サイト小説の記事一覧

2021/01/17

【第五章 マヤとミル】第六話 来訪者

 暖かい(温かい)食事だ。心にある澱みが消えていく感覚だ。  どのくらいの時間が経過したかわからないが、リンの周りには眷属たちが嬉しそうな表情で集まっている。  照れ隠しなのか、近くにいた眷属に話しかける。 「そういえば、ロルフは?」 「まだ、お帰りになっていません」 「そうか・・・。困ったな」 「マスター。何に、お困りなのですか?」  ”困った”というセリフがリンの口から出た事で、眷属たちは一気に緊張の度合いを高める。  ヴェルデ(ゴブリン)だけではなく、話を聞いていた、ビアンコ(コボルト)やジャッロ(オ…

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2021/01/17

【第十章 エルフの里】第四話 出発

 ヤスの準備は終わったが、リーゼの準備が終わらなかった。  主に、アフネスとラナからの説教が原因だ。 「アフネス。ラナ。確かに、リーゼは準備を、ファーストに投げて、カートで遊んでいた」  リーゼは、ヤスがイワンとテントの打ち合わせに行っているときに、カート場でカイルとカート勝負をしていた。リーゼにも言い分はあった。 「ヤス!」 「”しばらく旅に出る”とカイルに話したら、勝負を挑まれた」 「うん。うん。僕は悪くない!」 「別に、私たちは、カートで遊んでいたのが悪いと言っているのではないのですよ!」 「リーゼ。…

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2021/01/16

【第四章 ダンジョン・プログラム】第十話 カルラからの報告.1

 カルラが地上から戻ってきた。俺に報告があるようだ。ギルドの事は、皆にまかせてしまっている。もうしわけなく思えてくるが、彼らならダンジョンに関わる問題が発生していない限り、対処は可能だろう。  執務室代わりに使っている部屋で、カルラから外の様子を聞きながら報告を聞く。  カルラからの報告は、報告書になっている物と、口頭での報告があると言われた。 「まずは、報告書を頼む」 「はい」  カルラは、渡している書類ケース(容量は増量済み)から、書類の束を出す。 「え?これ?」 「はい。報告書と一緒に、提案書や要望書…

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2021/01/16

【第二章 王都脱出】第十二話 おっさん辺境伯に会う3

 室内は異様な雰囲気に支配されていた。 「まーさん。カリン殿。レシピは全て、遊具も全て・・・。申請を行うというのですか?」  顔を引き攣らせながらラインリッヒ辺境伯は、前に座るまー(おっ)さんとカリン(糸野夕花)に真意を問う。 「問題はあるのか?」  剣呑な雰囲気にのまれて、カリンは黙ってしまっているが、まーさんは普段と変わりがない口調で辺境伯に質問で返す。 「”ない”と言えば嘘になってしまいます」 「どんな問題だ?」 「申請は大丈夫だと判断します。全部のレシピの申請が降りるとは・・・」 「それはそうだろう…

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2021/01/14

【第四章 ダンジョン・プログラム】第九話 避難訓練

 カルラとアルバンとエイダは、俺が出した条件をクリアした。  ギリギリだったようだが、クリアしたのだから、共和国に一緒に行く。 「カルラ。移動手段の準備は?」 「はい。馬車の手配をしています」 「解った。ダンジョンの設定を変えられる魔法(プログラム)を作るから、1週間くらいは自由にしてくれ」 「かしこまりました。アルバンは?」 「おいら?」 「そうだな。エイダにウーレンフートの街を案内してやってくれ、エイダはアルと一緒に街に出て、ダンジョンの外での活動を確認してくれ」 「うん!」「わかりました」 「俺は、奥…

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2021/01/10

【第二章 王都脱出】第十一話 おっさん悩む

 朝からカリン(糸野夕花)は食堂で、まー(おっ)さんに自分の考えを伝えていた。 「本当にいいの?」 「はい。自分で考えて決めました」  カリンからの話は、予想の斜め上で、まーさんは話を聞いて戸惑ってしまった。同時に、困ったことになりそうだと悩み始めた。  それでも、戸惑っている状況を見せないようにして、カリンの真意を聞き出そうとしている。 「それにしても思い切ったね」 「そうですか?まーさんから言われて、彼ら(勇者たち)の行動を考えてみました。その結果、最善の方法だと思います」 「そうだね。順番に、対処して…

