異世界の記事一覧
2022/02/25
【第六章 ギルド】第十二話 散策
見る物すべてが珍しいのか、ミアは周りを見ては、ミルに質問をしている。 ミルも嬉しそうに、ミアの手を握りながら、説明を行っている。俺から少しだけ前を歩く形になっていて、俺には二人の会話が聞こえない。 「あるじ!」 ミアが、後ろを振り返って俺を見た。 「どうした?」 「ミルお姉ちゃんと、あるじは”ふうふ”なの?」 「ん?ミトナルさん?」 ミルを見ると、視線を逸らした。 レオが目線をそらすという器用な真似をしている。 「レオ!」 ”ワフ・・・” レオは、ミルを見つめる。 やはり元凶は、ミルのようだ。…
続きを読む2022/02/21
【第二章 帰還勇者の事情】第三十三話 契約
エアリスの周りを覆っていたスキルが解かれる。 そこには、自分の手足を触って、自分の顔を、自分の手で触って、耳の形を確認して、触った手を自分の目で見つめる。大きな目が印象的な少女が立っていた。 自分の目で見て、自分の手で確認して、立っていることを確認して、自分を見つめている視線に気が付いた少女は、足を進めようとした。 しかし、何年も自分の足で立ち上がっていなかった少女は、立っていることが奇跡のような状態だ。歩くのは難しい。 しかし、少女は自分を見つめて、目を見開いて、流れ出る涙を拭わずに、自分だけを…
続きを読む2022/02/21
【第十章 エルフの里】第二十四話 神樹
ほぉ・・・。 マルスが守る神殿とは違った美しさがある。 馬車を降りてから、20分ほど森の中を歩いて到着したのは、エルフたちの集落のはずだ。 「ここは?」 「集落の入口です」 「ヤス様。リーゼ様。里に向かう前に・・・」 ラフネスが、俺とリーゼの前に出て頭を下げる。 リーゼの方を向いている。 「そうだな。リーゼ。墓を見に行こう。里の中には作られていないのだろう?」 長老が申し訳なさそうな表情をするが、俺としては、素直に墓参りができそうな事に驚いた。何か、対価を要求してくる可能性があると考えていた。そ…
続きを読む2022/02/19
【第六章 ギルド】第十一話 到着
王都に入る為には、パシリカの時でもなければ、検閲を受けなければならない。 ハーコムレイ辺りと、ギルドが交渉してくれたら、もしかしたら楽になるのかもしれない。 今は、列に並ぶのが自然な事だ。 それに、目立ちたくない俺たちに取っては、列に並ぶ以外の選択肢はない。 結局、列に並ぶ前に、アウレイアの眷属をどうするのか結論が出なかった。 ミアがテイムしている”白狼(ホワイトウルフ)”だということにした。 本人?に確認をしたら、そのままミアの護衛としてテイムされても問題はないということになった。身振り手振…
続きを読む2022/02/13
【第二章 帰還勇者の事情】第三十二話 エアリス
ミケールは痛みに耐えながら、自分をまっすぐに見つめる少女に微笑みを向ける。 凝縮した痛みを受けているミケールを少女は流れ出る涙を拭わないで見続ける。 『ユウキ様。ありがとうございます』 少女は、まっすぐにミケールを見ながら、斜め後ろにいるユウキに感謝を向ける。 「いえ」 ユウキは短く言葉を発するだけだ。 治療の前段階は、終焉に近づいている。 ミケールは声が出せない。肩で息をしている。支えられなければ立っていられない。 『ミケール』 少女の呟きが室内に木霊する。 それだけ、室内には音が存在しな…
続きを読む2022/02/12
【第十章 エルフの里】第二十三話 秘密
里に向かって、”結界の森”を進む。 エルフたちは、この森を”結界の森”と呼んでいると教えられた。 結界は、なんとなくだが簡単に突破できそうな雰囲気がある。 「なぁ」 俺の前に座っているのは長老だ。 長老なら、俺の疑問に答えてくれるだろう。 「なんでしょうか?」 「結界を越える条件はなんだ?」 俺たちは、結界をすんなりと越えられた。 ラフネスも長老も問題はなかった。 この結界は、”ほぼ”俺がよく知っている結界と同じ物だ。 「え?」 「俺たちを襲った奴らは、結界に入る前に襲ってきた。これは、結界…
