【第二章 スライム街へ】第十話 準備
”それじゃもう一度、練習をしてから、天子湖に向かうよ!”
私の宣言で、皆が了承を伝えてくる。
川だと思っていた所は、天子湖という人口の湖だ。キャンプ場を、魔物が占拠した。近くの小屋には、オーガたちが居る状況だ。地図から、距離や広さを調べて、練習するための場所を裏山に設定した。広さだけではなく、家に残る者たちの協力を得て、模擬戦が出来るようにした。
そこで、戦略を考えながら、練習を行っている。
結界を併用するのがいいだろうという結論になった。
私たちが攻撃を開始すると、警官隊や自衛隊が、攻撃を開始する可能性がある。前からの攻撃なら、躱せる可能性も高いが、後ろからのそれも銃などの攻撃だと躱せない可能性がある。私やライなら、分体なので大丈夫だけど、家族が銃で撃たれたら・・・。
だから、物理攻撃を防ぐ結界を後方に展開する魔石を渡す。
キャンプ場を占拠している魔物や、小屋に居る魔物が逃げ出さないように結界を展開することにした。これで、警官隊や自衛隊が突入してくる危険を減らせる。自分たちだけで”全てを終わらせる”なんて考えては居ないが、自分たちだけで動いたほうが、連携やサポートを考えると、都合がいい。
作戦は、反対意見が多かったが、効率と成功率を優先した。
カーディナルに乗った私とアドニスに乗ったライが、警察隊と自衛隊が陣取っている場所と、魔物たちの間に降り立つ。
そこで、結界を発動する。
魔物が逃げられないようにするために、小屋にはキング&クイーンが急行して、結界を張って、オーガたちが出てこられなくする。
マスコミも居るだろうから、結界の中が見られないように、くもりガラスのような結界を作ってみた。それを、ドーンとアイズたちにキャンプ場を覆うように配置してもらう。
私とライは、武器を使って、魔物たちを殲滅していく、真ん中を付きっていく感じにして、結界を張り終えたら、皆が参戦する。魔物の数は、多いけど必ず複数で魔物と対峙する。勝率は上げられるだけ上げる。
キング&クイーンの偵察から、厄介なのは、オーガたちとオークの上位種と角二本のイノシシだと判断された。多数の、ゴブリンの色違いも確認ができるけど、何度か対峙したことがある。オークの色違いも何度か対峙しているので、3(ないしは4)対1の状況を作れば、アイズやドーンで対応が出来る。
私とライがキャンプ場に居る魔物の数を減らして、掃討戦に移行する。キャンプ場の掃討戦を行っている最中に、私とライとカーディナルとアドニスとキング&クイーンで、オーガを叩く。
一点突破。包囲殲滅作戦だ。かなり力技だけど、これが短時間に、こちらの消耗をあまり考慮しない作戦だ。オーガを隔離して、乱戦に持ち込ませない。それが一番だと結論が出ている。
練習をしている時に、問題が出て、対応した。
最後の練習(模擬戦)は、今までの問題が解決されている。スムーズに鎮圧が出来た。
”いい。本番は、何があるかわからない。わからないからこそ、皆、自分のことを大事にして欲しい。私やライは、分体で行く。だから、大丈夫というつもりは無いけど、皆が傷ついて倒れる方が、私は悲しい。私を悲しませないで、お願い。皆で、帰ってこよう”
天子湖に向かう者も、向かわない者も、皆が真剣な表情で私の話を聞いてくれる。
そして、しっかりと納得してくれる。了承の意思が伝わってくる。
荷物の確認を行う。特に、魔物たちを囲むように、結界を設置する者たちはしっかりと確認を行う。発動ミスを考えて、予備を持っていってもらう。煙幕の魔石は、見られないようにするためなので、発動しなくても、問題ではない。
”昼に出発するよ”
速度が出ない者たちは、先に出てもらう。それで、周りの調査を終わらせる。キャンプ場と小屋以外にも魔物が居る場合には、把握をしておく必要が有るだろう。自衛隊や警察隊や消防隊の車両や人員の確認もしておきたい。マスコミも居るだろうから、マスコミの位置もしっかりと把握しておく必要がある。