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2021/01/10

【第十章 エルフの里】第三話 準備

「リーゼ。モンキーはどうする?」 「え?ヤスに任せるよ?」  エルフの里に向かう事が決定してから、リーゼは機嫌がよくなっている。地下に出入りできるようになってからは、輪をかけて機嫌がいいのだ。  ヤスとリーゼはエルフの里に向かう準備を行っている。食料は、ツバキたちが準備をしてくれている。移動距離は、マルスの計算では片道1,200キロで、移動時間の目安は、36時間と算出された。野営は、5回を予定している。王国内なら、ヤスの使うアーティファクトは知られているので、街に入って宿を利用する方法も考えられるが、王国か…

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2021/01/06

【第十章 エルフの里】第二話 ラナからの依頼

 朝食をリビングで食べて、食後の珈琲を飲んでいるヤスに、セバスが会釈してから今日の予定を説明した。 「そうか、今日は荷物の運搬はないのだな?」 「ございません」 「他に仕事の依頼は?」 「ギルドからの依頼は、割り振りが全て終了しております」 「わかった。1-2週間なら時間が空けられそうか?」 「緊急依頼が入らなければ、依頼の割り振りは可能です」 「そうか、ディアナでしか運べないような依頼は俺が担当しなければならないか・・・」 「はい。しかし、旦那様でしか運べない物は、もともと”運べない”ものです。ダメ元で依…

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2021/01/05

【第二章 王都脱出】第十話 女子高校生迷わない

『うん。流されるのも悪くないけど、自分で出した答えのほうが、納得できるだろうね。辺境伯は二日後に来るから、考えてみて、困ったら”バステトさん”に話をしてみるといいよ』  女子高校生だった、糸野(いとの)夕花(ゆうか)は、おっ(まー)さんの言葉を聞いて、悩んだ。答えは出ているのだが、自分で何に悩んでいるのか不安な気持ちになっていたのだ。  少しだけ躊躇はしたが、まーさんに付いていった方が安全だと思っているのだ。  イーリスやロッセルが悪い人間ではないのは、交流してみて解っているし、判明している。しかし、糸野(…

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2021/01/05

【第二章 王都脱出】第九話 おっさん辺境伯に会う2

 おっ(まー)さんが、部屋に戻ると、1人の男性が拍手をしながら出迎えた。その横には、苦笑しながら椅子を勧めている男性が1人座っていた。 「辺境伯」  ロッセルが、拍手をする男性を窘めるように声を上げるが、呼ばれた辺境伯は気にしない様子で、まーさんに話しかける。 「まーさん。すごいね。勇者は、交渉も得意なのか?」 「ん?なにか勘違いしていないか?」 「え?」 「俺は、交渉なんてしていないぞ?」  ロッセルは不思議そうな表情をするが、辺境伯(フォミル・フォン・ラインリッヒ)は、まーさんが言っている内容がすぐに理…

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2021/01/01

【第五章 マヤとミル】第五話 眷属

 ミルは目を覚まさない。魔法陣が消えれば、”起き出す”と言われた。原因は、わかっている。マヤが怒っているのだろう。  心臓は動いている。血色もいい。明日ではなく、今にも起きそうだ。  でも、ミルは起きてこない。 ”マスター”  誰かが呼んでいる。 「ロルフ?」 ”いえ、ロルフ様は、ヒューマと外に出ています” 「外?なにか有ったの?」 ”いえ、定時の見回りです。それと、眷属に接触があった者を向かい入れるための準備をしています” 「ん?あぁロルフがなんか言っていたな・・・」  確か、4-5日前にアイル(スコル(…

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2021/01/01

【第四章 ダンジョン・プログラム】第八話 DEAREST

 兄ちゃんは、俺と姉ちゃんに、一緒に行くための条件(試練)を出してきた。  俺と姉ちゃんは、一緒に行けるものだと思っていた。姉ちゃんは、兄ちゃんと一緒に居なければならないので、出された条件(試練)をクリアするために頑張った。 「アル!」  カルラ姉ちゃんから、指示が出る。  俺が魔物に一撃を加えろというのだろう。だけど、今、使っている武器は一撃ではなく、相手を弱らせて、手数で勝負を有利にすすめるための武器だ。 「解っている!エイダ!」  エイダなら、姉ちゃんからの指示も聞いていて、俺と武器に付与魔法を使って…

