【第五章 魔王】第四話 【連合国】【エルプレ他】

 

 神聖国の魔王に対する報復は、認められたが、待ちが発生している。

 ルブランからは、順番に回していくから、それまでに参加する眷属の強化を行うように言われてしまった。眷属は弱くはないが、圧倒的な強さは持っていない。神聖国の魔王には、苦戦しないと思うが、圧倒的な力で心を折るような戦いは難しいと思えた。
 殺さないように戦うのには、力の差が必要だと言われてしまった。弱い魔物をけしかけて、ギリギリの戦いを続けさせるのも面白いが、強い眷属で徹底的にいたぶるような戦い方でも構わないと言われた。フェンと眷属たちを集めて希望を聞いて、力が必要なら力を、魔物が必要なら魔物を用意しなければならない。

 王国と神聖国として、神聖国の話で時間が取られてしまったが、フェンは最後の連合国との戦いの話を切り出す。

 連合国との戦いは、大魔王様の眷属である。ナツメとカエデとバチョウが中心になっていた。その補佐という役割で、獣人がついた。獣人も成人しているかギリギリの年齢だが、既にフェンたちよりも強いのは、確認している。

 会議が始まる前。大魔王様が来る前に、模擬戦が行われた。

 集まった魔王は、大魔王様の臣下になると誓った魔王だが、魔王の配下である眷属の一部が、納得が出来ない気持ちを引きづっていた。
 納得が出来ていない者たちと、大魔王様の眷属ではなく、大魔王様の直臣にあたる獣人族が模擬戦を行った。
 模擬戦は、一方的な戦いになった。フェンも戦いたいと言ったので、許可をだした。フェンは、ミアの妹で、普段は戦いに出ない文官に相当する者と模擬戦を行ったが、簡単に倒されてしまった。獣化して、フェンリルの力を使っても勝てなかった。
 魔王の眷属で、なんとか面目を保った者は少なかった。

 エルプレがダンジョンを所有していたのは各国のトップには知られていた。一部の魔王も情報として知っていた。
 エルプレは魔王との共闘という言葉を使っていたが、実際には魔王を脅して、アイテムや武器を搾取していた。魔王も、安全が保証された状態になっていた。その為に、実際に攻略を始めれば、簡単に最下層まで辿り着けたようだ。
 最下層のボスも確かに強くはあったが、エルプレの騎士が基準になっていた為に、大魔王様の眷属と対峙するには役者不足だった。簡単に倒されてしまった。そこで、命乞いをしていれば、助かった可能性もあったのだが、エルプレの魔王は、愚かにも殺すなら殺せと言ってしまった。

 ダンジョンを攻略されたエルプレ国は、まだ国としての体裁は保っていた。
 しかし、攻め込んだ大魔王様の眷属によって、王族は全員が捕えられた。同時に、騎士や獣人族を扱っていた奴隷商は、同じように捕えられた。

 騎士や近衛で、命令に従っただけの者で、犯罪行為をしていないと判断された者は解放された。奴隷商も同じだ。他にも、豪商も捕えられた。

 そして、王族を含む、”クズ”だと判断された者たちは、自分たちが擁護していた、ダンジョンに連れていかれた。

 ダンジョンの中で、二日分の食料だけを持たせて、放置することになった。
 73名がダンジョンの中で生活を行う。二日目には、51名に減った。魔王に殺された。そして、殺して得たポイントで、食料を提供する約束をした。

 三日目には53名が、バラバラになって、争い始めた。
 四日目には37名に減った。五日目には13名まで減った。六日目には、魔王を殺すことを決意した人と魔王の戦いに変わった。

 七日目には、魔王だけがダンジョンの中に存在していた。

 得たポイントで、魔物を呼び出すが、ダンジョンには誰も入ってこない。
 領域には、ポイントになる生き物は存在しない。

 既に、エルプレの王都は人が住んでいない都となり、崩壊が始まる。エルプレの周りにもダンジョンは存在していない。エルプレの魔王がエルプレに協力する見返りに、近隣のダンジョンを討伐させていた。共和国に属している国もダンジョンを討伐すれば、エルプレから褒賞が渡された。その為に、ダンジョンを積極的に討伐していた。
 連合国の周りには、ダンジョンが残されていたが、古い魔王は存在していなかった。
 近代でもなく、地球の時代で言えば、産業革命前後の魔王が残された。そして、アイテムや物資が調達できるダンジョンとして生かされていた。エルプレには報告されていないダンジョンだ。