朝日とともに作戦を開始する。配置が終わったら、ライが意識の共有で知らせてくれる。
特に、キング&クイーンの配置は大事だ。予備戦力として、ピコン&グレナデンとテネシー&クーラーもオーガへの対応に向かう。キング&クイーンだけで問題がないと判断した場合には、予備戦力は、遊撃として全体を見てもらう。
作戦開始まで、3時間くらいある。
女の子の姿になって、皆に食事を提供する。ライも男の子になって手伝ってくれる。
魔物の肉も在庫が出来ているし、果物も大量ではないけど、入手が出来ている。
簡単な料理だけど、皆で食べると美味しく感じる。
『ご主人さま。フィズ隊。アイズ隊。ドーン隊。フリップ隊。ジャック隊。及び、ドーン隊。出立します』
”無理はしないように、状況が変わっていたら、連絡をするように・・・。本当に、無理はしないでね”
皆が鳴き声で応えてから、一斉に飛び立った。
それから、確認が終わった。キングたちが、私の前に並ぶ。フィズ達が出立してから、1時間くらい後だ。途中で、合流して向かうことになっている。
『ご主人さま。我らも出立します』
”うん。無理はしないように、作成は失敗しても、皆が怪我をしないで、帰ってこられれば、私たちの勝利だからね”
自分で言っておきながら、むちゃくちゃなことを言っていると認識している。
でも、本当に私は、皆が怪我をするのが嫌だ。誰ひとりとして、怪我をしてほしくない。
『はい。必ず!』
勢いよく羽ばたきをして、飛び立った。頼もしい。
『ご主人さま。守りは、安心してください。ご主人さまを守り、大切な場所を守ります』
”うん。ギブソンもナップもお願い。私は、家の中でライと一緒に居るから、家と裏山をお願い。無粋な侵入者は居ないと思うけど、万が一の時には、残っている者で、皆の帰ってくる場所を守ろう”
『はい!』
残る者たちを統率するのは、ギブソンだ。ギブソンが適任だと思っている。
パロットは、家の中を守る。裏山を含めた広い範囲は、ギブソンが担当することになっている。パルも眷属が大量に生まれているので、警戒に出ている。カラントとキャロルも、川と水路を使って、侵入者が居ないか監視を行う。
”カーディナル!”
カーディナルが、私の前に来て、頭を下げる。
”アドニス!”
アドニスも、カーディナルの横に来る。
”ライ!”
ライの分体がアドニスの横に移動する。
私も、分体を出して、カーディナルの上に乗る。
”さぁ魔物退治に向かうよ!”
最初に、ライを乗せたアドニスが、飛び立つ。
私を乗せたカーディナルが、ゆっくりとした速度で、地面から離れる。
家だけではなく、裏山より高い位置まで上昇してから、天子湖に向かう。ゆっくりとした速度から、徐々に速度を上げる。練習しているが、かなりの速度が出ているのが解る。
カーディナルが、ひと鳴きして、アドニスに合図を送る。
カーディナルとアドニスは、スキルを発動する。
さらに加速する。推定だけど、時速100キロは越えているだろう。このスキルを使えるのが、カーディナルとアドニスだけだ。
近づいてくると、各部隊に居るライと意識が繋がる。
状況の報告が続々と届く。
想定外の状況にはなっていない。
違うのは、キャンプ場に人だと思われる死体が増えている事や、壊された機材が増えているということだ。オーガたちにも動きはない。ただ、死体が増えているという報告も入ってきた。
決行は、予定通りに日の出に合わせる。
日の出と同時に、突入を行う。
”タイミングは、ライが!トリガーは私が行う。皆、準備をお願い!”
まずは、状況確認と準備を行う。
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