スキルの記事一覧

2021/11/05

【第二章 スライム街へ】第十三話 到着

 バイバスに入っても、渋滞は解消しなかった。  興津川を越えた場所で、事故が発生している。事故は、一箇所ではなく、蒲原に入った場所と富士川の橋でも事故が発生していた。  そのために、到着予定時間が伸びてしまっている。ナビには、その先でも渋滞している状況が表示されている。 「円香!ダメだ。渋滞が酷い。76号を使うぞ」  上村蒼は、ナビを操作している榑谷円香に宣言する。 「富士富士宮由比線か?狭い場所が多いけど、大丈夫か?」  県道76号は、途中から山道になる。  山の中を突き進む。WRCのドライバーなら、10…

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2021/11/04

【第二章 スライム街へ】第十二話 悪対惡

”人が多い”  この前よりも、人が増えている。  スマホでも持ってくれば、調べられたのだけど、取りに戻る時間がもったいない。  魔物の数も増えている。  山側の封鎖が出来ていないのだろうか?  え? ”カーディナル。オーガの近くに移動して”  カーディナルにお願いをして、オーガたちが居た小屋が見える場所まで移動した。 ”なんで?”  そこに居るオーガたちは、人を捕らえている。残念ながら、死んでいるのは見た目で解る。頭が潰されている。  一人や二人ではない。目視だけだが、5-6人は犠牲になっている。もっと多い…

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2021/11/03

【第二章 スライム街へ】第十一話 天子湖

「はい。上村」  上村蒼は、運転しながら車のハンドルに付いているハンドフリーで電話を受けた。  車に装備されている機能を使っているので、相手の声も同乗者には解ってしまう。 『上村中尉!』 「どうした?珍しいな。間違えるな。俺は、もう中尉じゃないし、お前の上官でもない」 『失礼しました。上村さん。今、時間は大丈夫ですか?』 「あぁ車で、移動中だ。孔明とギルドのメンバーも一緒だが、問題はない」  上村蒼は、元部下にギルドの仕事で移動していると伝えた。  ギルドのメンバーが一緒だと伝えることで、会話が筒抜けになっ…

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2021/11/02

【第二章 スライム街へ】第十話 準備

”それじゃもう一度、練習をしてから、天子湖に向かうよ!”  私の宣言で、皆が了承を伝えてくる。  川だと思っていた所は、天子湖という人口の湖だ。キャンプ場を、魔物が占拠した。近くの小屋には、オーガたちが居る状況だ。地図から、距離や広さを調べて、練習するための場所を裏山に設定した。広さだけではなく、家に残る者たちの協力を得て、模擬戦が出来るようにした。  そこで、戦略を考えながら、練習を行っている。  結界を併用するのがいいだろうという結論になった。  私たちが攻撃を開始すると、警官隊や自衛隊が、攻撃を開始す…

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2021/11/01

【第二章 スライム街へ】第九話 相談

 キングとクイーンは、もう少し池?湖?川?の状況を確認したいらしい。  私とカーディナルは、急いで家に戻ることにした。  家では、既に私が状況を説明している。  私が家に戻ると、議論は終わっていた。  反対者は居なかったということだ。どうやら、ライが、私の受けた衝撃や哀しみを皆に伝えたようだ。ライが感じた衝撃や哀しみや憎しみが私に伝わるように、私に生じた感情は、ライにも伝わってしまう。 『ご主人さま。困りました』 ”ライ?どうしたの?”  私とカーディナルが到着してすぐに、ライとアドニスが近くにやってきた。…

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2021/10/30

【第二章 スライム街へ】第八話 だらける

 人の姿にも慣れてきた、元人間です。  女子高校生らしく、制服を着てみましたが、元々自分が着ていただけに似合っています。良かったです。パロットも似合っていると言ってくれている。ライに至っては、自分も人の形状になって制服を着たがったが、男性タイプにしかなれなくて、我慢してもらった。さすがに、自分の制服を男性顔のライが着るのには抵抗があった。  スキルを調整すれば、複数の女性タイプに慣れるのかと思ったけど、ライからの説明で、どうやら素体となった数が影響しているようで、人は女性タイプが一人と男性タイプが一人のよう…

