【第二章 救出】第二十五話

 

 各所に網を張っていた、人族を倒して、捕まっていた、獣人族を解放していった。
 中央に突っ込んでいった、ライとはすぐに合流できた、ライに付けた蜘蛛たちは、保護した獣人族や、捕縛した人族を、エイントたちが作っていた、退避場所に送ったと言っていた。
 残ったのは、ライと、一回り大きいリーダに指名した蜘蛛だけだ。

 俺と、カイとライで、ウミの援軍に向かう事にした。
 苦戦しているわけではなく、捕えられていた獣人族が多いのと、人族も多いので、移動が難しいと連絡が入っている。

「ライ。近くに居る、エントやビーナやアントたちを集める事はできるか?」
『えぇと。泉の方に行っている者も多いので、多くないですよ』
「構わない。ウミの支援にまわしてくれ」

 ここまで、人族を捕らえるとは思っていなかった。見積もりが甘かったな。それに、俺よりも弱い騎士が居るとは思っていなかった。いろいろ、世間知らずなのだろうな。

『主様!』
「そうだな。獣人族を優先して、泉に移動させよう。そこで、休んでから、拠点に戻ろう」
『はい』『わかった』

 持ってきた剣は、ゴブリンたちが使っていたものをなおした剣だ。ピム殿の仲間に、ドワーフが居るらしいから、剣を一本打ってもらえないかな?今、使っている剣は、身体のサイズに、有っているようには思えない。

 ウミが戦っていた場所には、人族の死体が転がっている。獣人族の子供を盾にして逃げようとしたので、殺したと報告を受けた。
 子供を盾にするような”クズ”は、殺しても問題ない。

「カイ。ウミ。ライ。殺した人族は、吸収していいぞ。スキルカードやステータスカードが出たらまとめておいてくれ」
『主様。わかりました』『はい!』『わかった』

 獣人族も少なくない犠牲が出ているだろう。
 獣人族の遺体は、泉まで運ぶ事にした。

 カイたちの吸収が終わるまでに、ライの眷属たちにお願いして、獣人族の移動を開始した。怪我をしている者には、治療を施す事にした。

// レベル5:治療
// 怪我/骨折の治療が行える。

 レベル5の治療を、レベル5相当の魔核に固定化して、治療に特化した魔道具をいくつか作った。
 1万程度の物だし”皆保険”がない世界だから、このくらいの値段なら妥当だと思っている。魔核に固定したのは、その方が使い勝手がいいからってだけだ、初期投資として2万程度だし、十分に役立ってくれるだろう。

 獣人族の移動のめどもたったし、面倒で、嫌な役目だけど、人族の尋問を行うか?
 憂鬱だな。面倒だな。どうせ偉そうに言うのだろう?宗教に絡んでいるような奴が居たら、面倒に鳴ることは間違いないだろうな。

『主様』

 吸収が終わった、カイが話しかけてきた。

「カイ。どうした?」
『はい。人族なのですが、一旦、ここに放置してしまってはどうでしょうか?』
「なぜ?そう思う?」
『今、スーンと話したのですが、連れて行くメリットがあまりにも少ないのです』
「そうだよな。でも、情報は持っているだろう?」
『情報が必要なら、”隠密”や”影移動”のスキルを持った者が街に忍び込みます』
「うーん。お前たちに危険な事を、やらせたくないのだけどな」
『主様。それは、僕たちも同じです。主様にイヤな思いをしてほしくないのです』

 そう言われると、やりたくない事を、無理にやってもいい結果にはならないだろうからな。
 それに、1,000名以上も捕虜にしてもしょうがないだろうからな。

「そうだ、ライ。泉の方にも、人族が居るのだよな?」
『うん。200くらいは居る』
「偉そうな奴はいた?」
『あるじ。ごめん。わからない。でも、なんたら教の偉いやつとか喚いていたのが居たらしいですよ』
「そうか、それなら話しは聞けそうだな」
『うん。まだ生きているから大丈夫!』
「わかった。それなら、ここにいる奴らは、このまま・・・じゃなくて、武装を解除して、男・女関係なく、全裸にしてスキルカードも全部没収してから解放するか?」
『それが良いと思います』
「あっ女の手枷だけ外して開放してやれ。それに、ナイフを一本だけ渡してやれ」
『はい。エントにやらせますがいいですか?』
「あぁ任せる。そうだ、スキルカードはどうやって取り上げる?」
『全部出さなければ、左手首を切り落とせば?』

 あぁ獣人族で、左手首がない遺体が多かったのはそういう理由なのか?

