サイト小説の記事一覧

2022/11/02

【第五章 共和国】第四十二話 黒い獣

攻略組のベースキャンプは、61階層にも存在していた。 最前線は、一つ下の階層にキャンプを構築していた。階段付近は、キャンプに適していなかったようで、少しだけ離れた場所に構築を行っていた。 俺たちは、攻略組に気が付かれないように、迂回しながら下層に向かった。 63階層からは、索敵範囲を広げても、魔物以外はヒットしなくなった。 「アル。カルラ。エイダ。手加減は無用だ。最短で最下層を目指す」 64階層も同じ状況だ。 今までは、戦闘時に使うスキルを制限していた。 スキル発動時の音や魔物を撃退するときの波動で、同じ階…

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2022/11/01

【第七章 神殿生活】第三話 過去

私は、セバスチャン。奴隷だ。 前の主人は立派な人だった。小さな領の代官だったが、一代で叙勲して、準男爵を経て男爵に陞爵した。子爵にもなるのではないかと言われていた。 領地を得てからの旦那様は、領民には優しく、味方となった者には、どこまでも誠実に対応した。 敵対した者には徹底的に戦った。特に、領民を不幸にする敵対者には、慈悲を与えない。係累には手を出さないが、関係した者は徹底的に潰した。相手が、上位貴族でも矛を収めなかった。 味方も多いが、敵も多かった。 特に、近隣貴族であるアゾレムとはそりが合わなかった。 …

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2022/10/29

【第九章 ユーラット】第二話 移動中

休憩の度に、リーゼが俺の側に来る。 「ヤス?」 「なんでもない」 リーゼの頭を撫でてやると嬉しそうな表情を浮かべる。 「ねぇヤス」 「ん?」 「モンキーは、後ろに人を乗せられる?」 「ん?」 「ほら、ヤスが使っていたCBR?あれは後ろに乗れるよね?」 前に、リーゼがコーナを上手く曲がれないというので、CBR250Rの後ろに乗せて走った。 「うーん。リーゼのモンキーなら大丈夫だ」 「わかった!」 「誰を乗せたい?ヘルメットは?」 「オリビアが乗ってみたいって言っていて、騎士?は反対していたけど、いいよね?ヘル…

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2022/10/26

【第二十九章 鉱山】第二百九十一話

結婚騒動は、子供ができた場合でも、仕事に配慮すること、産まれた子供を安全に預かる場所を作ること、これらのことを、ルートガーに宣言をさせた事で、落ち着いた。 獣人族は”子供は皆で育てる”が染み付いているので、それに倣った形だ。 ルートガーは、最初は抵抗したのだが、クリスからの説得を受けて、最後には受け入れて、宣言を出すのに賛成した。ルートガーが反対していた理由も理解ができる。上流階級で産まれて教育を受けてきたルートガーには、獣人族のやり方が正しいと言われても納得ができないだろう。俺も、クリスも、獣人族が正しい…

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2022/10/26

【第五章 共和国】第四十一話 攻略

カルラに聞いても、攻略組がこのダンジョンに拘っている理由は解らなかった。 最難関と言われているダンジョンを攻略すれば、名誉なことだが、同時に攻略して、俺たちの様に永続させる方法が無ければ、ダンジョンの破壊に繋がる。最難関のダンジョンだ。同時にアタックしている人間は、10や20ではない。万に届く可能性もある。 それらの人間がどうなるのか?俺たちがやっているように、ダンジョンを乗っ取っていくのなら、アタックしている者たちは何も気が付かない。しかし、ダンジョンが破壊されてしまったら・・・。俺たちだけなら、逃げるの…

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2022/10/25

【第七章 神殿生活】第二話 契約と神殿

屋敷に移動すると、セバスチャンが出迎えてくれた。 「旦那様」 「セブ。屋敷は大丈夫か?」 「はい。後は、旦那様が譲渡に関する契約書にサインを行えば終了です」 「契約書?何か、問題があったのか?」 「聞いていた話では、譲渡では無かったので・・・」 「ん?譲渡?セブが聞いていた話と違うのか?」 「はい。王家から渡された書類では、旦那様に譲渡されると記載されています」 「何か問題か?」 「問題は、ありません。税も、免除されることになっています。契約の内容だけの判断ですが、貴族家・・・。それも、伯爵と行う譲渡契約に…