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2021/10/29

【第二章 スライム街へ】第七話 急報

 ギルド日本リージョン本部に備え付けられている。ホットラインが鳴り響く。  その場には、本部に詰めるべき5人が揃っている。 「はい。ギルド本部。榑谷」 『よかった。こちら、清水消防署。森本です』 「魔物が出ましたか?」 『いえ、あっ。少しお知恵を拝借したい。警察にも連絡をしましたが、明確な証拠がないと、警察は動けないと言われてしまって・・・』 「簡単にでも構わないので、状況を教えて下さい」 『はい。通報が有ったのは、3時間ほど前です』  榑谷円香は、スピーカーから音が出来るようにしてから、近くの時計を見る。…

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2021/10/27

【第二章 スライム街へ】第六話 凶報

 パパとママが離婚する。  別に、僕としては問題ではない。僕の意見を聞いてくれて、パパと今の場所に住むことになった。ママは、やはり奴が出てきたら、一緒に生活をしたかったらしい。パパは、反対した。僕もイヤだと言い放ったら、僕を殴ってきた。  僕が、スキルを発動する前に、パパがママと僕を引き離して、ママに”出ていけ”と言ってくれた。  ママは、奴と一緒に住むことにしたようだ。  僕には、関係がない。もう他人だ。  気分がいい。パパは、仕事で名古屋に行ってしまった。  この家には僕しかいない。  学校も、連絡が来…

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2021/10/27

【第二章 スライム街へ】第五話 吉報?凶報?

 新生、ギルド日本支部。名前が変更されて、ギルド日本リージョン本部。  50坪程度の狭い場所が、日本のギルド本部になる。  狭い場所だ。居住できる場所を除くと、部屋は3つだ。  打ち合わせを行うための部屋だ。そして、この部屋は、盗聴に関しては、クリアの状態になっている。それ以上に、厳重なセキュリティで守られている場所が存在している。 「円香!」 「なんだ、孔明」 「俺の名前は、孔明(よしあき)だ。お前が、孔明(こうめい)と呼ぶから、里見嬢や柚木嬢まで、俺を孔明(こうめい)と呼びやがる」 「そうか、それなら、…

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2021/10/24

【第二章 スライム街へ】第四話 キメラ

 キメラに意識を移しても、本体はスライムのままだ。  複数になった意識をうまく使い分けるのには訓練が必要だ。そして、キメラの核となっていた魔石を、ライが吸収したことで、新たなスキルが芽生えた。  もしかして、スキルは”魔物の命”か”命の形”ではないのだろうか?検証ができる物ではない。概念なのかもしれない。ただ、スキルが芽生えるのが”命”を奪った時か、”魔石を吸収した”時なのが気になっている。ギルドで調べても、概念の話は書かれていない。専門家を名乗る人たちが書いている物を読んでも、ピンとこない。文章だけで、”…

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2021/10/23

【第二章 スライム街へ】第三話 タカとフクロウとキメラ?

 私の生活が一変してから、1ヶ月が経過した。  世間は、とある感染病で自粛が続いている。学校も、8月の末から始まる予定だったが、緊急事態宣言が発布されて、延期になったと教えられた。  久しぶりにスマホの電源を入れたら、同級生からメールが来ていた。  私が休学になったのを聞いて、連絡をしてきてくれたらしい。当たり障りのない返事を出したら、それからメールが来なくなった。皆が、自分のことで忙しいのだろう。元々、学校では一人だった。家族が居なくなって、独りになった。学校でも、独りになることが多かった。  でも、今は…

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2021/10/22

【第二章 スライム街へ】第二話 検証

 学校が始まった。  スライムになってしまった。私には、無縁な世界だ。でも、なんとなく寂しいので、学校を覗きに行った。もちろん、私が行こうとしたら、皆から反対された。危ないというのが、家族たちの考えだ。強固に反対をしたのが、ラスカルだ。  ラスカルは、やはり山に捨てられた一族の生き残りだった。飼えなくなった人が、ラスカルたちを山に捨てた。そして、オークに襲われた。辛うじて生き残ったラスカルが私の家族に加わった。そのために、他の者たちよりも、人に対する警戒と嫌悪が強い。私が”元”人だと言っても、私は私だから、…

