物流の記事一覧
2022/05/04
【第十章 エルフの里】第二十九話 エルフ
エルフの里まで戻ってきた。 歓迎されている雰囲気は皆無だが、俺とリーゼが行った事は、ラフネスから皆に伝えられているのだろう。嫉妬や嫌悪の視線は消えていないが、前の様に侮蔑を含んだ視線は少なくなっている。 ”助けてやった”から、感謝しろとは言わないが・・・。本当に、この種族を延命させたのは正しかったのか疑問に感じてしまう。 そして、コアからある事実を教えられた。当然の事だが、考えてもいなかった。このエルフの里には、ハイエルフを含めて、300名程度が住んでいる。外に作られた村には、里に入ることができないエルフた…
続きを読む2022/04/28
【第十章 エルフの里】第二十八話 行商
ヤスは、ラフネスから受けた依頼を考えていた。 神殿から、エルフの里までの距離が問題になってくる。ヤスがディアナで移動するには、無理がある。集積所を作る場所も問題になってくる。 しかし、ヤスはラフネスの依頼を前向きに考えていた。物流ですべてが解決するとは思っていないが、神殿から派遣する行商人なら、エルフの里に喰い込んでいた商人の様に、エルフ族を騙して至宝を掠め取ろうとしたり、結界の中に無理矢理入ったり、愚かな行為は控えるだろう。 ”マリア(コア)”と絡んでしまったから、見捨てる選択肢はないのだが、面倒なことに…
続きを読む2022/04/05
【第十章 エルフの里】第二十七話 決着?
この神殿。詰んでいないか? いや、まだ大丈夫だ。魔物への対処ができればいい。それに、大物は多くない。対処が可能な魔物だけなら、問題ではない。 どうやら、俺がこのコアを吸収するのはできるようだが、そうなると、エルフたちをどうするのか考えなければならない。神殿に依存している者たちを、俺の神殿に住まわせるだけで終わるのならいいのだけど、問題まで一緒につれていくことになりそうだ。 それでなくても、俺の神殿は”多種族”が住んでいる。 エルフのように他種族を見下す者たちは来て欲しくない。他種族との接触を避けるために、エ…
続きを読む2022/03/24
【第十章 エルフの里】第二十六話 善後策
いい方法が思い浮かばない。 俺は、所詮はトラックの運転手だ。小難しい事を考えるのは、専門にやっている奴が行うべきだと考えてきた。 しかし、このエルフの里の奴らは・・・・。 最低限の事さえもできていない。説明をしても理解ができるとは思えない。最大の問題は、魔物の排除が行える力があるのかさえも怪しい。 「なぁ」 「なに?」 リーゼが、俺の問いかけに返事をするが、俺が聞きたかったのは、リーゼではない。神殿のコアに善後策を考える上での、条件やできる事を聞きたかった。俺が考えた事がどこまでできるのか、確認が必要になっ…
続きを読む2022/03/05
【第十章 エルフの里】第二十五話 鍵
いつまでも、神樹を見上げていても何も解決しない。 解っているが、見上げる首が痛くなっても見て居たい気持ちにさせる。 神秘的な風景は、TVや本で見てきたが、一線を画す美しさがある。言葉で表すとチープになってしまうが、他に表現できる言葉が見つからない。 「ヤス。ヤス」 「なんだ?」 「すごいね」 「そうだな」 リーゼも同じ気持ちのようだ。 どんなに言葉を飾っても、チープに思えてしまう。 『(・・・)神殿の主様』 ん?リーゼのはずがない。 マルスも、俺を”神殿の主”とは呼ばない。 「リーゼ。何か、聞こえたか?」 …
続きを読む2022/02/21
【第十章 エルフの里】第二十四話 神樹
ほぉ・・・。 マルスが守る神殿とは違った美しさがある。 馬車を降りてから、20分ほど森の中を歩いて到着したのは、エルフたちの集落のはずだ。 「ここは?」 「集落の入口です」 「ヤス様。リーゼ様。里に向かう前に・・・」 ラフネスが、俺とリーゼの前に出て頭を下げる。 リーゼの方を向いている。 「そうだな。リーゼ。墓を見に行こう。里の中には作られていないのだろう?」 長老が申し訳なさそうな表情をするが、俺としては、素直に墓参りができそうな事に驚いた。何か、対価を要求してくる可能性があると考えていた。そ…
続きを読む2022/02/12
【第十章 エルフの里】第二十三話 秘密
里に向かって、”結界の森”を進む。 エルフたちは、この森を”結界の森”と呼んでいると教えられた。 結界は、なんとなくだが簡単に突破できそうな雰囲気がある。 「なぁ」 俺の前に座っているのは長老だ。 長老なら、俺の疑問に答えてくれるだろう。 「なんでしょうか?」 「結界を越える条件はなんだ?」 俺たちは、結界をすんなりと越えられた。 ラフネスも長老も問題はなかった。 この結界は、”ほぼ”俺がよく知っている結界と同じ物だ。 「え?」 「俺たちを襲った奴らは、結界に入る前に襲ってきた。これは、結界…
続きを読む2022/02/06
【第十章 エルフの里】第二十二話 ルーサ
「旦那!」 おい。おい。 「ルーサ?お前が来たのか?」 「おぉ。セバス殿から連絡を貰って、誰が来るのか揉めたけど、俺が勝ち取った」 「ん?」 「”大将が困っている”と聞いたぞ?」 「そうだな。困っているが、ルーサが来るほどの事ではないぞ?」 「別に、誰が来てもよかったのなら、俺でもよかったのだろう?それに、大型のアーティファクトが必須だと聞いたぞ?」 たしかに、最初の段階では必要がなかったが、襲撃者が増えてしまった。今では、バスでも狭い。トラックの荷台に詰め込む形がベストだな。 ルーサが乗ってきたアー…
続きを読む2022/01/27
【第十章 エルフの里】第二十一話 誰?