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2022/10/23

【第三章 スライム今度こそ街へ】第十七話 賭け

家で、天使湖で得た物(ドロップ品)を整理していた。 こればかりは、私かライにしかできない。判断した物を、まとめるのは、家族にもできるのだけど、まずは必要な物なのか判断しなければならない。 そして、”必要な物”を判断するのが難しい。 殆どの物が、ギルドの買い取りリストに載っていない。 買い取りができないのか?それとも、知られていない物なのか判断が私にはできない。情報がない。 そして、魔石の買い取りは出ているが、ゴブリンの魔石程度の大きさしか買い取っていない。魔物の名前ではなく、大きさでの買い取りが書かれている…

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2022/10/23

【第三章 魔王と魔王】第十七話 【王国】

私は、連合国近くの城塞都市に、店舗を構える商人だ。 行商から初めて、城塞都市に店舗を持つ事ができた。商才は、それほど持っていない。自分のことなので、よくわかっている。一つの店舗を回すだけで精一杯だ。店舗を持てたのも、運が良かったに過ぎない。 行商は続けている。 王国に属している城塞都市だが、食料が絶対的に足りていない地域が多い。 慈善事業ではないが、やはり感謝されると嬉しく思える。行商の醍醐味の一つだと言える。 そんな私が、店舗を持てたのは、嫁の言葉と獣人のおかげだ。 王国は、獣人を奴隷として使いつぶす事で…

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2022/10/22

【第三章 復讐の前に】第八話 受験

ユウキは、マイとセシリアに物資を依頼して、地球に戻った。 ユウキが依頼した物資は、これからの生活に必要だと思える物だ。 物資は、地球では入手が不可能な物が多い。 魔物を狩った時に得られる魔石は必須だ。魔法陣や結界の維持に使われる。ユウキは、充填ができるために、空の魔石でもいいのだが、最初の手間を省く為に、簡単な加工はレナートにいる加工師に行ってもらう。 マイが気を利かせて、魔石を水晶などの地球に有っても不思議ではない形に加工した。できる限り、体裁を整えて、値打ちがある宝石ではなく、土産物で売っている程度にな…

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2022/10/20

【第五章 共和国】第四十話 攻略組

男から、話を聞いていたら、列が動き出した。 列の横を、豪奢な馬車が駆け抜けていった。どうやら、貴族は、突入を諦めたようだ。後ろに居る騎士たちが安堵の表情を浮かべているので、よほど”慕われている”貴族なのだろう。騎士風の男たちは、貴族家への称賛(陰口)を忘れない。馬車に乗っている者の情報を、べらべらと話してくれている。それも、待機列で待っている者たちに聞こえるように・・・。 やはり、男が想像した通りに、貴族家が治める領地にあったダンジョンから食料だけではなく、貴族家として戦略物資になっていた物もドロップしなく…

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2022/10/16

【第七章 神殿生活】第一話 殿下と騎士

当初の計画の3倍以上の時間をかけて、神殿に向かうことになった。 些細な問題は発生したが、概ね予定通りに進むことができた。 3倍の時間が必要になったのは、殿下・・・。の、責任ではなく、殿下に付いてきた騎士たちが、当初の計画に苦言を呈してきた。 曰く 「殿下がお疲れになる」 曰く 「殿下の為の休憩が少ない」 曰く 「殿下の食事が質素だ」 曰く 「殿下が・・・」「殿下が・・・」 騎士たちが最初からこの主張をしてきたのなら、素直に”殿下の為”というセリフを信じられるのだが、ハーコムレイが神殿まで一緒に行動しないとわ…