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2021/10/03

【第二章 スライム街へ】第一話 後始末

 ギルドの日本支部は荒れていた。  本部からの発表で、”情報管理部”と”スキル管理部”と”登録者管理部”だけが残されて、他が解体されることになった。主な理由は、企業からの献金を着服していた事実と、魔石の横流しの事実と、情報漏えいの事実が見つかった。特に、スキル保持者の情報や魔物の情報をプロトコル(正規の手順)以外の方法で流出させたのが問題になった。  解体された部署を仕切っていた者たちは、多くの者が横領で当局に告発された。  それだけではなく、ギルド本部にて査問に掛けられた。日本での法律では、”白”に出来る…

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2021/10/01

【第一章 スライム生活】第二十九話 一匹のスライム

 どうやら、カーディナルたちは裏山の東側を、徹底的に調査を行うようだ。  ドーンやフリップやジャックだけではなく、ダークまで呼んでいる。  実際に、ゴブリンが2体と、色が違うゴブリンが1体と角が生え犬のような生き物が居た。  アドニスが誘導して、私が岩を落として仕留めた。  最初は、カーディナルたちが戦おうとしたけど、家族が傷つくのがイヤで私が安全に倒せると説明して、対応した。  どうやら、捜索部隊は、他の山にも分け入って魔物?を探してきている。確かに、裏山だけが安全でも意味がない。救える命が散らされるのは…

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2021/09/30

【第一章 スライム生活】第二十八話 本当の密談

 本題だと言って渡された資料に目を落とした孔明と蒼だが、最初の数ページを読んで頭を抱えだした。  常識派だと言ってもいい孔明は解るが、破天荒な性格をしていて、破滅主義な蒼まで資料に書かれている内容には眉を顰める。 「おい。円香?」 「なんだ?」  蒼は、資料を引きつった表情で丸めて、テーブルを叩いている。 「気に食わないか?」 「違う!円香!この情報は正しいのか?違うな、どこから持ってきた!」  蒼は激高して立ち上がる。  孔明は、二人のやり取りを眺めているが、明らかに円香を睨んでいる。 「ふたりとも、少し…

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2021/09/29

【第一章 スライム生活】第二十七話 あらいぐま

 よし、今日は裏山の探索を行おう。  先日から、魔石の増え方が遅くなった。すごく嬉しい。魔石は命だ(多分)。小さいかもしれないが、一つ一つが大切な命だ(多分)。 (おはよう。パロット) ”にゃ!”  うん。  挨拶が帰ってくるのは嬉しい。言葉が通じたら、もっと嬉しいのだけど、出来ないものは、考えても無駄だ。今、意思の疎通が可能になったことを喜ぼう。  外の巣箱には、カーディナルもアドニスも揃っている。  昼間だから、お願いするのなら、カーディナルがいいかな? (カーディナル!)  私の呼びかけに、カーディナ…

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2021/09/28

【第一章 スライム生活】第二十六話 密談開始

 停泊しているクルーザーに近づく、甲板を見ると見知った顔が手を振っている。 「孔明!」 「円香。俺の名前は、孔明(よしあき)だ」 「おっしっかりと、蒼(あおい)を連れてきてくれたようだな」  円香は、俺の話しをスルーして、上村を見つけて、にこやかに話しかける。円香が載っているクルーザーは俺たちが載ってきたクルーザーよりも、1.5倍ほど大きな船だ。上村が横付けして、円香たちのクルーザーに乗り込む。 「円香。こんな面倒なことをしなくても・・・」 「悪いな。でも、問題が多すぎて、孔明のところでは話せないだろう?私…

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2021/09/27

【第一章 スライム生活】第二十五話 正道

「ねぇ聞いた?」 「なに?なんの話?」 「ほら、中央厨の・・・」 「あぁ」 「また、やらかしたみたいなの?」 「え?また?この前は、市内にゴブリンが出現したとか言って、ロケ隊を引っ掻き回しのでしょう?」 「そうそう、それでニュースで使う画(え)が撮れなくて大変だった」 「ご愁傷さま。それで、今回も?」 「ううん。今回は、視聴者からの情報とか言って、スライムの動画をニュースで流して、スライムの捕縛に懸賞金を賭けたの・・・」 「え?あれって、中央厨の仕業なの?」 「そうなの!私が担当している番組のSNSまで大炎…

