サイト小説の記事一覧
2023/09/02
【第四章 スライムとギルド】第四十九話 今後の話(2)
円香さんからの提案を真剣に考えてみる。 私にとって、デメリット・・・。存在しない。それ以上に、私(スライム)の事を調べてもらう事もできるかもしれない。 「円香さん。私、お金が沢山・・・。あります」 「貴子さん。これからも、増えるぞ、今の倍・・・。いや、10倍くらいにはなる」 「え?今でも、信じられないくらいですよ?私、お金、そんなに使わないですよ?」 「ははは。そうだな」 私の言い方が悪いのか、円香さんと孔明さんが笑ってしまっている。 「あの・・・。円香さん」 「なにかな?」 「呼び捨てにしてもらえると嬉し…
続きを読む2023/09/01
【第四章 スライムとギルド】第四十八話 今後の話(1)
貴子嬢が、話をしている最中に立ち上がった。 真子が起きたから迎えに行ってくると言い出した。俺が行こうとしたが、円香に止められた。 秒針の進みが遅い。まだ、30秒しか経っていない。真子は、大丈夫なのか?本当に治ったのか?立てるのか? 真子が部屋に入ってきた。 貴子嬢に支えられているが・・・。立っている。俺に向って、治った手を広げて見せている。 真子の足が治った。真子が歩いて居るのを見ても信じられなかった。貴子嬢が”幻影で見せている”と言われたほうが・・・。現実味がある。 真子が夜に魘される声を何度も聞いて過ご…
続きを読む2023/08/31
【第四章 スライムとギルド】第四十七話 真子のスキル
そうだ! 思い出してきた。 腕を上げる。 指が・・・。 足は見なくても解る。布団を掛けられている?でも、布団を確かに感じる。足が、私の失っていた足が・・・。 ”プクプク!ププゥ!” 「え?」 ”プク!” 「モモ?」 ”プクプク!” え?これがスキルの影響?モモが何を言っているのか解るようになっている。 凄い! 「モモ。私が言っていることが解るの?」 ”ププゥ!” 嬉しい。 指や足が治ったのも嬉しいけど、モモと話が出来るのが嬉しい。 「モモ。これからもよろしくね!」 ”ププゥ!” モモが、私の胸に飛び込んでく…
続きを読む2023/08/24
【第四章 スライムとギルド】第四十六話 そのころ(4)
おかしい。僕は天才なのに、なぜ新しいスキルが芽生えないのか。最初に得たスキルは天才の僕に相応しいとは思えない。 スキルを得てから、いろいろ研究をした。僕の天才的な頭脳にかかれば、スキルの解析くらいは余裕だ。スキルの検証も進んだ。 僕のスキルは、攻撃に分類される。どんな動物でもスライムにしてしまう。スライムは、核を壊せば簡単に倒すことができる。僕の明晰な解析の結果、容易に魔物を倒すことができるスキルだと判明した。 スライムを何万匹倒しても意味がない。煩いママをスライムに変えて、殺しても何も変わらなかった。 帰…
続きを読む2023/08/21
【第四章 スライムとギルド】第四十五話 治療の裏で(4)
本当に不思議な少女だ。 少女と呼んでいいのか解らないが、茜の隣に座って、手を握って貰って喜んでいる姿は、少女と呼ぶのが適切だろう。 それにしても、頭の痛い問題が重なった。 孔明の澱みが強くなっているのは感じていた。 孔明の裏切りには、情状酌量の余地がある。二人だけになってしまった兄妹だ。真子を助けたい気持ちが強いのは理解している。それでも、相談をして欲しかった。対策が無かったことも確かだが、それでも一言でも貰えれば、いい方向に利用することも考えられた。 孔明からの聞き取りでは、ギルドの情報は流れているが、問…
続きを読む2023/08/20
【第四章 スライムとギルド】第四十四話 そのころ(3)
東京の神保町にある雑居ビルが、その協会の登記場所となっている。実際には、理事の全員が揃っているわけではない。受付や職員は別のビルで仕事のような業務を行っている。 日本異能推進協会。通称、日本ギルド。 豪華な部屋で、豪華な椅子に座りながら、送られてきたリストを見ている男がいる。 魔物素材でもっとも価値がある物はなにか? 魔獣のドロップ品は研究材料としての価値が高い。また、牙や爪も装飾品としての価値がついている。 やはり金銭的な価値という意味では、もっとも価値があるのは”魔石”だと思われている。 ギルド日本支部…
