【第五章 マヤとミル】第十一話 全裸で復活?

 

「リン!ミルになんてことをするの!僕は、リンと居られるのなら、姿なんてどうでも良かった!リン!聞いているの?」

 小さな小さな羽が生えている。不思議な形をした生き物だが・・・。マヤだ。マヤが、俺に話しかけている。

「マヤ」

「リン!僕のことは、いいの!なんで!ミルを犠牲にしたの!僕、本当に怒っているのだよ!」

 マヤが、名前を呼んでいる。
 手を伸ばす。

「・・・。マヤ。マヤ。マヤ。マヤ。マヤ。・・・」

「え?リン?何?」

 マヤを両手で包むようにして、抱き寄せる。
 温かい。小さな小さな妖精になってしまっているが、マヤの温かさだ。家族が帰ってきた。理不尽に奪われた命が・・・。

 涙が止まらない。

「え?え?リン?大丈夫。痛いの?」

「違う。マヤ。ありがとう」

「え?あっ。うん。僕も、いろいろ、学習した」

「え?学習?」

 妖精の姿になっているマヤが、俺の手の上に座って、説明してくれた。
 どうやら、マヤは神殿から知識を吸収したようだ。神殿の増改築は、マヤにまかせても大丈夫なようだ。

 そうして、ミルと話をして、日本に居た時の話をしていたようだ。

「そうだ!マヤ。ミルは?」

「大丈夫だよ。もうすぐ、起きると思う。でも、リン。そんなに、心配をするのなら、ミルを犠牲になんてしないで!」

「そうだな。儀式を初めて思い知った。ミルも大事だって・・・」

「だって。ミル!」

「え?」

 背中から抱きしめられる。
 回された腕は、女性特有の柔らかさがある。それだけではなく、すごくいい匂いがする。

「リン。僕・・・」

「ミル?」

 ミルも生き返った。
 後ろから抱きつかれて、背中に膨らみを感じる。

「うん。ただいま」

「・・・。うん。おかえり」

「ごめん。リン」

「どうして、ミルが謝るの?俺が、悪いのに・・・」

「違う。僕は、リンのためなら死んでもいいと思った。でも、マヤに説得された」

「ん?」

 説得?
 説得だけで、これだけの時間が必要だったのか?

「リン。僕・・・」

「ミル。これからも、よろしく。ミルの力が必要だ。それに、マヤの力も!」

「うん」「うん!」

 マヤは、俺の肩に乗りながら、ミルは後ろから抱きつきながら、返事をしてくれる。

 首に回されたミルの手を握る。肩に座っているマヤに手をのばす。望んだ形がわからなくなってしまっているが、二人が俺の近くに居てくれるのが嬉しい。ミルから伝わる温かさが、マヤから伝わる不思議な感覚が、俺が間違えていたのだと考えさせる。

「ミル。マヤ。二人の中では、どの位の時間が経過している?」

「え?」「時間?」

「俺とマヤが、マガラ渓谷に落とされて、ミルに頼んで儀式を始めてから・・・」「93日と21時間32分です」

 ロルフが正確な時間を提示するが、そこまで正確な時間は必要としていない。

「あぁ約3ヶ月が経過している」

「?」「うそ!僕がミルを見つけて、事情を聞いてから・・・10分くらいだよ?そうだよね?ミル?」

「リン。僕の感覚も、マヤと同じで、長くても30分くらいだと思う。でも・・・」

「でも?」

 ミルがなにかを思い出したようだ。でも、まだ後ろから抱きついた状態で、耳元で話をしている。後ろを振り向けない状況だ。

「リン。僕、ロルフと話をしてくる、ミルをお願い」

「あぁわかった?話なら、ここですればいいのに?」

「いいの!リン!わかった!動かないでね!」

「わかった。わかった。ロルフは、儀式で疲れていると思う。わからなければ、ブロッホ。黒竜を探してくれ」

「わかった!ミル。リンをお願い!」

「うん。逃さない」

 ミルは、マヤの言葉を受けて、後ろから抱きつく力を強くする。背中に当たる部分が余計にはっきりと解ってしまう。

 ミルの柔らかさを感じていると、空間がなにか遮断された感覚になる。いきなり、違う場所に来たような感覚だ。

『あぁあぁ聞こえる?』

「!!」「!?」

『神埼凛と鵜木和葉に話しかけている』

「アドラか!?」

『正解!凛君が、時間を気にしていたから、それだけ教えてあげる』

「!!」

『和葉ちゃんと、彼女が話していた場所は、白い部屋と同じような場所だよ。だから、時間の経過が違って感じた』

「・・・。そうか、それで納得した」

『うん!それから、その白い部屋は、僕の部屋と違って、肉体だけの状態になってしまうから注意が必要だよね』

「え?」

『バイバイ。君たちは本当に面白いね。またね!』

 遮断されていた感覚が戻る。
 アドラが戻したのだろう。

 それにしても、肉体だけの状態に鳴っていると言うのは、どういうことだろう?

