異世界の記事一覧

2022/01/22

【第二章 帰還勇者の事情】第二十九話 少女

 私は、今”日本”に来ている。  事故で全身に火傷を負った。その時に、片耳と片目を失った。喉も焼かれて、言葉は出せるが、雑音が混じるような汚い声だ。  そして、火傷は、私の心まで焼いた。  パパは、私を治そうと必死に医師を求めた。  しかし、私も見た医師の反応は同じだ。パパの権力を恐れて、”難しい”以外の言葉を聞いた事がなかった。  左手は、癒着して開かない。右手は辛うじて動かすことができるが、火傷の後が疼いて痛い。  右足は膝から先が無い。左足は、腿から先に感触がない。存在してはいるが、触られても解らない…

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2022/01/21

【第十章 エルフの里】第二十話 襲撃

 ラフネスは、ナビに驚いている。  今までの者たちも、移動速度にも驚くが、一番に衝撃を受けるのは、ナビの地図情報だ。  この世界では、地図は一般的ではない。国家機密と言ってもいいほどだ。しかし、神殿から提供している”アーティファクト(トラック)”には簡易的な物になってしまっているが、ナビが付けている。  知識があれば、取り外しもできるだろうが、簡易キットでもしっかりと固定している。外すと、主要な部品が離れるようにしている。盗難対策だ。アーティファクトないの道具だから、アーティファクトがなければ動かないと思っ…

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2022/01/16

【第六章 ギルド】第七話 ミア

「リン様。一つ、お願いがあります」  突然、猫人族の長が俺に話しかけてきた。 「ん?」  長は、連れてきた少女を呼んでいる。固有名詞が無いのは、不便ではないのだろうか?  少女が、俺の前に出てきて、跪く。  どういう状況なのか解らない。ブロッホを見ても、何か納得した顔をしているだけだ。ミルを見てみても、首を横に振るだけで、俺と同じで困惑している。 「長?」 「リン様。この者を、リン様の従者として連れて行って頂けないでしょうか?」  状況がさっぱり解らない。 「どういうこと?」  ブロッホが耳打ちするように説…

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2022/01/13

【第二章 帰還勇者の事情】第二十八話 治療?

 スパイにギアスをかけてから、2日が経過した。 「なぁユウキ。日本の・・・。いや、この場合は、地球にある”その手”の組織は、情報を軽く扱っているのか?」 「どうだろう?」  情報はユウキの予想を上回る速度で集まっている。  上がってくる情報を、ユウキと一緒に精査しているのは、リチャードとロレッタだ。  精査された情報だけが、ユウキたちに届けられるが、それでも驚くほどの情報が手元に蓄積される。 「なぁ」 「そうだな。ミケールに渡して・・・」 「ユウキ。”丸投げ”だろう?俺たちじゃ対処できない」 「そうだな。丸…

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2022/01/12

【第十章 エルフの里】第十九話 大興奮

 話がまとまったので、リーゼを呼びに行く、隣の部屋なので、結界を解除して、声をかければ、すぐに部屋に入ってきた。  そこまではよかった。  栗鼠(カーバンクル)と、猫(キャスパリーグ)と、鷲(ガルーダ)を見て大興奮。  可愛い以外には言葉が離せなくなってしまったのかと思うくらいに大興奮だ。 「リーゼ?リーゼさん?」 「なに、ヤス。今、忙しいのだけど!」 「眷属に会ったことがあるよね?」 「・・・。うーん。栗鼠(カーバンクル)には会っていない!ヤス!こんなかわいい子を隠していたの?」 「隠していない。会わせた…

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2022/01/07

【第六章 ギルド】第六話 猫人族

 力の波動?を抑える話になっていたが、元々は、ブロッホに洞窟の奥に潜んでいる獣人との接触を頼むためだ。 「ブロッホ」 「はい」 「洞窟の中に居る獣人は、無事なのか?」 「無事か・・・。解りませんが、こちらを警戒しています」 「わかった。俺とミルは少しだけ離れた方がいいか?アイルが居れば、大丈夫だろう?」 「はい。旦那様たちは、入口から離れた場所でお待ちください」 「ミル。少しだけ離れるよ」 「うん」  ミルが、俺の腕を取る。  洞窟から直接見えない位置まで下がる。丁度いい場所に、露出している岩があったので、…

