異世界の記事一覧
2021/10/27
【第六章 ギルド】第一話 三月兎
ミルは、妖精の姿を気に入っていて、元のサイズに戻ったときにも、背中に羽を生やそうとしていた。 「ミル。やっぱり、羽は・・・」 「僕には、似合わない?」 可愛く言っても・・・。確かに、似合っている。似合っているが、人ではないのが解ってしまう。 「似合うよ。すごく、可愛い。でも、これから、王都に行くのに、スキルやステータスは隠蔽でごまかせるけど、羽は無理だからね?」 「うん。わかった」 ミルは、服の袖を握りながら、目を閉じた。 羽だけを消すようだ。 「これでいい?」 「完璧!」 「よかった」 ミルが腕…
続きを読む2021/10/26
【第二章 帰還勇者の事情】第二十三話 客人
ユウキたちは、客人をもてなす準備を始める。客人が、ユウキたちの拠点に来て、ポーションを渡すだけには出来ない事情ができてしまった。 部屋の準備はできているのだが、それ以外の準備ができていない。滞在は、長くはならないと仮定しているのだが、客人の都合で伸びることも考えなければならない。 「今川さん。それで、客人は?」 「明日に、成田で、翌日には来る」 「わかりました。それでどうします?上級を利用しますか?」 「うーん。なぁユウキ。中級と上級の違いは?」 「違いですか?中級は、欠損は治りません、上級は欠損が治り…
続きを読む2021/10/24
【第十章 エルフの里】第十四話 長老
紅茶を飲み込んでから、ヤスは長老を睨みつける。 諦めたのか、ヤスの前まで歩いてくる。 ヤスは、また指を鳴らす。 今度は、ヤスの対面に椅子が出現する。 「座れよ」 ヤスが自分のカップに注いだポットから、長老の前に置いたカップに紅茶を注ぐ。 ハイエルフだけあって、魔法の素養は人族に劣らない自信があった。 しかし、ヤスが使っている技(魔法)が見抜けない。他の長老との会話も不可能で、一人にされてしまった。 ヤスは、懐からボイスレコーダーを取り出す。 これも、長老には何をするものかわからない。 「警…
続きを読む2021/10/03
【第五章 マヤとミル】第二十話 王都へ
神殿の拡張と、運営をマヤとロルフに任せて、俺とミルは、ギルドとの交渉を行うために、王都に向かうことにした。 「ロルフ。マヤ。神殿を頼むな」 「うん!」『かしこまりました』 マヤは、妖精の姿をしている。ブロッホの肩に乗って、元気に承諾をした。 マヤとミルは、二人で一人なのだ。ミルと一緒に王都に向かうと決めてから、いろいろと確認をしなければならなかった。 最初に確認したのは、”マヤとミルが離れても大丈夫なのか”だったが、距離は、問題にはならない。 マヤを乗せた、アウレイアとアイルが、王都を超える距離ま…
続きを読む2021/09/15
【第五章 マヤとミル】第十九話 草案と説明
「ミル。マヤは?」 「うーん」 ミルが渋っているところを見ると、マヤはマヤで用事があるのだろう。 「無理なら無理でいいよ。ロルフ」 今回は、ロルフと話をして、神殿の草案を考えればいい。そのあとの拡張は、ロルフとマヤで行えばいい。 『はい。にゃ』 「神殿の入り口を、マガラ渓谷の挟む形で作って、そこから一直線に通路を作る。両側に、店舗になるような建物を作る。中間地点に、訓練所に向かを場所を作るようにしたい。訓練所の通路を挟んだ正面には、集会場になるような広場を作りたい」 アロイの街は、アゾレムが管理してい…
続きを読む2021/09/14
【第二章 帰還勇者の事情】第二十二話 客人の事情
「ユウキ。明日の夕方に、富士山静岡空港に到着する」 今川が、ユウキが使っている部屋に入ってきて、予定を告げる。 「え?客人はフランスからですよね?」 富士山静岡空港に、フランスからの直行便はない(はず)。 どこかを経由する位なら、新幹線を使ったり、東名高速を使ったり、飛行機以外の交通手段を使ったほうが楽だ。フランスから来るのなら、愛知か成田か羽田だ。 「プライベートジェットだ。世の中、大抵のことは、金でなんとかなる」 今川の話を聞いて、”キョトン”とした表情をしてから、納得した顔をする。 「そうです…
続きを読む2021/09/12
