【第一章 スライム生活】第十七話 家の裏

 

 夜に寝られるようになった。スライムです。乙女の敵である体重計に乗ったら、体重が測れなくなっていて、少しだけ落ち込んでいます。

 眠くならないのですが、寝る方法が解った。感情を切り離す訓練をしていたら、意識を手放す方法が確立できた。

 やっぱり、夜に寝られないと、気持ちが悪い。
 しかし、ここ数日は起きるのに、スマホのバイブではない。

 なぜか、増えている裏庭の動物たちの鳴き声だ。
 結界を張っているのに、なぜか動物が増えている。悪意があるわけでも、スライムを攻撃してくるでもなく、動物同士で喧嘩するわけではない。そもそも、裏山に沢山の動物が居たのに驚愕している。

 うーん。結界があるから、安心して居られるのかな?
 水場もあるし、でも猛禽類も一緒なのに良いのかな?

 ミツバチも飛んでいる。

 あっ養蜂箱は、結界の外だ!

 うーん。
 裏庭の拡張をしよう!

 寝ている最中に、また魔石が溜まった。なんとなく、私の役に立ちたいと思ってくれているように思える。
 この魔石は、あの感情の素だと思う。だからこそ、しっかりと使ってあげたい。

 裏庭だけでは狭くなってしまっている、動物たちの住処を作ろう。

 私には、時間がある。
 学校には、パソコンから休学届けを提出した。電話は出来なかったから、メールだ。担任からは、考え直して欲しいと言われたけど、生活と学業の両立が難しいという理由にした。遠くに居る親戚を頼るという理由を付けた。そして、親戚の所に行くことが決まったために、休学したいと告げた。親戚の家までは聞かれなかった。
 親戚が受け入れてくれたら、退学届けに切り替えるつもりだと、説明した。何度か、メールのやり取りをした。電話で説得したいとか、家で会えないかと言われたが、断った。会えるわけがない。私だって、会って・・・。学校は、卒業したい。でも、無理だ。スライムが学校に行けるわけがない。
 担任とメールのやり取りをしていると、なんで私が・・・。そんな感情が芽生えてしまう。私は、好きでスライムになったわけではない。学校にも行きたい。もっと、いろいろ勉強をしたかった。もっと、知らないことを知りたかった。全部が”出来なくなった”とは、考えたくないけど・・・。私の些細な幸せは奪われた。理不尽に、魔物にされた。

 誰が?
 なんの為に?

 でも、切り替えるしか無い。
 時間は戻らないし、私は私だ。私が、ここで落ち込んで、スライム生を閉じたら、私をスライムにした奴に負けたことになる。勝ちたいわけではないが、負けるのはイヤだ。だから、私は、スライムとして好きに生きる。そして、私の感情を満たすための行動復讐優先完遂する。

 裏庭の拡張は、出来たこぶし大の魔石の数で決めようと思う。
 あれからも魔石が送り込まれる。

 錬金でまとめた魔石は、全部で7個にもなっている。

 一つは、養蜂箱の近くに置いて結界を展開する。手慣れた物だ。

 裏庭の拡張の副産物で、自分自身に結界を発動する方法が解った。
 正しいかわからないが、魔石を使う方法だ。こぶし大に大きくした魔石ではなく、5個程度をまとめた魔石に結界を付与して、自分で持つと自分自身に結界が発動したようになる。結界を発動した時の感じだと、私が魔石を吸収しているようになるが、よくわからない。食べるとも違うし、持っているが一番しっくりくる言い方だ。自分の周りをうっすらとした光の膜がある感じだ。これが結界なのだと思う。試しに、触手を伸ばして、触手の上に岩を落としてみた。結界に触れた所で、岩が横にずれたので、結界が有効になっているのだろう。

 これで、私はさらに最強のスライムになった!スライムの最強に上り詰める!