続きを読む2023/08/19
【第四章 スライムとギルド】第四十三話 治療の裏で(3)
発見した盗聴器を、口喧嘩を終えた二人に見せます。 「茜。これは?」 円香さんなら見ればわかるでしょう。 あえて聞いてきたのだとしても、答えは決まっています。 「孔明さんの家に仕掛けられていた盗聴器です」 「それは、見れば解る。なぜ、茜はこれら(盗聴器)が仕掛けられているのがわかった?」 質問の意図はわかっていました。 答えられる物ではないので、解っていることを答えます。 「え?そういえば・・・。スキルの恩恵?」 「ようは、解らないのだな?」 解らないことが解ってもらえました。 「はい」 円香さんの視線が怖い…
続きを読む2023/08/18
【第四章 スライムとギルド】第四十二話 そのころ(2)
男だけ45人が乗った改造されたワンボックスの中は指令室になっている。監視している者たちからの情報が集まってきている。 暫く、動きを見せていなかったターゲットが、動きが活発になってきている。 指令室には、上層部からの指示が出ている。ターゲットが何かを発見したと思われる動きが伝えられている。 ターゲットが、海外のギルドカードに紐付けされた企業に送金していることが掴んでいる。 ターゲットを監視しているのは、自分たちの組織だけではない。民間や別の組織が監視しているのが解っている。 それらの組織を出し抜く為にも、ター…
続きを読む2023/08/17
【第六章 約束】第一話 皆?
ここは? だるい。 ん?草の匂い? あぁ・・・。 眩しい。ダメだ。俺は、天を空を感じていいのか? 俺は・・・。 生き残ってしまったのか? 手が動く、腕も動く・・・。 天を・・・。”天”なぞいらない。俺を庇って死んだ・・・。アルバン、カルラ・・・。アーシャを・・・。 「アル!」 誰だ? 俺の手を握るのは? 「アル!?」 また、違う奴か? 頭が痛い。 思考に靄がかかっているようだ。考えたくない。起きるのも・・・。 「アルノルト・フォン・ライムバッハ!」 誰だ? そうだ。 俺は、”アルノルト”。 違う。 俺は・・…
続きを読む2023/08/16
【第八章 王都と契約】第八話 ミヤナック邸
親たち世代は、何やら繋がりがあるようだが、詳しい話は教えてもらえていない。 ナナも言葉を濁すことが多い。 考えてみると、ローザスやハーコムレイは、アッシュやナナたちから見たら、世代は下になるはずだ。 俺たち世代と親世代の間くらいか? それで、”アスタ殿”なのか? アッシュが用意した馬車で、王都にあるミヤナック家に向かっている。 ハーコムレイが用意した馬車も、店の前で待機していた。アッシュが馬車を出すと言って、来ていた馬車に”夜の蝶”に向ってもらった。フェナサリムの父親が居たらミヤナック家に連れてきてもらうた…
続きを読む2023/08/15
【第四章 スライムとギルド】第四十一話 治療の裏で(2)
本当に、主殿。貴子ちゃんには、いい加減にして欲しいと伝えたい。 問題の本筋は、貴子ちゃんが”よくわかっていない”ことです。これは、ギルドが持っている。世間に公表している常識を覚えてもらえばいいと思っています。 でも・・・。本当に数時間で・・・。”困った”が溜まってしまいました。 まとめておかないと、後で困るのは私です。間違いなく、円香さんは、私に”丸投げ”してきます。 貴子ちゃんと一緒に居られるのは嬉しいのですが・・・。貴子ちゃん。本当に、ギルドに属してくれないかな? まず、問題になりそうなのは、動物の魔物…
続きを読む2023/08/15
【第四章 連合軍】第二十二話 【神聖国】終わりの始まり
魔王カミドネは日々広がっていく領土を見ながら、聖都に嫌がらせの指示を出している。 時間稼ぎをしているのは、攻略部隊の到着を待っているからだ。 予定は、本日だが時間までは指定されていない。 「カミドネ様」 魔王カミドネの部屋にフォリが報告に訪れた。 「フォリ?」 「はい。報告が来ました」 報告書は、現地からは口頭で報告された情報を、フォリたちがまとめた物だ。 眷属以外にも、獣人族の中から読み書きができる者や、勉強に意欲を見せた者を文官として雇い入れている。流石に、魔王の側仕えには採用はしていないが、地上部分で…
