サイト小説の記事一覧
2021/08/25
【第十章 エルフの里】第十一話 愚者
「ヤス。ごめん」 「リーゼが謝る必要はない」 「でも・・・」 「そうだな。気になるのなら、帰ったら、西門にできた店で、奢って貰おうかな?」 「え?あっうん!いいよ!帰ったら、一緒に西門に行こう!僕が運転するからね!」 テンションが上がったリーゼを見て、良かったと考えている。リーゼの責任ではない。エルフたちが悪いのは、ヤスにもリーゼにもわかっている。しかし、リーゼは、自分がエルフの里に来てしまったことが問題になっていると考えてしまったのだ。 ヤスに置いていかれると心の片隅で恐怖とともに、感じてしまっていた…
続きを読む2021/08/23
【第五章 共和国】第三話 野営と
「マナベ様」 「カルラ。これからは、”旦那様”と呼んでくれ、共和国では、ライムバッハ家は名乗らない。商家の人間だと振る舞う。マナベ商会の旦那として活動する。お前は、商会の人間として振る舞ってくれ」 「・・・。かしこまりました。旦那様」 共和国に入る前に、確認しなければならないこともあるし、さっさと襲撃者の情報を共有しておくか・・・。 「襲撃者は?」 「尋問(拷問)をしましたが・・・」 「どうした?」 カルラが、拷問(尋問)して聞き出した情報は、俺たちが考えた想定とは大きく食い違っていた。 「それじゃ、襲…
続きを読む2021/08/21
【第二章 帰還勇者の事情】第二十話 オークション
一部で有名になった、異世界から帰ってきた子どもたちは、日本に集結していると思われていたが—”帰ってきた29名だったが”—14名が消えるように居なくなってしまった。 記者会見をしている会場で、質問を受けている最中に、服と灰を残して消えた。ネットでの配信だけではなく、大手マスコミの前で実際に発生した。 ユウキたちが、森田を通してマスコミ各社に、記者会見を行うと通知してきたのがきっかけだった。 (別段、親しい間柄でもなかったが)”袖にされた”と考えていた大手マスコミにも仁義の意味で…
続きを読む2021/08/20
【第三章 帝国脱出】第一話 おっさんとカリンの馬車での旅
まーさんとカリンは、王都を無事に脱出できた。 馬車で、半日ほど移動した場所で、一日目の移動は終了した。 街道から少しだけ外れた場所に、馬車を止めて、野営の準備を始める。王都から出たこともあり、まーさんとカリンは、着替えて普段の姿に戻した。 「ふぅ。やっぱり、この格好が楽でいい」 「えぇ執事風の姿も良かったのに・・・」 「カリンは、何を着ても似合うな」 バステトは、カリンの膝の上で丸くなって眠っている。最初は、まーさんの膝の上に居たが、カリンの膝の上に移動した。まーさんは、カリンの膝の上の方が柔らかく…
続きを読む2021/08/16
【第五章 マヤとミル】第十六話 管理者
「アウレイア。他には、魔力溜まりは見つかっていないのだな?」 『はい』 「ミル。見つかった魔力溜まりは任せていいよな?」 「うん。マヤと相談するけど、問題はないよ」 「それなら、神殿に戻るか?」 『マスター。眷属を、魔力溜まりの監視に残したいと思いますが、ご許可をいただけますか?』 監視は必要だな。それに、魔物が必要でも、間引きはしておいたほうがいいよな。 「そうだな。監視は、必要だ。ミル。いいよね?湧いた魔物の、間引きを含めて、アウレイアたちに頼んでも?」 「うん」 アウレイアたちには、引き続いて森の…
続きを読む2021/08/11
【第五章 マヤとミル】第十五話 嫌がらせ
『マスター!新しい、魔力溜まりを発見しました!』 「はぁ?」 街道までの距離を計測していたアウレイアからの報告だ。 『アウレイア。どういうことだ?』 アウレイアからの報告では、街道近くに新しい魔力溜まりができていて、低位の魔物が産まれ始めているという報告だ。 「ミル。どうする?」 「うーん。アウレイア。その場所って、神殿からどっちの方向?」 ミルが、普通に俺と話をしながら、アウレイアに繋げるという器用なことをしている。俺も練習をしてみよう。できるようになれば、いろいろなことができる。 アウレイアの報…