【第十章 エルフの里】第十三話 立ち回り
「弟?」 ヤスに近づいてきたエルフ族は、目が虚ろになっている。 それだけで、ヤスが無視するには十分な理由だが、ヤスは”弟”という言葉に反応した。 「そうだ!俺の大切な弟を、貴様が攫った」 「は?」 「弟は、お前のような人族が持つには相応しくない物を回収しようとしただけだ。何も間違っていない。貴様が悪い!」 「あ!?」 ヤスのどこから出ているのかわからないような、威圧が含まれる声に男は気後れした。 しかし、自分が威圧で負けているのが気に食わないのだろう。さきほど以上の声でヤスに文句をぶつける。 「そう…
続きを読む2021/09/03
【第五章 マヤとミル】第十八話 神殿の拡張
ミルは、生き残れていないと判定されてしまうのではないかと考えているようだ。アドラの気持ち次第かもしれないが、多分ミルはまだ排除されていないように思える。アドラなら、負けが確定した時点で、無条件で白い部屋に戻すだろう。 「俺は、ミルはまだ大丈夫だと思っている。でも、たしかに、可能性は広げたほうがいいな」 「うん。僕もそう思う」 「マヤは?」 「うーん。まだダメ」 「そうか、マヤが活動出来るようになったら、話をしよう」 「うん。でも、瞳たちと協力体制は必須だと思うよ?」 「そうか?」 「うん。生き残るだけなら…
続きを読む2021/09/02
【第二章 帰還勇者の事情】第二十一話 反響
初めてのオークションが終わった。商品の引き渡しも終わった。 「ユウキ。時間を貰えるか?」 「大丈夫です」 森田が、拠点にあるユウキの部屋にやってきて、ユウキに資料を渡した。 「これは?」 「ユウキが望んでいた情報だ」 「え?もう?」 「・・・。あぁ」 「愚かですね」 「俺もそう思う。でも、暫くは無視するのだろう?」 「もちろん、焦らすだけ、焦らします。俺たちの唯一と言ってもよかった弱点・・・。母も父も、こちらに来てくれています。弟や妹に関しても、安全の確保が出来ています」 「そっちは、安心してくれ、先生…
続きを読む2021/08/31
【第十章 エルフの里】第十二話 交渉?
ヤスの目の前には、FITに攻撃を仕掛けた愚か者たちが、気絶した状態で放置されている。 『マルス!』 『はい』 『愚か者は、ここに寝ている連中か?』 『否』 ヤスの顔からは、”やっぱり”という表情が読み取れる。 実際に、FIT に攻撃してきた者たちは、先にFIT を盗もうとした者たちを助け出そうとした。何も出来ないと悟って、攻撃を加えたのだ。 『そうか、ひとまず、商人に話を・・・。面倒だな』 『マスター。個体名ラフネスに連絡して、引き取らせることを提案します』 『それが良さそうだな。マルス。ラフネスの居…
続きを読む2021/08/28
【第五章 マヤとミル】第十七話 拡張の理由
ブロッホは、謝罪するかのように頭を下げて、何も語らない。 「ブロッホ!」 マヤが無理をして、ミルを危険に晒すような行為を、”なぜ”俺に相談をしないで実行した。その理由が知りたいだけだ。 「リン。ブロッホは、悪くない。僕とマヤで決めた」 「ミル・・・。だから、”なぜ”を知りたい」 「リン。この神殿の、最初の拡張はリンがしたよね?」 「あぁ皆が過ごしやすいように・・・。虐げられた者たちでも、安心できる場所を作りたかった」 「うん。ロルフから話を聞いた。上位種であるアウレイアやブロッホは別にして、リデルやヴェ…
続きを読む2021/08/25
【第十章 エルフの里】第十一話 愚者
「ヤス。ごめん」 「リーゼが謝る必要はない」 「でも・・・」 「そうだな。気になるのなら、帰ったら、西門にできた店で、奢って貰おうかな?」 「え?あっうん!いいよ!帰ったら、一緒に西門に行こう!僕が運転するからね!」 テンションが上がったリーゼを見て、良かったと考えている。リーゼの責任ではない。エルフたちが悪いのは、ヤスにもリーゼにもわかっている。しかし、リーゼは、自分がエルフの里に来てしまったことが問題になっていると考えてしまったのだ。 ヤスに置いていかれると心の片隅で恐怖とともに、感じてしまっていた…
続きを読む2021/08/21