 自分で考えておいて、最強のスライムは、リ○ル様だよね。なんて言っても、覚醒魔王だし、一回では覚えきれない種族だよ。

 いいかな。死ににくくなっているのは間違い無いのだし、私がやりたいことの為にも、今後もスキルの検証は必要だよ。

 養蜂箱の近くに、結界の魔石を設置する。
 この辺りは、クヌギもあるし、楓もある。裏庭と同じで、他の昆虫が集まってきそうだけど・・・。大丈夫だよね。うん。きっと。大丈夫。もう設置しちゃったし、養蜂箱を守るためにも必要なことだよね。東側には、オークがいたし、他に魔物が居る可能性だってある。

 そう言えば、オークを倒した時には、スキルを得なかったな。
 必ず芽生えるわけじゃないってギルドにも書かれていたから、気にしないけど、あの肉って食べられるのかな?アイテムボックスに入れっぱなしだ。なんとなく、オークの魔石は、送られてくる魔石と分けている。一緒にしちゃぁダメな気がしている。
 調べてもわからない。わからないから、自分の”感”を信じる。
 オークの魔石と、送られてくる魔石は別物!決定事項。

 裏庭の拡張計画を実行しよう。次は、排水の為に配管した場所だ。水場があれば、わざわざ裏庭に来なくても、大丈夫になるだろう。
 裏庭は、安全な結界があり、水場があるから、動物が集まっているのだろう。

 水場に結界を設置する。
 今の状態だと、結界を設置した場所のそれぞれが独立してしまっている。

 やはり、繋がっていたほうがいいよね。
 幸いな事に、魔石はまだ残っている。

 結界が重なるように配置していく、裏庭が何倍に広がった。

 今日は、ここまでにしよう。
 帰って、オークの肉や魔石を調べよう。

 結界の魔石が一つだけ残ったから、家の門が入らないように設置しよう。そう言えば、通販もまだ調べていなかった。

 やることが増えた!

 今日は、帰って、お風呂に入って、パパのパソコンで調べ物の日にしよう。

 へぇオークの肉って食べられるの?美味しいって書かれている。

 え?なんで?
 私、英語が読めているの?スライムだから?英語が読めるようになったの?すごい!学校に行けたら、英語の授業で困らなかった。ちょっとまって、英語だけじゃない。ドイツ語もフランス語もハングルも読める。

 待って、待って、スライムボディ。すごく優秀。
 言語で困らないなんて、素敵な状況だ。あとは、人化があれば・・・。

 さすがに、人化のスキルなんてないよね?
 ギルドには登録されていない。そう言えば、ギルドのデータは全世界で統一されていると書かれていたな。自動翻訳されて表示されるとか書かれていた。アイテムボックスは、日本で見つかった物ではなくて、海外で見つかったので、登録は現地の言葉だ。でも、自動翻訳でページが翻訳されるので、日本語で読める。ニュアンスがおかしい場合があるから、日本のギルド職員が日本語に直しているらしい。

 スライムの真実は、スライムが居て、意思の疎通ができれば、簡単なのにね。
 お金に困ったら、ギルドで雇ってくれないかな?翻訳が得意なスライムです!とか、貴重じゃない?

 そうだ!
 アイテムボックスを登録したギルドで読んでみて・・・。ダメだ。自動翻訳って優秀だね。ほとんど、同じだった。

 オークの肉が食べられるのは、大きな発見だ。
 大きな肉の塊だ。私のアイテムボックスなら時間が止まっているから、肉も悪くならない。熟成はしないけど、腐るよりはいい。多分、4-50キロはある。しばらくは肉には困らない。
 あっ!裏庭に来ている肉食の動物に振る舞ってもいいかもしれないな。

 海外のサイトでは、魔物が魔石を吸収するとか書かれていたけど、私はスライムで魔物だ。魔石を吸収出来るのかな?
 オークの魔石と、どこから来ているかわからない魔石だけど、どこから来ているかわからない魔石は、吸収したくない。なんか違う感じがする。オークの魔石は吸収してみても良いかもしれない。

 吸収って食べれば良いのかな?
 やり方が書いているサイトは見つからなかった。

 食べるようにすれば良いのかな?

 そんなに大きくないし1cmくらいかな?大きな飴玉だと思えばいいのかな?赤と青と緑と黄が、綺麗に混ざり合っているすごく綺麗な飴玉に見える。

 ギルドでも魔石の大きさは書かれていなかった。1cmやこぶし大の魔石の値段を知りたかった。買い取り値段だから、時価で秘密なのかな?

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