異世界の記事一覧
2021/12/15
【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜
少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。 そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』 屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。 ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』 ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。 会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…
続きを読む2021/12/14
【第十章 エルフの里】第十七話 ラフネス
遮音の結界が発動した。 長老は、何かを探している。目線が、ボイスレコーダーで止まる。もしかしたら、遮音の力で、ボイスレコーダーが無効になっていると期待しているのか?原理が解らなければ、無効になると考えても不思議ではない。 遮音の結界だけではなく、物理攻撃を弾く結界も発動しているようだ。外部からの攻撃を警戒しているのか?気が付かないフリをしておいた方がよさそうだ。何か、進展があったのだろう。 俺が考えるのもおかしな話だけど、もう少し腹芸とか学んだ方がいいと思うぞ?商人に騙されまくって、終わってしまうぞ…
続きを読む2021/12/04
【第六章 ギルド】第四話 王都の途中
街道に出るまでは、急いだ。アゾレムからの追っ手を警戒したが、追っ手どころか、俺たちの後ろからは誰もついてきていない。まだ、商人が揉めているのだろうか? 「リン?」 ミルが不思議そうな表情で俺を確認してくる。 「さて、森に向かおう、誰かが来ているだろう」 「うん」 ミルと二人で、近くの森に向かう。 さすがに、王都に向かう街道だけあって、整備されている。 マガラ渓谷を越えてから、1時間くらい走ると、いろいろな街道からの合流地点が見えてくる。この近くに森がある。この辺りで、お供として王都に向かう者がいる…
続きを読む2021/12/01
【第二章 帰還勇者の事情】第二十五話 証拠
少女が貴賓室に入って、護衛が扉の前を、メイドが内側を調べている為に、ヴェルとパウリはユウキに念話を繋げた。 『二人には、悪かったな』 『いいですよ。マイにも頼まれましたし、未来の国王の側近に恩を売るチャンスですからね』 『ヴェル。俺は、宰相になるつもりはない。異世界と地球の秘境をめぐる旅がしたいと思っている』 『ユウキもヴェルも、その話はマイがなんとかすると言っていたでしょ。それよりも、ユウキ。護衛の一人で間違いはなさそうよ』 『わかった。パウリ。助かる』 わざわざ手が足りているのにも関わらず、ユウキが…
続きを読む2021/11/23
【第十章 エルフの里】第十六話 ネタバラシ
長老との話はマルスを通して、リーゼも聞いていた。 リーゼが自分の責任だと言い始めてしまったためだ。リーゼに責任は一切ない。元々が、リーゼの願いが始まりだったが、今回の件は間違いなく、エルフ側の問題だ。 アーティファクト(Fit)に手を出そうとしなければ、この自体にはなっていない。 それを含めて解らせるために、リーゼには聞かせていた。 宿に戻ると、リーゼが抱きついてきた。 「リーゼ?」 「ごめん。ごめん。ごめん」 泣き顔で、俺に抱きついてきたリーゼは、謝るだけだ。 何に対して、謝っているのか?リ…
続きを読む2021/11/23
【第六章 ギルド】第三話 王都へ
ミルと二人で、マガラ渓谷の受付に並んでいる。 チケットは持っている。通過はできるとは思うが、マガラ渓谷は敵方(アゾレム)の関所だと考えられる。 ミルは大丈夫にしても、”死んだことになっている”俺はどういう形になるのかわからない。 「次!」 関所の人間が偉そうにしている。 次が俺たちの番だ。 前は、行商人のようで、荷物を検めるのに時間が必要になっているようだ。 「リン。どうして、マガラ渓谷を越えるの?」 ミルの素朴な質問だけど、確かに説明をしていなかった。 まだ、時間が掛かりそうだし、簡単な説…