続きを読む2022/02/09
【第六章 ギルド】第十話 神殿では
リンとミトナルが、王都に到着しようとしている時、神殿では、マヤが頭を抱えていた。 「え?何?」 マヤは、リンが作成した地下通路の中央部に来ている。 中央部には広場が作成されているのだが、広場から離れて奥まった場所に、ロルフの反対を押し切って、森林を設置して、森林の先に一軒家を作った。森林の広さは、マヤたちが住んでいた村と同じくらいの広さがあり、一本の道が伸びている状態だ。 家には、一つの寝室とキッチンと風呂場とトイレとリビングがあるだけのシンプルな作りになっている。リンとマヤが元々住んでいた家から、…
続きを読む2022/02/07
【第二章 帰還勇者の事情】第三十一話 絶叫
優しく3回ノックされたドアを、ユウキが開けた。 そこには、車いすに乗った少女とそれを押しているミケールが居た。他には、誰も連れていない。 ユウキたちの拠点の中は安全だと言っても、今までは護衛の者が付いていたが、二人だけで、ユウキたちが待っている部屋を訪れた。 「決まりましたか?」 ユウキは、直球で少女に問いかけた。 『はい。残念ですが、ミケールを説得できませんでした』 『お嬢様』 「わかりました。準備はできています。地下で施術を行います」 ユウキたちは、立ち上がって地下に繋がる階段がある部屋に向け…
続きを読む2022/02/06
【第十章 エルフの里】第二十二話 ルーサ
「旦那!」 おい。おい。 「ルーサ?お前が来たのか?」 「おぉ。セバス殿から連絡を貰って、誰が来るのか揉めたけど、俺が勝ち取った」 「ん?」 「”大将が困っている”と聞いたぞ?」 「そうだな。困っているが、ルーサが来るほどの事ではないぞ?」 「別に、誰が来てもよかったのなら、俺でもよかったのだろう?それに、大型のアーティファクトが必須だと聞いたぞ?」 たしかに、最初の段階では必要がなかったが、襲撃者が増えてしまった。今では、バスでも狭い。トラックの荷台に詰め込む形がベストだな。 ルーサが乗ってきたアー…
続きを読む2022/02/01
【第六章 ギルド】第九話 ギルド(仮)本部では
リンがマガラ神殿で、マヤとミトナルが起きるのを待っている頃。 王都では、いろいろな事が発生していた。 王都の一等地に立つ店舗のような建物の中にある。一つの部屋で、女性だけ8人が集まって会議をしている。 「ルナ。それで?リン君たちはまだ見つからないの?」 王国に初めてできる組織の方向性を決める会議をしていた。先ほどまで、次期国王であるローザス王子とハーコムレイ次期辺境伯とギルドが正式に認められた場合に、ギルド長に内定しているナッセ・ブラウンと人材面のサポートを行うアッシュ・グローズが参加していた。 …
続きを読む2022/01/29
【第二章 帰還勇者の事情】第三十話 準備
ユウキの前に、ミケールが座っている。 「本当に?」 『はい。お願いします』 ユウキは、頭を抱えてしまった。 治療の方法をいくつかオプション付きで説明をした。翌日に、ミケールに連れられた少女がユウキを訪ねてきた。 そして、一番、非人道的だが、確実に治せる方法を選択したとユウキたちに告げたのだ。ここまでなら、ユウキたちも想定していた。準備に動き出そうとしたときに、一緒に来ていたミケールが、ユウキの前に進み出た。そして、治療を試すのを、自分でやって欲しい、少女の許可は取っていると、言い出した。ユウキたちは…
続きを読む2022/01/27
【第十章 エルフの里】第二十一話 誰?
