完結の記事一覧
2020/06/10
【幕間章 伊豆旅行】第三話 伊豆旅行(二人の夜)
今日は、ペンションに泊まると教えられていた。土肥のホテルではある意味しょうがなかったのだろう。シングルの部屋がなかったのだ。ペンションなら、部屋数もあるし大丈夫だろう。 14時を回った位に、白浜海岸に到着した。 ユウキは白浜を喜んでいる。美優さんも控えめながら梓さんと一緒に波打ち際での散歩を楽しんでいるようだ。 近くのショッピングモールで早めの夕飯を食べたのが16時前だ。そのまま、買い物をした。 なぜか、梓さんと美優さんから水着を買うように言われた。夏になれば必要になるし、奢りだと言うので不思議に…
続きを読む2020/06/09
【第九章 復讐】第三話 糾弾
晴海は、カップを持ち上げて飲もうとして止める。 「そう言えば、先代の事件の時に、お前たちはどこに居た?」 晴海の問いかけに答えられる者は居ない。 それぞれに理由があるのだが、言い訳になってしまう。もう一つ、各家が何をしていたのか明確に出来ない理由があるのだ。 「お館様」 「直道(なおみち)か?」 晴海だけではなく、夕花を除く者の視線が、城井直道(なおみち)に集中する。次期当主となっているが、正式には晴海が認めなければ、現当主が認めても、家は継げない。そして、晴海は直道(なおみち)よりも若い。夕花の存…
続きを読む2020/06/09
【幕間章 伊豆旅行】第二話 伊豆旅行(その1)
「タクミ君。準備はいいのかい?」 「梓さん。車を変えたのですか?」 先輩たちが乗り付けた車は、前に乗ってきた車と違っていた。BMW MINI だ。 「これは、美優の車だ」 「へぇ可愛いですね」 「ありがとう。それで、タクミ君。ユウキは?」 「準備は終わっているので、すぐに来ると思います。荷物はトランクに入れればいいですか?」 「あぁちょっとまってくれ、開ける」 トランクが開けられる。それほど広くは無いが、並べれば綺麗に入るだろう。 丁度。ユウキが玄関から荷物を持って出てきた。 「先輩!あっタクミ。荷物…
続きを読む2020/06/08
【幕間章 伊豆旅行】第一話 旅行前
伊豆旅行が近づいてきている。 先輩たちは何やら企んでいるようだが、気にしないほうが良いだろう。聞いても教えてくれるはずがない。 5泊6日で伊豆を一周する。 国内旅行だし、先輩たちも居るから問題は無いだろう。 ユウキも準備をしている。 「オヤジ。この前に盗聴は解決したのか?」 「あぁタクミ。まだ詰めが甘かったな。仕掛けられていたのは一つじゃなかった。全部で3箇所だ。他の場所は、コンセントが外れていたから、使えなかっただけだ」 「・・・。それは、無理だ。そもそも、どうやって見つけた?」 「簡単だぞ?お…
続きを読む2020/06/08
【第九章 復讐】第二話 忠誠
先頭を歩いている。礼登が、ドアを開ける。 中には、10人ほどが円卓に座って居る。上座には、4つの席が空いている。 入口に全員の視線が集中する。 礼登が開けた扉から忠義が先に部屋に入り、扉を押さえる。晴海が部屋に入り。夕花が続く。 晴海が手を差し出すので、夕花は戸惑いながらも晴海の手を取る。晴海の横に並んで歩くように誘導される。夕花は、晴海の腕に自分の腕を絡ませる。 夏菜と秋菜が部屋に入ったのを確認して、礼登が扉を閉める。 「六条家、現当主。晴海様の御前です」「いつまで座っているつもりですか?」 …
続きを読む2020/06/07
【第六章 ネット盗聴】第五話 日常
「タクミ!タクミ!」 誰だよ!?煩いな。 「タクミ!」 そうか、昨日・・・。報告書を読み直して、ソファーでユウキと・・・。 なにか忘れている? オヤジに提出・・・。 「あ!」 「いきなり起きないでよ!」 「すまん。今、何時?」 「朝の8時。タクミ。僕、お腹がすいた」 ユウキのワガママで救われた。 「悪い。すぐに準備するから待っていてくれ、オヤジに報告を送信してくる」 「わかった。早くしてよ」 ユウキをリビングに残して、自分の部屋に戻った。 昨晩、読み込んでいると言っても、もう一度、読んでおこう…