逃げ出すのか? 男は、俺に土なのか?石なのか?わからない物を投げつけてきた。結界に阻まれているが、気分のいい物ではない。 石?に、気を取られたすきに、背を向けて逃げ出す。逃げられないのに、ご苦労なことだ。 聞こえるかどうかの声量で、マルスに指示を出す。 「(ファイアーウォール)」 逃げる男の前方に炎の壁が出現する。横に逃げようとしても、同じように、炎の壁ができる。 戦闘を終えた、ガルーダが俺の肩に降りて来る。 『マルス。戦闘不能にした者を確保してくれ』 『了』 戦闘不能になっていた、46人の足…
続きを読む2022/01/21
【第十章 エルフの里】第二十話 襲撃
ラフネスは、ナビに驚いている。 今までの者たちも、移動速度にも驚くが、一番に衝撃を受けるのは、ナビの地図情報だ。 この世界では、地図は一般的ではない。国家機密と言ってもいいほどだ。しかし、神殿から提供している”アーティファクト(トラック)”には簡易的な物になってしまっているが、ナビが付けている。 知識があれば、取り外しもできるだろうが、簡易キットでもしっかりと固定している。外すと、主要な部品が離れるようにしている。盗難対策だ。アーティファクトないの道具だから、アーティファクトがなければ動かないと思っ…
続きを読む2022/01/12
【第十章 エルフの里】第十九話 大興奮
話がまとまったので、リーゼを呼びに行く、隣の部屋なので、結界を解除して、声をかければ、すぐに部屋に入ってきた。 そこまではよかった。 栗鼠(カーバンクル)と、猫(キャスパリーグ)と、鷲(ガルーダ)を見て大興奮。 可愛い以外には言葉が離せなくなってしまったのかと思うくらいに大興奮だ。 「リーゼ?リーゼさん?」 「なに、ヤス。今、忙しいのだけど!」 「眷属に会ったことがあるよね?」 「・・・。うーん。栗鼠(カーバンクル)には会っていない!ヤス!こんなかわいい子を隠していたの?」 「隠していない。会わせた…
続きを読む2021/12/31
【第十章 エルフの里】第十八話 召喚
「ヤス様。主様?」 ラフネスが、跪いている。 不思議に思ったのが、ラフネスの立ち位置だが、問題にはならないようだ。 まずは、立たせたい。それで、ソファーに座らせた方がいいだろう。 「大丈夫だ」 「すぐに移動を開始しますか?」 移動と言われても、リーゼには準備が必要だろう。エルフの里だと言っているのだから、森の中を歩くことになるのだろう。俺も、靴は変えた方がいいかもしれないし、準備が必要になる。 それに、森で襲われたら、いくら結界があっても、絶対に安全だとは思えない。森は、やはりエルフの主戦場だ。 …
続きを読む2021/12/14
【第十章 エルフの里】第十七話 ラフネス
遮音の結界が発動した。 長老は、何かを探している。目線が、ボイスレコーダーで止まる。もしかしたら、遮音の力で、ボイスレコーダーが無効になっていると期待しているのか?原理が解らなければ、無効になると考えても不思議ではない。 遮音の結界だけではなく、物理攻撃を弾く結界も発動しているようだ。外部からの攻撃を警戒しているのか?気が付かないフリをしておいた方がよさそうだ。何か、進展があったのだろう。 俺が考えるのもおかしな話だけど、もう少し腹芸とか学んだ方がいいと思うぞ?商人に騙されまくって、終わってしまうぞ…