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2021/12/31

【第二章 帰還勇者の事情】第二十七話 ギアス

 ユウキたちは、安全になってから、お嬢様の治療をしたほうがよいと考えていた。  ミケールも賛同した。問題の解決には、2週間程度は必要だとミケールから告げられた。  ユウキたちは、”2週間”という時間は、襲撃者たちの対応ではなく、反乱分子の始末に必要な時間だと考えていた。  しかし・・・。 「ユウキ!お客さんが来ているぞ」 「そうだな。いつもと同じ対処で頼む。質も落ちてきているから、捕えるだけでいい。後は、ミケールに渡して終わりにしよう」  最初の襲撃があってから、10日が過ぎているが、当初は夜だけの襲撃だっ…

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2021/12/31

【第十章 エルフの里】第十八話 召喚

「ヤス様。主様?」  ラフネスが、跪いている。  不思議に思ったのが、ラフネスの立ち位置だが、問題にはならないようだ。  まずは、立たせたい。それで、ソファーに座らせた方がいいだろう。 「大丈夫だ」 「すぐに移動を開始しますか?」  移動と言われても、リーゼには準備が必要だろう。エルフの里だと言っているのだから、森の中を歩くことになるのだろう。俺も、靴は変えた方がいいかもしれないし、準備が必要になる。  それに、森で襲われたら、いくら結界があっても、絶対に安全だとは思えない。森は、やはりエルフの主戦場だ。 …

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2021/12/26

【第六章 ギルド】第五話 力?

 洞窟の中から、こちらを伺っている様子が伝わってくる。 「リン。ぼくが行こうか?」 「どうして?」 「うーん。うまく言えないけど、中から伝わってくる雰囲気が、リンを恐れているように思える」 「俺?人畜無害だぞ?」 「ぼくは知っているから大丈夫だけど、すごい力を感じるよ?」 「え?俺が?」 「うん。気が付いていなかった?」  俺が驚いていると、リデルがミルの肩で頷いている。  気が付くわけがない。ミルもマヤも眷属たちも、態度が変わらないし、そうだ! 「ナナも、何も言わなかったぞ?」  え?なに?ミルが盛大な溜…

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2021/12/15

【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜

 少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。  そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』  屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。  ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』  ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。  会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…

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2021/12/14

【第十章 エルフの里】第十七話 ラフネス

 遮音の結界が発動した。  長老は、何かを探している。目線が、ボイスレコーダーで止まる。もしかしたら、遮音の力で、ボイスレコーダーが無効になっていると期待しているのか?原理が解らなければ、無効になると考えても不思議ではない。  遮音の結界だけではなく、物理攻撃を弾く結界も発動しているようだ。外部からの攻撃を警戒しているのか?気が付かないフリをしておいた方がよさそうだ。何か、進展があったのだろう。  俺が考えるのもおかしな話だけど、もう少し腹芸とか学んだ方がいいと思うぞ?商人に騙されまくって、終わってしまうぞ…

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2021/12/04

【第六章 ギルド】第四話 王都の途中

 街道に出るまでは、急いだ。アゾレムからの追っ手を警戒したが、追っ手どころか、俺たちの後ろからは誰もついてきていない。まだ、商人が揉めているのだろうか? 「リン?」  ミルが不思議そうな表情で俺を確認してくる。 「さて、森に向かおう、誰かが来ているだろう」 「うん」  ミルと二人で、近くの森に向かう。  さすがに、王都に向かう街道だけあって、整備されている。  マガラ渓谷を越えてから、1時間くらい走ると、いろいろな街道からの合流地点が見えてくる。この近くに森がある。この辺りで、お供として王都に向かう者がいる…

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2021/12/01

【第二章 帰還勇者の事情】第二十五話 証拠

 少女が貴賓室に入って、護衛が扉の前を、メイドが内側を調べている為に、ヴェルとパウリはユウキに念話を繋げた。 『二人には、悪かったな』 『いいですよ。マイにも頼まれましたし、未来の国王の側近に恩を売るチャンスですからね』 『ヴェル。俺は、宰相になるつもりはない。異世界と地球の秘境をめぐる旅がしたいと思っている』 『ユウキもヴェルも、その話はマイがなんとかすると言っていたでしょ。それよりも、ユウキ。護衛の一人で間違いはなさそうよ』 『わかった。パウリ。助かる』  わざわざ手が足りているのにも関わらず、ユウキが…

