サイト小説の記事一覧
2024/01/21
【第四章 建国騒動】第七話 おっさん出かける
ダンジョンと子供たちをカリンに任せて、おっさんはバステトを連れて、アルシェ帝国に来ていた。 道中は、バステトのスキルで姿を隠しながら、黄龍の眷属に運んでもらった。 本来なら、ラインリッヒ公国に立ち寄って筋を通す必要があるのだが、理由があり、おっさんは”拠点”に居る必要があった。 「まーさん。帝国の・・・。そうだ、王都まで、送るけど?いいのか?」 「大丈夫。悪いな」 「気にしないでくれ、それにしても、本当にいいのか?」 「あぁ龍族が来た事は、秘匿しておきたい」 「わかった」 龍族の眷属が、おっさんを送…
続きを読む2024/01/06
【第九章 ユーラット】第三十話 それぞれの選択
第三皇子が帝都を脱出して、エルフの里に向かっている頃。 第二皇子は、選択を迫られていた。自らが選んだ道なのだが、最後の決断が出来ない。 「殿下。準備が整いました」 自らがユーラットに向かうと宣言してしまっている。 第二皇子は、自らがユーラットに向かう船が整うのを待っていた。事になっていた。その間に、第一皇子側に潜り込ませたスパイから、情報を得ていたのだが、第二皇子が考えていた以上に、戦況が混沌としていない。 「戦況は?」 「・・・」 「第一皇子の・・・。兄は、無事なのか?」 「はい。第一皇子は、帝都…
続きを読む2024/01/03
【第三十一章 本腰】第三百二十話
クリスティーネは、緊張した面持ちで、カズトとシロが住んでいる場所に向かっていた。 崖の下に到着した時に、同じように邸宅に向かっていた者たちと合流した。 メイド姿をしたドリュアスが、全員が揃ってから邸宅に案内すると伝えてきた。 「シロ様がこちらにお越しになるのでは?よいのですか?私たちが、邸宅にお邪魔する形になってしまいます」 驚いたのは、メリエーラだ。 立場を考えれば、邸宅に案内されても不思議ではないが、メリエーラだけではなく、ヴィマやヴィミやラッセルやヨナタンも、邸宅に足を踏み入れたことがない。…
続きを読む2024/01/03
【第六章 約束】第八話 共和国(2)
ユリウスたちは、使者との約束を守っている。約束の期間は、戦闘行為を行っていない。城門近くでの炊き出しを行うだけに留めている。 使者の言葉を、そのまま情報として民衆に流した。民衆は、得る事ができなかった情報に喰い付いた。王国を非難する者も居たが、それ以上に共和国のやり方に憤慨する者が多かった。そして、自分たちの国の上層部なら”やりそう”だと考えている。 共和国は、建前として多数派による政治だと宣伝をしている。 ユリウスも、共和国の政治体制は、認めている。しっかりと運営が出来ていれば、政治が機能していれ…
続きを読む2024/01/01
【第八章 王都と契約】第十七話 契約
ブロッホはブラックドラゴンで、他のドラゴン族とは感性が違うとは言っていたのだが、俺の所に来てからはドラゴンの姿になっていない。人の姿で、食事をするのが楽しいと言っていたので、無暗に力を使う事はないと思っている。 二人を見ると落ち着いてはいないが、話ができる状態だと思う。 やっと契約の話が切り出せる。二人の様子をみると、契約が必要になるとは・・・。思えない。契約は、ギルドのためには必要だけど、個人で考えれば必要ない。ミヤナック家や王家との話し合いの結果を契約として残す以上の意味はない。 「それで、ミヤナ…
続きを読む2023/12/25
【第四章 スライムとギルド】第六十話 神に選ばれた民
急遽、貴子嬢を除く、初期のギルドメンバーが集められました。 私は、円香さんから呼び出されました。 千明は、蒼さんに呼ばれたようです。アトスと訓練中だったようで、アトスが一緒に来ています。 「茜。何か聞いている?」 孔明さんは、昔の資料を調べるために、静岡中央図書館に行っているようです。昔の新聞や週刊誌記事を調べる様です。資料が見つかったと連絡が入っているので、印刷して持って帰ってくるようです。 「千明以上の情報を私が持っていると思う?」 「”思う”から聞いているのよ?」 「え?」 「茜。貴子や真子と…
