異世界の記事一覧
2020/09/07
【第四章 マガラ神殿】第十五話 ミトナル=アカマース・マノーラ
「ミル。この部屋を使ってくれ」 ミルを案内した部屋は、マヤの部屋だ。破壊された家の中で比較的に破壊が少なかった部屋だ。荷物が少なく、見ただけで何も無いのがわかるためだろう。 「この部屋?僕、リンと同じ部屋でも・・・」 「駄目だ」 「わかった。この部屋は?」 「マヤが使っていた部屋だ。ミルなら使っても文句は言わないだろう」 「・・・。ありがとう」 ミルの”ありがとう”の意味がわからなかった。 「リン。マヤの部屋に入る前に、僕・・・。水浴びがしたい。汗や血で汚れているから、マヤに失礼」 「あぁ悪い。気が付か…
続きを読む2020/09/07
【第九章 神殿の価値】第二十二話 ヤスの判断
「それで?」 サンドラは、次の話をする前に、資料をヤスに見せる。 「ヤス様。話は一つですが、その前に状況をお伝えします」 「頼む」 「はい。リップル子爵家から始まった騒動ですが、セバス殿やツバキ殿のご協力を得て、証拠が固められました。本来なら、王家がヤス様にお礼を言いに来るのが筋ですが・・・」 「必要ない」 「ありがとうございます。既に、ヤス様にご報告の通りに、指示を出した、公爵家と侯爵家は当主の交代と、領地の没収が完了しております」 「あぁ聞いている。クラウス殿の領地が増えるのだろう?寄り子に任せたとは…
続きを読む2020/09/05
【第九章 神殿の価値】第二十一話 サンドラへの提案
ヤスは、サンドラからの二つの報告を聞いて、少しの休憩を挟んだ。ヤスの問題ではなく、サンドラの体調を考えてのことだ。 会議に参加はしていなかったが、マルスからの指示を受けて、ツバキがタイミングを見て飲み物の替えを用意した。一段落したタイミングで飲み物の交換なのだが、サンドラの分だけしか用意されていなかった。 ツバキがお茶を替えている時に、セバスがヤスを探していると告げた。強制的に中断させる方法を取ったのだ。 部屋から一時的に出ていくヤスを、サンドラは見送った。気を使われているのだと解ったが、確かに休憩…
続きを読む2020/09/04
【第四章 マガラ神殿】第十四話 襲撃者(仮)
ロルフたちが襲撃者(仮)を捕獲するために、出ていった。 戦闘音が聞こえないから、戦闘にはなっていないのだろう。もしかしたら、一瞬で勝負がついたのかもしれない。 リデルの眷属たちが作った塀に座って、村を見る。 耳を澄ますと、大人たちが何かを叫んでいる。食料庫が燃えているのだ、当然だろう。それだけではなく、今まで無かった村を囲うように出来た壁も恐怖の対象なのだろう。 女性が村の中央広場に出てきて、何か怒鳴っている。数回だけだが言葉を交わしたことがあるのでわかるが、サラナの母親だ。金切り声(かなきりごえ…
続きを読む2020/09/04
【第九章 神殿の価値】第二十話 サンドラからの報告
大木の都(ヒュージツリーラント)に住む者たちは順調に増えている。しかし、神殿の都(テンプルシュテット)に住む者たちは増えていない。 カイルとイチカたちは、神殿の都(テンプルシュテット)で受け入れた。その後に、帝国で二級国民になっていた子どもたちも受け入れた。ヤスが決定したことなので、異議を唱える者は居なかった。神殿の都(テンプルシュテット)に住むには、マルスの審査が必要になる。厳しい審査だ。審査基準が公開されていないので、敬遠する者も多いのだ。しかし、他の村では、審査は王国の町や都市に近い状況なので、移…
続きを読む2020/09/01
【第四章 マガラ神殿】第十三話 ポルタ村
村長の首に当てている刀に力を入れる。刀身を手で掴もうとしたので、軽く蹴る。 「村長。なぜ、マヤを殺したのですか?」 「儂は、お前のことを・・・。そうだ、お前のことを考えて」 「はぁ?”俺のこと”を考えて?」 「そうじゃ。リンは、王都で暮らすにふさわしい。それに、どこで拾ってきたかわからない。血が繋がっていない妹なぞ、リンには必要ない。そうじゃ。儂が、邪魔な妹を排除してやった。お前には、領主様から女を与えてもらう。好きにしていい女だ」 「・・・」 首を落としたくなってしまう。 マヤのことを言っているのか…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第三十話
/*** イサーク Side ***/ 食事を終えて、部屋を移動した。 少し低い感じの椅子があり、そこに腰掛ける形になった。フィリーネが、俺の正面に座って、新しくやってきた、ドリュアスが、ピムの正面に座る。 俺の右隣に、ナーシャが座って、左隣がピムだ、その隣に、ガーラントが座る形になった。 テーブルの上には、何種類かの飲み物が置かれている。 飲み物の他には、パンのようだけど、一口サイズの物が置かれて、それが乗っている皿には、蜂蜜だと思われる物と、赤い甘い匂いがする物と、柑橘の同じく甘い匂いがする物…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十九話
