【第三十一章 本腰】第三百十三話

 

方向は決まった。
アトフィア教の連中が怪しいという目安も立ったが、問題は方法が解らないことだ。

ノービスの連中に会いに行くか?

「カイは、シロの護衛を頼む」

『はい』

シロの護衛は、フラビアとリカルダも居るし、大丈夫だとは思っている。
ステファナも本調子になってきたし、レイニーも従者兼護衛になっている。そもそも、アズリやエーファやレッチュが居る段階で、龍族でなければ相手にならないだろう。

それで、なぜかエリスがシロにべったりらしい。エリスがシロの近くから離れようとしない。らしい。

報告では、護衛にもなっているので、大丈夫だと言われた。
シロの所に戻った時にも、寝室と風呂とトイレ以外は本当に一緒に居る。出来れば、寝室も一緒に居たいという雰囲気が出ているが、エリスは寝相が悪いらしい。シロを蹴ると問題だからと、客室で寝ている。
夜中にシロが起きると、エリスも起きて一緒に行動をすることもあるらしい。

俺なら耐えられない。
シロも、”姫”と呼ばれるような属性がついていた。エリスが幼いと言っても、従者だと思えば側にいても気にならないと言っていた。

「ウミ。一緒に行くか?」

『うん』

一人で行ってもいいが、誰かが側に居ないとシロが心配をする。
ルートガー辺りが聞いたら、後で文句を1ダース単位で言われる。それなら、最初から誰かを連れて行った方がいい。

ウミと一緒にロックハンドに移動する。
どうせ、他にも着いて来ているのだろうけど、とりあえずはウミが居るから大丈夫だ。

「ツクモ様?あれ?中央大陸に行っていたのでは?」

ノービスのピムが俺を見つけて駆け寄ってきた。
ウミを連れているから目立つのだろう。それに、俺たちしか使っていない場所から出てくるのならすぐにわかるだろう。

それにしても人が増えたな。
ガーラントが、鍛冶仕事がしたいと言っていたから許可をだした気がした。近くのダンジョンには、鉱石が適当に出るように配置がしてある。

それにしては、ダンジョンにアタックする奴らの姿が少なそうだ。あてが外れたか?

「帰ってきて、ノービスに聞きたいことがあって、来たけど、皆・・・。あぁナーシャは居ないのは把握しているから、他は居る?」

ナーシャは、どうせ食道楽を満喫しているのだろう。
甘い物以外でも美味しい物が溢れているからな。

「イサークとガーラントは居ますよ。そうだ。ツクモ様。ガーラントをどうにかしてくださいよ」

ガーラント?
武器と防具を作っているのだろうか?

「どうした?」

「ほら、ロックハンドは鉱石が豊富でしょ?」

豊富ではない・・・。
あぁそうか、中央大陸で聞いた話では、確かにロックハンドは鉱石が豊富な部類だな。ダンジョンが鉱石をドロップするから、尽きる事がない。ここに、人が増えているのなら、収支に合うように鉱石がドロップしていれば、見渡す限りでは、200名くらいか?1/3はドワーフに見える。

「そうだな」

「引き籠って出てきません。まぁ武器や防具が量産されているから、いいのですけど・・・」

「ん?何が問題になっている?」

引き籠って武器や防具を作っているのなら、最初から解っていたことではないのか?
鉱石を自分で取りに行っているのなら、ダンジョンにも潜るだろうし、儲けは多いのでは?

「旦那。それは、俺から話をします」

イサークが現れた!
まぁ近づいているのは解っていたから、そろそろ話しかけられるとは思っていた。

「イサークか?久しぶりだな」

「ご無沙汰しております。それで、ガーラントが籠っているのは、まぁ結果、俺たちの役に立っているからいいのですが・・・」

苦労が顔に現れている。
ピムが割を食っていると思ったけど、どうやらイサークが問題を抱え込んだようだ。
まぁリーダーだからしょうがないな。

「ん?ナーシャが売りに行っているのか?」

ナーシャなら社交的だから、販売に行かせるのは間違いではないだろう。
売り上げが、甘味に変わらなければ・・・。だけど。

「それも、問題だと言えば、問題ですが、それ以上に、ロックハンドがドワーフに占拠されそうです」

やっぱり、問題は発生していたのか?
ドワーフが占拠?