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2020/12/17

【第五章 マヤとミル】第四話 ギルド

「タシアナ!イリメリは?」 「まだ!フェムと一緒に外に出ている!」 「はぁ?それなら、ルナは?」 「金髪(ローザス)に呼び出された。それよりも、今日の面接はどうするの?」 「そっちは、ギルドマスターに頼んだ!」 「わかった。サリーカ。私も・・・」 「あ?!あぁそうだね。お願い」  ギルドは、認知され、活動を開始した。王都が荒れたタイミングでの開業だった。そのために、認知される速度も早かった。  王都に貴族たちが混乱して、暗殺だけではなく、町中での襲撃が発生する自体になっている。  当初は、王都だけで収まって…

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2020/12/16

【第二章 王都脱出】第八話 おっさん使者に会う

 おっ(まー)さんは、朝から不機嫌な気持ちを隠そうとしていない。周りに当たらないだけ大人なのだろうが、不機嫌な態度は大人として正しくない。まーさんは、イーリスの研究所で、まーさんを訪ねてきた者と対峙していた。正確には、まーさんを訪ねてきたわけではない。客の素性を聞いて、まーさんはカリンではなく、自分だけが話を聞くことにした。  イーリスに頼んで作らせた、黒の作務衣に愛用していた濃い色が付いている丸サングラスをしている。その状態で、椅子に座って足を組んでいる。手には、蒸留して作ったアルコールに軽く匂いと味を付…

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2020/11/15

【第二章 王都脱出】第七話 おっさん戸惑う

 おっさんは、考えられるだけのテーブルゲームやボードゲームを作成した。カリンも、トランプでできる遊びを書き出した。トランで行うゲームは、商業ギルドに登録することはできないが、トランプの本体は大丈夫だと言われた。カリンのスマホには、タロットカードを使った占いが入っていて、再現は可能だったのだが、おっさんとカリンが”占い”の説明をしても、イーリスはわからない様子だった。神の存在が信じられている世界では、”占い”はあまり意味を持たない。”神託”が存在していると信じられている。それに、”先読み”や”未来視”といった…

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2020/11/13

【第四章 ダンジョン・プログラム】第七話 ダンジョンが変わった?

 ホームのマスターになり、ホームの改革を行い。ホームの旗頭になっていた、シンイチ・アル・マナベがダンジョンに潜ってから1ヶ月以上が経過している。  マスターであるシンイチ・アル・マナベの秘書のカルラがダンジョンから戻ってきて状況を伝えている。  ホームのメンバーたちは、カルラの報告を信じるしか無いが、シンイチ・アル・マナベからの直筆の指示やサインが書かれた書類が手渡されているために、それほど心配はしていない。  ダンジョンの攻略を行い始めたことは、アンチェやヤンチェだけではなく、ダーリオも自らがシンイチ・ア…

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2020/11/08

【第二章 王都脱出】第六話 おっさんいろいろ作る

 辺境伯との話を終えたまーさんは、マスターの店で食事をしながら、アルコールを摂取してから、イーリスの屋敷に帰った。  門番に、付け届けをしてから、屋敷に入る。まーさんの部屋は、奥なのだが、イーリスたちにお願いして、まーさんが寝るだけの部屋を、玄関の近くに作ってもらった。遅くに帰ってきたときには、部屋には向かわずに、寝るだけの部屋に入る。 「おっバステトさん。今日は、カリンの相手をしていなくて大丈夫なのですか?」  まーさんが部屋に入ると、ベッドの上で猫が丸くなって寝ていた。まーさんが帰ってきたのに気がついて…

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2020/10/29

【第二章 王都脱出】第五話 おっさん悪巧みをする

「フォミル殿。お願いがありますがいいですか?」  辺境伯は、まーさんを真っ直ぐに見つめる。 「なんだ?」 「まず、俺たち・・・。カリンと二人で、思いつく限り、前の世界に合った料理やどこぞの貴人が言っている物を再現する」 「ほ、本当か?!それは・・・」  まーさんが、手を上げて興奮した辺境伯を手で制する。 「フォルミ殿。全て、お渡しします。使い方や特許で条件を付けさせてください」 「解っている。まーさんたちに不利益にならないようにする」 「それもあるのですが、材料の調達をお願いしたい。それと・・・」  まーさ…