【第二章 帰還勇者の事情】第二十話 オークション
一部で有名になった、異世界から帰ってきた子どもたちは、日本に集結していると思われていたが—”帰ってきた29名だったが”—14名が消えるように居なくなってしまった。 記者会見をしている会場で、質問を受けている最中に、服と灰を残して消えた。ネットでの配信だけではなく、大手マスコミの前で実際に発生した。 ユウキたちが、森田を通してマスコミ各社に、記者会見を行うと通知してきたのがきっかけだった。 (別段、親しい間柄でもなかったが)”袖にされた”と考えていた大手マスコミにも仁義の意味で…
続きを読む2021/08/16
【第五章 マヤとミル】第十六話 管理者
「アウレイア。他には、魔力溜まりは見つかっていないのだな?」 『はい』 「ミル。見つかった魔力溜まりは任せていいよな?」 「うん。マヤと相談するけど、問題はないよ」 「それなら、神殿に戻るか?」 『マスター。眷属を、魔力溜まりの監視に残したいと思いますが、ご許可をいただけますか?』 監視は必要だな。それに、魔物が必要でも、間引きはしておいたほうがいいよな。 「そうだな。監視は、必要だ。ミル。いいよね?湧いた魔物の、間引きを含めて、アウレイアたちに頼んでも?」 「うん」 アウレイアたちには、引き続いて森の…
続きを読む2021/08/11
【第五章 マヤとミル】第十五話 嫌がらせ
『マスター!新しい、魔力溜まりを発見しました!』 「はぁ?」 街道までの距離を計測していたアウレイアからの報告だ。 『アウレイア。どういうことだ?』 アウレイアからの報告では、街道近くに新しい魔力溜まりができていて、低位の魔物が産まれ始めているという報告だ。 「ミル。どうする?」 「うーん。アウレイア。その場所って、神殿からどっちの方向?」 ミルが、普通に俺と話をしながら、アウレイアに繋げるという器用なことをしている。俺も練習をしてみよう。できるようになれば、いろいろなことができる。 アウレイアの報…
続きを読む2021/08/01
【第十章 エルフの里】第十話 リーゼの想い
ヤスとリーゼは、ラフネスの言い訳とも考えられる、”エルフの事情”を聞いた。 「そうなると、長老たちは、リーゼに無関心なのだな?」 「・・・。はい」 ラフネスは、素直にヤスの質問に答えた。 実際に、暴走したのはエルフの村に着ていた商人たちと取引があるエルフだ。それも積極的に、商人と交流を行って他種族と関わりを持とうとしていた。 ただ、やり方を間違えた。 今まで、他種族との付き合いをしてこなかった者たちが、いきなり商人と取引をした。そして、騙された。エルフ族は、アフネスなど、外の世界で生きていくことを…
続きを読む2021/07/31
【第二章 帰還勇者の事情】第十九話 準備と仕込み
ユウキは、自分で立てた計画通りに、一部では名前を知られる程度には有名になった。 会見(見世物)の動画も拡散されている。ユウキだけが、(本当の)顔と名前を出している。 拠点でユウキがやっているのは、所謂、連絡係だ。 連絡係をしながら、ユウキは自分の計画に必要な事柄を調査して、準備を進めている。 差し当たっての問題(法務関係)がクリアできたので、レナートに戻っていた。 「ユウキ!」 「悪いな。こっちは大丈夫なのか?」 ユウキが手を差し出すと、男女は嬉しそうな表情をして、ユウキの手を順番に握った。 「…
続きを読む2021/07/31
【第十章 エルフの里】第九話 エルフの事情
ラフネスは、ヤスとリーゼに事情を説明した。 説明を聞き終えたヤスは頭痛を抑えるような仕草をする。リーゼは、事情がよく飲み込めていないようで、ラフネスとヤスの表情を必死に読み取ろうとしている。 「ラフネス。率直な意見を言っていいか?」 「何を言いたいのか解っていますが、どうぞ?」 「エルフはバカなのか?」 「・・・」 リーゼがヤスの服の袖を可愛らしく引っ張る。 「ねぇヤス。どういうこと?エルフ族が、僕の持っているお金が欲しいってこと?」 「そうだな」 「僕、お金なんて持っていないよ?」 「そうだな。今の…
続きを読む2021/07/31
【第五章 マヤとミル】第十四話 魔力溜まり