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2021/09/26

【第一章 スライム生活】第二十四話 交差する思惑

「桐元!」  ドアをノックもせずに開けて部屋に入ってきた、上村を睨むが、上村の気持ちも理解できる。俺も、同じ気分だ。 「失礼しました。孔明(こうめい)少佐!小官へのご命令に関して質問があります」 「上村中尉。私の名前は、孔明(こうめい)ではない。孔明(よしあき)だ」 「これは、失礼しました。頭脳明晰でいらっしゃる。桐元少佐なので、彼(か)の諸葛孔明の生まれ変わりかと考えてしまいました」 「はぁ・・・」  書類を読む手を止めて、ソファーに移動する。  上村をソファーの対面に座らせる。 「それで?指令書の件か?…

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2021/09/25

【第一章 スライム生活】第二十三話 マスコミ

「柚木ちゃん。話を調べてくれた?」  面倒な奴に見つかってしまった。  中央に返り咲きたいと常々言っているが、この男がやっているのは、犯罪の”ギリギリ”とかではない、犯罪行為だ。  それで、中央から飛ばされたのに、こりていない。 「はぁ」 「ほら、柚木ちゃんの知り合いに、ギルドの職員が居るでしょ。彼女にちょっと渡してね」 「無理です」 「そんな事はないよ。頼むよ。ほら、なんとかの、なんとかも、金次第とかいうでしょ?なんとかなるよ」  茜に、そんなこと(買収工作)をしたら、私は間違いなく、翌日の朝日は拝めない…

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2021/09/24

【第一章 スライム生活】第二十二話 調べ物

 今日は、オークを倒した東側に行こうと考えている。考えているだけで、実行するかは未定だ。。  名前を付けてから、パロット(猫)が家に上がってくるようになった。  ナップたちが、家の周りを警戒するように見回っている。前は、巣を作っていたが、名前を付けてから、巣を作らなくなった。いいのかな?食べ物とか困っていない?  それに、わたし、少しだけ大きくなっている?  今までは、触手?が2本までしか出せていなかったけど、今は4本まで増やせる。もう何本か出せそうだけど、制御が難しい。全部、同じ動きになってしまう。  触…

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2021/09/23

【第一章 スライム生活】第二十一話 裏庭

 我は、この場所に住み着いた者たちの長をしている。  我らには、主(あるじ)様が居る。丸くて、柔らかそうで、”ぷよぷよ”としているが、ものすごく強いことは、我らの本能が訴えている。  逆らってはダメだ。敵対してはダメだ。  それだけではない。この楽園のような場所を作ったのも主様だ。主様の想いの一部は我らに伝わってくる。山では最上位である我だが、飢餓との戦いだ。しかし、この場所では飢餓を感じない。 『ワシ殿』  ”ワシ”と言うのが、我の仮の名だ。主様は、我の種族だと言っていた。他の者も、種族名を仮の名にしてい…

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2021/09/22

【第一章 スライム生活】第二十話 名前

 うーん。  なんか、裏庭に住み着いた動物たちの様子がおかしい。  私に襲いかかるようなことは無いのだけど、なんだか見られているように感じる。最初は気のせいかと思ったけど、裏山に魔石で作った結界を設置しているときに、フクロウが一定の距離で付いてきた。ハクビシンも、付かず離れずの距離を保っていた。東側に行ったときのような、立体機動はしなかったが、それでも、かなりの速度で移動したけど、二匹とも私を監視するようにしていた。  スライムは珍しいだろうから、不思議な生物だと思って、見ていたのかな?  気にしてもしょう…

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2021/09/21

【第一章 スライム生活】第十九話 桐元孔明

 久しぶりに連絡が来たと思ったら・・・。  奴は、どこから自衛隊の秘匿情報を得ている?  それを脅し文句にして・・・。まぁいい。久しぶりに、会うのも一興だ。たしか、奴はギルドの職員だし、情報交換と言えば問題は無いだろう。  指示された場所は、市内にあるカラオケ店だ。カラオケ店の近くで、奴にメッセージを送ると、部屋番号が送られてきた。 「おい!」  部屋では、奴・・・。桐元がマイクを持って熱唱していた。同世代なら誰でも歌える曲だ。 「お!桐元・・・。今は、少佐だったよね。昇進おめでとう」  マイクを持ったまま…