続きを読む2021/11/23
【第二章 帰還勇者の事情】第二十四話 魔法使い
ユウキがニヤリを笑ってから、少女と大人たちに告げる。 「挨拶の代わりに・・・」 少女は、握られた手を見ると、少しだけ不思議な暖かさを感じた。 『聞こえますか?』 少女の頭の中に、目の前に居る男性・・・。ユウキの声が響いた。 びっくりした表情で、ユウキを見つめる。 『あっ手を離さないでください。すぐに終わります』 少女は、身体から倦怠感が抜けるのが解る。濁っていた視界もはっきりとしてくる。そして、同時にモヤがかかっていた思考がはっきりとしてくるのが解る。そして、目の前に居るユウキを見つめてしまった。…
続きを読む2021/11/17
【第十章 エルフの里】第十五話 償い
カップが割れる音が、二人の間に決定的な違いが存在していることを物語っている。 ヤスは、エルフ族の長老が”綺麗事”だけを言っているようにしか思えない。”皆”のため。”繁栄”のため。そんな”こと”のために、長老衆やそれに近い者以外のエルフが犠牲になっている。 犠牲になっている者たちも、騙されているとは思わないまでも、何かがおかしいと感じるから、自分たちでなんとかしようとする。そのために、外部の者に攻撃的な態度を取る者たちが増えていく。そして、一部の者たちと手を組んで、愚かな行為に出る。 自分たちが”優位…
続きを読む2021/11/02
【第六章 ギルド】第二話 いい女
ナナは、俺とミルの話を黙って聞いてくれた。 冷え切った飲み物で、喉を潤す。 俺とミルの話が終わったと思ったのか、ナナは閉じていた目を開けて、俺を見つめてくる。 「リン君。いくつか、質問をしてもいい?」 「あぁ」 「まず、マヤちゃんは生きているのよね?」 「ミルと一つになったが、生きている。今は、神殿に居る。妖精になってしまっているから、連れてくるのは問題があると考えた」 「そう、わかった。マヤちゃんの本当の姿?なのよね?」 「マヤは、そう言っている。俺もよくわからないが、マヤは困らないから大丈夫だと言…
続きを読む2021/10/27
【第六章 ギルド】第一話 三月兎
ミルは、妖精の姿を気に入っていて、元のサイズに戻ったときにも、背中に羽を生やそうとしていた。 「ミル。やっぱり、羽は・・・」 「僕には、似合わない?」 可愛く言っても・・・。確かに、似合っている。似合っているが、人ではないのが解ってしまう。 「似合うよ。すごく、可愛い。でも、これから、王都に行くのに、スキルやステータスは隠蔽でごまかせるけど、羽は無理だからね?」 「うん。わかった」 ミルは、服の袖を握りながら、目を閉じた。 羽だけを消すようだ。 「これでいい?」 「完璧!」 「よかった」 ミルが腕…
続きを読む2021/10/26
【第二章 帰還勇者の事情】第二十三話 客人
ユウキたちは、客人をもてなす準備を始める。客人が、ユウキたちの拠点に来て、ポーションを渡すだけには出来ない事情ができてしまった。 部屋の準備はできているのだが、それ以外の準備ができていない。滞在は、長くはならないと仮定しているのだが、客人の都合で伸びることも考えなければならない。 「今川さん。それで、客人は?」 「明日に、成田で、翌日には来る」 「わかりました。それでどうします?上級を利用しますか?」 「うーん。なぁユウキ。中級と上級の違いは?」 「違いですか?中級は、欠損は治りません、上級は欠損が治り…
続きを読む2021/10/24
【第十章 エルフの里】第十四話 長老
紅茶を飲み込んでから、ヤスは長老を睨みつける。 諦めたのか、ヤスの前まで歩いてくる。 ヤスは、また指を鳴らす。 今度は、ヤスの対面に椅子が出現する。 「座れよ」 ヤスが自分のカップに注いだポットから、長老の前に置いたカップに紅茶を注ぐ。 ハイエルフだけあって、魔法の素養は人族に劣らない自信があった。 しかし、ヤスが使っている技(魔法)が見抜けない。他の長老との会話も不可能で、一人にされてしまった。 ヤスは、懐からボイスレコーダーを取り出す。 これも、長老には何をするものかわからない。 「警…