逃げ出すのか? 男は、俺に土なのか?石なのか?わからない物を投げつけてきた。結界に阻まれているが、気分のいい物ではない。 石?に、気を取られたすきに、背を向けて逃げ出す。逃げられないのに、ご苦労なことだ。 聞こえるかどうかの声量で、マルスに指示を出す。 「(ファイアーウォール)」 逃げる男の前方に炎の壁が出現する。横に逃げようとしても、同じように、炎の壁ができる。 戦闘を終えた、ガルーダが俺の肩に降りて来る。 『マルス。戦闘不能にした者を確保してくれ』 『了』 戦闘不能になっていた、46人の足…
続きを読む2022/01/24
【第六章 ギルド】第八話 ステータス
ミアは、自分が従者だと認識はしていても、従者の役割がよくわかっていない。 今も、アウレイアの眷属に跨って・・・。正確には、眷属の白狼に抱きついて眠ってしまっている。俺とミルが、自分に危害を加えないとわかったのだろう。安心して眠ってしまっている。 「リン」 ミルは、ミアの髪の毛を触りながら、僕を見つめて来る。 もう、他の猫人族が離れてしまっているので、神殿にミアだけを向かわせるのは難しい。不可能だと言い切ってもいい。戻すのなら、俺たちも、一度神殿に戻る必要がある。せっかく、マガラ渓谷を抜けたのに、戻っ…
続きを読む2022/01/22
【第二章 帰還勇者の事情】第二十九話 少女
私は、今”日本”に来ている。 事故で全身に火傷を負った。その時に、片耳と片目を失った。喉も焼かれて、言葉は出せるが、雑音が混じるような汚い声だ。 そして、火傷は、私の心まで焼いた。 パパは、私を治そうと必死に医師を求めた。 しかし、私も見た医師の反応は同じだ。パパの権力を恐れて、”難しい”以外の言葉を聞いた事がなかった。 左手は、癒着して開かない。右手は辛うじて動かすことができるが、火傷の後が疼いて痛い。 右足は膝から先が無い。左足は、腿から先に感触がない。存在してはいるが、触られても解らない…
続きを読む2022/01/21
【第十章 エルフの里】第二十話 襲撃
ラフネスは、ナビに驚いている。 今までの者たちも、移動速度にも驚くが、一番に衝撃を受けるのは、ナビの地図情報だ。 この世界では、地図は一般的ではない。国家機密と言ってもいいほどだ。しかし、神殿から提供している”アーティファクト(トラック)”には簡易的な物になってしまっているが、ナビが付けている。 知識があれば、取り外しもできるだろうが、簡易キットでもしっかりと固定している。外すと、主要な部品が離れるようにしている。盗難対策だ。アーティファクトないの道具だから、アーティファクトがなければ動かないと思っ…
続きを読む2022/01/16
【第六章 ギルド】第七話 ミア
「リン様。一つ、お願いがあります」 突然、猫人族の長が俺に話しかけてきた。 「ん?」 長は、連れてきた少女を呼んでいる。固有名詞が無いのは、不便ではないのだろうか? 少女が、俺の前に出てきて、跪く。 どういう状況なのか解らない。ブロッホを見ても、何か納得した顔をしているだけだ。ミルを見てみても、首を横に振るだけで、俺と同じで困惑している。 「長?」 「リン様。この者を、リン様の従者として連れて行って頂けないでしょうか?」 状況がさっぱり解らない。 「どういうこと?」 ブロッホが耳打ちするように説…
続きを読む2022/01/13
【第二章 帰還勇者の事情】第二十八話 治療?
スパイにギアスをかけてから、2日が経過した。 「なぁユウキ。日本の・・・。いや、この場合は、地球にある”その手”の組織は、情報を軽く扱っているのか?」 「どうだろう?」 情報はユウキの予想を上回る速度で集まっている。 上がってくる情報を、ユウキと一緒に精査しているのは、リチャードとロレッタだ。 精査された情報だけが、ユウキたちに届けられるが、それでも驚くほどの情報が手元に蓄積される。 「なぁ」 「そうだな。ミケールに渡して・・・」 「ユウキ。”丸投げ”だろう?俺たちじゃ対処できない」 「そうだな。丸…
続きを読む2022/01/12
【第十章 エルフの里】第十九話 大興奮