続きを読む2021/08/11
【第五章 共和国】第二話 賊
俺の合図で、シャープが賊に向かう。カルラは、距離を考えて、一拍の空白を入れてから、指揮官らしき者に向かう。 ユニコーンとバイコーンは、柵を乗り越えて、賊を挟むような位置に移動していた。 戦闘が始まると思ったが・・・。 確かに、戦闘が始まったが、すぐに終わった。 シャープは、4人を瞬殺している。命令通りに、殺してはいない。ユニコーンとパイコーンも、左右からスキルを発動して無力化に成功している。 カルラは、正面から近づいていきなり加速して、背後に回って、首筋を痛打して終わりだ。 戦力的に、過剰だっ…
続きを読む2021/08/01
【第十章 エルフの里】第十話 リーゼの想い
ヤスとリーゼは、ラフネスの言い訳とも考えられる、”エルフの事情”を聞いた。 「そうなると、長老たちは、リーゼに無関心なのだな?」 「・・・。はい」 ラフネスは、素直にヤスの質問に答えた。 実際に、暴走したのはエルフの村に着ていた商人たちと取引があるエルフだ。それも積極的に、商人と交流を行って他種族と関わりを持とうとしていた。 ただ、やり方を間違えた。 今まで、他種族との付き合いをしてこなかった者たちが、いきなり商人と取引をした。そして、騙された。エルフ族は、アフネスなど、外の世界で生きていくことを…
続きを読む2021/07/31
【第二章 帰還勇者の事情】第十九話 準備と仕込み
ユウキは、自分で立てた計画通りに、一部では名前を知られる程度には有名になった。 会見(見世物)の動画も拡散されている。ユウキだけが、(本当の)顔と名前を出している。 拠点でユウキがやっているのは、所謂、連絡係だ。 連絡係をしながら、ユウキは自分の計画に必要な事柄を調査して、準備を進めている。 差し当たっての問題(法務関係)がクリアできたので、レナートに戻っていた。 「ユウキ!」 「悪いな。こっちは大丈夫なのか?」 ユウキが手を差し出すと、男女は嬉しそうな表情をして、ユウキの手を順番に握った。 「…
続きを読む2021/07/31
【第二章 王都脱出】第二十一話 傲慢なる勇者
ちょいグロの表現があります。苦手な人はスルーしてください。本編に、少しだけ影響しますが、勇者たちが傲慢になっているだけの説明です。 — 剣崎(けんざき)凱斗(かいと)は、豪華な部屋で、豪華なベッドに腰を落ち着かせて、無駄に豪華な装飾を施したカップで、ぬるいエールを飲んでいる。 カイト・ケンザキは、空になった装飾が過剰に施されたカップを壁際に立つメイドに投げる。 「キャ!」 メイドは飛んできたカップをギリギリで避ける。勇者が力任せに投げたカップなのだ、当たりどころが悪ければ”死”の可能性も…
続きを読む2021/07/31
【第十章 エルフの里】第九話 エルフの事情
ラフネスは、ヤスとリーゼに事情を説明した。 説明を聞き終えたヤスは頭痛を抑えるような仕草をする。リーゼは、事情がよく飲み込めていないようで、ラフネスとヤスの表情を必死に読み取ろうとしている。 「ラフネス。率直な意見を言っていいか?」 「何を言いたいのか解っていますが、どうぞ?」 「エルフはバカなのか?」 「・・・」 リーゼがヤスの服の袖を可愛らしく引っ張る。 「ねぇヤス。どういうこと?エルフ族が、僕の持っているお金が欲しいってこと?」 「そうだな」 「僕、お金なんて持っていないよ?」 「そうだな。今の…
続きを読む2021/07/31
【第五章 共和国】第一話 出国の前に・・・
「兄ちゃん!」 御者台に座っているアルが、中につながる窓を開けて、俺を呼んでいる。 結局、人が居ない場所では、アルとエイダが御者台に座っている。執事とメイドは、—それぞれ”クォート”と”シャープ”と名前を与えた—俺の世話をすることになった。特に、クォートは執事なので、俺が”成そうとしている”内容を説明した。基礎知識は十分ある上に、ダンジョンと繋がっているために、情報の集約をしながら日々”感情”を学んでいる。学んでいるのは、”シャープ”も同じなのだが、シャープはカルラからメイドの振…
続きを読む2021/07/31
【第五章 マヤとミル】第十四話 魔力溜まり