続きを読む2020/06/07
【第九章 復讐】第一話 側仕
「夕花。可愛いよ。気にしなくていいのに・・・」 「駄目です。私が嘲られるだけなら構いません。でも、晴海さんが馬鹿にされるのは我慢出来ません!」 「うーん。大丈夫だよ。僕を馬鹿にしたら、その家は終わりだよ。解っていて、そんな愚行は犯さないと思うよ」 「違います。その場で言われる位なら我慢出来ます。帰ってから言われるのが我慢出来ないのです!」 「わかった。時間はまだあるから好きにしていいよ」 「ありがとうございます」 晴海と夕花は、礼登が用意した会議を行うクルーザーに移動している。大学に顔を出して、駿河から礼…
続きを読む2020/06/01
【第八章 踊手】第九話 端緒
晴海はコーヒーを飲みながら情報端末を操作している。 かばんの中にはタブレットも入っているが、逃げる場合を考えて、すぐに動ける状態にしてある。 夕花のエステの施術は予定終了時間を少しだけ過ぎたが、概ね予定通りに終わったようだ。 ”晴海さん。終わりました” 晴海の情報端末に、夕花からのメッセージが届いた。 晴海は、夕花がビルから出てくるのを、コーヒーショップから見えていたので、支度をして夕花に近づく。夕花も晴海に気がついた。 「夕花。綺麗になったね」 「ありがとうございます」 うつむきながら晴海に礼…
続きを読む2020/05/31
【第八章 踊手】第八話 文月
晴海は、夕花を助手席に乗せて市内に向かった。 「晴海さん。どこに?」 「明日の準備」 「え?準備?晴海さんの?」 夕花が驚くのも当然だ。 昨日の段階で、準備が終わったと晴海は宣言しているのだ。 夕花にも、明日の会談は重要な物だと説明している。 「ううん。夕花の準備だよ。綺麗になろう!」 「え?僕?なんで?」 「ん?夕花は、僕の奥さんだよ」 「はい」 「うん。うん。一族の者が揃うからね。夕花のお披露目の意味を込めて、会ってもらおうと考えたのだよ」 「・・・。えぇぇぇぇ。僕、聞いていませんよ?」 「うん…
続きを読む2020/05/30
【第八章 踊手】第七話 準備
大学に通い始めて3日が過ぎた。 晴海と夕花は、屋敷と学校での生活を楽しんでいる。 屋敷では、片時も離れない。離れるのを恐れているかのように常に一緒に居る。学校では、研究室の設営がまだ出来ていないために、夕花は図書館に通い詰めている。晴海は、その時間を利用して、城井から蔵書や他の家の情報を聞いている。 そして、晴海が期限を区切った会談の前日。 礼登が城井を訪ねてきていた。城井に会うためではなく、晴海に会うためだ。 「城井。明日は、どのくらい集まる?」 晴海は、正面に座った城井に質問をする。まとめ役…
続きを読む2020/05/29
【第八章 踊手】第六話 疑惑
晴海は、夕花と別れて、城井貴子の部屋に向かった。 ドアをノックすると部屋から返事があった。 「文月さん。お待ちしていました」 「教授。お時間を頂きありがとうございます」 晴海が丁寧な言葉遣いをしているのは、城井の秘書が今日は一緒だからだ。 「晴海様。大丈夫です。この者は、我家の者です」 「そうか、わかった」 城井の後ろに控えていた女性が頭を下げる。 名乗らない所を見ると、城井家に属している分家筋なのだろう。晴海も、気にはしないで話を開始した。 「城井。それで、六条からの本のリストは出来たのか?」 …
続きを読む2020/05/28
【第八章 踊手】第五話 秘鍵
晴海は、夕花の隣に戻った。 能見と話をして情報が増えてモヤモヤした気持ちを、頭を冷やすためだ。 情報端末で、表向きの情報を読んで見て、情報を整理してみる。 文月コンツェルン 東京都に本家を置く企業の集合体。爪楊枝から大陸弾道ミサイルまでがコンセプトのような企業だ。第三次世界大戦の後に大きくなった企業体で、戦争特需をうまく利用した。本体は、上場しているわけではなく、子会社や孫会社を次々と上場させ本体は株式の取引で大きくなった。 現在の会長は112歳になる文月巌だ。日本の平均寿命が、110歳だと言わ…