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2022/10/02

【第六章 ギルド】第三十四話 移動

皆が合流した。 ミルとミアも訓練施設から会議室に移動してきた。レオはしっかりとミアの側に居る。護衛として、役割を守っているのだろう。 ミルが右側に陣取って、ミアが左側にレオと一緒に居る。 話は、ハーコムレイが主導する形で進んだ。 この場には、最初だけカルーネとフレット・コンラートとアルマールが姿を見せたが、ハーコムレイが神殿に向かわないものは退出してくれというと、何か言ってから、会議室から出て行こうと立ち上がった。 ハーコムレイが、彼女たちに追い打ちを掛ける。この建物は好きに使っていいが、辺境伯家からの支援…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百九十話

ギュアンとの話を終えて、崖の住居に戻ることにした。 シロも一緒だ。フラビアとリカルダは、フリーゼが帰ってくるのを待って、決まったことを、フリーゼに説明を行う。 崖の下に移動したら、久しぶりに顔を見る面子が揃っていた。 シロが、俺の前に出るが、肩を叩いて下がらせる。俺が前に出ると、一人の男が、俺の前に出てきて頭を下げる。 「どうした?イェレラ?皆で揃って来た理由は?俺に解るように説明してくれるよな?クリスとルートガーの従者であり、護衛であるお前たちが職場を放棄してきたとは考えていない。だから、緊張しなくていい…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十九話

フラビアとリカルダの案内で、ギュアンとフリーゼが仕事をしている舟屋に向かった。住居は以前に与えた物で変わっていない。仕事場としている舟屋で待っていると教えられた。 舟屋の数は増えていない。 船の数が増えているように思える。当然だな。当初の数では、増え続ける人口を支えるだけの魚を確保するのは不可能だろう。 「ツクモ様」 ギュアンが俺に気が付いて舟屋から出てきた。どうやら、フリーゼは、所用で出かけているようだ。ギュアンが、フリーゼの不在を詫びてきた。 ギュアンの態度が少しだけ固いように思える。表情も前に会った時…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十八話

湖の集落に行く前に、フラビアとリカルダから報告を受ける。 湖の集落は、ギュアンとフリーゼが仕切っていたのだが、人が増えた。フラビアとリカルダも運営の手伝いを行ったが、限界が近いようだ。 元々は、別荘地にする予定で整備を行っていた。 そのために、交通の便や、移動のしやすさや、生活を行う為の設備が少ない。 フラビアとリカルダは、馬車の本数を増やして対応を行っていた。 「そもそも、湖の集落は、別荘地だぞ?そこに、利便性を求めるような奴は、他に移動した方がいい」 俺の言葉に、フラビアが反応した。 どうやら、最初はそ…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十七話

シロとのデートを終えて、部屋に戻ってきた。 途中で、ギュアンたちが居る”湖の集落”に寄ろうという話も有ったが、時間も遅くなってしまったために、明日以降に行くことにした。 「シロ。今日は、上で過ごすか?」 「はい!」 シロが嬉しそうにする。 崖の上に作られた、屋敷?は、改修に改修を加えて、十分に屋敷としての機能を持たせることが出来ている。 地下に作った部屋は、部屋で実験が行える状況になっているので、残している。地下には、俺とシロと眷属しか入ることを許していない。ダンジョンからの進入路は、既に潰してある。 部屋…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十六話

リヒャルトは、俺と話をして、安心したのか、来た時とは違う表情で、部屋から出て行った。 おかしい。 俺も新婚なはずなのに、忙しい。忙しくなりたくなかったから作った仕組みがうまく行けば、また忙しくなってしまう。 「カズトさん」 シロが、部屋に入ってきていた。 テーブルの上に乗ったカップを片づけている。 今まで居たはずのメイドは下がらせたようだ。 「どうした?」 「僕が、カズトさんと・・・」 「いいよ。少しだけ話をしよう」 「はい!」 帰ってきてから、シロとの時間はそれほど無かった。誰かが訪ねて来たり、用事が出来…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十五話