「ミル!」 「大丈夫」 魔力溜まりに飲み込まれる状態になっている、ミルの声だけが聞こえてくる。 気のせいかも知れないが、魔力溜まりが小さくなっているように思える。 『マスター?』 「わかっている。周りには魔物は居ないのか?」 『はい。すでに駆逐しました』 「そうか、ありがとう」 魔物が湧いて出る様子もなくなった。周りを警戒していた、眷属たちが戻ってきている。 皆が、小さくなっていく魔力溜まりを見つめている。 5分くらい経って、ミルが顔を出す。 「ミトナルさん?」 「あっ・・・。説明、忘れた」 魔…
続きを読む2021/07/12
【第四章 ダンジョン・プログラム】第十六話 出発
「パスカル!」 眠っていたヒューマノイドを起動する。 エイダのAIを解析して俺が作り直した、ヒューマノイドだ。異世界に転生する前の自分に似せたヒューマノイドだ。ダンジョンにいる全てのヒューマノイドの上位者になるように設定している。 『はい。マスター』 「パスカル。念話ではなく、声が出せるだろう?」 「はい。マスター」 「よし、皆」 近くに居たヒューマノイドやオペレーションを行っていたヒューマノイドが、俺とパスカルの前に集まってくる。 「パスカルだ。俺が居ない時に、指示を出す」 パスカルが、一歩前に出…
続きを読む2021/07/10
【第二章 王都脱出】第二十話 王都脱出
おっ(まー)さんとカリン(糸野夕花)は、馬車の中で執事とメイドの格好をしている。 カリンがおっさんには、執事風の服装が似合うと強弁した結果・・・。おっさんの服装が決定した。執事と一緒に居るのなら、カリンはメイドの衣装を着ることになった。 「そういう姿のまーさんは新鮮です」 カリンが、”褒め言葉”としてまーさんに声をかけるが、本人は少しだけ憮然とした表情をしてしまっている。決められたことだとしても、安全を考えれば変装は必須だ。王都には、まーさんの影武者を置いていくことになった。 普段から、作務衣を着て…
続きを読む2021/07/09
【第二章 王都脱出】第十九話 おっさん準備をする
まー(おっ)さんとカリン(糸野夕花)は、ラインリッヒ辺境伯との話し合いを終えて、食堂に移動していた。 「まーさん?」 「どうした?」 膝に、バステト(大川大地)を載せて、モフモフの毛並みを堪能しながら、カリンがおっさんに、”なに”か、聞きたいような素振りを見せる。 正面に座ったイーリスをチラチラ見ることから、イーリスに聞かせたくないことだろう。 「イーリス。悪いけど、なにか飲み物を頼む」 「え?あっそうですね。わかりました。まー様は何がいいですか?」 「俺は、そうだな・・・。アルコールという気分じゃな…
続きを読む2021/07/05
【第二章 リニューアル】第三話 雪うさぎ
「マスター。ボンペイをお願い」 マスターは、カウンターに座る女性の注文を聞いて、泣き出しそうな女性の表情を見て、ブランデーとスイート・ベルモットとドライ・ベルモットをカウンターに並べる。カウンターには並べなかったが、パスティスとオレンジ・キュラソーを用意した。 「ねぇマスター」 「はい」 「ボンペイの意味は?」 「『1人にしないで』です」 ステアして完成したボンペイを、マスターは女性の前に置く。 「ボンペイです」 「ふふふ。『1人にしないで』かぁ・・・。あの人が、好きだったカクテル。1人にされてしまった…
続きを読む2021/07/05
【第二章 帰還勇者の事情】第十八話 狩人
「ユウキ。俺たちも行ってくる」 「解った」 「2ヶ月で戻ってくる。ユウキ。頼む」「お願い」 ユウキの手を握りながら、頭を下げるのは、リチャードとロレッタだ。 「わかった。お前たちが帰ってくるまで、しっかりと守る」 「ありがとう」「ユウキ!感謝!」 リチャードとロレッタが、”転移”を発動させる。目的地は、アメリカのリチャードが育った。今は、誰も居ない教会だ。 「行ったか?」 「あぁ残っているのは、お前たちだけど、どうする?」 「ヒナは、残して行こうと思っていたけど・・・」「イヤ!」 「レイヤ。愛されている…
続きを読む2021/07/05
【第五章 マヤとミル】第十三話 ミルと狩り?