/*** フィリーネ Side ***/ 私は、フィリーネ。大主様に仕える、ドリュアスの1人です。 ドリュアスの中で、名前持ちは、私と、もう1人だけなのです! 私たちは、ライ様の眷属である、スーン様の配下となるが、ライ様とスーン様から、大主様直轄になることを許されている。 他の眷属も同じ扱いだ。その中で、名前持ちは、魔蟲がそれぞれ6匹。最初に進化した者だと教えられた。エントも同じく、スーン様配下で5体が名前持ちになっている。ドリュアスは、スーン様からのご命令で、ヒト型になって、大主様のお世話をするメ…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十八話
/*** 獣人族 Side ***/ 「猫族よ。それは・・・いや、嘘を言ってもしょうがないな」 「エーリックたちは、知っていたのか?」 今まで、話の成り行きを見守っていた、ロロットが口を開いた。 「いや、もしかしてという気持ちは有ったが・・・伝説級の魔物を眷属に従えている。いや、伝説級に進化したのか?」 エーリックが、ロロットの問いかけに答える。 事実としては、”伝説級に進化した”が正解なのだが、今は、どちらでも結果は、変わらない。 「ヘルズ。これでわかったか?」 ロロットがヘルズに話しかける。 「…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十七話
さて、どうしたものか? 目の前で行われている事を、どう理解したらいいのだろうか? 俺は、獣人族の救出を行った。ここまでは、俺の気分の問題だ。俺がやりたいから、”やった”だけだ。 救出した獣人族を引き連れて、拠点に帰ってみれば、岩山の麓に、石壁が出来上がっていた。どのくらいの長さがあるのだろうか? 確かに、”獣人族を連れて帰る”と伝えた、伝え方が悪かったのか?2,000名規模なら、こんなにいらないよな? 数キロ・・・スーンからの報告では、5キロ位になるのだろう。扇形に石壁が作られている。俺がなんと…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十六話
/*** スーン Side ***/ 大主様が、明後日にはご帰還なさる。 獣人族を、1,274名引き連れてくるようだ。カイ様やライ様から、お聞きした所では、スキルカードや武装をかなりの数、確保されたようだ。 武装に関しては、大主様しか使わないのだが、人族の作る物の研究になるだろう。 当初、カイ様とウミ様が来られた時には、反抗的な態度を取って、ボコボコにされたのが懐かしい。”人族(カズト・ツクモ)に仕えないか?”と言われて、頭に来たのだが、エルダー・エントの我を軽く吹き飛ばす、カイ様と、スキルを使いこ…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十五話
各所に網を張っていた、人族を倒して、捕まっていた、獣人族を解放していった。 中央に突っ込んでいった、ライとはすぐに合流できた、ライに付けた蜘蛛たちは、保護した獣人族や、捕縛した人族を、エイントたちが作っていた、退避場所に送ったと言っていた。 残ったのは、ライと、一回り大きいリーダに指名した蜘蛛だけだ。 俺と、カイとライで、ウミの援軍に向かう事にした。 苦戦しているわけではなく、捕えられていた獣人族が多いのと、人族も多いので、移動が難しいと連絡が入っている。 「ライ。近くに居る、エントやビーナやアン…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十四話
/***** カズト・ツクモ Side *****/ 「エーリック。戦闘場所に検討がつくのか?」 「すまん。いえ、すみません。話から、黒豹族辺りだとは思います」 「エーリック。別に、言葉遣いは、普段のままでいいぞ。それよりも、場所か・・・戦闘が行われている。そうか!」 『ライ。近くに、スーンの手の者がいるよな?』 『うん』 『逃げた獣人たちは保護しているのだよな?』 近くに居るエントから念話が届く。 『はい。大主のお言いつけ通りに』 『案内はどうしている?』 『エントとドリュアスを付けています』 『わかっ…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十三話