「ん?あぁ鉱石を求めてか?」

「はい」

「凄いな」

「え?」

「ドワーフ大陸で鉱石を彫り尽くした奴らが中央大陸で見つかったダンジョンに群がって問題になっていた。解決して戻ってきたら、またドワーフたちかぁ・・・。と、考えると、どこに鉱石があるのか解るのか?」

「大将。今回は、俺たちの・・・。まぁ正確に言えば、ナーシャのミスだ」

ナーシャのミス。
予想ができるだけに、話を逸らしておこう。今は、ドワーフたちの動向を知りたい。

「ん?別に、俺としては、ロックハンドがドワーフだらけになっても問題はない。それよりも、ここにドワーフたちが集落を作るのなら、それでもいいと思っている。不正をしてやって来たのではないよな?」

行政区や他のダンジョンにドワーフの集落が出来るのは、面倒な出来事が発生する危険性があるが、最初からドワーフの集落だと言える場所なら問題は少ないだろう。それに、何か問題をおこしても、ドワーフ側によほどの間違いがない限りは、イサークたちで対応が可能だろう。

「それは大丈夫だ。ガーラントがしっかりと聞き出して、管理をしている。拒否する奴らには、鉱石を与えていない。工房も使わせないと決めた」

「約束が守られているのなら、問題はない。ん?名簿も作ったのか?」

「あぁ作った。全部で、231人だ。男女比は半々に近い」

男女比に偏りがないのが凄いな。
それにしても、本当にドワーフ大陸には人が居なくなったのでは?

鉱石が無くなって、武器や防具の提供が出来なくなれば人が減るのは当然だけど・・・。それにしても、見切りが早いように思える。

「そうか・・・。ドワーフの町になったのか?まぁ別にいい。ナーシャが・・・。そうか、甘味と引き換えに、武器の出所を教えたって感じか?」

「・・・。はい。正確には、1食の食事ですね」

「まぁいい。それで、ここまで武器や防具を買いに来る奴も居るのか?」

ここまでの町になっているとは思っていなかった。
密偵が紛れ込んでいても不思議ではない。

チアル大陸の情報を抜きたいと思っている組織は多いからな。こんな、隠れた場所にあるドワーフの里なんて、諜報合戦の場所になりかねない。

ん?
でも、ここで抜かれるような情報なら、抜かれても困らないな。
困るのは、俺の周りの情報だけだ。それも、積極的に開示をしていないだけで、知られても困らない。

最悪の情報を抜かれたとしても、俺が”魔王”認定されるくらいだろう?
そうしたら、正義の男ルートガーに倒されて引き籠ればいいだけだ。

「居ますね。定期的に、船が到着するので、商人はさすがに、断っています」

「ん?商人が来ると、独占されるか?」

「はい。俺たちでは、商人の所属が正しいかわからないので、ロックハンドへの上陸を拒否しています」

「イサークとピムの負担になっていなければ、このままでいい」

「ありがとうございます」

「そうだ。イサーク。お前たちが信頼している商人を誘致して、窓口を一本化してしまえ」

「え?いいのですか?」

「あぁ任せる」

「わかりました。ピム。よかったな!」

「ん?ピム?」

「ピムの妹をやっと呼び寄せられて、その妹の旦那がいい奴で、行商人をやっていたけど、アトフィア教のやつらに騙されて、魔物を運ばされそうになって、断ったら・・・」

「ん?ピム。その妹の旦那は、ここに居るのか?」

「え?居ませんよ?どうして?」

「いや、丁度、ノービスに聞きたい事があった。依頼が出来れば、いいし出来なければ、誰か紹介して貰おうと思っていた」

一番、欲しいと思っていた情報が手に入りそうだ。

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