執務室で、カトリナと打ち合わせを行った。俺の後ろにはメイドが控えている。必要ないと思ったが、シロからの指示だと言われて受け入れた。 「ツクモ様。本当に、いいのですか?」 「構わない。それよりも、もう一度だけ聞くけど、本気か?」 「はい」 カトリナから提出された計画書だが、長老たちでは判断ができなくて、ルートガーに回されて、奴は考慮の必要がないとばかりに、俺に回してきた。俺にしか判断ができないと言うのが、ルートガーの言い分なのだが、別に俺でなくても大丈夫だと思う。 そして、内容なのだが、ロックハンドを一大リゾ…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十四話

ルートガーも平等と公平の違いがわからない。 そもそも、公平なら平等が成り立つと思っているようだ。 「ルート。公平は、誰かが判定している。平等は、皆が等しく冷遇される世界でしか成立しない」 「??」 まぁ解らないだろう。 ルートガーが不思議そうな表情をする。クリスは、思考を放棄しているように見える。 「皆が平等なら、冷遇されるのはおかしくないか?」 「いいか、簡単な例だ。ルートがこの大陸の覇権を目指したとする」 「!」 ルートガーは机を叩いて立ち上がる。ルートガーが覇権を目指していないのはわかる。今は、クリス…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十三話

ルートガーも実際に使われ始めた時期や言葉が産まれた経緯は把握していなかった。クリスは、俺が何を問題にしているのか解っていない。ルートガーもクリスも小さな村や町の・・・。支配層の人間だ。 支配層から見れば、身分は解りやすい指標になる。対応する態度を簡単に選択ができる。 「わかった。ルート。他には?」 「他?」 「言葉遊びで、他人を傷つけている連中が居るのか?」 「わからない」 ルートガーを見つめているが、本当に解らないようだ。 長老衆よりも、市井に詳しい人間に聞いた方がいいのか? クリスも俺が気分を悪くしてい…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十二話

ギュアンとフリーゼに結婚の許可を出した。 同時に、クリスを通して、ルートに召喚状を出す。 反応は、すぐに返ってきた。 ”忙しいから、俺の拠点にはいけない”と、いうそっけない物だ。 しょうがない。行政区で待ち合わせをすることにした。 内容は、住民の婚姻に関してだと伝えた。 「ツクモ様」 行政区にある。俺の執務室で待っていると、ルートがクリスと一緒に入ってきた。 「デートの最中に悪いな」 ニヤニヤして、揶揄うと、クリスは目を見開いてから、言葉の意味が理解できたのか、耳まで赤くした。ルートは、憮然とした表情で俺を…

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2022/09/28

【第二十八章 新婚】第二百八十一話

状況はわかった。俺がしなければならない事も理解した。 そして、総合的に判断した結果、俺の状況は・・・。やることが無くなって暇になった。 報告書を読む限りでは、玩具の開発は順調だ。俺の雑な下書きからすでに試作が行われている。今回は、値段が低く押さえられた物からリリースするので、試作段階では、自由区の住人たちに試してもらうことになった。新しい技術ではなく、”おもちゃ”なので”遊べるか?”や”価格帯は?”を調べる必要がある安全性の確認よりも、市場調査がメインになっている。”遊び”だが、真剣になり、ギャンブルに発展…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百八十話

俺の執務室に、書類が大量に運ばれてきている。 この部屋に入る許可が出ているのは、眷属を除くと多くない。多くはないが、許可を持つ者はいる。それに、クリスは眷属の属性は外れていない。 何が言いたいかと言うと・・・。 「カズト様。追加の書類です」 自分の部屋に逃げようかと思ったのだが、書類の山が無くなってから帰ろうと考えたのが間違いだった。 それに、自分の部屋に逃げても、クリスなら俺の自宅に入る許可を出してしまっている。 「クリス。少しだけ、本当に少しで構わないから、手伝ってくれないか?」 「ダメです。ルートから…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十九話

俺は、カトリナと打ち合わせをするために、カトリナの事務所に残る事にした。俺に、話を聞く為に、ルートガーがついている。事後で話を聞いたり、まとめられた書類を読むよりも、最初から話を聞いていた方が良いと判断したようだ。 シロは、フラビアとリカルダが待っていると、ルートに教えられて、カトリナに挨拶だけをして、湖の畔にある家に急いだ。馬車は、シロがそのまま使うことになったが、御者だけはカトリナから借りることになった。ルートガーが連れてきた御者は、ルートガーの護衛を兼ねている。 俺の前には、カトリナが居る。 ルートガ…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十八話