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2020/10/27

【第四章 ダンジョン・プログラム】第六話 カルラからの報告

「クリス!」 「はい。はい。カルラからの報告書が届いています」 「そうか!アルは無事なのだな!」 「アルノルト様が簡単に死ぬはずがありません。ユリウス様。落ち着いてください」 「俺は、落ち着いている。それよりも、アルは何をしている?戻ってくるのか?」 「はぁ・・・。ユリウス様。アルノルト様が、簡単にご自分で決めた道を破棄されるとお考えですか?」 「・・・。解った。報告には、なんと書かれている?」  クリスティーネは、カルラから送られてきた報告書を、ユリウスに渡した。  自分が読んで問題がないのは確認している…

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2020/10/26

【第五章 マヤとミル】第三話 神殿

「マスター。眷属たちに食事を配り終えました。にゃ」 「ありがとう。ロルフ。マヤの様子は?」 「・・・」 「ロルフ!」 「はいにゃ!神殿に、マヤ様の気配はないにゃ」 「どういうことだ?」 「わからないにゃ」  ミルの首筋を触るが、脈はあるので生きているのは確認できる。鑑定で見てみるが、以前に見た情報と変わっていない。マヤに変わった感じはしていない。  マヤだけが消滅したのか?それなら、ロルフは”気配がない”とは言わない。”消滅した”と説明するだろう。 「ロルフ。どうやって、マヤが”居る”と判断している」 「は…

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2020/10/24

【第十章 エルフの里】第一話 状況確認

 神殿の領域は(・)静かな時間が流れている。  今日は、神殿の各村の代表と各部署の責任者を集めた会議が行われている。  神殿を取り巻く情勢が落ち着いてきたので、後始末と今後の対応を含めた話し合いを行っている。  会議の冒頭で、状況をマルスが皆に説明している。  サンドラやアーデベルトやドーリスは知っていることも多かったが、状況を全ては把握していない。当初は、認識合わせを行おうとしたのだが、ヤスが”神殿として認識している”事実をベースに考えたいと説明したことで、皆がマルスの話を聞いてから、後始末と各自に来てい…

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2020/10/22

【第二章 王都脱出】第四話 おっさん辺境伯にあう

 待ち合わせの時間には少しだけ早かったが、まーさんは、料理をマスターに頼むために、店に向かった。 「マスター」 「まーさん。お客は既に来ているぞ」  意外なことに、待ち人が既に来ていると言われた。偉い人は遅れてくるというイメージを持っていたまーさんは、驚いた顔をマスターに向ける。 「え?まだ約束の時間にはなっていないとおもうけど・・・」 「あぁまーさんに会うのを楽しみにしていたみたいだ。まーさんのレシピや蒸留器を一通り揃えて部屋に置いてある」 「お。助かる」  まーさんは、マスターに持ってきた物を渡した。 …

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2020/10/18

【第四章 ダンジョン・プログラム】第五話 監視ソリューション

 カルラとアルバンとエイダが最下層に挑戦している頃に、俺はダンジョンの監視ソリューションを完成させた。  監視は、それほど難しくは無かった。  プッシュで送られてくるダンジョンからのデータを受信できるポイントを設定して、表示するだけでよかった。よくある、動画を再生する方法と同じだ。  簡単に出来た。ダンジョンが動画を撮影していると仮定してネットワークを繋げてみた。カメラがネットワークカメラとして認識が出来た。  最初は、ネットワークカメラとして認識させた状態で開発を行った。  Motion JPEG のスト…

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2020/10/18

【第五章 マヤとミル】第二話 ジャイアニズム

 魔法陣に光が集まり、強く光りだす。  目を開けていられないくらいに強く光ってから光が明滅した。徐々に、明滅の感覚が長くなっていく、光も弱まっていく。  光だけなのに、肌が刺されたような感覚にとらわれる。 「・・・」  肌を刺す光も弱まり、目が開けられるようになる。  魔法陣には、ミルが立っている。  後ろ姿でも、ミルなのはわかる。  魔法陣の最後の光が消えた。 「ミル!」  ミルが、膝から崩れ落ちるように魔法陣の中で座り込んでしまった。 「ロルフ!」 「わからない。にゃ」  駆け寄って、マヤを抱き寄せるが…