続きを読む2021/11/23
【第十章 エルフの里】第十六話 ネタバラシ
長老との話はマルスを通して、リーゼも聞いていた。 リーゼが自分の責任だと言い始めてしまったためだ。リーゼに責任は一切ない。元々が、リーゼの願いが始まりだったが、今回の件は間違いなく、エルフ側の問題だ。 アーティファクト(Fit)に手を出そうとしなければ、この自体にはなっていない。 それを含めて解らせるために、リーゼには聞かせていた。 宿に戻ると、リーゼが抱きついてきた。 「リーゼ?」 「ごめん。ごめん。ごめん」 泣き顔で、俺に抱きついてきたリーゼは、謝るだけだ。 何に対して、謝っているのか?リ…
続きを読む2021/11/17
【第十章 エルフの里】第十五話 償い
カップが割れる音が、二人の間に決定的な違いが存在していることを物語っている。 ヤスは、エルフ族の長老が”綺麗事”だけを言っているようにしか思えない。”皆”のため。”繁栄”のため。そんな”こと”のために、長老衆やそれに近い者以外のエルフが犠牲になっている。 犠牲になっている者たちも、騙されているとは思わないまでも、何かがおかしいと感じるから、自分たちでなんとかしようとする。そのために、外部の者に攻撃的な態度を取る者たちが増えていく。そして、一部の者たちと手を組んで、愚かな行為に出る。 自分たちが”優位…
続きを読む2021/10/24
【第十章 エルフの里】第十四話 長老
紅茶を飲み込んでから、ヤスは長老を睨みつける。 諦めたのか、ヤスの前まで歩いてくる。 ヤスは、また指を鳴らす。 今度は、ヤスの対面に椅子が出現する。 「座れよ」 ヤスが自分のカップに注いだポットから、長老の前に置いたカップに紅茶を注ぐ。 ハイエルフだけあって、魔法の素養は人族に劣らない自信があった。 しかし、ヤスが使っている技(魔法)が見抜けない。他の長老との会話も不可能で、一人にされてしまった。 ヤスは、懐からボイスレコーダーを取り出す。 これも、長老には何をするものかわからない。 「警…
続きを読む2021/09/12
【第十章 エルフの里】第十三話 立ち回り
「弟?」 ヤスに近づいてきたエルフ族は、目が虚ろになっている。 それだけで、ヤスが無視するには十分な理由だが、ヤスは”弟”という言葉に反応した。 「そうだ!俺の大切な弟を、貴様が攫った」 「は?」 「弟は、お前のような人族が持つには相応しくない物を回収しようとしただけだ。何も間違っていない。貴様が悪い!」 「あ!?」 ヤスのどこから出ているのかわからないような、威圧が含まれる声に男は気後れした。 しかし、自分が威圧で負けているのが気に食わないのだろう。さきほど以上の声でヤスに文句をぶつける。 「そう…
続きを読む2021/08/31
【第十章 エルフの里】第十二話 交渉?