「リン。おはよう」 「マヤ?」 「うん!」「リン。今日は、マヤが身体を使う」 二人で取り決めでもしたのか? ミルが妖精の姿で、俺の肩に止まる。 「リン。僕。今日は、ロルフと神殿の調整を行うけどいい?」 「え?調整なら俺が行うぞ?それに、言ってくれたら、施設を作るぞ?」 「・・・。リン。僕にやらせて、お願い」 「・・・。わかった。無理するなよ?神殿の調整には魔力を使うぞ」 「うん!大丈夫だよ!ありがとう」 マヤがミルの止まっていない方向から抱きついてきて、頬に唇をあてる。 「マヤ!」 ミルが、俺の耳元…
続きを読む2021/07/05
【第五章 マヤとミル】第十二話 マヤとミル
「ふっふん!いいよ!ミル。リンに確認してもらおう!」「わかった」 マヤがミルの肩に移動している。 二人で一緒に詠唱を始める。 ん?魔法やスキルの呪文ではないな。はぁ・・・。フュ○ジョン?誰の仕込みだ?7つの珠を集めて、ギャルの(以下、自粛)。 光が二人を覆った。眩しいほどではないが、直視していると目が痛くなりそうだ。光は、それほど長い間は光っていなかった。 「え?」 間抜けな声が出てしまったが、しょうがないだろう。 光が収まったところに立っていたのは・・・。 「マヤ!」 それも、全裸の状態に戻…
続きを読む2021/06/22
【第二章 帰還勇者の事情】第十七話 磨いた牙
「ユウキくん。本当に、この条件でいいのか?」 佐川は、ユウキから渡された書類を見ながら、質問を重ねていた。最終確認という意味を込めて、ユウキに言葉をぶつける。 「構いませんよ。近くの方が、いろいろと便利でしょ。その代わり」 「わかっている。各国の研究者との窓口は引き受けよう」 佐川が欲しいと思っていた、ポーションの素材をユウキが渡す条件を入れている。 ユウキが佐川に頼んだのは、各国の研究所から上がってくる研究結果の取りまとめだけではなく、日本国内のうるさい連中への対応を任せた。特にうるさいのは、記者会…
続きを読む2021/06/18
【第二章 帰還勇者の事情】第十六話 朝倉比奈
私は、ヒナ。日本にいた時には、”朝倉(アサクラ)比奈(ヒナ)”と名乗っていた。 レイヤやユウキやサトシやマイや弥生と一緒に異世界(フィファーナ)に召喚された。フィファーナでの話は、悲しいことも多かったが、楽しいことも多かった。日本に居た時と違って、自分たちでできることが増えたのが一番の理由だ。 リーダは、サトシだが、実質的なリーダがユウキなのは皆がわかっていることだ。 ユウキには、日本に戻ってやりたいことが有った。私とレイヤにもやりたいこと・・・。知りたいことがある。 ユウキは、自分のことを棚上げ…
続きを読む2021/06/18
【第二章 リニューアル】第二話 希望
女性は、店に入るなり、カウンターに座った。 マスターが目を向けるが、女性は気にした様子は見せない。 「マスター。おすすめを頂戴」 マスターは、女性をちらっとだけ見て、頷いて、ゴールドラムとレモンジュースをシェイカーに注ぎ込み、オレンジキュラソーとアロマティックビターを入れる。シェイクしてグラスに注ぎ込んで、カットオレンジを添えた。 「カサブランカです」 「ありがとう」 女性は、カサブランカをゆっくりと喉に流し込んで、目を閉じる。 「マスター。同じものをお願い」 「かしこまりました」 店の中には、マ…
続きを読む2021/06/18
【第四章 ダンジョン・プログラム】第十五話 出国準備
共和国の情報は、意外な所から入ってきた。 「え?ダーリオが?」 「はい。ダーリオ殿の知人が、共和国から逃げ帰ってきたそうです」 「そうか、カルラ。ダーリオは、他になにか言っていたか?」 「はい。共和国との国境は機能していないようです。確認は、出来ていませんが、人の流れから真実だと思われます。ダーリオ殿は、マナベ様が共和国に行くと知っているので積極的に知人から情報を聞き出してくれました。資料としてまとめてあります」 「わかった」 カルラが手にしている資料を受け取る。 スタンビートが発生したいのは、ほぼ間…
続きを読む2021/06/17
【第五章 マヤとミル】第十一話 全裸で復活?