/***** 3人の獣人 Side *****/ スーンが、部屋から出ていった。 「ふぅー」「死んだかと思った」「・・・」 「豹族の。お主」 「すまん。俺は、ブリット=マリー。ブリットと呼んでくれ。白狼族の、熊族の、すまん」 豹族の男は、頭を下げる。 事実、熊族や白狼族が言っている事はわかるが、3人居ればなんとかなると思っていたのも事実だ。それが、見透かされて、殺気だけで、心が折れてしまいそうになる。なんとか踏みとどまったのは、自分の肩に、豹族の命運がかかっている。それだけで、踏みとどまれた。 「いい…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十二話
「それで?」 「はい。奴隷商人も捕えております」 「そっちはいい。獣人族は?」 夕方の時間帯に、野営していた奴隷商人たちを急襲した。 戦闘は、10分もかからず終わったようだ。こちらには犠牲者はいないということだ。奴隷商人の側にも、怪我程度の者は居るらしいが死亡者はいないということで、参加した者たちを褒めることにした。 捕えられていた獣人族も最初は戸惑っていたようだが、食事を与えた所、落ち着いてきたと言う。 眷属たちが護衛している場所で一晩を過ごしてもらうことにした。奴隷商人は、全員に目隠しをして、こ…
続きを読む2020/08/31
【第二章 救出】第二十一話
/***** イサーク Side *****/ 俺は今猛烈に後悔している。 逃げるのが正解だったのではと思い始めている。しかし、逃げられるものではないと理解もしている。 ガーラントが小声で教えてくれた。 聞かなければよかったと思った。 俺たちを案内した4人だが、エントとドリュアスだという事が判明した。その上位者が居るという事は、エルダーエントである可能性が高い。 エルダーエント。 ”万物を知るもの”。”森の賢者”。そして、ブルーフォレストの支配層の一角。 それを従える者が居る。 俺たちは、…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第二十話
/***** ピム Side *****/ 僕はいま執事に抱きかかえられながら、ブルーフォレストの中を疾走しています。 当初は、僕も一緒に歩いていましたが、休憩時に、日数的にギリギリだと執事に相談した所、今のような所業になったのです。 なにこの速度?僕が普通に走るよりも早いそれだけではなく、近寄ってくる魔物を瞬殺している。 目で追っていると、瞬殺された魔物を、フォレストビーナが抱えて持っていっている。あぁこうして、危険が無いように間引いているのだな。 約4日かかった経路が、半日で踏破されてしまいま…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十九話
俺は、柄にもなく緊張していた。 今日始めて眷属以外の人と会うのだ。数日前から、エントやドリュアスに、客人への対応を教えていた。 教えると言っていたが、俺のリハビリでもある。 生前?は、いろんな人種に会ったが、失礼が無いように事前に知識を入れていたりしたが、こちらの人間の情報はあまりなかった。礼儀作法なんて知識も、与えられていない。もちろん、カイやウミやライは知らないようだし、エントやドリュアスも同じだ。 そこで、俺が考える・・・旅館のシステムを作ったときに、女将に聞いた最低限の礼儀作法(の触り)を…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十八話
/***** ピム Side *****/ 岩山の麓で一晩過ごした。 ブルーフォレストの奥地だ。イサークが目指していた山だが、近づいて、その切り立った山肌を目の当たりにすると、ヒルマウンテンだと認識できた。ミュルダから見える山が目の前にある。ミュルダから見える山肌は切り立った崖の様になっていて、サラトガやアンクラムから見える山肌は、木々が生い茂る普通の高い山に見えるのだ。 僕ら、ミュルダで生まれ育った者たちに取ったら、ヒルマウンテンは、”悪いことしたら、ヒルマウンテンに捨てるからな”と言われて育ってき…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十七話