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2021/11/23

【第十章 エルフの里】第十六話 ネタバラシ

 長老との話はマルスを通して、リーゼも聞いていた。  リーゼが自分の責任だと言い始めてしまったためだ。リーゼに責任は一切ない。元々が、リーゼの願いが始まりだったが、今回の件は間違いなく、エルフ側の問題だ。  アーティファクト(Fit)に手を出そうとしなければ、この自体にはなっていない。  それを含めて解らせるために、リーゼには聞かせていた。  宿に戻ると、リーゼが抱きついてきた。 「リーゼ?」 「ごめん。ごめん。ごめん」  泣き顔で、俺に抱きついてきたリーゼは、謝るだけだ。  何に対して、謝っているのか?リ…

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2021/11/23

【第六章 ギルド】第三話 王都へ

 ミルと二人で、マガラ渓谷の受付に並んでいる。  チケットは持っている。通過はできるとは思うが、マガラ渓谷は敵方(アゾレム)の関所だと考えられる。  ミルは大丈夫にしても、”死んだことになっている”俺はどういう形になるのかわからない。 「次!」  関所の人間が偉そうにしている。  次が俺たちの番だ。  前は、行商人のようで、荷物を検めるのに時間が必要になっているようだ。 「リン。どうして、マガラ渓谷を越えるの?」  ミルの素朴な質問だけど、確かに説明をしていなかった。  まだ、時間が掛かりそうだし、簡単な説…

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2021/11/23

【第二章 帰還勇者の事情】第二十四話 魔法使い

 ユウキがニヤリを笑ってから、少女と大人たちに告げる。 「挨拶の代わりに・・・」  少女は、握られた手を見ると、少しだけ不思議な暖かさを感じた。 『聞こえますか?』  少女の頭の中に、目の前に居る男性・・・。ユウキの声が響いた。  びっくりした表情で、ユウキを見つめる。 『あっ手を離さないでください。すぐに終わります』  少女は、身体から倦怠感が抜けるのが解る。濁っていた視界もはっきりとしてくる。そして、同時にモヤがかかっていた思考がはっきりとしてくるのが解る。そして、目の前に居るユウキを見つめてしまった。…

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2021/11/17

【第十章 エルフの里】第十五話 償い

 カップが割れる音が、二人の間に決定的な違いが存在していることを物語っている。  ヤスは、エルフ族の長老が”綺麗事”だけを言っているようにしか思えない。”皆”のため。”繁栄”のため。そんな”こと”のために、長老衆やそれに近い者以外のエルフが犠牲になっている。  犠牲になっている者たちも、騙されているとは思わないまでも、何かがおかしいと感じるから、自分たちでなんとかしようとする。そのために、外部の者に攻撃的な態度を取る者たちが増えていく。そして、一部の者たちと手を組んで、愚かな行為に出る。  自分たちが”優位…

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2021/11/02

【第六章 ギルド】第二話 いい女

 ナナは、俺とミルの話を黙って聞いてくれた。  冷え切った飲み物で、喉を潤す。  俺とミルの話が終わったと思ったのか、ナナは閉じていた目を開けて、俺を見つめてくる。 「リン君。いくつか、質問をしてもいい?」 「あぁ」 「まず、マヤちゃんは生きているのよね?」 「ミルと一つになったが、生きている。今は、神殿に居る。妖精になってしまっているから、連れてくるのは問題があると考えた」 「そう、わかった。マヤちゃんの本当の姿?なのよね?」 「マヤは、そう言っている。俺もよくわからないが、マヤは困らないから大丈夫だと言…

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2021/10/27

【第六章 ギルド】第一話 三月兎

 ミルは、妖精の姿を気に入っていて、元のサイズに戻ったときにも、背中に羽を生やそうとしていた。 「ミル。やっぱり、羽は・・・」 「僕には、似合わない?」  可愛く言っても・・・。確かに、似合っている。似合っているが、人ではないのが解ってしまう。 「似合うよ。すごく、可愛い。でも、これから、王都に行くのに、スキルやステータスは隠蔽でごまかせるけど、羽は無理だからね?」 「うん。わかった」  ミルは、服の袖を握りながら、目を閉じた。  羽だけを消すようだ。 「これでいい?」 「完璧!」 「よかった」  ミルが腕…