「リン!ミルになんてことをするの!僕は、リンと居られるのなら、姿なんてどうでも良かった!リン!聞いているの?」 小さな小さな羽が生えている。不思議な形をした生き物だが・・・。マヤだ。マヤが、俺に話しかけている。 「マヤ」 「リン!僕のことは、いいの!なんで!ミルを犠牲にしたの!僕、本当に怒っているのだよ!」 マヤが、名前を呼んでいる。 手を伸ばす。 「・・・。マヤ。マヤ。マヤ。マヤ。マヤ。・・・」 「え?リン?何?」 マヤを両手で包むようにして、抱き寄せる。 温かい。小さな小さな妖精になってしまっ…
続きを読む2021/06/03
【第二章 帰還勇者の事情】第十五話 拠点
見世物は、休憩の後から加速していった。 大手が居なくなってくだらない協定や序列や忖度がなくなった。外国人の記者だけではなく、ネット系の記者たちも、ユウキたちに疑問をぶつけた。 スキルの質問は、ユウキが受けて実際に持っているスキルの中で、安全だと思えるスキルは、実演を行うことにした。 外国人の記者からは、暗殺や毒物に関するスキルに質問が集中したが、”出来ない”と返答する場面が多かった。それを信じるかどうかは、記者や読者に任せるしか無い。しかし”公”には、”出来ない”ことにしておく必要がある。 早く移…
続きを読む2021/06/03
【第二章 王都脱出】第十八話 おっさん現状を把握する
おっ(まー)さんと元・女子(糸野)高校生(夕花)が、ラインリッヒ辺境伯の従者からギルドカードを受け取る。 「イエーンは、カードの表に魔力を流せば表示されます。確認してください」 ラインリッヒ辺境伯の従者が、おっさんとカリン(糸野夕花)に説明をする。バス(大川)テト(大地)のカードは、おっさんが受け取って、バステトに説明をしている。シュールな絵面だが、本人たちは”シュール”に見えるようにやっているので問題はない。笑い出した者の負けなのだ。 従者は、説明を終えて部屋から出る。 残されたのは、ラインリッヒ…
続きを読む2021/06/02
【第二章 帰還勇者の事情】第十四話 マスコミ
「ユウキ!」 アロンソが、嬉しそうな顔でユウキに駆け寄ってきた。 休憩時間が、休憩時間になっていないのは、問題ではないようだ。 「ん?」 「ポーションの提供は、ミスター佐川から説明があった本数を考えてくれるのか?」 「説明?」 「初級が4本と中級が4本だ」 「佐川さんから、検証にはその本数が必要だと言われた」 「そうか・・・。ユウキ。俺たちは、違うな。研究所が、初級ポーションに500ドル。中級ポーションに1万ドルの支払いをする用意がある」 「え?」 「それに、検証の結果や研究結果は、全ての研究所で公開す…
続きを読む2021/06/01
【第二章 帰還勇者の事情】第十三話 見世物
ポーションの確認を終えて、記者会見をしていた会場に戻ってきたら、記者の数が半分になっていた。ポーションの確認から外された最前列に陣取っていた記者たちが、帰ってしまっていた。機材を抱えていた者も半数が帰っているので、会場で待っている者の数も減ってしまっていた。 司会が状況を説明しているが、それでも詰め寄る者は存在していた。 ”弾かれた”記者たちだ。残っていた者たちには、佐川から動画が送られることで落ち着いた。佐川の研究資料が付いているので、記事にするのには十分な資料になる。 森田と14番にも群がった。…
続きを読む2021/05/29
【第二章 帰還勇者の事情】第十二話 記者会見.3
視線が集中する記者は、番号札を投げ捨てて、出口に向かう。 司会が、冷静に指摘する。 「○○新聞の飯島さま。先程の質問が終わっておりませんが?」 「ふざけるな!俺は、こんな茶番に付き合うのは、馬鹿らしいと思ったから、帰る!」 「そうですか、○○新聞は、お帰りになるということですね。ご自身がされた質問に対する真偽を確認しないで、一方的にこちらを・・・。生還者たちを悪者にした状態で退場されるのですね」 飯島と名乗った男は、一度だけ振り向いたが、そのまま会場から出ていった。 「質疑が途中になりましたが、何方か…
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