「ミル?」

 ミルが、抱きつく腕にさらに力を入れる。
 首には巻き付かれていないので、息が詰まることはないが、少しだけ痛い。

「ミル?どうしたの?」

「な、なんでもない」

「ミル。ミトナルさん。少しだけ痛いのですが?それに、背中に当たっているのですが?」

「え?あっ当てている。リンなら大丈夫!」

「そういう問題?」

「そういう問題!」

 ミルが、抱きしめている力を少しだけ弱めてくれた。

「リン!おまたせ!ロルフと・・・。あ!駄目!」

 マヤがロルフを連れて帰ってきた。
 入り口の方向は、背中の方向だ。

 ミルが腕の力を弱めてくれたから、振り返ることが出来た。

「え?」

「あっ」

 ミルと目が合う。
 そして、ミルが背中から抱きついていた理由が解った。そして柔らかい物がすごく柔らかかった理由や、背中にピッタリとくっついていた理由が理解できた。理解できて、すぐに振り向いた身体を元に戻した。

「ごめん」

「ううん。リンならいい。リン。見て!」

「ミル!」「ミル?」

 マヤも、目隠しをするように、俺の所まで飛んできた。

「リン?ミルの裸を見たよね?」

「・・・」

「リン?」

「はい。見えました」

「素直でよろしい」

 妖精の姿で偉そうにしているマヤを見るとほっこりしてしまう。

「マヤ。僕は、リンになら見られてもいいし、見て欲しい。マヤも同じ気持ちだよね?」

「うぅぅ。そうだけど・・・。でも、やっぱり駄目!ミルも、見られてもいいとは言っていたけど、それは初めての時の話で、いつでも見ていいとは違う!それに・・・」

「うん。だから、ここでリンに抱いてもらえればいい。僕の身体も心もリンの物。だから、リンが求めてくれるのなら、僕は嬉しい」

「そうだけど!駄目!なの!まだ、いろいろ説明が終わっていない!それに、約束したよね?ミル?」

「うん。約束は覚えている。だから、マヤ。一緒になろう?」

「え?」

 ミルとマヤのやり取りは不思議な感じになっている。
 ミルはミルだし、マヤはマヤだ。変わっていない。変わっては居ないけど、なにか距離感がすごく近くなっている。

 よく見ると、マヤの衣装は、アニメに出てくるような”魔法少女”の格好だ。
 可愛い格好のマヤが、ミルの肩に乗って、何やら話し込んでいる。

「ミル?ミルさん?俺が着ていた物で悪いけど、シャツを着てくれないか?」

「ん。わかった」

 ミルが、俺が差し出した。シャツを着てくれる。身長は、俺の方が5センチほど高い。シャツも、俺が着るのにも大きく作ってあったために、ミルの全身を隠すには十分な長さがある。少しだけ”ほっ”としたのだが、シャツだけを着たミルは余計に扇情的に見えてしまう。

「リン!」

 マヤが、俺の頭の上から声を荒らげる。

「マヤ。なんだよ?」

「リン!マヤと僕の話は終わってないよ?」

「あ・・・。マヤ、話って何?」

 マヤが、俺の頭の上から、ミルの肩に移動する。

「ねぇマヤ。見てもらったほうが早くない?それに、私たちも、実際にどうなるのか、わからない」

「え・・・。あっ・・・。そうだけど・・・」

 マヤが、ミルが着ている俺のシャツを摘んでいる。

「大丈夫。あの話が本当だとしても、マヤの方が、僕よりも小さい!」

 ん?何を言っている?
 二人の会話の趣旨がわからない。

「そんなに違わない!」「違う。僕の方が大きい!」

「二人とも?そろそろ、教えてほしいのだけど?」

 マヤは、ミルの肩に乗りながら腕組みをして、俺を見つめる。
 ミルは、なにかを期待している雰囲気を出しているのだが、意味がわからない。

「ふっふん!いいよ!ミル。リンに確認してもらおう!」「わかった」