ヤスの目の前には、FITに攻撃を仕掛けた愚か者たちが、気絶した状態で放置されている。 『マルス!』 『はい』 『愚か者は、ここに寝ている連中か?』 『否』 ヤスの顔からは、”やっぱり”という表情が読み取れる。 実際に、FIT に攻撃してきた者たちは、先にFIT を盗もうとした者たちを助け出そうとした。何も出来ないと悟って、攻撃を加えたのだ。 『そうか、ひとまず、商人に話を・・・。面倒だな』 『マスター。個体名ラフネスに連絡して、引き取らせることを提案します』 『それが良さそうだな。マルス。ラフネスの居…
続きを読む2021/08/25
【第十章 エルフの里】第十一話 愚者
「ヤス。ごめん」 「リーゼが謝る必要はない」 「でも・・・」 「そうだな。気になるのなら、帰ったら、西門にできた店で、奢って貰おうかな?」 「え?あっうん!いいよ!帰ったら、一緒に西門に行こう!僕が運転するからね!」 テンションが上がったリーゼを見て、良かったと考えている。リーゼの責任ではない。エルフたちが悪いのは、ヤスにもリーゼにもわかっている。しかし、リーゼは、自分がエルフの里に来てしまったことが問題になっていると考えてしまったのだ。 ヤスに置いていかれると心の片隅で恐怖とともに、感じてしまっていた…
続きを読む2021/08/01
【第十章 エルフの里】第十話 リーゼの想い
ヤスとリーゼは、ラフネスの言い訳とも考えられる、”エルフの事情”を聞いた。 「そうなると、長老たちは、リーゼに無関心なのだな?」 「・・・。はい」 ラフネスは、素直にヤスの質問に答えた。 実際に、暴走したのはエルフの村に着ていた商人たちと取引があるエルフだ。それも積極的に、商人と交流を行って他種族と関わりを持とうとしていた。 ただ、やり方を間違えた。 今まで、他種族との付き合いをしてこなかった者たちが、いきなり商人と取引をした。そして、騙された。エルフ族は、アフネスなど、外の世界で生きていくことを…
続きを読む2021/07/31
【第十章 エルフの里】第九話 エルフの事情
ラフネスは、ヤスとリーゼに事情を説明した。 説明を聞き終えたヤスは頭痛を抑えるような仕草をする。リーゼは、事情がよく飲み込めていないようで、ラフネスとヤスの表情を必死に読み取ろうとしている。 「ラフネス。率直な意見を言っていいか?」 「何を言いたいのか解っていますが、どうぞ?」 「エルフはバカなのか?」 「・・・」 リーゼがヤスの服の袖を可愛らしく引っ張る。 「ねぇヤス。どういうこと?エルフ族が、僕の持っているお金が欲しいってこと?」 「そうだな」 「僕、お金なんて持っていないよ?」 「そうだな。今の…
続きを読む2021/05/27
【第十章 エルフの里】第八話 エルフたち
「リーゼ様。ヤス殿。私は、エルフの里長候補の1人で、ペドロと言います」 ヤスを、射殺すような目線で見てから、リーゼに頭を下げながら”ペドロ”と名乗った。ヤスは、面倒な流れだと思いながらも、ペドロを観察し始める。 ヤスの存在は、ペドロの中からは完全に消えていた。リーゼの従者としてしか認識をしていない。 ペドロが、リーゼに美辞麗句を並び立てている所で、ドアがノックされた。 「誰だ!リーゼ様が、この俺様!ペドロ様の話をお聞きしているのを邪魔するのは!」 ヤスは、ペドロから出たこのセリフだけで、目の前に居る…
続きを読む2021/03/22
【第十章 エルフの里】第七話 森の村
砦の門が閉まる寸前に、ヤスたちは到着した。 貰い受けた許可書では、門が閉まっていても通過はできるのだが、ヤスが特例を行使したくないと言って、アクセルを踏み込む力を強めたのだ。 「ふぅなんとか間に合ったな」 「うん。どうする?砦で休むの?」 「俺としては、砦で休むのは避けたい」 「??」 「砦の責任者が、俺に会いたいとか言っていたからな。先を急ぐ用事があると伝えているから、砦でちんたらしていたくない」 「あぁ・・・。そう言えば、守備隊の人が言っていたね」 ヤスと言うよりも、アーティファクトを欲しがってい…
続きを読む2021/03/10
【第十章 エルフの里】第六話 リーゼとヤス
国境に近づいてきて、砦が見えた場所で車を停めた。 「ヤス。なんで?もう砦だよ?許可書もあるから、大丈夫だよ」 リーゼが言っている通り、王都を出る時に許可書をもらっている。許可書があれば、”行き”も”帰り”も検査を受けなくてもいいという最上級な物だ。 「ん?」 ヤスは、砦の入り口を指差す。 砦の関所を超えるための行列が出来ている。ヤスたちが持っている許可書は、行列を無視できる物で、並ぶ必要はない。 「並ばなくてもいいよね?」 「あぁだけど、列を見ると、高級な馬車が見えるだろう?」 「あ?うん」 「ほら…
続きを読む2021/02/01
【第十章 エルフの里】第五話 道中(神殿→王都→国境の砦)
「ねぇヤス・・・」 「駄目だ!」 「まだ何も言っていないよ?」 「解っている。FITを運転したいのだろう?駄目だ。リーゼの運転は、粗い。もっと、ブレーキをしっかりと操れるようにならなければ、荷物を運ばせられない」 「うぅぅぅ。だって、アクセルを踏み込んだ方が速いよ?」 「そうだな。最高速は出せるだろうけど、ラップタイムは遅くなるな」 「う・・・」 「リーゼ。モンキーだと、イチカに負けるよな?」 「・・・。うん。でも、それはイチカの方が、体が軽いから・・・」 「でも、俺はイチカに完勝できるぞ?」 「それは、ヤ…
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