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2021/10/26

【第二章 帰還勇者の事情】第二十三話 客人

 ユウキたちは、客人をもてなす準備を始める。客人が、ユウキたちの拠点に来て、ポーションを渡すだけには出来ない事情ができてしまった。  部屋の準備はできているのだが、それ以外の準備ができていない。滞在は、長くはならないと仮定しているのだが、客人の都合で伸びることも考えなければならない。 「今川さん。それで、客人は?」 「明日に、成田で、翌日には来る」 「わかりました。それでどうします?上級を利用しますか?」 「うーん。なぁユウキ。中級と上級の違いは?」 「違いですか?中級は、欠損は治りません、上級は欠損が治り…

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2021/10/24

【第十章 エルフの里】第十四話 長老

 紅茶を飲み込んでから、ヤスは長老を睨みつける。  諦めたのか、ヤスの前まで歩いてくる。  ヤスは、また指を鳴らす。  今度は、ヤスの対面に椅子が出現する。 「座れよ」  ヤスが自分のカップに注いだポットから、長老の前に置いたカップに紅茶を注ぐ。  ハイエルフだけあって、魔法の素養は人族に劣らない自信があった。  しかし、ヤスが使っている技(魔法)が見抜けない。他の長老との会話も不可能で、一人にされてしまった。  ヤスは、懐からボイスレコーダーを取り出す。  これも、長老には何をするものかわからない。 「警…

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2021/10/03

【第五章 マヤとミル】第二十話 王都へ

 神殿の拡張と、運営をマヤとロルフに任せて、俺とミルは、ギルドとの交渉を行うために、王都に向かうことにした。 「ロルフ。マヤ。神殿を頼むな」 「うん!」『かしこまりました』  マヤは、妖精の姿をしている。ブロッホの肩に乗って、元気に承諾をした。  マヤとミルは、二人で一人なのだ。ミルと一緒に王都に向かうと決めてから、いろいろと確認をしなければならなかった。  最初に確認したのは、”マヤとミルが離れても大丈夫なのか”だったが、距離は、問題にはならない。  マヤを乗せた、アウレイアとアイルが、王都を超える距離ま…

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2021/09/15

【第五章 マヤとミル】第十九話 草案と説明

「ミル。マヤは?」 「うーん」  ミルが渋っているところを見ると、マヤはマヤで用事があるのだろう。 「無理なら無理でいいよ。ロルフ」  今回は、ロルフと話をして、神殿の草案を考えればいい。そのあとの拡張は、ロルフとマヤで行えばいい。 『はい。にゃ』 「神殿の入り口を、マガラ渓谷の挟む形で作って、そこから一直線に通路を作る。両側に、店舗になるような建物を作る。中間地点に、訓練所に向かを場所を作るようにしたい。訓練所の通路を挟んだ正面には、集会場になるような広場を作りたい」  アロイの街は、アゾレムが管理してい…

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2021/09/14

【第二章 帰還勇者の事情】第二十二話 客人の事情

「ユウキ。明日の夕方に、富士山静岡空港に到着する」  今川が、ユウキが使っている部屋に入ってきて、予定を告げる。 「え?客人はフランスからですよね?」  富士山静岡空港に、フランスからの直行便はない(はず)。  どこかを経由する位なら、新幹線を使ったり、東名高速を使ったり、飛行機以外の交通手段を使ったほうが楽だ。フランスから来るのなら、愛知か成田か羽田だ。 「プライベートジェットだ。世の中、大抵のことは、金でなんとかなる」  今川の話を聞いて、”キョトン”とした表情をしてから、納得した顔をする。 「そうです…

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2021/09/12

【第十章 エルフの里】第十三話 立ち回り

「弟?」  ヤスに近づいてきたエルフ族は、目が虚ろになっている。  それだけで、ヤスが無視するには十分な理由だが、ヤスは”弟”という言葉に反応した。 「そうだ!俺の大切な弟を、貴様が攫った」 「は?」 「弟は、お前のような人族が持つには相応しくない物を回収しようとしただけだ。何も間違っていない。貴様が悪い!」 「あ!?」  ヤスのどこから出ているのかわからないような、威圧が含まれる声に男は気後れした。  しかし、自分が威圧で負けているのが気に食わないのだろう。さきほど以上の声でヤスに文句をぶつける。 「そう…

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