話がまとまったので、リーゼを呼びに行く、隣の部屋なので、結界を解除して、声をかければ、すぐに部屋に入ってきた。 そこまではよかった。 栗鼠(カーバンクル)と、猫(キャスパリーグ)と、鷲(ガルーダ)を見て大興奮。 可愛い以外には言葉が離せなくなってしまったのかと思うくらいに大興奮だ。 「リーゼ?リーゼさん?」 「なに、ヤス。今、忙しいのだけど!」 「眷属に会ったことがあるよね?」 「・・・。うーん。栗鼠(カーバンクル)には会っていない!ヤス!こんなかわいい子を隠していたの?」 「隠していない。会わせた…
続きを読む2022/01/07
【第六章 ギルド】第六話 猫人族
力の波動?を抑える話になっていたが、元々は、ブロッホに洞窟の奥に潜んでいる獣人との接触を頼むためだ。 「ブロッホ」 「はい」 「洞窟の中に居る獣人は、無事なのか?」 「無事か・・・。解りませんが、こちらを警戒しています」 「わかった。俺とミルは少しだけ離れた方がいいか?アイルが居れば、大丈夫だろう?」 「はい。旦那様たちは、入口から離れた場所でお待ちください」 「ミル。少しだけ離れるよ」 「うん」 ミルが、俺の腕を取る。 洞窟から直接見えない位置まで下がる。丁度いい場所に、露出している岩があったので、…
続きを読む2021/12/31
【第二章 帰還勇者の事情】第二十七話 ギアス
ユウキたちは、安全になってから、お嬢様の治療をしたほうがよいと考えていた。 ミケールも賛同した。問題の解決には、2週間程度は必要だとミケールから告げられた。 ユウキたちは、”2週間”という時間は、襲撃者たちの対応ではなく、反乱分子の始末に必要な時間だと考えていた。 しかし・・・。 「ユウキ!お客さんが来ているぞ」 「そうだな。いつもと同じ対処で頼む。質も落ちてきているから、捕えるだけでいい。後は、ミケールに渡して終わりにしよう」 最初の襲撃があってから、10日が過ぎているが、当初は夜だけの襲撃だっ…
続きを読む2021/12/31
【第十章 エルフの里】第十八話 召喚
「ヤス様。主様?」 ラフネスが、跪いている。 不思議に思ったのが、ラフネスの立ち位置だが、問題にはならないようだ。 まずは、立たせたい。それで、ソファーに座らせた方がいいだろう。 「大丈夫だ」 「すぐに移動を開始しますか?」 移動と言われても、リーゼには準備が必要だろう。エルフの里だと言っているのだから、森の中を歩くことになるのだろう。俺も、靴は変えた方がいいかもしれないし、準備が必要になる。 それに、森で襲われたら、いくら結界があっても、絶対に安全だとは思えない。森は、やはりエルフの主戦場だ。 …
続きを読む2021/12/26
【第六章 ギルド】第五話 力?
洞窟の中から、こちらを伺っている様子が伝わってくる。 「リン。ぼくが行こうか?」 「どうして?」 「うーん。うまく言えないけど、中から伝わってくる雰囲気が、リンを恐れているように思える」 「俺?人畜無害だぞ?」 「ぼくは知っているから大丈夫だけど、すごい力を感じるよ?」 「え?俺が?」 「うん。気が付いていなかった?」 俺が驚いていると、リデルがミルの肩で頷いている。 気が付くわけがない。ミルもマヤも眷属たちも、態度が変わらないし、そうだ! 「ナナも、何も言わなかったぞ?」 え?なに?ミルが盛大な溜…
続きを読む2021/12/15
【第二章 帰還勇者の事情】第二十六話 夜
少女はユウキたちが用意した部屋で、眠りについた。 そのころ、ユウキたちは、普段とは違う侵入者たちへの対応を開始していた。 『ユウキ!』 屋敷の周りを守っている、リチャードからユウキに現状の報告が入る。 ユウキは、ユウキで侵入者に対応しながら、皆の状況をまとめて、指示を出している。 『そっちは、レイヤに任せる』 ユウキは、すでに対処を行っていることをリチャードに告げて、新しい報告を聞いて、次の一手を考える。 会話は、遠隔地でも通じる。スキルによるものだ。ユウキたちの情報を持って帰りたい者たちは、無…
続きを読む2021/12/14
【第十章 エルフの里】第十七話 ラフネス
遮音の結界が発動した。 長老は、何かを探している。目線が、ボイスレコーダーで止まる。もしかしたら、遮音の力で、ボイスレコーダーが無効になっていると期待しているのか?原理が解らなければ、無効になると考えても不思議ではない。 遮音の結界だけではなく、物理攻撃を弾く結界も発動しているようだ。外部からの攻撃を警戒しているのか?気が付かないフリをしておいた方がよさそうだ。何か、進展があったのだろう。 俺が考えるのもおかしな話だけど、もう少し腹芸とか学んだ方がいいと思うぞ?商人に騙されまくって、終わってしまうぞ…