「スーン。拠点に居る。ロータルかブリットに聞いてみてくれ」

 ライが、スーンに聞いてくれるようだ。

 10分後
『あるじ。スーンが確認したら、簡単な方法は、”隷属化させる”だって。手首を切り落とすのは、スキルカードを持って、詠唱ができなくするためだって』
「わかった、具体的な方法は、隷属化するしかないって事だな。あとは、心を折って、自分から全部のスキルカードを出させる事だな」

 隷属化は、主人の設定が必要だという事だが、エントでも問題ないようだ。
 ただ、エントでも隷属させる事ができる限界があるから、スキルカードを吐き出させたら、主人の設定を消すようにすればいい。基本方針は決まった。

「カイ。隷属化のスキルは持っているか?」
『たしか、ウミが持っていたと思います』
『カズ兄。あるよ!』
「魔核は、ライが持っていたよな?隷属化だから、レベル5で大丈夫だよな」
『うん。あるよ!』

 ウミが持っていた隷属化のスキルは5つ。魔核は、まだまだ沢山あるので、5つもらった。
 隷属化スキルを、魔核に固定した。それを、近くに居たエント5人に持たせた。盗まれたりするとやっかいな未来しか見えないので、エントの中に埋め込む形にさせてもらった。

 フォレスト・エントが、進化してしまったようだが、気にしたら負けだと思う事にした。

// 種族:フォレスト・マスター・エント
// 固有スキル: 隷属化
// 体力:D-
// 魔力:D+

 うん。魔物は不思議だ
 魔核を融合できるのだろうか?今度、実験をしてみよう。魔核を吸収して、レベルアップができるのなら、かなり楽にできる事になってしまう。

 新しく、進化したフォレスト・マスター・エントたち5体に命じて、さっき言った通りに、処置を行う様にした。
 護衛に、ビーナやアントやスパイダーたちをそれぞれに付ける事にした。黙らせるために、数名なら殺して構わないと伝えておいた。人族から取り上げるなんて事をしなくても、ダンジョンに皆で潜ればすぐに回収できる程度の物だろう。
 そのために、眷属たちが傷つけられる方が嫌だ。

 スパイダーの糸で、手足を拘束して、口枷をしているので、それほどの反撃があるとは思えないが、武装を解除してから、1人づつ隷属化していく事にした。女は女だけで集めて、偉そうにしている奴らは、偉そうにしている奴らだけを集めて、行わせる。
 全員から武装とスキルカードを没収してから、女に武器を持たせて解放する事にした。男たちが、いままで女を同等とみなして、扱っていれば、助けてくれるだろうし、そうじゃなかったら、そうじゃない報いを受けるだろう。それは、俺には関係ないことだ。あとは、全裸のまま街に逃げ帰るなり、森に入って別の道を探すなり、好きにすればいい。

 他で捕らえた人族も、基本同じ対応でいいだろう。
 これ以上、フォレスト・マスター・エントを増やしてもしょうがないだろう、大変だろうけど、ここの人族の処理が終わったら、泉まで移動して、処理をしてもらう。

「カイ。ウミ。ライ。ここでの作業はこんなところか?」
『はい』『うん』『うん』

 俺たちも移動を開始する。
 泉に居るエントに、到着予定時間を伝える。連続移動で疲れているが、ここで野営するよりも、合流してから休んだほうがいいだろう。

 先に移動していた、獣人族たちと合流して、大きな集団で移動する事にした。
 なにかが襲ってきても大丈夫だとは思うけど、襲われないほうがいいのは間違いない。

 数時間後、石壁に囲まれて、柵が何重にもなっている場所にたどり着いた。
 もう少し自重してくれても良かったとは思うのだけどな。

 それほど深くもなさそうだし、幅も広くないが、堀まで作ってある。十分、前線基地として使えそうだ。
 橋の両側に、エントが並んでいる。俺たちを迎え入れてくれるようだ。

 橋を渡りきった場所には、臣下の礼を取っている獣人族が居た。
 部族長だけだろうか?見知った顔として、エーリックが居た。人族は1ヶ所に集められて、獣人族とエントが見張りをしているようだ。それは問題ない。対応として間違っていない。間違っていると思うのは、俺の前にひざまずいて、頭を垂れている”部族の代表”を名乗る者たちだ。

 うーん。なんで、こうなったのか、説明して欲しい。
「エーリック。ちょっと・・・」
「はい。ツクモ様」
「えぇーと。どういう事?」
「は?」
「うーん。なんで、みんな”ひざまずいて、頭を垂れている”の?」
「主を迎えるのに、ふさわしい格好です」
「まず、そこから話をしよう」
「いえ、俺たちは、ツクモ様に命を救われました。救われた命を、ツクモ様に尽くす事に使うのは当然の事です。これは、ツクモ様がダメだと言っても、我らの意見としてお受け取りください」
「そうか・・まずは、代表の者と話がしたいけどダメかな?」

 そういうと、二人が立ち上がって来た

「初めて御意を得ます。黒豹族族長。カミーユ=ロロットでございます。ロロットとお呼びいただければ幸いです」
「獅子族族長代理。ウォーレス=ヘルズでございます。父が生死不明のため、獅子族の族長代理をしております。ヘルズとお呼びください」
「カズト・ツクモです。それで、ロロット殿とヘルズ殿は、これからどうされますか?」
「ツクモ様。儂の事は、ロロットとお呼びください」「同じく、ヘルズでお願いします」

 なんか、獣人族は、格付けしないとダメな種族なの?
 同じパターンを繰り返しているように思えるのだけど?

