異世界の記事一覧

2020/04/22

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十七話 関所の村を説明

 アフネスは、手に持っていた試算表をヤスに渡した。 「ふぅーん。アフネス。これで、ユーラットはいいのか?」 「問題はない」 「今更ながらの質問だけど、ユーラットのまとめ役は、アフネスなのか?」 「ん?確かに今更な質問だが、私ではない。村長は、しばらく空席になっているが、まとめ役はロブアンだ」 「え?」 「何かおかしいか?」 「いや、なんでも無い。・・・。・・・。・・・。そうだ!忘れていた」 「なんだ。ヤス?」「ヤス殿?」 「カイルとイチカの事は聞いているよな?」  ヤスの問いかけに二人は渋い顔をしたが頷いた…

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2020/04/21

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十六話 ユーラットに寄り道

 ヤスは、関所の村をルーサとイレブンに任せた。  マルスも反対していないので、これが正解だったと思っている。 『マスター。セカンドが、FITで向かっています』 『わかった』  ヤスがユーラット方面に歩いていると、10分程度進んだ所で、FITが見えてきた。セカンドが運転しているのだが、ヤスが見えてきた時点で速度を落として、手前で停まった。 「旦那様。セカンドです」 「ありがとう」  セカンドは運転席を降りた。ヤスと運転を変わるのだ。  運転席に乗り込んだヤスは、窓を開けてセカンドに声をかける。 「セカンドはど…

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2020/04/20

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 関所の村

 俺は、ルーサ。以前は、リップル子爵領の領都で、スラム街の顔役をしていた。  今は、しがない村の村長だ。  俺に、この村を任せたヤス様は頭のネジが数本抜けていても不思議ではない。そんな言葉では生ぬるい可能性だってある。  リップル領からの脱出は簡単だった。レッチュヴェルト(レッチュ領の領都)まで移動してギルドに顔を出したら、領主の屋敷に行けと言われた。どうやら、デイトリッヒが関係していた。俺としては、カイルたちがどうなった確認して、レッチュ領の顔役に話を通しに行く予定だったのだが崩れてしまった。  デイトリ…

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2020/04/19

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十五話 ルーサという男

「旦那様。執務室でお待ち下さい」 「ん?執務室なんて作ったのか?」 「はい。旦那様と面談を希望する者、全員を神殿の工房に連れて行くわけには行きません」  ツバキがきっぱりと言い切った。マルスもセバスも当然だと考えている。  そして、常々ヤスが気楽に人に会いすぎると思っているのだ。神殿の中なら、多少は許されるだろうが、ユーラットや領都での行動はマルスとしても、眷属代表としてセバスやツバキが許容できる範囲を越えている。  しかし、マルスもセバスもツバキもヤスの行動を縛ろうとは思っていない。ヤスが外に出るのをやめ…

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2020/04/18

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 ルーサ

 俺は、ルーサ。貴族籍はすでに抜けているので、ただのルーサだ。あの夫婦に請われてリップル領で孤児たちを集めたり、攫われそうになるのを助けたり、スラム街で死にそうになっている餓鬼を助けたりしていたらいつの間にかスラム街の顔役の一角を占めるようになっていた。  裏方仕事が好きな俺には丁度良かった。  貴族の煩わしさもない。力だけが・・・。力がすべてを支配する場所は心地よかった。すべてを失った俺にはもっともお似合いの場所だ。  あの夫婦も、孤児院を開設して餓鬼の面倒を見ている。  どうしても、孤児院に馴染めない餓…

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2020/04/17

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十四話 ルーサがやってきた!

 ヤスは驚いていた。  カイルとイチカだけではなく、子供たちの身体能力が異様な高さを示していた。 「ヤス兄ちゃん」「ヤスお兄様」  カイルとイチカは、すでに自転車を乗りこなして、スクーターの運転も問題ではなかった。ブレーキの概念もしっかりと把握出来ている。カイルは、”勘”で操作するので 最初に運転ができるようになる。しかし、運転がうまいのはイチカだ。イチカは、ブレーキでカートが止まる理由から、構造が違う自転車ではなぜ構造が違うのか?スクーターの動かし方について、ヤスを質問攻めにした。  地頭がいいのだろう。…