続きを読む2021/10/03
【第五章 マヤとミル】第二十話 王都へ
神殿の拡張と、運営をマヤとロルフに任せて、俺とミルは、ギルドとの交渉を行うために、王都に向かうことにした。 「ロルフ。マヤ。神殿を頼むな」 「うん!」『かしこまりました』 マヤは、妖精の姿をしている。ブロッホの肩に乗って、元気に承諾をした。 マヤとミルは、二人で一人なのだ。ミルと一緒に王都に向かうと決めてから、いろいろと確認をしなければならなかった。 最初に確認したのは、”マヤとミルが離れても大丈夫なのか”だったが、距離は、問題にはならない。 マヤを乗せた、アウレイアとアイルが、王都を超える距離ま…
続きを読む2021/09/15
【第五章 マヤとミル】第十九話 草案と説明
「ミル。マヤは?」 「うーん」 ミルが渋っているところを見ると、マヤはマヤで用事があるのだろう。 「無理なら無理でいいよ。ロルフ」 今回は、ロルフと話をして、神殿の草案を考えればいい。そのあとの拡張は、ロルフとマヤで行えばいい。 『はい。にゃ』 「神殿の入り口を、マガラ渓谷の挟む形で作って、そこから一直線に通路を作る。両側に、店舗になるような建物を作る。中間地点に、訓練所に向かを場所を作るようにしたい。訓練所の通路を挟んだ正面には、集会場になるような広場を作りたい」 アロイの街は、アゾレムが管理してい…
続きを読む2021/09/14
【第二章 帰還勇者の事情】第二十二話 客人の事情
「ユウキ。明日の夕方に、富士山静岡空港に到着する」 今川が、ユウキが使っている部屋に入ってきて、予定を告げる。 「え?客人はフランスからですよね?」 富士山静岡空港に、フランスからの直行便はない(はず)。 どこかを経由する位なら、新幹線を使ったり、東名高速を使ったり、飛行機以外の交通手段を使ったほうが楽だ。フランスから来るのなら、愛知か成田か羽田だ。 「プライベートジェットだ。世の中、大抵のことは、金でなんとかなる」 今川の話を聞いて、”キョトン”とした表情をしてから、納得した顔をする。 「そうです…
続きを読む2021/09/12
【第十章 エルフの里】第十三話 立ち回り
「弟?」 ヤスに近づいてきたエルフ族は、目が虚ろになっている。 それだけで、ヤスが無視するには十分な理由だが、ヤスは”弟”という言葉に反応した。 「そうだ!俺の大切な弟を、貴様が攫った」 「は?」 「弟は、お前のような人族が持つには相応しくない物を回収しようとしただけだ。何も間違っていない。貴様が悪い!」 「あ!?」 ヤスのどこから出ているのかわからないような、威圧が含まれる声に男は気後れした。 しかし、自分が威圧で負けているのが気に食わないのだろう。さきほど以上の声でヤスに文句をぶつける。 「そう…
続きを読む2021/09/03
【第五章 マヤとミル】第十八話 神殿の拡張
ミルは、生き残れていないと判定されてしまうのではないかと考えているようだ。アドラの気持ち次第かもしれないが、多分ミルはまだ排除されていないように思える。アドラなら、負けが確定した時点で、無条件で白い部屋に戻すだろう。 「俺は、ミルはまだ大丈夫だと思っている。でも、たしかに、可能性は広げたほうがいいな」 「うん。僕もそう思う」 「マヤは?」 「うーん。まだダメ」 「そうか、マヤが活動出来るようになったら、話をしよう」 「うん。でも、瞳たちと協力体制は必須だと思うよ?」 「そうか?」 「うん。生き残るだけなら…
続きを読む2021/09/02
【第二章 帰還勇者の事情】第二十一話 反響
初めてのオークションが終わった。商品の引き渡しも終わった。 「ユウキ。時間を貰えるか?」 「大丈夫です」 森田が、拠点にあるユウキの部屋にやってきて、ユウキに資料を渡した。 「これは?」 「ユウキが望んでいた情報だ」 「え?もう?」 「・・・。あぁ」 「愚かですね」 「俺もそう思う。でも、暫くは無視するのだろう?」 「もちろん、焦らすだけ、焦らします。俺たちの唯一と言ってもよかった弱点・・・。母も父も、こちらに来てくれています。弟や妹に関しても、安全の確保が出来ています」 「そっちは、安心してくれ、先生…
続きを読む2021/08/31
【第十章 エルフの里】第十二話 交渉?