続きを読む2020/05/27
【第八章 踊手】第四話 遺伝
部屋に入った二人は疲れているのもあって、風呂に入ることにした。 「晴海さん。お風呂の準備をします」 「頼む」 晴海は、礼登から渡されるはずだった資料を従業員から受け取った。 夕花が風呂の準備を始めたのを見て、封筒を開けて資料を見た。 資料は、予想通り夕花の母親の情報だった。 (大物だな) 夕花の母親は、東京都の裏社会をまとめている家の出だ。昔風に言えば、反社会的勢力の家の生まれだ。東京の裏を支えると言っても過言ではない。裏の顔も表の顔も持っている。表の顔の時に使う家の名前が”文月”だ。本当の家名は…
続きを読む2020/05/26
【第八章 踊手】第三話 薯蕷
晴海は図書館に用事があるわけではなかった。 祖父が寄与した蔵書があるはずなのだ。その中から、歴史に関係する本ではないが、”人食いバラ”とかの稀覯本もあると思っている。晴海の数少ない家族との思い出の中に祖父の書庫で見た”人食いバラ”が忘れられないのだ。 図書館の中は、静かだった。書生が居るわけではなく、ガードロボットが管理をしているだけだ。 晴海と夕花は、情報端末で身分を説明した。 「夕花、好きにしていいよ。僕も、気になる本を探したいからね」 「わかりました」 夕花は、晴海から離れて、歴史書が置いて…
続きを読む2020/05/25
【第八章 踊手】第二話 城井
晴海が運転する車は、旧国道150号を西に進む。 ここは、前世紀から石垣いちごを生産している場所だ。晴海は、窓を開けて外の空気で車の中を満たす。伊豆に居たときは違う潮の匂いが二人の鼻孔を擽る。 「夕花。寒くないか?」 「大丈夫です」 ここ百年の気候変動で日本もかなり平均気温が下がっている。氷河期が訪れようとしているのは間違いない。しかし、駿河の気候は安定している。地質学的に考えても不思議な場所なのだ。平均気温が下がって琉球州国でも年に数日は雪が降り何年かに一度は積もるような状況なのに、駿河は雪が降っても…
続きを読む2020/05/24
【第八章 踊手】第一話 上陸
「晴海さん。本当に、このままで・・・。行くのですか?」 「うん。だって、夕花が負けたのだから諦めようね。大丈夫。駿河が近づいてきたら着替えるのだし僕以外に夕花のそんな姿を見せたくないからね」 「解っていますが・・・。うぅぅぅ。恥ずかしいです。全裸の方が恥ずかしくないですよ・・・」 夕花も今の格好になって混乱している。晴海の前で裸になるのに慣れているので、裸の方が”まし”だと思ったのだが、客観的に考えて裸でクルーザーを動かすのはシュールだし危ない感じがする。 「大丈夫だよ。見ているのは僕だけだからね」 「そ…
続きを読む2020/05/23
【第七章 日常】第八話 濫觴
晴海と夕花は、晴海の運転する車で屋敷に帰ってきた。 翌日も試験が控えていた。翌日は、運転免許の更新と限定解除を行うのだ。教習所に通えばよかったのだが、能見が夕花に晴海と一緒に居る時間を大切にしてくださいと助言したので、免許更新時に試験を受ける方法を選択した。 夕花の誕生日ではなかったが、奴隷になったことで効力が停止されていた免許を復活させるためには手続きが必要になっていた。同時に、バイクの免許の取得を行うので、丸一日試験場に居る状態になる。 晴海も、夕花に合わせてバイクの免許を取得する予定にしていた…
続きを読む2020/05/22
【第七章 日常】第七話 怠惰
欲望をぶつけ合った翌日は昼過ぎまで惰眠を貪っていた。 起き出した二人は、昨晩の状態で放置された布団を見て、笑いあった。それから、”おはよう”のキスをしてから、洗濯物をまとめた。体力を使い果たしたと言っても若い二人は起きる頃には体力”も”戻ってきていた。 洗濯物をまとめる作業をしているが、服を着たわけではない。風呂から上がってきたのと同じ全裸なのだ。 晴海は、夕花の形のいいおしりを見て自分が反応しているのに気がついた。 「晴海さん」 「どうした?夕花?」 晴海もそれだけで解った。 夕花は、晴海の反…