「ミル!」 「大丈夫」 魔力溜まりに飲み込まれる状態になっている、ミルの声だけが聞こえてくる。 気のせいかも知れないが、魔力溜まりが小さくなっているように思える。 『マスター?』 「わかっている。周りには魔物は居ないのか?」 『はい。すでに駆逐しました』 「そうか、ありがとう」 魔物が湧いて出る様子もなくなった。周りを警戒していた、眷属たちが戻ってきている。 皆が、小さくなっていく魔力溜まりを見つめている。 5分くらい経って、ミルが顔を出す。 「ミトナルさん?」 「あっ・・・。説明、忘れた」 魔…
続きを読む2021/07/05
【第二章 帰還勇者の事情】第十八話 狩人
「ユウキ。俺たちも行ってくる」 「解った」 「2ヶ月で戻ってくる。ユウキ。頼む」「お願い」 ユウキの手を握りながら、頭を下げるのは、リチャードとロレッタだ。 「わかった。お前たちが帰ってくるまで、しっかりと守る」 「ありがとう」「ユウキ!感謝!」 リチャードとロレッタが、”転移”を発動させる。目的地は、アメリカのリチャードが育った。今は、誰も居ない教会だ。 「行ったか?」 「あぁ残っているのは、お前たちだけど、どうする?」 「ヒナは、残して行こうと思っていたけど・・・」「イヤ!」 「レイヤ。愛されている…
続きを読む2021/07/05
【第五章 マヤとミル】第十三話 ミルと狩り?
「リン。おはよう」 「マヤ?」 「うん!」「リン。今日は、マヤが身体を使う」 二人で取り決めでもしたのか? ミルが妖精の姿で、俺の肩に止まる。 「リン。僕。今日は、ロルフと神殿の調整を行うけどいい?」 「え?調整なら俺が行うぞ?それに、言ってくれたら、施設を作るぞ?」 「・・・。リン。僕にやらせて、お願い」 「・・・。わかった。無理するなよ?神殿の調整には魔力を使うぞ」 「うん!大丈夫だよ!ありがとう」 マヤがミルの止まっていない方向から抱きついてきて、頬に唇をあてる。 「マヤ!」 ミルが、俺の耳元…
続きを読む2021/07/05
【第五章 マヤとミル】第十二話 マヤとミル
「ふっふん!いいよ!ミル。リンに確認してもらおう!」「わかった」 マヤがミルの肩に移動している。 二人で一緒に詠唱を始める。 ん?魔法やスキルの呪文ではないな。はぁ・・・。フュ○ジョン?誰の仕込みだ?7つの珠を集めて、ギャルの(以下、自粛)。 光が二人を覆った。眩しいほどではないが、直視していると目が痛くなりそうだ。光は、それほど長い間は光っていなかった。 「え?」 間抜けな声が出てしまったが、しょうがないだろう。 光が収まったところに立っていたのは・・・。 「マヤ!」 それも、全裸の状態に戻…
続きを読む2021/06/22
【第二章 帰還勇者の事情】第十七話 磨いた牙
「ユウキくん。本当に、この条件でいいのか?」 佐川は、ユウキから渡された書類を見ながら、質問を重ねていた。最終確認という意味を込めて、ユウキに言葉をぶつける。 「構いませんよ。近くの方が、いろいろと便利でしょ。その代わり」 「わかっている。各国の研究者との窓口は引き受けよう」 佐川が欲しいと思っていた、ポーションの素材をユウキが渡す条件を入れている。 ユウキが佐川に頼んだのは、各国の研究所から上がってくる研究結果の取りまとめだけではなく、日本国内のうるさい連中への対応を任せた。特にうるさいのは、記者会…
続きを読む2021/06/18
【第二章 帰還勇者の事情】第十六話 朝倉比奈
私は、ヒナ。日本にいた時には、”朝倉(アサクラ)比奈(ヒナ)”と名乗っていた。 レイヤやユウキやサトシやマイや弥生と一緒に異世界(フィファーナ)に召喚された。フィファーナでの話は、悲しいことも多かったが、楽しいことも多かった。日本に居た時と違って、自分たちでできることが増えたのが一番の理由だ。 リーダは、サトシだが、実質的なリーダがユウキなのは皆がわかっていることだ。 ユウキには、日本に戻ってやりたいことが有った。私とレイヤにもやりたいこと・・・。知りたいことがある。 ユウキは、自分のことを棚上げ…
続きを読む2021/06/17
【第五章 マヤとミル】第十一話 全裸で復活?