続きを読む2023/08/14
【第四章 スライムとギルド】第四十話 そのころ(1)
ギルドに残った千明は、蒼を問い詰めていた。 「蒼さん!」 二人だけ残されたのが、気に入らなかったのではない。 自分だけ事情を知らないのが気に入らないのだ。 「だから、孔明には、妹が居て、怪我をしていて、それで・・・。あぁ面倒だ!」 蒼は、真子にも会って話をしたこともある。 事情も理解している。真子が治るとも思っていないが、孔明がなんとかして治そうと足掻いている状況も理解している。 「あぁ説明を放棄した!普通の怪我なら、スライムさんが一緒に行く必要はないですよね?茜も一緒なのは何故?私だけ知らされていない!?…
続きを読む2023/08/13
【第四章 スライムとギルド】第三十九話 治療の裏で(1)
円香に、真子の部屋から連れ出された。 茜嬢は理由を察しているようだが、俺には解らない。解らないが、治療に必要な事なのだろう。 10分くらい経っただろうか、貴子嬢が真子の部屋から出てきた。 そして、治療で大量に水分が出てしまう可能性があるから、水分補給用の飲み物を買ってきて欲しいと言われた。 茜嬢が、自分たちの食事も欲しいと言ってきたが、長丁場になると考えれば、当然だ。 貴子嬢は肉がいいと言ったので、肉を買いに行く。あとは、飲むゼリーも買ってくる。治療中の真子が食べられるのなら、食べさせたい。 車は、ギルドか…
続きを読む2023/08/12
【第四章 スライムとギルド】第三十八話 治療(10)終了
真子さんの快楽の波が少しだけ落ち着いたようです。 「たか・・・こちゃん」 「はい」 身体を起こしてくれました。 自分の手を見て、涙を流しています。 指が無かった手にゼリーを渡します。 まだ力が入らないのでしょう。でも、自分の手でしっかりと触れたので、嬉しいのでしょう。手で顔を覆って、涙を流しています。 足の復活はもう少し後になりそうです。 今は、顔や腕や肩の傷が盛り上がって治っていくようです。 再生の速度がゆっくりになっているのは、スキルの調整が出来るようになったからなのでしょうか? あとで、真子さんに話を…
続きを読む2023/08/12
【第三章 復讐の前に】第三十二話 実験動物
(ゆるめ?の)性的表現が含まれています。 (ゆるめ?の)暴力表現が含まれています。 抵抗がある方は読み飛ばしてください。前回の話の結果を記載しているだけで、本編には(フラグ的な意味では)影響しません(多分)。 — サトシが珍しく執務室に居る。 ユウキが連れてきた者たちの処遇を確認して、次にユウキが来た時に報告する義務があるためだ。 「彼女たちは、どうしている?」 「実験に協力してもらっているわよ」 「そうか・・・」 29人は、それぞれにトラウマを抱えている。 普段から陽気にやらかすサトシも、小学…
続きを読む2023/08/11
【第四章 スライムとギルド】第三十七話 治療(9)
ライがモモちゃんにスキルを取得させている間に、結界から出て、リビングに向かいます。 茜さんが私に気が付いてくれました。 「貴子ちゃん?どうしたの?何か、問題?」 「貴子嬢。真子は?」 「大丈夫です。デメリットの説明が終わって、真子さんの治療が始まった所です。それで、孔明さんに、お願いがあります」 「なんでも言ってくれ」 「この辺りの地理に詳しくないので解らないのですが、スポーツドリンクを買ってきて欲しいのです」 「わかった。真子が飲むのか?」 「はい。治療時に汗とかで水分が出てしまう可能性が高いこともあり、…
続きを読む2023/08/10
【第三章 帝国脱出】第五十話 建国宣言
イーリスは、おっさんからの言葉を受け取って、領都に向った。 領都では、準備が進んでいた。 反対意見は有ったが、最終的な判断は王都に居るフォルミ・フォン・ラインリッヒ辺境伯に委ねられた。 領内をまとめたのは、代官だったダストンだ。ダストンにも打算はあった。正確な言い方をすれば、打算しかなかった。辺境伯領として、意思の統一を行う必要があった。丁度、代官と各町や村の長が領都に集まっていた。 同調圧力が無かった・・・。とは、言わないが、概ね独立はいい方向に捕えられていた。以前から、辺境伯領は、周りの貴族家から疎まれ…
