【第六章 ギルド】第十四話 監視

 

おばちゃんから話を聞いた。
思っていた以上に王都は悪い方向に進んだようだ。これなら、王都を拠点にしないで、ギルドの本部ごと神殿に移動させたほうがいいかもしれない。いや、俺が考えることではない。ギルドのメンバーやハーコムレイたちが考えるべきことだ。
俺は、皆が”神殿”を選んだときに、受け入れるだけだ。

「リン。どうする?」

ミルが、レオの上に乗るミアの手を握りながら、俺に問いかける。

おばちゃんの話はたしかに衝撃的だけど、俺たちに何ができるかわからない。貴族同士の見栄の問題にまで発展しているのなら、俺たちができることは”捕まらない”ことくらいしかない。
アイツらが絡んでいるのなら・・・。今は、まだダメだ。敵対するにしても、力が無い。武力だけなら、ブロッホがいるから単体の武力だけなら勝てるかも知れないが、”軍”として考えると、まだまだ俺たちは足りない物が多い。

「どうするも・・・。まずは、ギルドに向かおう。おばちゃんの話では、大通りも危ないらしいから、それなら・・・」

大通りを、目立つ格好で歩いたほうがいいだろう。
おばちゃんのように、俺たちを見る者たちが多ければ多いほど、監視の目になる。

「そうだね。ミアのことも・・・」

「そうだな。レオには頑張ってもらわないと・・・」

レオの頭を撫でると、”ワフ”と鳴いて応える。おばちゃんの提案を受けて、ミルとミアにはフードのある外装を身に着けてもらっている。ミアは、耳と顔を隠すためだ。しっぽも外装で隠れる。レオの上に座っていれば、動かさなければ、レオの毛だと勘違いできる。
ミルは外装を嫌ったが、顔を隠さなければダメだとおばちゃんに怒られた。俺がお願いして、やっとフードを被ってくれた。

ギルドのメンバーを味方に引き入れる。
これは、確定だ。俺とミルとマヤと眷属だけでは、”武”では負けない自信がある。”軍”としては力不足だけど、”武”なら立花たちでは役者不足だ。しかし、”文”の部分では、”政”の部分では?

ギルドのメンバーの協力が必要になる。”政”の部分では、ルナの家とは繋がりを持っておきたい。

ふと気になったことをミルに聞いておこう。
ギルドについてからでは聞けない。

「なぁミル」

「なに?」

「ミルは、皆から離れるときに、なんて言って、出てきた?」

ミルは、王都でギルドのメンバーと一緒に居た。
そして、ハーコムレイやアルフレッドの護衛から剣術を習得していた。レベルは上がらなかったが、スキルの習熟ができたのは、訓練のおかげだろう。

「え?」

そんな不思議そうな表情をしないでほしい。

「だっておかしいだろう?」

「なにが?」

「ミル。ミトナルさん。何も言わずに飛び出したのですか?」

「うん。だって、僕はギルドのメンバーじゃないよ?リンと一緒にいるために、ギルドに近づいただけだよ?」

そうだ。
ミルは、そうだ。白い部屋でも同じだ。

もう諦めよう。

「ふぅ・・・。ミル。白い部屋で、俺に近づいたよね?」

白い部屋ではいきなりだったから驚いたけど、今は感謝している。

「うん。だって、リンが僕のステータスを覚えてくれるのが一番だと思ったから」

「そうだな。ミル。そのミルが、俺と一緒にいる」

「うん。当然だよ」

当然だと言い切るあたりがミルなのだろう。
でも、その当然は”ミル”の立場だから言えることだ。

「タシアナやイリメリやフェムは、俺と神崎凛を同一だと疑っていたけど、グレーの状態で止まっている」

ほぼ確実に、神崎凛と結びつけている。
証拠が無いから、グレーの状態で止まっているけど、ミルの行動から確実に神崎凛だと思っているのだろう。正直な感覚としては、ギルドのメンバーには、神崎凛だと知られても困らない。