続きを読む2020/05/21
【第七章 日常】第六話 性愛
夕花は、立ち上がった。晴海は夕花の姿を目で追った。 二人が居る露天風呂は星や月の明かりだけに照らされている。入ってくるときには、足元を照らすライトが点灯するが人が居なくなれば消えてしまう。 振り向いた夕花を照らすのは星の明かりだけだが、晴海には夕花がしっかりと見えている。夕花が微笑んでいるのも見えている。 「晴海さん」 夕花は、他にも言葉を考えていた。抱いて欲しいと口に出そうと思っていた。 しかし、自分を見つめる晴海を見てしまうと、名前を呼ぶのが精一杯だった。名前を呼ぶだけで心臓の音が晴海に聞こえ…
続きを読む2020/05/20
【第七章 日常】第五話 確認
晴海と夕花は精神的に疲れてしまった。晴海に送られてきた、家の情報は嘘ではないが本当でもなかった。うまく編集されていたのだ。全容だと思っていたものが一部でしかなかったのだ。 「晴海さん。先に、荷物を受け取りませんか?それと、食堂と7階のキッチンを見ておきたいのですが駄目ですか?」 「いいよ。食料もある程度は買ってきていると言っても、手探り状態なのは間違い無い。いろいろ調べよう」 「はい」 7階へ直通になっているエレベータはすぐに見つかった。 エレベータに乗ってみて解ったのは、パネルが新しくなっているので…
続きを読む2020/05/19
【第七章 日常】第四話 住居
狙っていた通りに、暗くなってから、六条が所有する離れ小島の前に到着した。 ナビが示しているのは、島の中央ではなく、海沿いになっている。島の全体が私有地なので、地図は表示されていない。 「晴海さん。入口が封鎖されています」 夕花が指摘した通り、島の入り口は封鎖されている。 厳重な門の扉が閉じられている。島に向かう道路にも高い壁と鉄柵で海からの侵入を防いでいる。 門には、ガードロボットが配置されている。武装が許可された物だ。 「大丈夫だよ」 晴海は、情報端末を取り出して近づいてきたカードロボットに認…
続きを読む2020/05/18
【第七章 日常】第三話 報告
晴海の運転する車は、旧国道414号を白浜方面に向けて走っている。年号が使われており、昭和や平成や令和と呼ばれていた時代と道は変わらない。伊豆中央道が出来てからは時間が停まってしまったような場所だ。 古き良き時代が好きで移り住んでいる者は居るが、そのような人物は多くない。生活の殆どを自給自足でまかないながら生活をしているので、生活道路となっている旧国道414号にも車の影は少ない。 国が管理していた速度規制が撤廃され、全ての道路で地域の生活様式に合わせた速度制限が定められた。 旧国道414号線の様に生活…
続きを読む2020/05/17
【第七章 日常】第二話 出発
晴海の目覚めは最高ではなかった。 昨晩、晴海は全裸の夕花に抱きつかれて寝たのだ。寝る寸前まで、夕花が身体を押し付けてくるので、耐えるのが大変だった。夕花は、晴海が反応したのを感じて安心したのか足を絡ませるようにして晴海を触りながら眠りについた。 晴海が寝たのは、夕花の寝息が聞こえてきてから30分ほど経ってからだった。 晴海の方が早く起きた。まだ身体を密着させている夕花のおでこに軽くキスをしてから、布団から抜け出した。 身体が夕花からする甘酸っぱい匂いで満たされていた。腕や足には夕花の柔らかい感触が…
続きを読む2020/05/16
【第七章 日常】第一話 告白
「晴海さん?」 「あっごめん。僕の奥さんがあまりにも可愛かったから見惚れていたよ」 晴海は本当に夕花の浴衣姿に見惚れていた。 「もぉ・・・。でも、嬉しいです」 晴海は、一つの出来事を忘れていた。頭の片隅には有ったのだが、能見との連絡ですっかり忘れてしまったのだ。晴海は、浴衣姿の夕花を隣に座らせた。 夕花は、言われたとおりに、浴衣姿のまま、風呂から出た状態で、晴海の横に座る。座るまでは良かったのだが、座った後で顔をあげられなくなってしまった。 風呂には、浴衣だけは一式用意されていた。 情報端末だけで…