ヤスの目の前には、FITに攻撃を仕掛けた愚か者たちが、気絶した状態で放置されている。 『マルス!』 『はい』 『愚か者は、ここに寝ている連中か?』 『否』 ヤスの顔からは、”やっぱり”という表情が読み取れる。 実際に、FIT に攻撃してきた者たちは、先にFIT を盗もうとした者たちを助け出そうとした。何も出来ないと悟って、攻撃を加えたのだ。 『そうか、ひとまず、商人に話を・・・。面倒だな』 『マスター。個体名ラフネスに連絡して、引き取らせることを提案します』 『それが良さそうだな。マルス。ラフネスの居…
続きを読む2021/08/28
【第五章 マヤとミル】第十七話 拡張の理由
ブロッホは、謝罪するかのように頭を下げて、何も語らない。 「ブロッホ!」 マヤが無理をして、ミルを危険に晒すような行為を、”なぜ”俺に相談をしないで実行した。その理由が知りたいだけだ。 「リン。ブロッホは、悪くない。僕とマヤで決めた」 「ミル・・・。だから、”なぜ”を知りたい」 「リン。この神殿の、最初の拡張はリンがしたよね?」 「あぁ皆が過ごしやすいように・・・。虐げられた者たちでも、安心できる場所を作りたかった」 「うん。ロルフから話を聞いた。上位種であるアウレイアやブロッホは別にして、リデルやヴェ…
続きを読む2021/08/25
【第十章 エルフの里】第十一話 愚者
「ヤス。ごめん」 「リーゼが謝る必要はない」 「でも・・・」 「そうだな。気になるのなら、帰ったら、西門にできた店で、奢って貰おうかな?」 「え?あっうん!いいよ!帰ったら、一緒に西門に行こう!僕が運転するからね!」 テンションが上がったリーゼを見て、良かったと考えている。リーゼの責任ではない。エルフたちが悪いのは、ヤスにもリーゼにもわかっている。しかし、リーゼは、自分がエルフの里に来てしまったことが問題になっていると考えてしまったのだ。 ヤスに置いていかれると心の片隅で恐怖とともに、感じてしまっていた…
続きを読む2021/08/21
【第二章 帰還勇者の事情】第二十話 オークション
一部で有名になった、異世界から帰ってきた子どもたちは、日本に集結していると思われていたが—”帰ってきた29名だったが”—14名が消えるように居なくなってしまった。 記者会見をしている会場で、質問を受けている最中に、服と灰を残して消えた。ネットでの配信だけではなく、大手マスコミの前で実際に発生した。 ユウキたちが、森田を通してマスコミ各社に、記者会見を行うと通知してきたのがきっかけだった。 (別段、親しい間柄でもなかったが)”袖にされた”と考えていた大手マスコミにも仁義の意味で…
続きを読む2021/08/16
【第五章 マヤとミル】第十六話 管理者
「アウレイア。他には、魔力溜まりは見つかっていないのだな?」 『はい』 「ミル。見つかった魔力溜まりは任せていいよな?」 「うん。マヤと相談するけど、問題はないよ」 「それなら、神殿に戻るか?」 『マスター。眷属を、魔力溜まりの監視に残したいと思いますが、ご許可をいただけますか?』 監視は必要だな。それに、魔物が必要でも、間引きはしておいたほうがいいよな。 「そうだな。監視は、必要だ。ミル。いいよね?湧いた魔物の、間引きを含めて、アウレイアたちに頼んでも?」 「うん」 アウレイアたちには、引き続いて森の…
続きを読む2021/08/11
【第五章 マヤとミル】第十五話 嫌がらせ
『マスター!新しい、魔力溜まりを発見しました!』 「はぁ?」 街道までの距離を計測していたアウレイアからの報告だ。 『アウレイア。どういうことだ?』 アウレイアからの報告では、街道近くに新しい魔力溜まりができていて、低位の魔物が産まれ始めているという報告だ。 「ミル。どうする?」 「うーん。アウレイア。その場所って、神殿からどっちの方向?」 ミルが、普通に俺と話をしながら、アウレイアに繋げるという器用なことをしている。俺も練習をしてみよう。できるようになれば、いろいろなことができる。 アウレイアの報…
続きを読む2021/08/01
【第十章 エルフの里】第十話 リーゼの想い