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2020/04/16

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十三話 イチカとカイルの仕事

 ヤスは、リビングを出て地下にあるカート場に向かった。  マルスからのカイルとイチカがカート場に居ると教えられたからだ。 「ヤス兄ちゃん」 「お!カイルだけなのか?イチカは?」 「イチカは、リーゼ姉ちゃんの手伝いをしている」 「手伝い?」 「うん。カートの練習相手が欲しいって連れて行かれた」 「カイルは?」 「案内の仕事があるから、残った」  カイルは案内と言ったのだが、カート場に来るのは限られている。  リーゼ。ディアス。ドーリス。サンドラ。ミーシャ。デイトリッヒを除くと、数名が降りられるようになっている…

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2020/04/15

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十二話 嫌がらせ-ヤスの仕事-

『ヤスさん。王都に向かいます』 「サンドラ。頼むな。セバスも無理するなよ」 『旦那様。ありがとうございます。”あんぜんうんてん”で行ってきます』  セバスたちとの通信が切れた。  リビングに設置しているディスプレイには神殿が管理している領域が表示される。 『マスター。関所と村を作ります』 「そうだったな。候補地はあるか?」 『関所は二箇所、一つの村で管理したく思います』 「そうだな。関所の一つは現存している物を拡張すればいいよな?」  ヤスは、ユーラットに向かう街道にも関所が作られると思っていたのだが、現存…

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2020/04/14

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十一話 嫌がらせ開始

 カスパル。ディアス。サンドラ。デイトリッヒ組が出発して、一日半後にセバスが出発した。  セバスは、朝方に領都に到着した。  ヤスは、神殿のリビングでマルスから報告を受けていた。  カスパルも心配では有ったが同乗者が居るので無理はしないだろうと思っていた。セバスは、夜の長距離は初めてで、本人は大丈夫だと言っていたが心配になってしまったのだ。  マルスは、地図を表示してカスパルとセバスが運転する車両の現在位置を表示していた。  マルスにしても、ヤス以外の長距離の運転で、神殿の領域外に出ているので、データの収集…

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2020/04/13

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第十話 嫌がらせ作戦

 壺の準備に手間取ったが、ドワーフたちの活躍で会議から3日後には、カスパルが運転するアーティファクトで、ディアスとサンドラとデイトリッヒが領都に迎える準備が整った。  塩100キロと砂糖100キロと胡椒20キロは、強奪される物だ。  領都で馬車に載せ替えて、王都まで運ばれる。壺には、レッチュ辺境伯の証が刻印されている。  貴族から王族や貴族に貢物として送られる場合には必ず刻印される。中身に印が付けられない場合には、入れ物に刻印される。  強盗や野党に襲われて強奪された物品で、貴族の印が刻印されている物品の場…

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2020/04/12

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第九話 嫌がらせの準備

 ヤスが考えた”嫌がらせ”の準備は、神殿の都(テンプルシュテット)をあげて行われている。  ヤスが示した”嫌がらせ”という指標だが、神殿の都(テンプルシュテット)では主からの命令に等しい。会議が終わって、神殿に帰ると、マルスがすでに輸送に必要な物をリストアップしていた。セバスが行っている業務の引き継ぎや作らなければならない物品もあるために、開始はすぐには出来ない。  情報共有や協力を求める連絡をしておく必要もあるので、時間がある程度は必要になってくる。  サンドラは、即座にギルドから辺境伯に連絡をした。サン…

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2020/04/11

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第八話 嫌がらせの相談(3)

「頼む。それで・・・。王都に、塩と砂糖と胡椒が盗まれてから、王都に運ぶ役目は俺がするしかないかな?」  ヤスが周りをみながら宣言する。  長距離の運転だけではなく、街から出て運転できるのは、カスパルとツバキとセバスだけなのだ。ヤスが運ぶのが現実的だろう。 「旦那様。僭越ながら、今回の運搬は、私が担当いたします」 「セバスが?」 「はい。いくつか理由がありますが、旦那様は神殿に残られまして、皆に指示を出していただきたい。もう一つは、なるべく旦那様が貴族や王家との付き合いをしないようにしたほうがよろしいかと思い…

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2020/04/10

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第七話 嫌がらせの相談(2)