続きを読む2023/08/10
【第四章 スライムとギルド】第三十六話 治療(8)
「あっ最後のデメリットですが・・・」 「え?はい」 真子さんが、姿勢を正して私を見てきます。 「”再生”のスキルが発動している状態で、快楽が身体を襲います」 「え?」 「本来、”再生”は、記憶を再生するので、痛みも再生されます」 「・・・」 「”治療”のスキルは、治療中の痛みを快楽に変えます」 「え?」 「これは、私が試せなかったので、デイジーに聞いた話です」 「治療中?」 「この辺りが微妙なのです。痛みが必ず快楽に変わるわけではないようです。スキルで与えられた痛みが、快楽に変るようなのです」 「・・・。そ…
続きを読む2023/08/10
【第九章 ユーラット】第二十三話 侵攻(2)
ヤスとリーゼが、作戦室に到着した時には、オリビアがメルリダとルカリダを連れて待っていた。 「中で待っていれば良かったのに?」 ドアの前で待っていた3人は、ヤスとリーゼが来たのを見て、一歩下がって道を譲った。 「いえ、誰かが来られるまで、私たちだけで中に居るのは・・・」 気にする必要は無いのだが、オリビアは元帝国の姫だ。 神殿に居る状態では、マルスが監視をしているので、大丈夫なのだが、状況を知らない者も居る。その場合に、オリビアの行動で、ヤスに批判の矛先が向いてしまうかもしれない。オリビアだけではなく、アデレ…
続きを読む2023/08/10
【第三十一章 本腰】第三百十三話
方向は決まった。 アトフィア教の連中が怪しいという目安も立ったが、問題は方法が解らないことだ。 ノービスの連中に会いに行くか? 「カイは、シロの護衛を頼む」 『はい』 シロの護衛は、フラビアとリカルダも居るし、大丈夫だとは思っている。 ステファナも本調子になってきたし、レイニーも従者兼護衛になっている。そもそも、アズリやエーファやレッチュが居る段階で、龍族でなければ相手にならないだろう。 それで、なぜかエリスがシロにべったりらしい。エリスがシロの近くから離れようとしない。らしい。 報告では、護衛にもなってい…
続きを読む2023/08/09
【第四章 スライムとギルド】第三十五話 治療(7)
言葉は、茜さんが教えてくれるようです。良かったです。 茜さんは優しいから、お姉ちゃんみたいで頼ってしまいます。 「真子さん。話がごちゃごちゃしてごめんなさい」 「いいよ。私は、何をしたらいいの?どうしたら・・・」 真子さんが、布団から出ている手や足を見ます。 足は、欠損の状態がはっきりとわかります。指は、解らないように、ギプスのような物が付いていますが、見れば義指だとわかります。 「最初に伝える事があります」 「はい」 まっすぐに私を射抜くような視線で見てきます。 「モモちゃんと契約すると、モモちゃんの寿命…
続きを読む2023/08/08
【第五章 共和国】第六十五話 心の死
ここは? ”クスクス” ”クスクス” ”おきた” ”めざめた” ”久しぶり!” ”久しぶり” え? 久しぶり?俺は、ここは・・・? 前にも、こんなことがあった・・・。よな? あれは・・・。 そうだ。 エリとエトか? ”そう” ”おもいだした?” 思い出した。 アリーダ様は? ”もうすぐ” ”くるよ” 何か、準備をしているのか? ”準備!” ”準備?” 疑問で返されても困るのだけど? ”困る” ”困って” わかった。 待っていればいいのか? ”うん” ”そうだよ。待っていて!” 待つのはいいけど、ここは? ”…
続きを読む2023/08/08
【第四章 スライムとギルド】第三十四話 治療(6)
ライが、モモンガちゃんに触れます。 「ライ?」 「うん。大丈夫」 ライが。大丈夫だと言っているので、モモンガちゃんとのパスが繋がったのでしょう。 強制はしたくないのですが、最悪は強制的にスキルを付与させることも出来そうです。 「え?なにが?え?」 「真子さん。治療の方法を説明します」 外に居るライが。孔明さんを抑えておく必要がなくなったと報告を上げてきます。 結界の必要もないですし、外に居るライに結界を解除してもらいます。 ついでに、円香さんと茜さんを呼んできてもらいます。 孔明さんだけに見てもらうよりは、…
続きを読む2023/08/07