続きを読む2023/12/23
【第五章 魔王】第五話 アスレチック
王国の端(はずれ)に存在していた魔王が、大魔王様に許可を求めた話は、魔王連合に伝わった。 私は、カレン・ダンジョン494代目の魔王です。日本からの転生魔王です。姿かたちは、女子高校生くらいになっています。嬉しい誤算でした。この話は、長くなるので割愛します。私は、494代目のダンジョン・マスターで魔王です。 カレン・ダンジョンというのは、私の前世である日本に居た時に、使っていた名前だと思います。日本で生活をしていた記憶はあるのですが、名前とか家族とか友達は思い出せません。家族や友達が居たという認識はあり…
続きを読む2023/12/22
【第四章 噂話】第五話 訪問
学校は、いろいろあって休みになっている。マスコミが殺到していて授業にならないというのが主な理由だ。 学校からの通達が、ユウキには遅れた。休校になる当日になって届いた。吉田教諭が、ユウキに連絡をしたことがきっかけだ。 ユウキはクラスから浮いた存在だ。クラスでは、ユウキは”いじめ”られているようだ。本人は、気にしていないのが、余計に周りから憎々しく思えてしまっている。 ユウキは、元々の性格から飄々としていると見られている。そして姿かたちや性格に大きな欠陥があれば良いのだが、顔は平均以上で、身長は低いが低…
続きを読む2023/12/21
【第四章 建国騒動】第六話 少年奮闘する
イザークは、ラインリッヒ公国と森の拠点で過ごしている。 ダンジョン内で訓練を行って、ラインリッヒ公国で文字や計算の勉強を行う。 訓練は、カリンが一緒に行ける時には、深い階層に行くこともあるが、基本は低階層での戦闘訓練を行っている。安全マージンを十分にとって、一緒に居るアキやラオだけではなく、仲間たちが単独でも倒せる場所で戦っている。 武器に慣れるように戦っている。仲間たちと連携を確認するように訓練を行っている。 カリンと朱里(シュリ)が居れば、皆で連携すれば倒せる階層に潜っている。ギリギリの戦いで…
続きを読む2023/12/20
【第九章 ユーラット】第二十九話 第三皇子
皇都からの脱出に成功した。 皇帝は、第一皇子と第二皇子の対立を利用して、王国にある神殿を攻め落とそうとしている。 僕が調べた限りでは、神殿を攻め落とすのは兄さんたちでは不可能だ。もちろん、僕にも不可能だ。もっと言えば、帝国の勢力が協力して、全方位から同時に攻め込まない限りは攻め落とすのは無理だろう。 皇帝は・・・。父は、焦っているのかもしれない。 それに、兄さんたちは乗せられてしまった。 妹は、上手くやったようだ。 兄さんたちは、妹を追い出したつもりでいるが、僕から見たら、妹は上手く逃げ出して…
続きを読む2023/12/19
【第三十一章 本腰】第三百十九話
久しぶりに忙しい日々を過ごしていた。 シロは、相変わらず体調の調整が出来ないようで、邸で休んでいる。エントやドリュアスたちが看病をしている。フラビアとリカルダは、シロの代わりに湖の集落を見てもらっている。二人同時に行く必要が無くなった為に、交代で湖の集落に行ってもらっている。 シロが邸に籠っている関係で、クリスティーネには負担を掛けてしまっている。 俺やルートガーでは、無難に進められない場所には、クリスティーネやヴィマやヴィミやラッヘルやヨナタンが出向いている。特に、女性が主体になっている行商は、女…
続きを読む2023/12/13
【第六章 約束】第七話 共和国(1)
アルノルトが、カルラとアルバンを連れてウーレンフートに向かっている頃。 アルトワダンジョンを出たローザスたちは、アルノルトから提供された地図を使って進軍していた。 「殿下!」 「どうした?」 「αダンジョンの周辺を抑えました」 「わかった。最低限の人数を残して、δダンジョンに迎え」 「はっ」 ダンジョンの名前は、デュ・コロワ国が名付けているが、ユリウスたちは、アルノルトが使っていたαβγという呼称で呼ぶことにした。攻略しているダンジョンの確保が最優先された結果だ。 攻略順ではないが、攻略ダンジョンを…
続きを読む2023/12/12
【第八章 王都と契約】第十六話 契約の話は?