「さて、サンドラ。この塩と砂糖を、俺が売ると言ったらどうなる?」 「え?これを・・・。ですか?」 「そうだな」 「量は?」 「さすがに無制限とは言えないけど、かなりの量が用意できる」 「それは、2-30キロですか?」 「ハハハ」  ヤスは、サンドラの言い方が面白かった。  討伐ポイントで交換できるのは、キロ単位だ。20キロや30キロなら簡単に交換できる。ポイントに余裕がある今なら簡単な量だ。 「そっそうですよね」  サンドラは、ヤスが笑ったのは、2-30キロも用意できるわけがないと思ったのだ。  1-2キロ…

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2020/04/09

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第六話 嫌がらせの相談(1)

「ヤス様」 「デイトリッヒ。様は必要ない。それで?」 「そうでした。ヤスさん。”それで”とは?」 「説明しろよ?デイトリッヒが神殿と関係を無くしたいと思った理由は、”それ”なのだろう?」 「そうです」  デイトリッヒは、3つの山を見る。  ヤスを見てから諦めたように説明を始める。  最後の山は、カイトたちに宛てた手紙だったために、デイトリッヒは簡単に説明だけして、手紙の束をカイルに渡した。  卒院していく子供たちに渡していた物で、カイルたちの卒院に向けて書かれていたものだった。  話を聞いて、カイルとイチカ…

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2020/04/08

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第五話 ヤスと愉快な仲間たち?

 新たにギルドに到着した面々は、セバスが案内して会議室にやってきた。  先にタブレットの説明を始めようか、ヤスが迷っていると、マルスから念話が入った。 『個体名デイトリッヒがギルドに到着します』 「ミーシャ。デイトリッヒがギルドに来る頃じゃないのか?見てきてもらえるか?」  ヤスは、ミーシャに話をデイトリッヒの出迎えを頼む。  カイルとイチカがデイトリッヒと聞いて、ヤスの顔を見る。 「わかりました。連れてきてもいいのですよね?」 「頼む。会議室に入る許可は出してあるから、直接入ってもらって欲しい」 「わかり…

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2020/04/07

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第四話 主要メンバー集結(除くリーゼ)

 ヤスは神殿に戻って食事(昼飯)を摂ってからから、ギルドに戻った。  ギルドでは、ミーシャがアーティファクトの登録を行っていた。 「ヤスさん。アーティファクトの登録は、全員が帰ってきてから行います。鍵の登録で問題がないと本部から通知が来ました」 「頼むな。それで、カイルとイチカは、まだディアスと見学か?」 「だと思います。呼びますか?」 「いや、いいよ。デイトリッヒも帰ってきていないから、急がなくてもいいだろう。奥の部屋を使っていいよな?」 「はい。ギルドマスターの部屋を使ってもいいですよ?」 「ドーリスの…

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2020/04/06

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その3)

「カイル君。この部屋は、これから君が生活する部屋で間違っていないよ」 「ディアス姉ちゃん。俺1人で?孤児院に居た時には、この部屋よりも狭い場所で、全員が寝ていたぞ!?」  カイル君の言葉に弟たちが首を縦にふる。 「わかっています。でも、君たちはこれから沢山勉強して、ヤス様のために働いてもらいます。そのためには、広い部屋が必要です。カイル君は冒険者になって魔物を倒して強くなりたいのですよね?」 「・・・。うん」 「それなら、武器や防具を置いておく場所が必要です。それに、素材を集めて、鍛冶屋に武器や防具を作って…

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2020/04/05

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その2)

 私は、ディアス。このくだりも何回か行っていると飽きてきます。  今、私はヤス様が保護を約束された子供たちと一緒にアーティファクトに乗っています。東門から西門に向かっています。 「ディアスお姉ちゃん。今度はどこに行くのですか?」  ”お姉ちゃん”いい響きです。カイル君はやんちゃな弟という感じで、イチカちゃんは好奇心が旺盛な妹という感じです。 「今度は、学校に行きます。イチカちゃんたちがこれから神殿の都(テンプルシュテット)で生活するのに必要な知識を学べる場所です」 「え?学べる?何か、教えてくれるのですか?…

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2020/04/04

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】幕間 社会科見学(その1)