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2020/10/15

【第九章 神殿の価値】第二十七話 ハインツノート2

 王国内が再編されている状態にも関わらず、僕や父上は王都から離れられない。  毎日ではないが会議が行われている。神殿の主の協力(アーティファクト)が必要になる前提ではあるが、物資の輸送が可能になり、生産調整が必要になってしまっているのだ。派閥内で調整は可能だが、派閥に属さない貴族家への配慮も必要になる。もちろん、王家の直轄領や公爵家へ配慮も同様だ。輸送に適さない物は、近隣で調整すればよかったが、長距離搬送が可能になり状況が変わった。  神殿の主が提供するアーティファクトは、神殿に住まう者が教習を受けて運用が…

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2020/10/15

【第二章 王都脱出】第三話 おっさん提案する

 まーさんは、マスターの店に足を向けた。 「おっちゃん!」  少しだけ離れた路地に居た子供がまーさんに話しかける。子供が駆け寄ってくる。目線を落として、まーさんは子どもたちの頭を押さえつける。 「何度も言っただろう。”まーさん”と呼べと!」 「おっちゃんは、おっちゃんだよ。おっちゃん。何か、仕事はない?」  まーさんの足にじゃれ付いてきた子どもたちは、全部で3人。孤児院で生活している子供たちだ。まーさんは、街歩きの時に子どもたちに銅貨を渡して、道案内をさせた。それだけではなく、安い店や親切な店を教えてもらっ…

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2020/10/14

【第四章 ダンジョン・プログラム】第四話 開発!

「エイダ。カルラとアルバンは?」 「今は、レベル4に挑戦しております」 「そうか・・・」  俺と一緒にダンジョンに向かう条件として提示したのは、このダンジョンの階層主と同程度に調整した魔物の討伐だ。  レベル4というのは、40階層にいる魔物たちを倒している最中だということだ。  正直な話をすれば、少しだけ驚いている。 「マスター」 「あぁ」  俺の手が止まっているのをエイダが注意した。  俺は、プログラムを作っている。エイダのバージョンアップだ。エイダは、新しいプログラムがないと固定された状態から解放されな…

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2020/10/13

【第九章 神殿の価値】第二十六話 ハインツノート1

 僕の名前は、ハインツ。クラウス・フォン・デリウス=レッチュ辺境伯の長子だ。  ”俺”という一人称を使ったり、”私”と言い換えてみたりしているが、”僕”が一番しっくりと来る。  今の僕の役割は、妹のサンドラからくる情報を、父や派閥の長(陛下)に伝えるのが仕事になっている。  こんな状況になってしまったのには理由がある。  僕の弟である、ランドルフの問題行動に起因している。  最初に話を、サンドラから聞いた時には、僕が自ら手を汚して殺してやろうかと思った。  サンドラの機転と、神殿の主の温情によって救われた。…

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2020/10/12

【第五章 マヤとミル】第一話 ミルとマヤ

 俺たちは、マガラ神殿に帰ってきた。  ミルには、俺の非道な行いも告げている。それでも、ミルは俺に付いてきた。 「リン?」 「あぁいいのか?」 「うん。僕が、リンの役に立てる。最高な気分。一つだけ心残り」 「え?」 「リンに抱いてもらいたかった」 「それは・・・」 「わかっている。でも、リンの説明だと、僕の身体をマヤが使うのだよね?」 「あぁ」 「それなら、リンが抱くのは、僕の身体で、僕だと言ってもいいよね?」 「え?」 「それに、多分、白い部屋で待つことになると思うから、僕がリンに抱かれるところを見られる…

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2020/10/10

【第二章 王都脱出】第二話 おっさん勇者の願いを知る

 ロッセルと別れたまーさんは、屋台を周って、飲み屋に持っていく手土産を考えていた。 (辺境伯が来るのだよな?まぁいつもの感じでいいか・・・。考えても駄目なことは、考えるだけ意味がないからな)  まーさんは、少しだけ”貴族”を考えたが、貴族という一括で考えることの危険性を考えて、考えるのを止めた。 「まーさん!」 「お!野菜売りのおっちゃん。今日はどうした?もう店じまい?」 「違う。違う。呼び出されて、貴族様の屋敷に行っていた」 「おっちゃん。何かやったのか?逃げるのなら、早いほうがいいぞ?」 「まーさん?違…

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