「リン!ミルになんてことをするの!僕は、リンと居られるのなら、姿なんてどうでも良かった!リン!聞いているの?」 小さな小さな羽が生えている。不思議な形をした生き物だが・・・。マヤだ。マヤが、俺に話しかけている。 「マヤ」 「リン!僕のことは、いいの!なんで!ミルを犠牲にしたの!僕、本当に怒っているのだよ!」 マヤが、名前を呼んでいる。 手を伸ばす。 「・・・。マヤ。マヤ。マヤ。マヤ。マヤ。・・・」 「え?リン?何?」 マヤを両手で包むようにして、抱き寄せる。 温かい。小さな小さな妖精になってしまっ…
続きを読む2021/06/03
【第二章 帰還勇者の事情】第十五話 拠点
見世物は、休憩の後から加速していった。 大手が居なくなってくだらない協定や序列や忖度がなくなった。外国人の記者だけではなく、ネット系の記者たちも、ユウキたちに疑問をぶつけた。 スキルの質問は、ユウキが受けて実際に持っているスキルの中で、安全だと思えるスキルは、実演を行うことにした。 外国人の記者からは、暗殺や毒物に関するスキルに質問が集中したが、”出来ない”と返答する場面が多かった。それを信じるかどうかは、記者や読者に任せるしか無い。しかし”公”には、”出来ない”ことにしておく必要がある。 早く移…
続きを読む2021/06/02
【第二章 帰還勇者の事情】第十四話 マスコミ
「ユウキ!」 アロンソが、嬉しそうな顔でユウキに駆け寄ってきた。 休憩時間が、休憩時間になっていないのは、問題ではないようだ。 「ん?」 「ポーションの提供は、ミスター佐川から説明があった本数を考えてくれるのか?」 「説明?」 「初級が4本と中級が4本だ」 「佐川さんから、検証にはその本数が必要だと言われた」 「そうか・・・。ユウキ。俺たちは、違うな。研究所が、初級ポーションに500ドル。中級ポーションに1万ドルの支払いをする用意がある」 「え?」 「それに、検証の結果や研究結果は、全ての研究所で公開す…
続きを読む2021/06/01
【第二章 帰還勇者の事情】第十三話 見世物
ポーションの確認を終えて、記者会見をしていた会場に戻ってきたら、記者の数が半分になっていた。ポーションの確認から外された最前列に陣取っていた記者たちが、帰ってしまっていた。機材を抱えていた者も半数が帰っているので、会場で待っている者の数も減ってしまっていた。 司会が状況を説明しているが、それでも詰め寄る者は存在していた。 ”弾かれた”記者たちだ。残っていた者たちには、佐川から動画が送られることで落ち着いた。佐川の研究資料が付いているので、記事にするのには十分な資料になる。 森田と14番にも群がった。…
続きを読む2021/05/29
【第二章 帰還勇者の事情】第十二話 記者会見.3
視線が集中する記者は、番号札を投げ捨てて、出口に向かう。 司会が、冷静に指摘する。 「○○新聞の飯島さま。先程の質問が終わっておりませんが?」 「ふざけるな!俺は、こんな茶番に付き合うのは、馬鹿らしいと思ったから、帰る!」 「そうですか、○○新聞は、お帰りになるということですね。ご自身がされた質問に対する真偽を確認しないで、一方的にこちらを・・・。生還者たちを悪者にした状態で退場されるのですね」 飯島と名乗った男は、一度だけ振り向いたが、そのまま会場から出ていった。 「質疑が途中になりましたが、何方か…
続きを読む2021/05/27
【第二章 帰還勇者の事情】第十一話 記者会見.2
「それでは、記者会見を始めます。始めに、生還者の情報を・・・」 司会が、ユウキたちの情報を話し始める。 記者たちには、事前に情報として渡されているが、名前を呼ばれるときに立ち上がるだけでも、情報としては十分なのだろう。 10分ていどかかって、ユウキたちの諸元が発表された。 記者たちが黙って聞いているのには理由があった。まずは、ユウキたちが未成年だったことが大きな問題だ。ユウキたちは、記者会見で語られた情報に関しては公にしても問題はないと伝えている。しかし、姿かたちに関しては明言されていない。 そこ…
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