 私は、ディアス・アラニス。もうすでに、アラニスの姓は捨てたから、今はただの”ディアス”だ。  アデヴィト帝国で生まれたのだが、帝国を恨んでいる。家族を殺されたからだ。そして、私も殺されかけた。カスパルに救われて、私は神殿の都(テンプルシュテット)に住んでいる。  神殿の主であるヤス様にお願いされて、子供たちに神殿を案内している。子供たちは、来たばかりで神殿の施設(地下)に入る許可は降りていないが、神殿の都(テンプルシュテット)の施設なら案内できる。  まずは、魔の森方面に向かう。子供の代表は、カイルとイチ…

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2020/04/03

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第三話 ヤスの勘違い

「ヤスさん。これは、ですね・・・。そう、そう、子供たちにヤスさんの偉大さを伝えていたのです!はい。多少の誇張は許されるべきです!」  ドーリスが一気に捲し立てるが、ヤスの笑顔の前では無意味に思えてくる。  サンドラも何か言おうとしたが、口を開いてから音にするのは止めた。 「ミーシャ!」 「はい?」  後ろからミーシャの声が聞こえる。 「ミーシャ。悪いけど、エイトと一緒に子供たちに神殿の案内を頼む。そう言えばリーゼは?」 「リーゼ様は、地下です」 「カート場か・・・」 「・・・。はい」 「しょうがないな。まだ…

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2020/04/02

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第二話 ドーリスとツバキと子供たち

「旦那様。旦那様。ツバキ様とドーリス様がお戻りになりました」  ヤスはまだしっかりと目覚めていない。  エイトが持ってきた水を飲んで、頭がと身体が起き出してくるのを感じている。 「子供たちは?」 「幼体は、孤児院に預ける前にギルドで話を聞くそうです」 「そうか、審査は問題なかったのだな」 「はい。幼体の代表が旦那様に面会を求めております」 「わかった。セバスに言って時間を調整してくれ」 「かしこまりました」 「あっそれから、シャワーを浴びたらリビングに行くから朝食の準備を頼む」 「はい」  ヤスがシャワーを…

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2020/04/01

【第八章 リップル子爵とアデヴィト帝国】第一話 ヤスの帰還

 ヤスはセミトレーラを地下に停めた。 「セバス。コンテナの開け方はわかるよな?」 「はい。旦那様」 「降ろすのも大丈夫か?」 「はい。大丈夫です。セミトレーラの切り離しもマルス様から覚えるように言われております」 「そうか、トラクターとトレーラを切り離して、工房に移動しておいてくれ。コンテナは降ろして、物資は皆に提供してくれ、方法は・・・。ドーリスは居ないか?サンドラとミーシャとセバスでやってくれ」  工房に持っていくのは改造ではなく、メンテナンスのためだ。本格的な移動を行ったので、トラクターにダメージが出…

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2020/03/31

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 ドーリスと子どもたち

 私はドーリス。生まれは・・・。わからない。気がついた時には王都のスラムで生活していた。5歳になるときに、孤児院に入った。そこで、お母さんが出来た。王都に行った時に会いたかったけど都合が合わなかった。  王都までヤスさんを案内した。王都では各ギルドを回って、神殿に新たにできるギルドが承認された。すでに根回しが終わっていたがやはり緊張した。現状の神殿の都(テンプルシュテット)の様子が伝わっていたら間違いなく各ギルドは別々に作ると言い出すに違いないからだ。幸いなことに、ヤスさんのアーティファクトの速度が異常だっ…

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2020/03/30

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 イチカとカイル

 私の名前は、イチカ。お母さんが付けてくれた。お母さんと言っても、私を勝手に産んで身勝手に捨てた女じゃない。私を育ててくれて、優しく家族になってくれた人。  お父さんは少しだけ怖いけど、すごく優しい。いろいろ私たちに教えてくれる。カイルなんて、影でも父さんや母さんと呼んでいるのに、お父さんやお母さんの前に出ると、クソジジイやババアと言っている。  カイルは、私の一つ年上だけど、手間のかかる弟って感じ。  今、私たちは住んでいた孤児院から逃げ出して、スラム街のルーサさんの所に来ている。 「カイル!イチカ!逃げ…