俺の所に、冒険者から”会談を申し込む”と、いう連絡が来た。正確には、俺ではない。 ”デススパイダー・デスアント・デスビーナの主人に会って話がしたい”と書かれていた。それなら、ライやヌラ/ゼーロ/ヌルなのだろうけど、話ができるとは思えないし、本蟲?から、俺が大主だから、俺が出るのが良いという事になった。 相手も、”あるじ”が言葉が通じるのかわからないようで、羊皮紙に書かれた会談の申し込みを、俺が用意した温泉に貼り付けていったようだ。 言葉が理解できれば、これを持っていくだろうと考えた結果だ。先に、自分…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十六話
45階層のセーフゾーンは、いつものようになっている。 スキルは、レベル6石化がもらえたようだ。カイとウミとライと、眷属たちも無事スキルを得ている。初踏破時のボーナスは、どうなっているのかわからないが、少しだけいいものが出る時に、全く”ハズレ”の時がある。ガチャだと思っていればいいのだろう。 人数?的な縛りは無いが、ボス戦に参加していなかった者は、通常の踏破ボーナス相当で、初踏破ボーナスは、ボス戦に”はじめから”参加していた者だけで、呼子で呼び寄せた場合は対象にはならない。それでは、最初から大量に連れて…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十五話
やっと44階層フロアボスの前に来ている。 長かった、主に、カイとウミの喧嘩が、兄妹喧嘩だったのだが、兄が妹に勝てるはずもなく、ウミの主張が通された。 結局、どちらの主張を採用しても、大きな違いがないことは、すぐにわかったんだが、それでもカイとウミは納得できなかったようで、同じ場所にたどり着くのに、二種類の経路をたどることになった 「二人とも満足したか?」 『主様。申し訳ありません』『カズ兄ごめん』 『ウミ。何度も言いますが、主様に向かって!』『だってぇカズ兄は、カズ兄だよ』 はぁいつもの・・・ 「二…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十四話
俺たちは、朝起きてから、夕方から夜にかけて発生した事を、ライの眷属から報告を受けた。 どうやら、森の中に4人の人族が紛れ込んでいるらしい。魔物を倒しながら、山を目指しているという事なので、こちらに来ているわけではなさそうだ。そこで、蜘蛛と蟻に、人族の様子を見守るようにお願いした。 何か目的らしき物がわかったら、報告するようにお願いした。死なれるのも、目覚めが悪そうなので、水場と狩場がある場所に誘導するようにもお願いした。当面は、、自分たちでやってもらう事にした。 誘導もそれほど難しい事ではなく、ブル…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十三話
/***** ??? Side *****/ 三人の冒険者は、サラトガの街を出て、ブルーフォレストの中を進んでいた。 そこに、一人の男性が合流してきた。 リーダ格の男性が女性を気にしながら、合流してきた小柄な男性に声をかける 「どうだ?」 「やっぱり、街道は駄目な様だ」 小柄な男性は、もうひとりの大柄な男性から、水筒をもらって、口に含む。 落ち合ったのは、ブルーフォレストの中だが、魔物やダンジョンに向かう者たちを避けていたので、通常ルートからかなり外れている 「そうか、ブルーフォレストに逃げ込んで…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十二話
水路を作った翌日堀に十分な水が溜まっている事を確認した。排水用の水路も完成しているらしいので、水が出ているのかを確認した。 立派に、岩の隙間から水が出ている。洞窟の入り口を隠すように綺麗に流れている。 カイとウミは、引き続き44階層の探索を行っている。ライも昨日と同じだ。 堀ができたので、ログハウスの周りの畑仕事を行う事にしている。スキルの実験過程で見つけた使い方だが、速度向上スキルを付与した魔核を畑に入れる事で、果物が俺の常識以上の速度で成長した。 スキルの合計枚もかなりの数が溜まってきている。…
続きを読む2020/08/31
【第一章 遭遇】第十一話
気がついたら、転移(転生)してきてから、2年が過ぎた。 洞窟での生活が快適すぎる。ヌルゲーをやっているような感覚だ。転移してきた当初は、食べ物や飲み物に困ったが、飲み物は、スキルを付与した魔核で水が生み出される。それだけではなく、スキルの組み合わせで、エアコンのような物を作る事ができた。 食べ物も、ダンジョン攻略を行っている過程で、食用に適した魔物を倒して、食べている。果物も、十分な量が確保できている。 野菜に関しても、森に自生していた物を、実験的に栽培を行って、現在では食べきれないくらいの量が確保…
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