「わかった。ロロット。ヘルズ。貴殿たちはどうしたい?」
「我らは、ツクモ様と共に!エーリックから話を聞きました。ぜひ、末席に我らも加わらせてください」

「うーん。それは問題ないのだけど、獣人族は今までバラバラに生活してきたのだろう?1ヶ所で生活しても問題はないのか?特に、兎族や狐族や鳥族も居るのだろう?」

 ロロットが一歩前に踏み出した。
 一番年長者が、ロロットなのだろう。答えてくれるようだ。

「問題ありません。種族で、食べる物が違う場合もありますが、人族と”ほとんど”変わりありません」
「そうなのか?」
「はい。種族で違うのは、種族スキルが違う事や、見た目の違いです。交配も問題ありません」
「そうなのか?その時には、ハーフになるのか?」
「いえ、基本的には、女の種族になります」

 へぇそうなると、自分の種族を増やそうと思って、女を攫っても、自分の種族が増える事が無いのだな。

「わかった、細かい事は、拠点に移動してからになるが、それで問題ないか?」

 皆が、一斉に頭を下げる。
 人数的に、女子どもが多いが、900名程度だろう。人族に捕えられている者をあわせて、1,200名程度だろうか?

 まだ、逃げている獣人族も居るだろうから、最終的に1,500名程度だと思えばいいかな?
 食料の備蓄はあるけど、さすがに、俺1人と考えていた場所に、いきなり1,500倍に増えたら、備蓄なんてあっという間に無くなってしまう。ダンジョン内での農業や狩りは早急に形にしないとならないだろうな。
 今まで、狩りで捨てていた魔物の肉も持ち帰るようにすればいいかな?

「さて、いきなりの事だったが・・・エーリック。ロロット。ヘルズ。捕えている人族は、俺の好きにさせてもらうがいいか?」

 3名がうなずく。

「恨みを晴らそうと思わないのか?」
「恨みがまったくないと言えば嘘になりますが、いまさら殺してもしょうがないでしょう。それに、我らの主は、ツクモ様です。ツクモ様の決定に従います」

「そうか、今回は、俺に対応を一任してもらうが、これから、もし、俺が間違っていると思ったり、納得できない事は、言ってくれ。その方が、俺は嬉しい」
「「「かしこまりました」」」

 フォレスト・マスター・エントの事と、先程の処遇を、族長たちに伝える。

「ツクモ様」
「なに?ヘルズ」
「あぁ先程の人族の処遇ですが」
「軽い?」
「いえ、既に左手首を切り落とした者も居まして」
「気にしなくていいよ。攻めてきたのだから、捕まれば、そうなることくらい解っていただろうからな」
「はっ」

 皆を見回す

「そうだ。ここで捕まっている連中は、獅子族や女子供を追い回した外道どもが多いのだよな?」
「はい」「そうなります」

 ヘルズとロロットが答える。

 もう少し罰をきつくしてもいいかも知れないな。

「そうだな。男は全員、切り落とすか?」
「へ?」「あっ」「ククク」

 ヘルズだけは、内容を把握したのだろう、笑いをこらえている。

「ツクモ様。その役目、我ら獅子族にまかせて頂けないでしょうか?」
「なぜ?」
「奴らの中に、我らを降伏させるために、我らの幼女を父親の前で犯した者が居ます。幼女も父親も殺されてしまいましたが、殺すよりも、ツクモ様のおっしゃっている罰の執行をしたいと考えております」
「そうか、余計に虚しくなるかも知れないぞ」
「かまいません」
「そうか、覚悟があるのなら、ヘルズに任せる。人族男子の”モノ”を切り落とせ。死んでしまったら、罰の意味も無いだろうからな。死なないように、治療をしてやれ、ライ!」
『はい。あるじ。これですよね!』

 レベル5治療が固定化された魔核だ。

「ヘルズに、これを貸し与える。切り落とした後で、治療してやれ」
「はっ!」

 眷属と獅子族の一部を残して、拠点に帰る事になる。
 人数も多い上に、女子供だけではなく、怪我をしていたり、体力が消耗している者も多い。半日の距離を、2日かけて移動する事になった。

 この辺りの采配は、黒豹族のロロットが得意だったので任せる事にした。

F1&雑談
小説
開発
静岡

小説やプログラムの宣伝
積読本や購入予定の書籍の情報を投稿しています
小説/開発/F1&雑談アカウントは、フォロバを返す可能性が高いアカウントです