「あっ!ごめん」

ミルも、理解できたようだ。

「いいよ。でも、このままグレーでいるよりも、神殿のことがあるから、明かしたほうがいいかもしれないな」

ミルが心配そうな表情をする。

「・・・。リン。僕」

ミルの頭を撫でる。
なぜか、ミアが俺の手を自分の頭に持っていくから、ミルの次にミアの頭を撫でる。

「いいよ。神殿を信頼してもらうには、必要なことだろう?それに、協力体制を結ぶのなら、ギルドだろう?」

「うん」

少しだけ考えてからミルが返事をする。
問題はない。勝負は始まったばかりだ。

方針が決まってスッキリした気持ちで、ギルドに向かう。
確かに、王都の人たちからの目線が厳しい。人が少ないのは、想定していたが、俺たち以外で歩いているのが居ないとは思わなかった。建物から見ているだけだ。おばちゃんのように助け舟を出してくれる者は現れない。

ギルドの建物が見えてきた。
どうやら、ギルドは無事にオープンできたようだ。看板?がかけられている。でも、あれじゃぁどんな場所なのかわからないだろう?

「リン?」「あるじ!ミル姉?」

二人が心配して、俺の顔を見ている。
二人の頭をなでてから、気分を取り直して、ギルドに向かう。

ギルドに向かおうと、方向を変えた瞬間に、今までと違う視線を感じる。
俺たちを監視対象にしたかのような視線だ。

「ミル!」

ミルも気がついているようだ。
俺は、視線を感じるくらいだけど、ミルならもっと違う情報が得られるだろう。

「うん。見られている」

やはり。
俺の感覚は正しかった。当たってほしくはなかったけど、当たったようだ。
俺やミルを待っていたのか?

「何人だ?」

俺は、人数まではわからない。
複数の視線だというくらいだ。

「僕がわかったのは、6人」

6人。
倍は居ると考えたほうがいいだろう。

なんのために?

「奴らか?」

立花たちだと厄介だ。
敵対するには早すぎる。情報が伝わったとしても、ここまで早い動きができるとは思えない。細田や西沢が動いたのか?

「違うと思う」

ミルの直感を信じると、奴らではない。
そうなると・・・。

「あるじ。ミル姉?」

ミアが俺とミルの服を引っ張る。

「どうした?」

「あのね。レオが、”あの建物を囲むように人が居る”って」

レオの探索はたしかに強力だ。

「そうか・・・。ありがとう」

ミアとレオを交互に撫でてから、ミルを見る。
同じ結論に達したようだ。

「リン。もしかして、僕たちを監視しているの・・・。じゃなくて・・・」

ギルドに向かう足を早める。

俺たちを狙った監視でなければ、緊張する必要はない。

「そうだな。ギルドを監視している」

俺とミルとミアなら、田舎から出てきた夫婦に見える。可能性が、少しだけある。夫婦に見えなくても、兄妹とかならギリギリ見えるだろう。
田舎からのお上りさんが、あっち見て、こっち見てと王都を散策していると考えてくれたらラッキーだ。

「それは?」

「多分、俺が提供した情報に起因している」

「そうなると、宰相派閥の貴族?」

「あぁこれで、”女”や”子供”が誘拐されている理由も・・・」

「え?」

「あの情報を持ってきたのは、俺だけど、宰相派閥の奴らはしらないよな?」

ハーコムレイがうまく利用してくれたら、俺の名前が出ることはない。

「そうだね」

「でも、どこからか情報が漏れるだろう。その中に、ハーコムレイの妹が、王都で”店”を開いた」

「そうか・・・。ギルドが、どんな場所なのかわからなくても、ルナを監視するだけでも意味がある」

「そうだな。そして、”女”と”子供”を誘拐している連中は、貴族に・・・。宰相派閥に命令されたのか、それとも金銭で雇われたか・・・」

「え?」

「ギルドのメンバーを思い浮かべればわかるよな?」

「ん?あぁ。皆、綺麗で可愛いよね。それに、ナッセのところには子供が・・・」

「有名なのは、ルナとフレットくらいだろう?」

「うん。もしかしたら、フェムも宿屋の看板娘だから知っている人はそれなりに居るかも・・・。でも、そうだね。僕を含めて、田舎から出てきた」

ギルドの入り口が目視できる場所まで来ると、監視していた視線に動きがある。
襲ってくるか?
それとも、監視を続けるのか?

これは、動いてみないと・・・。

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