないと教えら…

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2021/02/17

【第二章 王都脱出】第十四話 おっさん話を聞く

 おっ(まー)さんは、いつの間にかソファーで寝てしまっていた。  ドアを叩く音(ノック)で起こされた。 「まーさん。食事の準備が出来たみたいだよ」  カリン(糸野夕花)が、まーさんを呼びにきた。 「わかった。食堂に向かう」 「うん。イーリスとロッセルが、”一緒に食事をしたい”と言っていたよ」 「わかった」  まーさんは、伸びをして固まった筋肉を解した。そんな動作で、まーさんは身体が若返ったことが確認できた。  寝る前に見ていた、スマホの電源を落とした。ソーラーパネルがあるといっても、バッテリーを休ませておく…

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2021/02/01

【第十章 エルフの里】第五話 道中(神殿→王都→国境の砦)

「ねぇヤス・・・」 「駄目だ!」 「まだ何も言っていないよ?」 「解っている。FITを運転したいのだろう?駄目だ。リーゼの運転は、粗い。もっと、ブレーキをしっかりと操れるようにならなければ、荷物を運ばせられない」 「うぅぅぅ。だって、アクセルを踏み込んだ方が速いよ?」 「そうだな。最高速は出せるだろうけど、ラップタイムは遅くなるな」 「う・・・」 「リーゼ。モンキーだと、イチカに負けるよな?」 「・・・。うん。でも、それはイチカの方が、体が軽いから・・・」 「でも、俺はイチカに完勝できるぞ?」 「それは、ヤ…

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2021/02/01

【第二章 王都脱出】第十三話 それぞれの過去と思い

 まー(おっ)さんは、辺境伯が帰っていった扉を見つめている。  まーさんは、懐に忍ばせていたスマホを取り出す。  一枚の写真を見つめる。フィルム写真だったものをわざわざスマホに取り込んだ物だ。  8人の中学生くらいの男女が笑っている。 「なぁなんで俺なのだろう?お前たちなら・・・」  写真は何も答えない。  まーさんは、愛おしいものを撫でるかのように写真を指でなぞる。  スマホをスライドして、次の写真が表示される。  3人の中学生だ。横に、大きく入学式と書かれた看板がある。1人は、まーさんの面影が残る少年だ…

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2021/02/01

【第五章 マヤとミル】第七話 眷属長?

「わかった。味方は欲しい」 ”ありがとうございます”  オーガには、ラトギの名を与えた。黒竜には、ブロッホの名を与えた。  ブロッホは、ワイバーンを眷属にしていたために、その者たちも眷属に加わる。  ラトギは進化の兆しが見えた為に、ヒューマに命じて里に移動させた。  ブロッホは進化を抑え込んだようだ。種族的な進化はしなかったが、スキルが大幅に進化して、ブロッホは”人化”できるようになった。 「リン様」  全裸の状態で、俺の目の前で跪いているブロッホが居る。  どうしていいのか迷っていると、人化を解いて竜に戻…

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2021/01/31

【第四章 ダンジョン・プログラム】第十一話 エイダの新しい装備?

 返事をすると、アルがエイダを抱きかかえて入ってきた。 「兄ちゃん!カルラ姉?」 「どうした?」  用事があるのは、エイダのようだ。  アルの腕から、飛び降りて俺の前までエイダが歩いてきた。 『旦那様』 「エイダ。いろいろ呼び名が変わっているけど、結局、”旦那様”にするのか?エイダの見た目なら、マスターとかがいいと思うけど?」 『それなら、マスター』 「なんだ?」 『アルバンと、ダンジョンの外に出ました。半日・・・。正確には、8時間ほど魔力の供給を受けられない状況で稼働しました』 「大丈夫なようだな」 『は…

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2021/01/17

雪上の愛情

私は、雪が嫌い。私から、母さんを奪った雪が嫌い。同じくらいに、父さんが嫌い。 本当は解っている。母さんを殺したのは、私だ・・・。雪ではない。 私が、初めて無断外泊をした日。母さんは、死んだ。 私が住む地方では珍しく、その日は雪が振っていた。当たり一面を白く染め上げるくらいの雪だ。私は、地面に降り積もる雪に、自分の足あとが残るのが嬉しくてテンションが上がっていた。友達に誘われて、遊びに行った。スマホも携帯もそれほど普及していない時だ。家には連絡をしなかった。小さな・・・。小さな・・・。そして、大きな反抗だ。私…