ローザスとハーコムレイとアッシュと契約を交わすことに決まった。 ギルドに振ろうかと思ったがダメだった。 神殿の所有者は対外的には、ギルドだけど実質は俺が所有することになっている。ローザスやハーコムレイが、ギルドと契約を行ってしまうと、ミヤナック家や王家以外の貴族がギルドに圧力を掛けた時に、突っぱねられないと説得(脅迫)された。 残念な事に、ハーコムレイの言っていることが正しいように思える。 ギルドの活動を考えれば、貴族からの申し出を断るのは難しい。神殿に戻ってからの調整にはなるが、所有しているのは…
続きを読む2023/12/07
【第四章 スライムとギルド】第五十九話 退場する者
ギルド日本支部が本格的に施設の拡張と人員の確保を始めていたころ・・・。 その裏では、日本ギルドが看板を降ろしていた。 日本ギルドが入っていた雑居ビルの部屋には、ブローカーと言われる男が入居を行っている。部屋の内装もそのままになっていたために、居ぬきでの契約だ。追加したのは、シャワールームくらいだが、それも家主が負担した。 家主が次の入居可に配慮するほどに、日本ギルドの最後は酷かった。 幹部連中は、連日のように打ち合わせを行っていたが、徐々に参加者が減っていった。そして、参加者が減れば、その参加者が…
続きを読む2023/12/04
【第五章 魔王】第四話 【連合国】【エルプレ他】
神聖国の魔王に対する報復は、認められたが、待ちが発生している。 ルブランからは、順番に回していくから、それまでに参加する眷属の強化を行うように言われてしまった。眷属は弱くはないが、圧倒的な強さは持っていない。神聖国の魔王には、苦戦しないと思うが、圧倒的な力で心を折るような戦いは難しいと思えた。 殺さないように戦うのには、力の差が必要だと言われてしまった。弱い魔物をけしかけて、ギリギリの戦いを続けさせるのも面白いが、強い眷属で徹底的にいたぶるような戦い方でも構わないと言われた。フェンと眷属たちを集めて希…
続きを読む2023/12/02
【第四章 噂話】第四話 マスコミ
在京のマスコミ各社は、情報の収集を急いでいた。 特に、広告収入がない放送局は、何者にも影響されないはずであるが、一部の腐った権力者からの要望で、”ポーション”を調べていた。ユウキたちは、表からしっかりとした手順で訪れた者たちには、しっかりとした対応を行っている。研究結果も包み隠さずに伝えている。それでも、実物の入手ができないことには、一部の腐った権力者は満足しなかった。 渡された情報を信じるかどうかは、各マスコミに任せることにしている。 一部は、検証の為に”ポーション”の現物を無償で提供して欲しいと…
続きを読む2023/12/02
【第四章 建国騒動】第五話 カリン報告する
カリンが、邸に帰ったのは、ヤスが公国から帰ってきた翌日だった。 「あ!まーさん!ただいま!」 「お帰り。カリン」 カリンは、ダンジョンから帰ってきたテンションのままおっさんに報告を始めた。 「アキとイザークは、5階層までなら無傷で到達ができるよ。他の子は、3階層か4階層だね」 「そうか、ありがとう。問題は?」 「うーん。そろそろ、武器や防具を考えないとダメかな?それぞれの特性が出始めている」 「そうか・・・。ゲラルトとオイゲンに言って用意してもらうか?」 「うん!あっ!エミリーエに言って、聖樹の杖を作っ…
続きを読む2023/12/02
【第九章 ユーラット】第二十八話 アラニス
ディアス・アラニスは、モニターに映し出されている戦闘風景を複雑な思いで見ていた。 ディアスは、目の前で行われている戦闘を望んでいた時期もあった。 実際に、帝国から追われた身では、帝国の貴族連中を、憎しみがこもった目で見るのは当然だ。帝国の貴族は、ディアス・アラニスにそれだけのことをした。貴族だけではない。ディアスは、帝国を深く憎んでいる。本来なら、”アラニス”を保護して守る存在であるはずの、皇子が率先して”アラニス”を断罪した。いわれなき罪を被せての断罪だ。しかし、憎んでいるのは貴族連中であり、皇族だ…
続きを読む2023/11/29
【第三十一章 本腰】第三百十八話