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2021/09/20

【第一章 スライム生活】第十八話 ファントム

 スライムになってしまった彼女の犠牲者が居るとしたら、ギルド日本支部の”情報管理課”兼”スキル管理課準備室”兼”登録者管理課準備室”の職員だろう。その中でも、ほぼ彼女の担当と言っても良いようになってしまっている、里見(さとみ)茜(あかね)だろう。  彼女は、父親が趣味で作った環境が”異常”だとは知らない。今後も気がつくことは無いだろう。そして、スライムになってしまった自分が、外でスマホを持っているのは、おかしいのではないかと考えて、スマホを部屋に置きっぱなしにしている。  彼女が、ここ数日でギルドに与えた衝…

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2021/09/19

【第一章 スライム生活】第十七話 家の裏

 夜に寝られるようになった。スライムです。乙女の敵である体重計に乗ったら、体重が測れなくなっていて、少しだけ落ち込んでいます。  眠くならないのですが、寝る方法が解った。感情を切り離す訓練をしていたら、意識を手放す方法が確立できた。  やっぱり、夜に寝られないと、気持ちが悪い。  しかし、ここ数日は起きるのに、スマホのバイブではない。  なぜか、増えている裏庭の動物たちの鳴き声だ。  結界を張っているのに、なぜか動物が増えている。悪意があるわけでも、私(スライム)を攻撃してくるでもなく、動物同士で喧嘩するわ…

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2021/09/18

【第一章 スライム生活】第十六話 スライム

 僕たちは、産まれたばかりのスライム。自分が、スライムなのを、なぜか理解している。  僕たちが、どうやって産まれたのかわからない。僕たちは、スライムとして一体だけど、一匹ではない。  僕たちは、池で生活をしていた。でも、スライムに生まれ変わった。  今、僕たちは、2つの気持ちに支配されている。  一つは、ご主人さまに会いたい。遠くに居る。ご主人さまに会いたい。僕たちは、産まれた時から、ご主人さまと繋がっている。ご主人さまのために、僕たちは産まれた。でも、僕たち以外の僕たちは、無残にも殺された。なんで、殺され…

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2021/09/17

【第一章 スライム生活】第十五話 大虐殺

(なぜだ!何故だ!理解できない!)  彼は、塾が終わると、昆虫を魔物(スライム)化して殺していた。すでに、3桁を越えて4桁に届きそうなスライムを殺している。しかし、彼が望むような変化は訪れない。 (虫だからなのか?僕のような天才がスキルを得る為には、虫ではダメなのか?)  彼が次に狙ったのが、中学校の池に居る魚たちだ。もちろん、自然に出来た池ではなく、貯水湖の役割を持っている。彼は、塾に行く前に、貯水湖の栓を抜いている。それほど大きくない池なので、塾が終わる時間には、膝丈以下まで水位は下がっている。目視で鯉…

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2021/09/16

【第一章 スライム生活】第十四話 結界

 今日も、裏庭に来ている。  最近、日付の感覚がなくなってきている。曜日は、リビングにあるTVで認識が出来る。  スライムには、学校も仕事もない。裏庭で遊んでいても、昼まで寝ていても大丈夫だ。積み本や積みゲームの消化が捗る。  裏庭に作った池を覗き込む。魚たちも元気だ。  え?うそ?  2つ設置した巣箱に、何かが入っている。  あと、水瓶近くにも、動物が居る。水瓶の近くには、妹が作った犬小屋みたいな物を置いてみた。  巣箱は、二箇所だけど、両方に何かが入っている。  こんなに早く?前に設置した時には、結局入…

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2021/09/15

【第一章 スライム生活】第十三話 実験室

「どうだ?」  開けられているドアをノックしながら、中に居る人物に声をかける。 「上村中尉。あぁ今は、大尉だったな」 「どっちでもいい。少しだけ給料があがっただけだ。権限も増えないし、使える武器も増えない。その代わり、机の前に居る時間が増えた」 「安全な場所にいて、給料が貰えて、文句を言うな」 「俺には合わないって言っているだけだ。前線がいい。書類整理は、俺には合わない」  俺が差し出した手を、白衣を着た年配の男性が握り返してくる。 「それで、清水教授。実験はどうですか?桐元が気にしています」  このマッド…

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