【第五章 共和国】第二十話 最下層

 

W-ZERO3はしっかりと役割を果たしている。プログラムの最終確認をして、アルバンとエイダにも協力してもらった。

空気の膜を作って、俺たちを包んでいる。
割れる様子もない。
これなら、水の中でも大丈夫だ。エイダに外側からスキルで攻撃をさせてみたが、結界に阻まれて、空気の膜は保った状態をキープできている。

アルバンには、物理攻撃を加えさせたが、10回程度の攻撃では問題はなかった。
さすがに、アルバンとエイダの連携では結界が弾けた。

空気の膜だけになってしまうと、スキルでも攻撃でも、膜に触れてしまえば、膜は弾けてしまう。

アルバンとエイダの力を想定して、結界を二重にして、外側が弾けたら、内側に新しい結界が発動するようにプログラムを修正する。
おっと、終了条件が逆だ。これでは、結界が無限に生成されてしまう。中に居る俺たちを圧迫しかねない。

そうか、大丈夫だと思うけど、ストッパーを作っておく必要がありそうだ。
起動時に、結界の数を数え始めて、弾けて次の結界が正常に張れたら、カウントアップする。正常時だけでいいな。

結界の厚さは、0.1ミリにも満たない。
だから、1000回の張り直しをしても、100ミリ。10センチ程度だ。空気が圧縮されるとしても・・・。大丈夫だろう。そこまで、張り直される状況なら探索を中止して戻ってきたほうがいい。

カウントアップしていた変数が、1,024を超えたら、結界の発動をストップさせよう。ループからブレイクすればいい。

修正箇所を含めてテストを行った。

さて・・・。

「アル!」

「なに?兄ちゃん?」

「湖の中の探索に行くぞ、中央から・・・。そうだな・・・」

地面に円を書く

「このくらいの距離に居るようにしてくれ」

「わかった!」

「エイダは、端末を持って、中央に居てくれ、問題があったらすぐに知らせてくれ」

『はい。マスター』

湖に入る。
水は入ってこない。よし、成功だな。泡が定期的に発生している。うまく、作動している。酸素濃度は測れないけど、息苦しさを感じたら逃げ出せばいい。エイダは感じないだろう。俺かアルバンが感じたら浮上しよう。

さて、時間は黄金よりも貴重だ。
幸いなことに、湖の中・・・。水の中でも、視界は悪くない。

100メートルは無理でも、2-30メートルはクリアに視認できる。

「エイダ。W-ZERO3には、索敵も組み込んでいる。魔物の接近は?」

『クリア』

「わかった。アル」

「何?」

「前を確認してくれ、俺は、左右を確認する」

「うん」

「落ちるなよ。結界は、外からは弾くけど、中からは素通りだ」

「え?あっうん。わかった」

「エイダ。湖の中央に移動してくれ」

『はい』

エイダの誘導で、結界を動かす。
俺たちもエイダの移動に合わせて、移動する。多少遅れても、結界からはみ出なければ問題ではない。

何度か、エイダが魔物の接近を知らせたが、俺たちが近づけば、魔物が逃げていく、これなら、結界の再発動は必要なかったかもしれない。

5分くらいで、中央に到着した。

「兄ちゃん?」

「下に移動する」

移動した範囲には、下の階層に移動できそうな物はなかった。

湖底を探索する必要があるのか?
水深がどのくらいかわからない。水圧も気になる。

ダメそうなら、すぐに浮上だな。

「エイダ」

『わかりました』

下に潜り始めると、光が届かないはずなのに、明るい状態を保っている。
違う。

下からの光だ。
真下じゃない。

「エイダ。光の方向に移動」

『はい』

かなり深い。
5分くらい経過したか?

浮上する時間を考慮すれば、あと10分くらいが限界だ。

魔物との戦闘がないから、俺やアルバンが動かない。
酸素の消費は抑えられている。

「兄ちゃん!」

光の発生源が確認できた。
そうきたか・・・。

神殿。湖に沈んだ神殿。
ロマンがあるのは認める。

エイダの誘導で、結界は神殿に到達した。
入り口からは、空気の泡が定期的に出ている。中は、空気があるようだ。どういう理屈なのかわからない。考えても”ダンジョンだから”で終わってしまうだろう。でも、このギミックは”いい”ギミックだ。なんといっても、ロマンがある。

神殿に到達する。
結界を維持したまま中に入る。

確かに、空気はあるようだけど・・・。酸素なのか?呼吸は?