粛清が始まった。 正確には、アトフィア教だけではなく、チアル大陸外の勢力と繋がっていた者たちを焙り出して捕えた。 流した情報やスキルカードによって懲罰を決めた。 アトフィア教と繋がっていた者に関しては、1段階上の懲罰を行うことに決定した。 行政区の一部に喰い込まれていた。 ここまで喰い込まれているとは考えていなかった。 ルートガーは、身元調査を過信しすぎたといっているが、しょうがない。 まずは、流出した情報の調査が先だ。 「それで?」 「流出した情報は、公開されている物だけだ」 「ん?公開さ…
続きを読む2023/11/28
【第六章 約束】第六話 無言の帰国
状況の説明と今後の方針を決定した。 共和国の相手は、ユリウスに任せる事に決まった。 俺は、王国に帰還して、エヴァを迎えに行く。 『エイダ。集まったか?』 『十分な量の確保に成功しました。馬車に積んであります』 『わかった。ありがとう』 ユリウスたちとは、アルトワ・ダンジョンで別れた。アルトワ・ダンジョンには、クリスティーネが残る。 俺よりも先に、ユリウスたちが出立した。 共和国を攻め落とすのには、情報が伝わる前に重要拠点を攻略しておく必要がある。 ダンジョンの確保は必須だ。実効支配は完了してい…
続きを読む2023/11/27
【第八章 王都と契約】第十五話 そのころ・・・3
西沢は、ゴーチエは宰相派に金を流している豪商の息子だ。所謂、武器を売って稼いでいる所謂武器商人の一族だ。武器の中には、奴隷も含まれている。もちろん、正規のルートから仕入れた奴隷だけではなく、奴隷狩りなどで捕えられた違法奴隷も含まれている。 西沢が、同級生たちのグループからの脱退を考えていた。 (このままではジリ貧だ) 西沢(ロラ・ゴーチエ)は、豪商の息子だ。 ただの豪商ではない。武器商人だ。それも、王国だけではなく、近隣諸国に武器を売り歩いている。武器の代金を、金ではなく、奴隷との引き換えも行ってい…
続きを読む2023/11/21
【第四章 スライムとギルド】第五十八話 ギルドとスライム(1)
説明回です。読み飛ばしでも大丈夫です。 後から調整が入る可能性が大きいので忘れてくれると嬉しいです。 — 今日は、ギルドの結成式という名前の宴会(二部構成)です。 ギルドは大きく変わりました。 貴子ちゃんのおかげです。人員も増えて、私の仕事が楽になりました。 清水教授・・・。清水さんがギルドに合流しました。加入が正式に承認されました。いろいろ大変でした。主に、自衛隊とのやり取りで・・・。清水さんは、機密情報を握っている立場だったので、それらの保持に関する約定を取り交わさなければならな…
続きを読む2023/11/19
【第五章 魔王】第三話 【王国】【神聖国】
俺は、大魔王様の眷属に従う部下の手下に負けた魔王だ。 これでも、20階層を誇るダンジョンを作っていた。罠も地球に居た時の知識を使って、あくどい罠を設置していたのだが、簡単に突破されてしまった。俺の眷属たちは、殺されなかった。眷属であることを戦闘中に聞かれて、眷属だと答えたら、無力化されるだけで終わった。 俺は、大魔王様に屈する選択をした。 間違っていなかった。あの時に、変なプライドを捨てたのは正しかった。このまま戦い続けるか、屈するか聞かれて、被せ気味に屈する選択を選んだ。眷属が殺されてしまう事を恐…
続きを読む2023/11/19
【第四章 噂話】第三話 撫養教
ユウキたちの拠点がある地区の周りを囲むように、撫養教が教会の建築を開始した。 拠点には直接的なダメージはない。 周りを囲まれても、拠点が属している地区は、小さな町で、独立している。大きな括りには、属していない。 その為に、小さな地方自治が出来上がっている。 そのうえで、住んでいる人たちは、元々の住民と拠点に関係している者たちだけだ。元々住んでいた人たちも、拠点の恩恵を受けている。大きいのは、限界集落になっていた場所に、拠点が出来た事で、病院に変わる治療所が出来た。 拠点ができるまでは、近い病院で…
続きを読む2023/11/18
【第四章 建国騒動】第四話 カリン説明する