続きを読む2021/12/04
【第六章 ギルド】第四話 王都の途中
街道に出るまでは、急いだ。アゾレムからの追っ手を警戒したが、追っ手どころか、俺たちの後ろからは誰もついてきていない。まだ、商人が揉めているのだろうか? 「リン?」 ミルが不思議そうな表情で俺を確認してくる。 「さて、森に向かおう、誰かが来ているだろう」 「うん」 ミルと二人で、近くの森に向かう。 さすがに、王都に向かう街道だけあって、整備されている。 マガラ渓谷を越えてから、1時間くらい走ると、いろいろな街道からの合流地点が見えてくる。この近くに森がある。この辺りで、お供として王都に向かう者がいる…
続きを読む2021/12/01
【第二章 帰還勇者の事情】第二十五話 証拠
少女が貴賓室に入って、護衛が扉の前を、メイドが内側を調べている為に、ヴェルとパウリはユウキに念話を繋げた。 『二人には、悪かったな』 『いいですよ。マイにも頼まれましたし、未来の国王の側近に恩を売るチャンスですからね』 『ヴェル。俺は、宰相になるつもりはない。異世界と地球の秘境をめぐる旅がしたいと思っている』 『ユウキもヴェルも、その話はマイがなんとかすると言っていたでしょ。それよりも、ユウキ。護衛の一人で間違いはなさそうよ』 『わかった。パウリ。助かる』 わざわざ手が足りているのにも関わらず、ユウキが…
続きを読む2021/11/23
【第十章 エルフの里】第十六話 ネタバラシ
長老との話はマルスを通して、リーゼも聞いていた。 リーゼが自分の責任だと言い始めてしまったためだ。リーゼに責任は一切ない。元々が、リーゼの願いが始まりだったが、今回の件は間違いなく、エルフ側の問題だ。 アーティファクト(Fit)に手を出そうとしなければ、この自体にはなっていない。 それを含めて解らせるために、リーゼには聞かせていた。 宿に戻ると、リーゼが抱きついてきた。 「リーゼ?」 「ごめん。ごめん。ごめん」 泣き顔で、俺に抱きついてきたリーゼは、謝るだけだ。 何に対して、謝っているのか?リ…
続きを読む2021/11/23
【第六章 ギルド】第三話 王都へ
ミルと二人で、マガラ渓谷の受付に並んでいる。 チケットは持っている。通過はできるとは思うが、マガラ渓谷は敵方(アゾレム)の関所だと考えられる。 ミルは大丈夫にしても、”死んだことになっている”俺はどういう形になるのかわからない。 「次!」 関所の人間が偉そうにしている。 次が俺たちの番だ。 前は、行商人のようで、荷物を検めるのに時間が必要になっているようだ。 「リン。どうして、マガラ渓谷を越えるの?」 ミルの素朴な質問だけど、確かに説明をしていなかった。 まだ、時間が掛かりそうだし、簡単な説…
続きを読む2021/11/23
【第二章 帰還勇者の事情】第二十四話 魔法使い
ユウキがニヤリを笑ってから、少女と大人たちに告げる。 「挨拶の代わりに・・・」 少女は、握られた手を見ると、少しだけ不思議な暖かさを感じた。 『聞こえますか?』 少女の頭の中に、目の前に居る男性・・・。ユウキの声が響いた。 びっくりした表情で、ユウキを見つめる。 『あっ手を離さないでください。すぐに終わります』 少女は、身体から倦怠感が抜けるのが解る。濁っていた視界もはっきりとしてくる。そして、同時にモヤがかかっていた思考がはっきりとしてくるのが解る。そして、目の前に居るユウキを見つめてしまった。…
続きを読む2021/11/17
【第十章 エルフの里】第十五話 償い
カップが割れる音が、二人の間に決定的な違いが存在していることを物語っている。 ヤスは、エルフ族の長老が”綺麗事”だけを言っているようにしか思えない。”皆”のため。”繁栄”のため。そんな”こと”のために、長老衆やそれに近い者以外のエルフが犠牲になっている。 犠牲になっている者たちも、騙されているとは思わないまでも、何かがおかしいと感じるから、自分たちでなんとかしようとする。そのために、外部の者に攻撃的な態度を取る者たちが増えていく。そして、一部の者たちと手を組んで、愚かな行為に出る。 自分たちが”優位…
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