 これらのダンジョンの主である魔王も、大魔王様の軍門に降った。

 エルプレが崩壊した事で、余波がカルカダンやヴァコンやオラブルにも発生した。
 そちらは、大魔王様は攻め込んでいない。ダンジョンが存在していないからだ。しかし、連合国で最大の戦力だと思われていた騎士が崩壊している。デュ・ボアは倒されている。正確には、デュ・ボアは捕えられて、大魔王様のダンジョンに幽閉されている。他の力ある犯罪者たちと同じ扱いを受けている。そこで、ポイントに還元されている。

 フェンの報告を聞いて、眷属たちは黙ってしまった。

「魔王様」

 質問をしてきたのは、フェンの次に召喚した狼を束ねる物だ。

「どうした?フェンの報告への質問か?」

 フェンは一人?だが、狼は群れで召喚した。
 その為に、単純な戦闘力ではフェンの方が上だが、組織で動ける分だけ群れで召喚された狼の方が外に出る場面が多い。群れの全てが眷属になっているために、大魔王様からのギフト?群れに分散してしまって、フェンの様に人化はできない。

「いえ、違います。大魔王様から命じられている、”ギミックハウス”と”城塞村”の構築は、どうしますか?」

「あぁそれについては、考えがある」

「魔王様に?」

「大魔王様から必要なポイントが送られてきてからになるが、近くには町も村もない・・・」

 考えを眷属に説明する。

 我たちが作っているダンジョンは、20階層だ。
 今までは、維持費で魔物や罠の配置が難しかった。迷路のような作りにして、入ってきた者たちを諦めさせるダンジョンにしていた。それでも攻略を行おうとしてきた者たちには、眷属の”鼠”や”栗鼠”を向かわせて、まずはポーターや食料が入っている袋を狙った。
 弱ってきた所を、狼の群れが襲う。その時に、前面にはフェンに出てもらって、入ってきた者たちの注意を引き付けてから、広報から群れの狼が襲う。難攻不落とは言わないが、人が攻略するのには難しいダンジョンを作り上げた。
 18階層の罠は、自慢の罠だ。低酸素の階層にしてある。完全に活動が出来ない階層は無理だったので、空気の流れを遮断して、酸素を吸収する罠を配置した。広くはないが、突破が難しい階層にした。大魔王様の眷属には通用しなかったが、王国の者たちには、効果は絶大だった。

 ダンジョンから離れた場所に、ダンジョンの入口を作成する。こちらは、5階層程度のダンジョンで、攻略後に18階層に繋がるようにする。
 ダミーダンジョンの入口を水堀で覆って、その周りに城塞村を作る。大魔王様のカプレカ島と同じような作りだ。5階層のダンジョンは、今後の発展で階層を増やせばいいと考えている。

 ギミックハウスは、ダミーダンジョンの入口の横に作ることになる。

 ルブランに申請をだして許可された。

「マスター。それでは、ギミックハウスの攻略を行うために、城塞村に滞在しますが?よろしいのですか?城塞村の役割が違うように思えます」

「大丈夫だ。大魔王様からは、面白い試みだと評価されて、特別に許可が降りた」

「え?」

「他の魔王が作るギミックハウスは、ポイントを稼ぐための施設だが、実験的に長期滞在を行わせるための施設としての”ギミックハウス”の作成を行う事になる」

 他にも実験的な”ギミックハウス”は存在する。
 皆がそれぞれの考えを、申請している。

 誰が正解なのかわからないが、大魔王様の施設を見ると、長期滞在型のダンジョンが正解のような気がしている。
 簡単には攻略は難しいが、攻略する為の情報収集を行っていれば、攻略が可能なダンジョンがいいように思える。

 ダミーダンジョンも、5階層にボスを配置して、倒せば報酬を渡すようにする。
 18階層は、確実な死と報酬がないことを明記した通路を作る予定にしている。

 修正はあったが、皆が納得してくれたので、ルブランに修正された案を送って、承認されたら、命を掛けたダンジョン作りではなく、楽しむためのダンジョン作りを行う。難民が頼ってきたら、しっかりと保護しなければならない。
 忙しくなりそうだが、楽しくもなりそうだ。

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