おっさんが、イーリスに帝国を追い詰める作戦(悪巧み)を耳打ちして、ラインリッヒ公国の公都の裏路地を慣れた足取りで歩いている頃・・・。 カリンは、”魔の森”改めサイレントヒル自治区に出来たダンジョンにアタックをしていた。 サイレントヒルは、カリンが名付けた。おっさんの出身が静岡県だと聞いて、”サイレントヒル”と付けたのだ。おっさんは、別に名前には拘りが無かったが、”勇者”たちに知られたら厄介だと思っていたが、カリンの中で勇者たちとの対決を望む気持ちが芽生えてきたのかと思って、承諾した。 おっさんは、別…
続きを読む2023/11/16
【第九章 ユーラット】第二十七話 侵攻(5)
ヤスが、楔の村(ウェッジヴァイク)への出兵を行うと宣言をした。 元々、帝国から攻めてきた戦争だ。それに対して、神殿側は反撃らしい反撃をしていなかった。 帝国の部隊が、神殿の領域に到達する前に瓦解することが多く、散発的な戦闘はこれまでも有った。しかし、まとまった攻撃は、楔の村(ウェッジヴァイク)が初めてだ。待っていたというよりも、神殿の中にも痺れを切らしている者たちが存在していた。その者たちのガス抜きの意味もあり、攻勢に出た方がいいと判断した。 指令室に居る者たちは、交戦を回避したいと考えていたのだが…
続きを読む2023/11/14
【第三十一章 本腰】第三百十七話
幹部会議の当日になった。 最初は、シロも出席すると言っていたのだが、だるいようなので、幹部会議は欠席して、部屋で休むようにした。シロには、ステファナとレイニーがついていることになった。 俺には、”必要ない”と言ったのだが、シロから”フラビアとリカルダを連れて行って欲しい”と言われた。ルートガーたちが作る議事録とは別に、フラビアとリカルダがシロに報告を行う為にも、幹部会議に出席させて欲しいということだ。 「ツクモ様」 どうやら迎えが来たようだ。 幹部会議は、俺もルートガーもそれほど乗り気ではなかった…
続きを読む2023/11/12
【第六章 約束】第五話 想定外の出来事
ライムバッハ領の領都には、私たちが執務を行っている邸がある。ライムバッハ辺境伯の邸とは別に用意された場所で、私たちが生活する場所が一緒になっている。 私の執務室は、邸の入口に近いが場所にある。 客人対応が多いのが私だ。ユリウス様に客人対応を任せられない。当代のライムバッハ辺境伯はカール様だ。私たちが支えるべき人物だ。しかし、ユリウス様の現在の肩書は別にして”皇太孫”という立場があり、権限を持っていると思われてしまう。他の者たちでは、客人が爵位を持っている場合に、”軽く見られた”と言い出す者が居る(可能…
続きを読む2023/11/10
【第八章 王都と契約】第十四話 そのころ・・・2
神殿が表舞台に出る準備を行っていた時に、神殿に行くことを拒絶した者たちも、自らのスキルを使って動き出していた。 最初に動いたのは、教会に伝手があるフレット(昴)・コンラート(松田)だ。 「おじい様!」 「なんだ?」 コンラート家は、王家よりの人間で穏健派の筆頭と考えられる。教会の中では、穏健派をまとめている立場の家だ。 フレットが、父親や母親ではなく、祖父を頼ったのにも理由がある。 「おじい様。教会の武器や防具や服飾関係は、どなたが仕切っていらっしゃるのですか?」 フレットが行おうとしているのは、カルーネ(…
続きを読む2023/11/07
【第四章 スライムとギルド】第五十七話 追い込まれた者たち
千代田区のとある雑居ビルの3階。 この場所は、広くもないが狭くもない。雑居ビルには看板が掲げられているが、3階の部分にあった看板は取り外されている。存在を隠す理由ができてしまったために、看板も表に取り付けていた表札も取り外している。それだけではなく、代表電話も転送されるように設定が変更されている。 30平米程度の部屋は、綺麗に整えられている。 訪ねる客が多いわけでは無いのに、受付が設置されている。しかし、受付には、誰かが座っていた形跡はあるが、現在は使われている様子はない。 空間を仕切っているのはパーテーシ…
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