ヤスとリーゼは、ラフネスの言い訳とも考えられる、”エルフの事情”を聞いた。 「そうなると、長老たちは、リーゼに無関心なのだな?」 「・・・。はい」 ラフネスは、素直にヤスの質問に答えた。 実際に、暴走したのはエルフの村に着ていた商人たちと取引があるエルフだ。それも積極的に、商人と交流を行って他種族と関わりを持とうとしていた。 ただ、やり方を間違えた。 今まで、他種族との付き合いをしてこなかった者たちが、いきなり商人と取引をした。そして、騙された。エルフ族は、アフネスなど、外の世界で生きていくことを…
続きを読む2021/07/31
【第二章 帰還勇者の事情】第十九話 準備と仕込み
ユウキは、自分で立てた計画通りに、一部では名前を知られる程度には有名になった。 会見(見世物)の動画も拡散されている。ユウキだけが、(本当の)顔と名前を出している。 拠点でユウキがやっているのは、所謂、連絡係だ。 連絡係をしながら、ユウキは自分の計画に必要な事柄を調査して、準備を進めている。 差し当たっての問題(法務関係)がクリアできたので、レナートに戻っていた。 「ユウキ!」 「悪いな。こっちは大丈夫なのか?」 ユウキが手を差し出すと、男女は嬉しそうな表情をして、ユウキの手を順番に握った。 「…
続きを読む2021/07/31
【第十章 エルフの里】第九話 エルフの事情
ラフネスは、ヤスとリーゼに事情を説明した。 説明を聞き終えたヤスは頭痛を抑えるような仕草をする。リーゼは、事情がよく飲み込めていないようで、ラフネスとヤスの表情を必死に読み取ろうとしている。 「ラフネス。率直な意見を言っていいか?」 「何を言いたいのか解っていますが、どうぞ?」 「エルフはバカなのか?」 「・・・」 リーゼがヤスの服の袖を可愛らしく引っ張る。 「ねぇヤス。どういうこと?エルフ族が、僕の持っているお金が欲しいってこと?」 「そうだな」 「僕、お金なんて持っていないよ?」 「そうだな。今の…
続きを読む2021/07/31
【第五章 マヤとミル】第十四話 魔力溜まり
「ミル!」 「大丈夫」 魔力溜まりに飲み込まれる状態になっている、ミルの声だけが聞こえてくる。 気のせいかも知れないが、魔力溜まりが小さくなっているように思える。 『マスター?』 「わかっている。周りには魔物は居ないのか?」 『はい。すでに駆逐しました』 「そうか、ありがとう」 魔物が湧いて出る様子もなくなった。周りを警戒していた、眷属たちが戻ってきている。 皆が、小さくなっていく魔力溜まりを見つめている。 5分くらい経って、ミルが顔を出す。 「ミトナルさん?」 「あっ・・・。説明、忘れた」 魔…
続きを読む2021/07/05
【第二章 帰還勇者の事情】第十八話 狩人
「ユウキ。俺たちも行ってくる」 「解った」 「2ヶ月で戻ってくる。ユウキ。頼む」「お願い」 ユウキの手を握りながら、頭を下げるのは、リチャードとロレッタだ。 「わかった。お前たちが帰ってくるまで、しっかりと守る」 「ありがとう」「ユウキ!感謝!」 リチャードとロレッタが、”転移”を発動させる。目的地は、アメリカのリチャードが育った。今は、誰も居ない教会だ。 「行ったか?」 「あぁ残っているのは、お前たちだけど、どうする?」 「ヒナは、残して行こうと思っていたけど・・・」「イヤ!」 「レイヤ。愛されている…
続きを読む2021/07/05
【第五章 マヤとミル】第十三話 ミルと狩り?
「リン。おはよう」 「マヤ?」 「うん!」「リン。今日は、マヤが身体を使う」 二人で取り決めでもしたのか? ミルが妖精の姿で、俺の肩に止まる。 「リン。僕。今日は、ロルフと神殿の調整を行うけどいい?」 「え?調整なら俺が行うぞ?それに、言ってくれたら、施設を作るぞ?」 「・・・。リン。僕にやらせて、お願い」 「・・・。わかった。無理するなよ?神殿の調整には魔力を使うぞ」 「うん!大丈夫だよ!ありがとう」 マヤがミルの止まっていない方向から抱きついてきて、頬に唇をあてる。 「マヤ!」 ミルが、俺の耳元…
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