「エイダ。俺の合図で結界を発動できるようにしてから、結界を解除。解除のタイミングは、エイダに任せる」

『わかりました。・・・。・・・。・・・。準備ができました。結界を解除まで、3・2・1。解除』

結界が弾ける。
呼吸は?大丈夫。

「アル!」

「兄ちゃん。おいら。大丈夫」

周りを見回している。
確かに、湖の底なのか?

壁には水滴がついている。それで、湖底だと判断できるが、それがなければ、ここが湖底だとわからない。
壁が光っているのも一つの理由だ。

「エイダ。魔物は?」

『近くには反応はありません』

「そうか、アル。探索を始めるぞ」

「うん!」

今すぐにでも走り出しそうなアルバンを抑える。
神殿の中は、よくある”神殿”だ。柱があるが、道としては一本だ。大きな部屋がつながっている感じになっている。

外から見た感じでは、この大きさの部屋が3部屋。
次も同じ広さなら、もうひとつの部屋があるだけだ。空間の拡張がされていなければ・・・。

神殿は綺麗だ。
誰かが掃除をしているように思えてしまう。

扉まで問題はなかった。

エイダが調べたが、扉には罠がない。

『マスター。扉には、罠はありません。次の部屋に、強い魔物の気配があります』

「種別はわかるか?」

『もうしわけありません。魔物が存在する。それだけしかわかりません』

「わかった。アル。聞いたな」

「うん」

臨戦態勢を指示する。
扉は、エイダが開けられる。

俺とアルバンは、エイダの左右に陣取る。

扉がゆっくりと開く。

「ベヒモス!」

『違います。レッサー・ベヒモスです。ベヒモスよりも、数段下です』

エイダの訂正が入る。
レッサーなら、対処は簡単だ。

「エイダ。遠隔攻撃。スキルオープン」

『はい』

「アルは、エイダを守れ」

「うん!」

刀を抜いて、レッサー・ベヒモスに飛びかかる。
装甲を簡単に突破できるとは思っていないが、ヘイトを稼ぐ。できれば、片目だけでも潰せたら・・・。今後の展開が楽になる。刀で切りつけたが、やはり皮膚に傷がつくだけだ。スキルをまとわない切りつけではダメージを与えられない。

エイダからのスキルが被弾するが、やはり硬い皮膚に阻まれる。

ベヒモスは、足を動かす。
頭を低くした。

俺の方に突っ込んでくる。
ギリギリで躱す。この程度の速度なら余裕で、待ってからでも躱すことができる。

壁際まで突撃してから、振り返る。
エイダもわかっている。俺が攻撃するまでは、溜めている。

「兄ちゃん。おいらも!」

「アル。まだ早い」

アルバンを押し留める。
確かに、俺とアルバンで攻撃をすれば、ヘイトが分散されて、エイダへのヘイトが分散する。しかし、管理が難しくなってしまう。

ベヒモスがまた姿勢を低くする。
俺に向かってくる。今度は、余裕を持って躱す。すれ違いで、ナイフを右目に連続で投げる。

止まったベヒモスが、絶叫する。
振り向いた右目には、ナイフが刺さっている。

よし。

「アル!」

「うん」

アルが両手に剣を持って、参戦する。
あとは、右目の死角からアルバンが攻撃をして、俺は前面から攻撃を行う。

30分程度たったか?

エイダのスキルが炸裂した。
レッサー・ベヒモスの巨体が床に倒れ込んだ。

「・・・」

「・・・」

動かないレッサー・ベヒモスを確認するために、俺が近づくと、レッサー・ベヒモスが倒れた場所に魔法陣が現れる。

倒れた、レッサー・ベヒモスの巨体が光を放って、魔法陣に吸い込まれる。
光が収まると、宝箱と別の魔法陣が現れた。

「エイダ」

『移動する魔法陣のようです。次が最下層のようです。宝箱には、罠はありません』

やっと最下層が見えてきた。
宝箱を確認してから、最下層に挑むか?

その前に、少しだけ・・・。

疲れた。

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