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2021/01/17

【第五章 マヤとミル】第六話 来訪者

 暖かい(温かい)食事だ。心にある澱みが消えていく感覚だ。  どのくらいの時間が経過したかわからないが、リンの周りには眷属たちが嬉しそうな表情で集まっている。  照れ隠しなのか、近くにいた眷属に話しかける。 「そういえば、ロルフは?」 「まだ、お帰りになっていません」 「そうか・・・。困ったな」 「マスター。何に、お困りなのですか?」  ”困った”というセリフがリンの口から出た事で、眷属たちは一気に緊張の度合いを高める。  ヴェルデ(ゴブリン)だけではなく、話を聞いていた、ビアンコ(コボルト)やジャッロ(オ…

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2021/01/17

【第十章 エルフの里】第四話 出発

 ヤスの準備は終わったが、リーゼの準備が終わらなかった。  主に、アフネスとラナからの説教が原因だ。 「アフネス。ラナ。確かに、リーゼは準備を、ファーストに投げて、カートで遊んでいた」  リーゼは、ヤスがイワンとテントの打ち合わせに行っているときに、カート場でカイルとカート勝負をしていた。リーゼにも言い分はあった。 「ヤス!」 「”しばらく旅に出る”とカイルに話したら、勝負を挑まれた」 「うん。うん。僕は悪くない!」 「別に、私たちは、カートで遊んでいたのが悪いと言っているのではないのですよ!」 「リーゼ。…

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2021/01/16

【第四章 ダンジョン・プログラム】第十話 カルラからの報告.1

 カルラが地上から戻ってきた。俺に報告があるようだ。ギルドの事は、皆にまかせてしまっている。もうしわけなく思えてくるが、彼らならダンジョンに関わる問題が発生していない限り、対処は可能だろう。  執務室代わりに使っている部屋で、カルラから外の様子を聞きながら報告を聞く。  カルラからの報告は、報告書になっている物と、口頭での報告があると言われた。 「まずは、報告書を頼む」 「はい」  カルラは、渡している書類ケース(容量は増量済み)から、書類の束を出す。 「え?これ?」 「はい。報告書と一緒に、提案書や要望書…

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2021/01/16

【第二章 王都脱出】第十二話 おっさん辺境伯に会う3

 室内は異様な雰囲気に支配されていた。 「まーさん。カリン殿。レシピは全て、遊具も全て・・・。申請を行うというのですか?」  顔を引き攣らせながらラインリッヒ辺境伯は、前に座るまー(おっ)さんとカリン(糸野夕花)に真意を問う。 「問題はあるのか?」  剣呑な雰囲気にのまれて、カリンは黙ってしまっているが、まーさんは普段と変わりがない口調で辺境伯に質問で返す。 「”ない”と言えば嘘になってしまいます」 「どんな問題だ?」 「申請は大丈夫だと判断します。全部のレシピの申請が降りるとは・・・」 「それはそうだろう…

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2021/01/14

【第四章 ダンジョン・プログラム】第九話 避難訓練

 カルラとアルバンとエイダは、俺が出した条件をクリアした。  ギリギリだったようだが、クリアしたのだから、共和国に一緒に行く。 「カルラ。移動手段の準備は?」 「はい。馬車の手配をしています」 「解った。ダンジョンの設定を変えられる魔法(プログラム)を作るから、1週間くらいは自由にしてくれ」 「かしこまりました。アルバンは?」 「おいら?」 「そうだな。エイダにウーレンフートの街を案内してやってくれ、エイダはアルと一緒に街に出て、ダンジョンの外での活動を確認してくれ」 「うん!」「わかりました」 「俺は、奥…

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2021/01/10

【第二章 王都脱出】第十一話 おっさん悩む

 朝からカリン(糸野夕花)は食堂で、まー(おっ)さんに自分の考えを伝えていた。 「本当にいいの?」 「はい。自分で考えて決めました」  カリンからの話は、予想の斜め上で、まーさんは話を聞いて戸惑ってしまった。同時に、困ったことになりそうだと悩み始めた。  それでも、戸惑っている状況を見せないようにして、カリンの真意を聞き出そうとしている。 「それにしても思い切ったね」 「そうですか?まーさんから言われて、彼ら(勇者たち)の行動を考えてみました。その結果、最善の方法だと思います」 「そうだね。順番に、対処して…