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2020/03/30

【第七章 王都ヴァイゼ】幕間 孤児院

 俺がしっかりしないと!  クソジジイから初めて頼まれた。  弟と妹たちを頼むと言われた。当然だ。俺の妹と弟だ。絶対に守る!  俺たちの生活が変わったのは、領主のバカ息子が妾のために屋敷を建てると言い出した時だ。  前から、俺たちが住んでいる場所が目障りで何かと嫌がらせをしていた。成人して卒院した兄ちゃんや姉ちゃんが遊びに来たときに教えてくれた。  俺たちは、クソジジイが運営している孤児院で俺を含めて11人の子供が住んでいる。  俺が一番年上だから、長男だ。本当の兄弟や姉妹ではないけど、俺たちは兄弟で姉妹だ…

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2020/03/29

【第七章 王都ヴァイゼ】第十六話 孤児とユーラット

 子どもたちはすぐに見つけられた。  セミトレーラのライトに照らされた子どもたちは怯えていた。  馬が居なくても走る大きな馬車で、大きな目玉から光を放って、自分たちを見ているように見えれば大人でも怖くなってしまうだろう。子どもたちは、粗末な格好で生きているのが不思議な状況になっている者も存在している。  皆が怯えた目でライトが落とされたセミトレーラを見ている。  最初、ヤスが近づこうとしたのだが、ドーリスに止められた。男性が近づくよりも、女性である自分が行った方がいいと判断したようだ。  ドーリスを降ろして…

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2020/03/28

【第七章 王都ヴァイゼ】第十五話 ユーラットへ・・・到着出来なかった

 ヤスと辺境伯が話をしている最中に、物資を積んだ馬車が門を抜けてきた。  馬車を見たヤスが辺境伯に、情報はドーリスに伝えるようにお願いして、その場を立ち去る。 「ドーリス殿」 「クラウス様。もうしわけありません。ヤス様は・・・。その・・・」 「サンドラから聞いていた通りの人ですね」 「え?」 「貴女もですが、ヤス殿は・・・。”よくわからない”という言葉が似合う御仁はいませんね」 「そうですね。数日間、一緒にいましたが本当に”よくわからない”人でした」  コンテナを開けて物資の搬入を始めたヤスを二人が見つめて…

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2020/03/23

【第七章 王都ヴァイゼ】第十四話 移動中の会話

 ヤスは、ドーリスから冒険者ギルドに出された依頼書を見せられて、簡単に説明された。 「ヤスさん。もうしわけありません」 「別に、ドーリスが謝罪する必要はないだろう?」 「でも・・・」 「必要ない。それに、依頼を受けた奴は居ないのだろう?」 「リップル子爵領にあるギルドは不明だけど、他のギルド経由でも依頼を受けた者が居ないのは確認されています」 「それなら別にいいよ」 「え?」 「だって、襲ってきた連中は、俺を殺すつもりなのだろう?」 「そうですね」 「だったら、殺されても文句は言えないよな?」 「ヤスさん。…

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2020/03/22

【第七章 王都ヴァイゼ】閑話 テンプルシュテットでは・・・

「リーゼ!それはダメだと思うの!」  姦しい声が地下のカート場に響いている。  神殿のカート場に居るのは、ハーフエルフのリーゼ。帝国から連れてこられたディアス。神殿近くに領地を持つ辺境伯の娘であるサンドラ。  それと、ドワーフの方々だ。 「何がダメなの!問題は無い!ね!サンドラもそう思うでしょ?」 「私を巻き込まないでよ。わたしは、調整で忙しいの!」  3人で会話をしているようにも聞こえるが実際には違っている。  リーゼとディアスはカートでならし走行をしている。サンドラは、ドワーフにお願いして愛機をいじって…

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2020/03/21

【第七章 王都ヴァイゼ】第十三話 問題が発覚した。

『マスター。個体名ドーリスが近づいてきています』  マルスは、居住スペースで寝ているヤスを起こす。  起こすのはそれほど難しくない。 「おはようございます」  ドーリスが運転席にたどり着く頃にはヤスも起きて外に出ていた。 「おはよう。荷物の積み込みか?」 「はい。お願い出来ますか?」 「わかった。コンテナを開けて待っている。この町では何が手に入る?」 「今までと同じです。主に、イモ類です」 「わかった。積み込みの監視は頼む」 「はい。ギルドも人を出してくれるので大丈夫です」  ヤスが監視を気にするのは、2つ…

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