馬車がゆっくりとした速度で、行政区に向かっている。 「なぁルート。あれは、なんだ?」 俺が、目の前に座って居るルートガーを睨むが、俺が指さした物を見て、さも初めて見たかのように驚いて見せた。 「私も始めてみました。どっかの誰かに似ていますね。そういえば、ヨーン殿やロータル殿が、仲間を集めて、何かを作っていました。あれがそうだったのですね」 ルートが澄ました表情で語っているのには、嘘があるのは解っている。 解っているが、指摘できない。 指摘したとしても意味がないことが解っている。 俺の石像が立っている場所は、…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十七話

野営地を出ると、遠くに中央が見えてくる。 帰ってきたという思いと、また忙しい日々が来るのかという思いが交差する。 「旦那様」 モデストが御者台から声をかけてくる。 「どうした?」 「ルートガー様が街道でお待ちです」 「ルートが?一人か?」 「はい。お一人のようです」 「わかった。馬車を、ルートの近くで止めて、要件を聞け。一緒に行くのなら、中に誘導しろ」 「はっ」 シロが不安な表情を浮かべる。 確かに、街道まで来ているのは、異常なことだが、ルートだけで来ているのなら、なにか問題が発生していると考える必要はない…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十六話

本当か? 原因を切り分けていくと、起因している状況が似てきている。 「カズトさん?」 俺がまとまった資料を見ていると、シロが飲み物を差し出してきた。 資料をまとめるのは、シロも手伝ってくれたから、内容は理解が出来ている。 「シロ。すまん。少しだけ驚いただけだ」 本格的な調査は、戻ってから行うとしても、取っ掛かり位はつかめればと思って、始めた作業だったが、想像以上に、人はどこに居ても人なのだと、納得させられてしまった。 「そうですね。余裕が出来て、できた余裕の為に、争って余裕が無くなる」 「そうだな。愚かだけ…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十五話

船旅も終わりに近づいてきた。 「カズトさん」 「シロか?」 「はい。モデストが、もうすぐ到着だと知らせに来ました」 「わかった。起きるか!」 「はい」 シロも俺も全裸だ。 扉の外に、モデストが控えているのが解る。シロを抱き寄せて、キスをする。 カイとウミは、甲板に出て居る。 どうやら、海の中に居る魔物を狩るのが楽しいようだ。 着替えを済ませて、シロの恰好を確認する。 問題はない。俺の恰好は、シロが確認する。 「モデスト」 「はい。まもなく、到着します」 扉の外側で、モデストが応える。 「わかった。リヒャルト…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十四話

リヒャルトの話をまとめると、カトリナは狂ったように商売に邁進しているようだ。 スキルカードが足りない者には、物々交換を申し出て資源を確保したりしているようだ。 どこかで、”物々交換”のルールを定めないと、経済がくるってしまう。俺たちの制御下から離れてしまう可能性すらある。 「リヒャルト。カトリナの話はわかった。それで・・・」 「なんですか?」 「そんなに警戒するなよ。自分もやっていると言っているようなものだぞ?」 さっきまでとは違って緊張した顔になる。 「え?」 「よし、帰ったら、商人と行商人に、物々交換の…

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2022/09/28

【第二十七章 玩具】第二百七十三話

モデストとステファナが戻ってくるのを待って、エルフ大陸から離れた。 「旦那様」 ステファナが、シロの世話を終えたのか、モデストと二人で戻ってきた。 「少しだけ、待ってくれ、リヒャルトが持ってきた資料に目を通しておきたい」 「はい。何か、お持ちしましょうか?」 「そうだな。カイかウミが、果実を持っていたと思う。適当に貰って、絞ってくれ」 「かしこまりました」 ステファナが、部屋から出ていく、俺は出港する前からなぜか船長室を占拠して書類に目を通している。 ルートから渡された書類らしい。決済をしなければならない書…

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