【第八章 王都と契約】第七話 打診
「リン様。さきほどのお話では、門は反対側にもあるのですよね?」 アッシュは、何かを考えてから、質問を始めた。 森の中の村に行くのには問題は無いようだ。神殿の中よりも、やれることが多いと思っているようだ。 「ある」 隠すようなことではない。 アッシュを仲間に引き入れたい。俺には、人を見る目がない。俺の代わりに、人を見る人物が欲しい。アッシュなら大丈夫だろう。忠誠心は、俺に向いていなくても、ローザスやハーコムレイと歩調が合っている間は、裏切らないだろう。 だからこそ、神殿ではなく”森の村”を担当して欲しい。 「…
続きを読む2023/08/06
【第四章 スライムとギルド】第三十三話 治療(5)
桐元家は、マンションでした。真子さんが部屋に引き籠っていることや、孔明さんが帰ってきて寝るだけの部屋があれば十分なので、戸建てでは無いようです。 「円香。茜嬢。適当に座ってくれ、貴子嬢。さっそくだけど、頼めるか?」 私とライは、孔明さんについて行きます。 「真子」 ドアの前で、ノックをしてから、話しかけます。 部屋からの返事がない。真子さんが居るのは、ライの使っているスキルで解っている。真子さんとモモンガが居る。 「真子。今日は、お前を」「お兄ちゃん。もう・・・。いい。私の為に、お兄ちゃんが傷つかなくて・・…
続きを読む2023/08/06
【騎士二人】門番と騎士
私は、王家に仕えている。 仕えていると言っても、下っ端の下っ端の下っ端だ。しかし、私はこの仕事に誇りを持って挑んでいる。陛下から任命された職務だ。 「先輩」 最後まで残った部下だ。 軽いが、仕事はきっちりとやる。 「なんだ?」 「誰も来ませんよ」 この時間だと、貴族連中が陛下に面会を求めて訪れる。 「煩い。お前は・・・」 「はい。はい。わかっています。でも、この国はもう終わりですよ?」 「違う」 「違いませんよ」 「国王は残っていますが、有力な貴族連中も、皆が・・・」 「陛下だ。言葉を慎め。まだ陛下がいらっ…
続きを読む2023/08/05
【第四章 リブート】第六話 ラスティネイル
今日のバーシオンには少しだけ毛色が悪い客が来ていた。 前回は常連に連れられてきたのだが、今日は初めて見る女性を連れて来ている。 「おい。バーテン。ウィスキーのロック」 マスターは、失礼な客には目をくれずに、安いウィスキーの封を切って、ロックグラスに注いだ。 周りの視線を気にしないで、男は連れてきている女性に話しかけている。 女性は、迷惑そうな表情をして居ることから、無理矢理に連れてこられているのは、誰の目にも明らかだ。 そして、女性はマスターが封を切ったボトルを見て、笑いそうになっている。 奥に並んでいるボ…
続きを読む2023/08/05
【第四章 スライムとギルド】第三十二話 治療(4)
桐元孔明(よしあき)さんの妹さんが、スキル利用者になりそうです。真子さんと呼んでいいのかわかりませんが、皆さんが”真子さん”と呼んでいるので、私も真子さんと呼ばせてもらいます。 それから、孔明(よしあき)さんのことも、桐元さんではなく、孔明(よしあき)さんと呼んだ方がよさそうです。 真子さんは、孔明さんのご実家にいらっしゃるとのことでした。 ご実家は、富士宮にあるらしい。移動は、迷いましたが、孔明さんの運転する車に便乗させていただくことにしました。茜さんと円香さんも一緒です。心配性の家族が上空を飛んでいます…
続きを読む2023/08/04
【第四章 スライムとギルド】第三十一話 訪問準備
ライと一緒にギルド職員の茜さんのご自宅に行くことになった。 友達ではないけど、知り合いのおうちを訪ねるなんて、小学生以来で緊張します。 勢いで言ってしまいましたが迷惑じゃなかったのでしょうか? 茜さんの声が、歓迎しているようにも聞こえたので、大丈夫だと思う事にします。 手土産と、治療に必要な準備をしましょう。 「ライ。アイテムボックスを作って、時間停止でいいかな?」 「うん。わかった」 私のスキルの一つ。”記憶保持”が実は、アイテムボックスに付与できることがわかりました。 時間停止とは違うとは思いますが、中…
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