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2021/01/10

【第十章 エルフの里】第三話 準備

「リーゼ。モンキーはどうする?」 「え?ヤスに任せるよ?」  エルフの里に向かう事が決定してから、リーゼは機嫌がよくなっている。地下に出入りできるようになってからは、輪をかけて機嫌がいいのだ。  ヤスとリーゼはエルフの里に向かう準備を行っている。食料は、ツバキたちが準備をしてくれている。移動距離は、マルスの計算では片道1,200キロで、移動時間の目安は、36時間と算出された。野営は、5回を予定している。王国内なら、ヤスの使うアーティファクトは知られているので、街に入って宿を利用する方法も考えられるが、王国か…

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2021/01/06

【第十章 エルフの里】第二話 ラナからの依頼

 朝食をリビングで食べて、食後の珈琲を飲んでいるヤスに、セバスが会釈してから今日の予定を説明した。 「そうか、今日は荷物の運搬はないのだな?」 「ございません」 「他に仕事の依頼は?」 「ギルドからの依頼は、割り振りが全て終了しております」 「わかった。1-2週間なら時間が空けられそうか?」 「緊急依頼が入らなければ、依頼の割り振りは可能です」 「そうか、ディアナでしか運べないような依頼は俺が担当しなければならないか・・・」 「はい。しかし、旦那様でしか運べない物は、もともと”運べない”ものです。ダメ元で依…

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2021/01/05

【第二章 王都脱出】第十話 女子高校生迷わない

『うん。流されるのも悪くないけど、自分で出した答えのほうが、納得できるだろうね。辺境伯は二日後に来るから、考えてみて、困ったら”バステトさん”に話をしてみるといいよ』  女子高校生だった、糸野(いとの)夕花(ゆうか)は、おっ(まー)さんの言葉を聞いて、悩んだ。答えは出ているのだが、自分で何に悩んでいるのか不安な気持ちになっていたのだ。  少しだけ躊躇はしたが、まーさんに付いていった方が安全だと思っているのだ。  イーリスやロッセルが悪い人間ではないのは、交流してみて解っているし、判明している。しかし、糸野(…

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2021/01/05

【第二章 王都脱出】第九話 おっさん辺境伯に会う2

 おっ(まー)さんが、部屋に戻ると、1人の男性が拍手をしながら出迎えた。その横には、苦笑しながら椅子を勧めている男性が1人座っていた。 「辺境伯」  ロッセルが、拍手をする男性を窘めるように声を上げるが、呼ばれた辺境伯は気にしない様子で、まーさんに話しかける。 「まーさん。すごいね。勇者は、交渉も得意なのか?」 「ん?なにか勘違いしていないか?」 「え?」 「俺は、交渉なんてしていないぞ?」  ロッセルは不思議そうな表情をするが、辺境伯(フォミル・フォン・ラインリッヒ)は、まーさんが言っている内容がすぐに理…

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2021/01/01

【第五章 マヤとミル】第五話 眷属

 ミルは目を覚まさない。魔法陣が消えれば、”起き出す”と言われた。原因は、わかっている。マヤが怒っているのだろう。  心臓は動いている。血色もいい。明日ではなく、今にも起きそうだ。  でも、ミルは起きてこない。 ”マスター”  誰かが呼んでいる。 「ロルフ?」 ”いえ、ロルフ様は、ヒューマと外に出ています” 「外?なにか有ったの?」 ”いえ、定時の見回りです。それと、眷属に接触があった者を向かい入れるための準備をしています” 「ん?あぁロルフがなんか言っていたな・・・」  確か、4-5日前にアイル(スコル(…

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2021/01/01

【第四章 ダンジョン・プログラム】第八話 DEAREST

 兄ちゃんは、俺と姉ちゃんに、一緒に行くための条件(試練)を出してきた。  俺と姉ちゃんは、一緒に行けるものだと思っていた。姉ちゃんは、兄ちゃんと一緒に居なければならないので、出された条件(試練)をクリアするために頑張った。 「アル!」  カルラ姉ちゃんから、指示が出る。  俺が魔物に一撃を加えろというのだろう。だけど、今、使っている武器は一撃ではなく、相手を弱らせて、手数で勝負を有利にすすめるための武器だ。 「解っている!エイダ!」  エイダなら、姉ちゃんからの指示も聞いていて、俺と武器に付与魔法を使って…

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