続きを読む2020/05/15
【第六章 縁由】第七話 到着
「夕花。どの辺りを走っている?」 ベッドから起き出した晴海は、勉強をしている夕花に話しかけた。 モニターを見れば、大まかな位置は解るのだが、夕花に聞きたい気分だったのだ。 「先程、海老名サービスエリアを通過した所です」 「そうか、ありがとう。コーヒーが欲しい。濃い目に作ってくれ」 「かしこまりました」 夕花は、お湯を沸かして、ドリップを行う準備を始める。 濃さの調整は、ホテルでやっているので問題にはならない。 10分後に、牛乳をたっぷりといれたコーヒーが出来上がる。夕花は、自分の分も用意して晴海の…
続きを読む2020/05/14
【第六章 縁由】第六話 過去
晴海と夕花を乗せたトレーラーは圏央道を走っている。 制限速度内で、ゆっくりした速度を保っている。 晴海は、ベッドで横になっている。やることが無いわけではないが、急いでやるべきことが無いのだ。 夕花は、資格の勉強を再開した。すぐに必要になるわけではないが、試験の日付を考えると、勉強を再開しておいたほうが良いと思ったのだ。 勉強をしながら、晴海を観察している。 夕花は、自分の生まれも育ちも解っていたと思っていた。奴隷になって、市場で売られて、晴海に買われて、ここ数日で世界が一気に変わってしまったのだ…
続きを読む2020/05/13
【第六章 縁由】第五話 買物
晴海と夕花は、出来た時間を利用して、夕花は資格に関する資料を読み込み必要な情報を習得していた。晴海は、能見から渡された夕花の家族に関する資料を読み込んでいた。 晴海は、能見の報告書に違和感を覚えていた。 何がと言われると困るのだが、歯に何かが挟まった気持ち悪さを感じていたのだ。 「晴海さん?何かありましたか?」 「うーん。よくわからないけど、夕花を騙しながら、事業を続けていたにしては、お粗末だし、組織の人間が・・・!そうか!」 「え?」 「違和感の正体がわかった!夕花!お義母さんの墓が荒らされたと話し…
続きを読む2020/05/12
【第六章 縁由】第四話 誘導
『晴海様。追跡者の身元がわかりました。データを転送します』 「頼む」 晴海は、送られてきた情報を見た。 本人談の部分で笑ってしまった。 「礼登。こいつは、本気で言っているのか?」 『その様です』 「晴海さん?どうかされたのですか?」 「夕花。そうだ・・・。モニターを見て、今、礼登から送られてきた、俺たちを尾行していた男の情報だ」 晴海はモニターに情報を表示した。 — 本名:佐藤(さとう)太一(たいち) 年齢:23歳 職業:地方タウン誌の記者 賞罰: 13歳:窃盗犯捕縛に協力 15歳:盗…
続きを読む2020/05/11
【第六章 縁由】第三話 記者
– とある記者 — ひとまず、尾行には気が付かれていないようだ。 私は、房総州国でフリーのルポライターをやっている浅見だ。私の名前など忘れてくれて構いません。だが、私が正義の体現者である事は覚えておいて欲しい。私は、今、尾行を行っている。東京都の犯罪や越権行為を辞めさせるために確たる証拠が欲しいのだ。確かな情報を掴んだ。 奴隷市場が開催された場所に張り付いて居る。彼らが、ここで奴隷市場を開催して違法奴隷を売っているのだ。 奴隷市場では、違法奴隷を扱っていないと言われています…
続きを読む2020/05/10
【第六章 縁由】第二話 攀援
「晴海さん?」 「もう少し」 「あっはい」 会話にならない会話を二人は続けていた。晴海は、ソファーに自分が座って、膝の上に夕花を乗せて抱きしめている。 抱き枕ではないが、自分の膝の上に乗せて、夕花を横座りの状態にして抱きしめているのだ。夕花も最初は恥ずかしかったが、今は呆れ始めてしまっている。 「うん!夕花。テーブルの上に置いてある、情報端末を取って」 「はい。でも、私が降りれば・・・」 「ダメ」 「わかりました」 夕花は、晴海の上に乗ったまま身体を曲げて情報端末を取って、晴海に渡した。 晴海は、情…
続きを読む